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タイの不動産市場|都市ごとの特徴と価格帯を解説

タイの不動産市場はどんな感じ?都市ごとの特徴と価格帯を解説

今回はタイ全土の不動産市場について書いていきたいと思います。タイの不動産と言われると首都バンコクが中心ですが、もちろん他のエリアも魅力的な物件はたくさんあります。ここでは各都市の特徴と各都市の不動産市場を見ていきたいと思います。

1.タイの不動産状況

最初に、タイ全体での不動産状況を整理しましょう。2025年時点でタイ全体の不動産は「買い」傾向にあると言えます。経済状況がようやく上向き、観光業でも復活が見えてきました。

その割に売り手が多いことから、買い手としては絶好の交渉チャンスとも言えます。それらをわかりやすく表にまとめてみました。

要因状況購入タイミングかどうか?
不動産価格微増、ほぼ横ばい全体で4%前後の変動あり。ただほぼ横ばい
供給状態コンドミニアムの販売率が40%弱買い手としての交渉力が強い
住宅ローン金利6%-7%前後高水準を推移中
観光業の復活コロナ前に近づいている外国人投資家が戻ってきつつある
政府支援不動産取引手数料の減税を延長中取引手数料2%ほど削減可能(2025年5月時点)
経済状況GDP成長率:3%-3.5%安定した成長を見せる

*タイ統計局、各種銀行HP、CBRE Thailand等より株式会社エイリック作成

上記の表の通り、不動産価格が安定している中で住宅ローン金利が高い状況ですから、キャッシュを持つ人からすると交渉力が強くなっています。つまり「買い手有利」な状況が今のタイでは続いていると言えます。

それではここから地域ごとに見ていきましょう。

2.エリア別の不動産価格一覧

タイにはバンコクをはじめ、パタヤ、プーケット、ホアヒン、チェンマイ、EECエリアといった不動産投資の候補地が存在します。各エリアで物件価格や利回り、需要の質が異なるため、それぞれの特徴を把握することが重要です。

ここでは、それら6つの主要エリアを表で比較してみましょう。

場所平均価格平均利回り
(グロス)
平均利回り
(ネット)
投資可能性
バンコクTHB 236,000-400,0004-5%2.5-3.5%高額物件は売り手市場、中価格帯は買い時
パタヤTHB 65,000-120,0005-7%3.5-5%外国人急増中
プーケットTHB 95,000-180,0006-8%4-5.5%外国人急増中
ホアヒンTHB 55,000-95,0004-5%2.5-3.5%国内外の旅行者、リタイヤメント層が増加
チェンマイTHB 45,000-75,0004-6%2.5-4%リタイヤメント層、デジタルノマド層の増加
EECエリアTHB 35,000-65,000N/AN/A労働者層が増加中

*CBRE Thailand、JLL Thailand, Global Property等より株式会社エイリック作成

上記の表からも分かる通り、価格や利回りの観点からも地域ごとに大きな差があります。それぞれの地域に合った投資スタイルを選ぶことが成功への第一歩となります。次章では、今後の市場予測と注目すべき動向について解説していきます。

3.バンコク

バンコク

写真:タイ国政府観光庁より

首都バンコクに関しては、多くの日本人も住んでおり、物件も購入しています。日本人向けの食材、サービスなども豊富でタイの中でも1番住みやすい場所です。

ただ、バンコクの不動産価格は地域によって大きく異なり、CBD(中心地)では平米単価23万6,000バーツから40万バーツ(日本円で約103万円から176万円)となっています。一方でバンコク郊外エリアは平米単価7万2,000バーツから12万7,000バーツ(日本円で約31万円から約55万円)と2倍から3倍ほどの価格差があります。

そのため、ローカルのタイ人からすると中心地が非常に高いため、郊外に移動していると想定されます。ただバンコクで販売される新築コンドミニアムの供給量が減ってきており、また各デベロッパーはかなり在庫を持っている状況でもあるため、交渉次第ではかなり割安で新築コンドミニアムを購入できる状況です。

2018年頃からバンコクのコンドミニアムは供給過剰感が出てきました。その結果、デベロッパーは以前よりも割引や柔軟な支払い方法、その他のインセンティブを提供してきました。そのような状況のため、コロナ禍が終わった今、価格は比較的横ばいで推移しています。この状況を考えると、今、バンコクの不動産を交渉で手に入れることは買い手にとっては絶好のチャンスだと言えるかもしれません。

そしてもう1点、デベロッパーが資金調達に苦しんでいるのが今のタイのマーケットです。そのため新規プロジェクトの立ち上げが少なくなっています。ただ、気をつけたいのは1億バーツ以上の高級物件で、販売率は90%を維持しており、高級物件市場は売り手市場となっています。

中価格帯の物件については、意欲的な売り手からの追加のインセンティブとして、家具付きパッケージ、賃貸保証制度、手数料割引などが提案されているようですので、ぜひ不動産会社に問い合わせてみてください。

4.パタヤ

パタヤ

写真:タイ国政府観光庁より

バンコクから南東へ約160km、タイ東部チョンブリー県の西海岸に位置するビーチリゾートです。バンコクから車で約2時間、スワンナプーム国際空港からは約1時間半というアクセスの良さと美しいビーチと多彩なマリンスポーツが年間を通じて楽しめる人気エリアで、不動産取引も活発なエリアとなっています。

以前からバンコクに近く、住みやすいこともあり、日本人でもリタイヤメント層の方々が多く住むエリアでしたが、2010年頃から一気に乱開発が入り、価格の暴騰と急落が起こりました。そんな中でコロナ禍を迎え、観光都市でもあるパタヤは大打撃を受けてしまいます。2025年現在、ようやく徐々に復活をしてきており、また多くの観光客が押し寄せるような状況になっています。

現在の不動産価格は平米単価6万5,000バーツから12万バーツほど(日本円で約28万円から52万円)で、5%以上の利回りが見込めるエリアでもあります。多くの観光客を相手に短期賃貸や民泊のような賃貸需要も増えてきました。価格の手頃感もあり、今後の注目エリアと言えそうです。

5.プーケット

プーケット

写真:タイ国政府観光庁より

タイ南部のアンダマン海に面するタイ最大の島で、「アンダマン海の真珠」と称されている世界でも有名なリゾート地です。外国人もホテルの数も多く、不動産取引も活発です。またタイで最も物価が高い場所と言われています。

プーケットで設立されて成長してきた不動産デベロッパーも多く、多くの高級コンドミニアム、戸建てが存在します。パタヤと似たようなリゾート系の不動産マーケットかと思いきや、どちらかというと投資というよりセカンドハウス的な形で所有する人が多いエリアです。

そのため、不動産価格も安くはなく、平米単価9万5,000バーツから18万バーツ(日本円で約41万円から79万円)ほどで、パタヤよりは少し高い水準になっています。

ただ、利回りだけで見ると6%以上が見込めるエリアでもあるため、物件の選別が非常に重要です。パタヤであれば値頃感のある物件を賃貸でローカルに貸し出すという流れもあるかと思いますが、プーケットでは貸し出す対象は外国人が中心となります。ローカル向けの物件はリスクが高く、外国人投資家が手を出すことはあまりないです。

それは元々世界的なリゾート地だから、ということもあるからでしょう。そして首都バンコクからも遠く、リゾート地として確立しているエリアだからという点も考慮に入れた方が良いと思います。

6.ホアヒン

ホアヒン

写真:タイ国政府観光庁より

日本人には馴染みが薄いホアヒンですが、バンコクの南西約200km、タイ湾を挟んでパタヤの対岸に位置するホアヒンは、王室の保養地として古くから発展した優雅な気品漂うリゾート地でタイ人に非常に人気なエリアです。

静かな白い砂浜と、それに沿って建ち並ぶワールドクラスのラグジュアリーホテル、歴代王の離宮、名門ゴルフコースや大自然を満喫できる国立公園などがあり、根強い人気があります。

のどかな保養地。そういう表現がぴったりかもしれません。実際、不動産取引はバンコクやパタヤに比べるとそこまで活発ではありませんし、流動性も低いエリアです。

改めて調べてみると、不動産価格は平米単価5万5,000バーツから9万5,000バーツほど(日本円で約24万円から41万円)で、4%前後の利回り感で、人口も7万人程度です。正直、投資というよりも旅行で訪れる場所という印象が強いエリアです。

7.チェンマイ

チェンマイ

写真:タイ国政府観光庁より

チェンマイはバンコクの北方約720kmに位置するタイ第2の都市です。乾期(11月~1月)は平均気温が約25℃とバンコクよりも過ごしやすいことから、避暑地としても人気のエリアになります。

過去には日本人の方で「引退後はチェンマイでのんびりと過ごす」というのが流行り、その流れは今もデジタルノマドの聖地として残っています。

*デジタルノマド・・・ITを生業にして国内外を旅しながら働くスタイルのこと

バンコクに比べると生活コストも安く、街がコンパクト、その割に日本人の方も昔から多いので日本食や日本人に対しての理解度も高いです。そういった点がロングステイや移住者に人気なのだと思います。

ただ不動産購入や投資となると少し話が変わりまして、不動産取引自体はバンコクほど活発ではなく、不動産価格は平米単価4万5,000バーツから7万5,000バーツほど(日本円で約19万円から33万円)で、他エリアからするとかなり低い水準で動いています。

利回りベースで見ても4%前後ということで、投資というよりも居住、セカンドハウスという感覚でしょうか。

昨今、バンコクの価格が上昇しすぎている関係から、大手デベロッパーがチェンマイに進出した時期がありましたが、現在はある程度落ち着いており、良くも悪くものんびりとした不動産市場だと思います。

8.EECエリア

EECとは、東部経済回廊(Eastern Economic Corridor)の略語で、タイ政府が推進する国家戦略「タイランド4.0」を中核とする地域のことで、具体的にはバンコク東部のチャチュンサオ県、チョンブリ県、ラヨーン県の3県を指します。

この地域は、次世代自動車やエレクトロニクス、バイオテクノロジーなどの高付加価値産業を誘致し、海外からの投資を呼び込むためのインフラ整備や税制優遇などが実施されていて、今急速に発展をしているエリアとなります。

EECエリア

そのため不動産開発も盛んであり、これから注目されているエリアです。上記で取り上げたパタヤもこのチョンブリー県に入ってきますが、パタヤは特別市でもあり、リゾート地ですので、少しこのエリアの不動産とは切り離してデータは取っています。

バンコクから近いと言っても、バンコク郊外だった場所が急に投資優遇地として脚光を浴びている状況になったわけですが、不動産価格はまだまだ低く、平米単価3万5,000バーツから6万5,000バーツほど(日本円で約15万円から28万円)です。利回り感はまだデータが十分に揃っていないため不明ですが、今後注目されてくるエリアなのは間違いないと思います。

ただ、日本人の個人投資家が投資をするとしても、このエリアではまだハードルが高いと思います。どちらかというと工場や倉庫、そして住宅といっても日本でいう賃貸アパートや寮のような不動産が今はメインだと思います。

これからどういった発展をしていくか、面白く化ける可能性はありますが、外国人の個人投資家が攻めるにはなかなか難しいかなと思います。

9.まとめ

タイの不動産市場は、今後数年間で緩やかな回復が見込まれています。CBRE Thailandの予測では、2025~2026年で不動産取引件数は4%前後の回復が見込まれています。バンコクのコンドミニアム価格は、供給過剰により横ばい、または1~2%のわずかな上昇にとどまる見込みですが、政府の景気刺激策により取引件数は徐々に増加すると予想されます。

2027~2030年の長期予測では、より楽観的な見通しが示されており、バンコク中心部では年間3~4%の上昇が見込まれ、郊外では年間1~2%の成長にとどまり、観光地では賃貸利回りの向上により年間4~5%の成長が見込まれています。東部経済回廊(EEC)エリアでは、産業開発の波及効果により5~6%の成長が見込まれています。

タイへの不動産投資を検討する上では、やはり買い手有利のバンコクを中心に投資するのがセオリーと言えます。そして、バンコクだけでなくパタヤ、プーケットなどのリゾート地でバンコクより割安で、最終的に自分が住んでも良いと思えるような物件を選ぶケースが多いです。ぜひ幅広くタイを見て、ご自身にとって最適な投資エリアを選んでいただければと思います。

心友不動産

タイ・バンコクを拠点に、日本人向けの不動産購入・管理・売却支援を行う不動産会社。
日系大手デベロッパーとの提携を活かし、現地の優良物件を特別条件で紹介するほか、移住支援やビザ取得、賃貸運用などをワンストップでサポート。専門コンサルタントによる丁寧なヒアリングと透明性の高い対応に定評があり、日本とタイをつなぐ“不動産の架け橋”として信頼を集めている。

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