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なぜ今、インド投資なのか?ENRISSION INDIA CAPITALがインド投資の最前線を解説

ENRISSION INDIA CAPITAL

近年、インド投資への関心が急速に高まっています。世界最大の人口を誇るインドは、スタートアップの活況、IT産業の発展、政府の積極的な経済政策によって、経済的に急成長を遂げ、投資家にとって魅力的な市場となっています。
本記事では、インド投資の魅力、成長要因、スタートアップの実態、について詳しく解説します。

1. インド投資が注目される背景

1-1. 世界最大の人口を背景とした広大な市場環境

インドは2023年に中国を抜き、世界最大の人口を持つ国となりました。現在の人口は約14億人に達しており、そのうち半数以上が30歳以下の若年層で占められています。この若い人口構成は、今後の労働市場の活性化と消費市場の拡大に直結し、経済成長を牽引する重要な要素となっています。

国内には多数の大都市が存在し、経済活動の中心となるデリー、ムンバイ、バンガロール、チェンナイなどが急成長を遂げています。これらの都市では、IT、金融、製造業、サービス業といった多様な産業が発展し、国内外の企業にとって重要な拠点となっております。

1-2.  継続する経済成長

インドは近年、世界でもトップクラスの経済成長率を記録し、今後もその成長が継続すると予測されています。IMF(国際通貨基金)や世界銀行のレポートによると、インドのGDP成長率は年間6~7%の水準を維持しており、世界経済の主要な成長エンジンの一つとされています。

インドの経済成長を支える主な政策

  • 「Make in India」政策: 国内製造業の振興を目的とした外国企業の誘致とインフラ整備を推進
  • 「Startup India」政策: スタートアップ企業向けの税制優遇や資金支援を提供し、企業活動を促進
  • 「Digital India」政策: 国民のデジタル化を推進し、キャッシュレス決済やオンラインビジネスの普及を後押し

1-3. スタートアップ企業の台頭

インドのスタートアップ市場は急成長を遂げており、特にテック系スタートアップの発展がインド経済の底上げに寄与しています。巨大な国内市場を背景に、ユニコーン企業(評価額10億ドル以上の未上場企業)が次々と誕生し、世界的に注目を集めています。

詳細は第3章にて紹介します。

2. インドの株式市場

インド市場は過去10年間で大きく成長し、投資先としての魅力が世界的に高まっています。2023年のIPO(新規株式公開)件数も世界1位となるなど、若く勢いのあるスタートアップ企業も株式市場にインパクトを与えています。

2-1. 過去10年間で株価指数が約3.4倍に上昇

インドの代表的な株価指数であるSENSEX(ボンベイ証券取引所の株価指数)は、過去10年間で約3.4倍に成長しました。

SENSEX 株価チャート

出典:SBI証券(2025年3月時点)

2-2. インドのIPO件数は世界1位

2023年、インドのIPO件数は世界1位となりました。新興企業の成長と投資環境の整備が代表的な要因です。

IPO件数の比較(2023年)

IPO件数の比較(2023年)

出所:ブルームバーグ、HSBCアセットマネジメントのデータをもとにENRISSION INDIA CAPITAL株式会社が作成

3. インドのスタートアップ

インドのスタートアップ市場は急成長しており、ユニコーン企業(企業評価額10億ドル以上の未上場企業)が次々と誕生しています。特にインド工科大学(以降「IIT」)卒業生による起業が目立ち、多様な分野でインド市場にインパクトを与えています。さらにその多くがインドの社会課題の解決に取り組む事業を展開し、持続可能な成長に大きく貢献しています。

3-1. インドのスタートアップ市場の成長要因

1.優秀な起業家の存在

  • 世界的に評価の高いIITの卒業生が起業家として活躍
  • 米国のテック企業(Google、Microsoft、Amazonなど)で経験を積んだインド人エンジニアが帰国し、起業する流れが加速

2.ユニコーン企業の増加

  • 2023年時点でインドのユニコーン企業は100社以上に達し、世界でもトップクラスの規模を誇る
  • フィンテック、Eコマース、フードデリバリー、ヘルステック、エドテック(教育テクノロジー)など、多様な分野でユニコーン企業が誕生

3-2. インドの代表的なスタートアップ

分野主要企業概要
フィンテックPaytm, Razorpayモバイル決済・電子マネーサービスを提供
EコマースFlipkart, Meeshoインド版Amazon、CtoCマーケットプレイス
フードデリバリーSwiggy, Zomatoインド版Uber Eats、レストラン予約サービス
ヘルステックPharmEasy, Practoオンライン薬局、医療相談プラットフォーム
エドテックBYJU’S, Unacademyオンライン教育プラットフォーム

インドのスタートアップ市場は、単なる国内の成長に留まらず、世界的なイノベーションハブとしての役割を強めており、今後もさらなる拡大が期待されています。

3-3. インドのスタートアップエコシステムの中心はIIT

インドのユニコーン企業の多くはIIT卒業生によって創業されており、その割合は約70%にも達すると言われています。

IITはインド全土に23キャンパスあり、高度な技術力と起業家精神を持つ学生が集まるため、スタートアップのエコシステムの中心地となっています。その要因として下記の3点が挙げられます。

  • 資金調達機会の増加:IITの各キャンパスに出資機関が設置されており、大学が創業当初からIIT発スタートアップを支援する体制が整備されている
  • アジア最大のピッチコンテスト:IITの各キャンパスではスタートアップ企業のピッチコンテストも開催され、中でもボンベイ校で開催されるEUREKA!は毎年18,000社以上がエントリーし、その規模はアジア最大とも言われる
  • 成功モデルの確立:卒業生同士のつながりが更なる企業の成長を後押ししている

3-4. 社会課題解決型スタートアップの増加

インドでは、経済成長と同時に、社会課題を解決するスタートアップも増加しています。特に、農村部の教育・医療の分野で革新的な事業が登場しています。

社会課題解決型スタートアップの例

分野企業名取り組み
医療Practoオンライン診療・遠隔医療プラットフォーム
教育Byju’sデジタル学習アプリ、低価格で学習機会を提供
  • 政府の支援と補助金を活用して事業展開
  • 持続可能なビジネスモデルで長期的な成長が見込まれる

このような社会課題を解決するスタートアップが増えることで、インドの経済発展と共に、より良い社会の構築が進んでいます。

4. ENRISSION INDIA CAPITALの取り組み

ENRISSION INDIA CAPITALは、IITのキャンパス内に2016年から拠点を設け、同大学との連携を通じて、インド現地の有望スタートアップ企業へ投資を行うベンチャーキャピタル(VC)です。IIT内にはカフェ形式で拠点を設け、投資を通じて、日本とインドの発展に貢献するというビジョンの下、急成長するインド市場にいち早く注目し、両国の経済発展を促進しています。
IITボンベイ、デリー、ハイデラバード各キャンパス内にカフェ形式で拠点を有し、各キャンパスが有する出資機関から、IIT発の優秀なスタートアップ企業の情報を獲得できる、日本でも希少なVCです。

5. ENRISSION INDIA CAPITALの投資事例

ENRISSION INDIA CAPITALが出資した代表的な企業を紹介します。何れもインドの社会課題の解決に寄与しているスタートアップであり、急成長を遂げています。

5-1. マイクロファイナンスのデジタル化で成長した企業

企業概要

  • 事業内容:低所得層向けのデジタル型マイクロファイナンス事業
  • 設立:2021年
  • 主な提供サービス︓スマートフォンアプリを通じた小口融資と信用スコアを構築
  • 成長実績:出資当初(2021年)に比べ、2024年6月には月次売上が190倍に拡大
売上高(月次)
2021年約30万円
2024年約5,700万円(190倍の成長)

事業の特徴

  • 銀行口座を持たない人々への金融サービス

 インドの農村部では銀行口座を持っていない人が多く、従来の金融機関の利用が困難

 デジタルプラットフォームを活用し、スマートフォンアプリ経由で融資を提供

  • AIを活用した信用スコアリング

 取引履歴やスマートフォンの利用データを基に、信用スコアを構築

 伝統的な信用審査が困難な人々にも融資を実施

  • 政府との連携で成長加速

 インド政府が推進する「Digital India」政策と連携し、キャッシュレス決済と金融包摂を推進

5-2. 折りたたみ式モジュールハウスを開発したスタートアップ

企業概要

  • 事業内容:組み立て式モジュールハウスの開発・提供
  • 設立:2020年
  • 主な提供サービス:農村部や災害時の仮設住宅、医療施設の提供
  • 成長実績:モディ首相がX(旧Twitter)で紹介し、一気に知名度拡大。出資して間もないが、2024年10~12月の売上は、前四半期(同年7~9月)対比で約7倍に成長

事業の特徴

  • 短期間で設置可能な仮設住宅の提供
  • 持続可能な建築技術

 再生可能素材を活用し、環境負荷を低減

 耐久性が高く、長期間使用可能

  • 政府・企業との連携

 インド政府のインフラ整備政策と連携し、農村部や災害支援に貢献

 大手建設企業ともパートナーシップを結び、量産体制を構築

沿革
2020年インド工科大学(IIT)の卒業生によって設立
2021年政府向けプロジェクトで仮設住宅500棟を提供
2023年モディ首相がSNSで紹介し、一気に全国展開へ
2024年インド国内外での事業展開を拡大

6. まとめ

インド市場への投資が注目される理由は、世界最大の人口を背景にした広大なマーケット、高い経済成長率、スタートアップ市場の拡大にあります。特に若年層の多さが労働力と消費市場の成長を支え、政府の積極的な経済政策が投資環境を整備しています。

さらに、IT・フィンテック分野を中心にユニコーン企業が急増し、スタートアップ市場の勢いも高まっております。今やインドの社会課題の解決、成長の底上げはスタートアップ企業が担っていると言っても過言ではありません。

ENRISSION INDIA CAPITALはその市場に日本からいち早く着目し、インドスタートアップ投資のパイオニアとして投資を実行してきました。今後も投資を通じて日本とインドの発展に貢献して参ります。

ENRISSION INDIA CAPITAL

インド工科大学と連携し厳選したインドスタートアップ企業への投資事業などを行う会社。スタートアップ支援にも注力しており、創業資金、メンタリングなど若手起業家への支援を提供する大規模なインキュベーションプログラムを運営しています。