
タイのコンドミニアムを購入し、登記も済ませて運用開始となっても、わからないことが多いと思います。今回は購入後の運用・賃貸の流れなどを深く掘り下げていこうと思います。
1.タイ不動産購入後の4つの流れ
まず、大きな流れとしては以下となります。
ステップ | 概要 |
購入後 | 鍵の受け取り、管理会社との連絡、メンテナンス |
運用準備 | 家具家電の整備、代行業者選定 |
賃貸開始 | 募集 → 契約 → 賃料回収 |
運用中 | 定期チェック、入居者管理、税務処理など |
具体的に説明します。
①購入後
最初に登記完了後に「鍵」を受け取ります。これで部屋の中に入ることができ、物件の状況を知ることができます。その時に内装(家具・家電)の有無を確認します。タイのコンドミニアムを賃貸に出す時は、「家具・家電付き」が一般的ですので、未設置の場合は家具・家電を購入、設置する必要があります。
そして、ほぼ全てのコンドミニアムには建物を管理する管理会社がついています。この管理会社に連絡をして、物件オーナーは管理会社に連絡先を登録し、緊急時対応なども依頼できるようにしておく必要があります。
なお、この管理会社はコンドミニアムに付帯しているプールやジム、ロビーやセキュリティなど、いわゆる共用部の管理を行っています。
部屋に家具、家電が設置されたら、きちんと動くかどうか、汚れや傷がないかなどをチェックしておきます。タイでは家具・家電付きで賃貸に出すため、内装の状態によって賃貸がつきやすい、つきにくいことがありますので、非常に重要なポイントになります。
これらは日系の実績がある賃貸管理代行会社に依頼すれば全て対応してくれます。ご自身で行うのも良いのですが、慣れていないと特に建物管理会社(ほとんどがタイ人しかいない)とのコミュニケーションにおいて苦労するケースがあるので、ぜひ管理代行会社に依頼することをお勧めします。
②運用準備
上述した通り、日系の管理代行会社と一緒に進めていく形がほとんどだと思いますが、家具・家電を点検し、必要があればクリーニングや修理をして賃貸に出す準備を進めます。
そして、管理代行会社に「どこまでサポートしてもらえるか?」の確認をします。
例えば、「賃貸の募集」だけを行うのか「契約サポート」もやってもらうのか、「賃料回収」もやってもらうのか、トラブルがあった場合はどうするのか?その辺りを確認して、合意する必要があります。
ここをしっかりと決めておかないと、後々トラブルになる可能性がありますので、必ず確認をしてください。多くの管理代行会社は部分対応していないと思いますが、中には賃貸の募集行為だけお願いしているケースも散見されます。
ただ、日本在住の方であれば、基本的には全てお願いする形になると思いますし、現実的に考えると現地の管理代行会社に任せるしか他ないというのが実情です。この価格は管理代行会社ごとにかなり値段が違うので、提供されるサービスやサポート体制などを比較して決めてください。
③賃貸開始
家具・家電が揃い、管理代行会社も決まったら、いよいよ賃貸募集を開始します。
この時、管理代行会社自ら広告費を支払い、インターネットやチラシなどを使って募集するケースもありますし、他社に依頼をして探してもらうケースもあります。
賃貸仲介の手数料は日本と同じで、一般的には賃料の1ヶ月分が相場です。ただし、人気のないエリアや早く決めたいという場合には賃料の2ヶ月分というケースもありますし、手数料は1ヶ月分ですが、広告費用を請求されることもありますので、ここは管理代行会社と必ず確認をしてください。
また一般的なタイの賃貸仲介においては、入居者から手数料を取ることはほぼありません。そのため、不動産仲介会社の立場からすると、他社に依頼をした場合、オーナーからの手数料を(入居者を見つけてきた)仲介会社と折半するケースがあります。
そのため、タイにおいて、賃貸仲介は実績や経験が非常に重要ですので、どの会社に依頼するかがとても重要になってきます。
また賃貸期間は通常6ヶ月〜1年がほとんどです。最大で1年であり、日本のように2年更新というのはほぼありません。逆に1ヶ月〜3ヶ月でも貸し出し可能であり、この辺りも柔軟に対応してくれる管理代行会社を見つけることをお勧めします(物件によっては3ヶ月以下の短期賃貸を禁止している物件もあります。ここも必ず確認をしてください)。
これで無事に入居者が見つかって、契約となれば賃貸運用が本格的にスタートします。日本と違い、借地借家法という法律がないので、タイではオーナーの方が立場は強くなります。
ですので、毎年賃料を値上げするオーナーもいますし、退去に関しても2ヶ月未納で退去させる、など契約書に盛り込むことが可能です。ここも管理代行会社と話し合って、どのような契約にするか、どのような特約やルールを盛り込むかを検討してください。
日本でいう敷金・礼金ですが、タイの場合は「デポジット(保証金)」という名前で呼ばれます。デポジットはオーナー次第ですが、一般的な賃貸物件であればデポジットは2ヶ月分が相場です。そして、前家賃として1ヶ月分を先にもらうケースが多いので、賃借人が決まれば、「家賃3ヶ月分」を契約時に一括で支払ってもらうのが多いです。
例:月額家賃 20,000バーツ の場合
デポジット(保証金):40,000バーツ
前家賃:20,000バーツ
合計:60,000バーツ
退去時に問題がなければ、デポジット(2ヶ月分)は全額返金しなければいけませんが、傷や設備の損傷があれば修理費として差し引いて入居者に返金します。返金は退去後から1ヶ月〜2ヶ月以内にすることが多いです。
この返金に関してトラブルが起きないように、事前に契約書の作り込みが非常に重要です。そのためこの契約書作成・運用含め、現地の管理代行会社の存在が非常に重要になってきます。
④運用中
管理代行会社を通じて、毎月賃料を回収し、オーナー指定口座に送金してもらいます。この際、毎月送金してもらうケースと海外送金の場合は3ヶ月ごとに送金というケースに分かれることが多いです。
そして、入居中であれば毎月の家賃チェック、空室であれば入居希望者がどれだけ内見したのか?どういう交渉をしたのか?部屋の状態はどうなのか?などを確認する必要があります。
また入居者とのコミュニケーションもしっかり取れているかの確認も重要です。家賃の支払い遅延やトラブルが発生していないか?などにきちんと対応しているか定期的にオーナーとしてチェックすることをお勧めします。
少し話がそれますが、空室が続くためairbnbなどの民泊運営に切り替えたいという話もよく聞きます。しかし、タイの多くのコンドミニアムでは管理規約で民泊を禁止しており、もし民泊をするのであれば、ホテル営業許可が必要です(30日未満の宿泊に関して)。
もしこれを破って民泊をした場合は、罰金・警察による取り締まり・退去命令の可能性もあり、リスクの方が大きいと言わざるを得ません。
そして、忘れがちですが、家賃という収益が入ってきているため、タイでは外国人といえども、個人所得税の対象となります(累進課税5-30%)。日本在住の場合は日本でも外国所得の申告が必要となりますので、十分注意してください。
ただし、日本とタイの間では租税条約を締結しているので、外国税額控除を受けることができます。詳細は税理士に確認をして、適切な納税を心がけてください。
2.日本との共通点
購入後から賃貸運用までの流れを見てきましたがいかがでしょうか?多くのケースで日本の賃貸運用と似ていると思います。特に大きな違いで言うと、「オーナーの力が強い」ということです。
人気のエリアや物件であれば、オーナーはすぐに賃料の値上げをしていく傾向があります。これは不動産投資をする方にとっては大きなメリットだと思います。また1年単位で賃料を上げることもできますので、毎年賃料が上がっているコンドミニアムも実際にあります。
ただ、もちろん需要と供給のバランスですので、購入した物件や管理状況による部分がありますので、すべての物件で値上げが実現できるわけではありません。
また、「不動産は管理で買う」という言葉の通り、管理状態によってかなり運用実績に差が出ます。タイのコンドミニアムはとにかく新築物件が作られ続けてきましたが、2025年現在では中古物件の方が多くなっています。その中で勝ち物件と負け物件の差もより鮮明になってきました。
管理がよく、住民の質も良い物件の価値はますます上昇し、一方で立地が良くても管理の悪い物件は賃料を下げても入居者が来ないという状況が続いています。
特に日本に住みながら投資をしている人であれば、この管理代行会社の存在が非常に大きいパートナーになるので、定期的なコミュニケーションとチェックがとても重要です。
3.まとめ
最後に管理代行会社との付き合うコツを書いておきます。多くのケースで日系の管理代行会社とは言え、日本並みのサービスを求めるのは難しいです。日本と同じ感覚で依頼をして、日本と同じ感覚でクレームを言えば言うほど、彼らの心は離れていき、あなたの物件は放置され続けます。
これが日本の物件であれば、他社に切り替えれば良いだけなのですが、タイにおいて日本語が話せて管理代行をやってくれる会社はかなり限られます。そして、日本在住であれば現地もそう簡単にチェックをしに行くことが難しいです。
だからこそ、現地の日系管理代行会社との付き合いはマメに顔を出して、SNSなどを使って連絡を取っておくのが重要です。
そして、タイに行くことがあればできる限り食事に誘ったり、彼らにメリットのある情報を提供したりして、「パートナー」として付き合っていくことをお勧めします。ビジネス上の付き合い、といってもまだまだウェットな部分を持ち合わせている人が多いのがタイです。面倒だなと思っても、多くの成功している投資家は現地パートナーとの関係性を非常に重要視しています。結果的にそれが近道であり、自分たちを儲けさせてくれる人たちだという認識があるからです。 ぜひ現地の管理代行会社と良い関係を築き、タイでの不動産投資を成功に導いてください。