
- M&Aにおける「買い叩き」の実態とは?
- なぜ会社はM&Aで安く買われてしまうのか?
- 買い叩かれないために経営者が取るべき対策とは何か。
このようなお悩みをお持ちではないでしょうか。M&Aのプロが、買い叩き型M&Aの実態について解説します。
この記事を読むと、M&Aにおける買い叩きへの不安を解消でき、納得した価格でのM&A成功に役立つでしょう。
目次
1. なぜ“買い叩き”が起こるのか?中小企業M&Aの盲点
1-1. 後継者不在×焦り=買収側に主導権を握られる構造
1-2. 「価格の妥当性」を確認しないまま進む現実
2. 買い手が交渉を優位に進める“情報戦”の仕組み
2-1. 財務の読み解き方・価値の評価軸を一方的に設定される
2-2. 売り手側が「価格の理由」を聞き返せない空気感
3. “売り急ぎ”がすべてを壊す:時間的余裕のない交渉の危険性
3-1. 「早く売りたい」が交渉力をゼロにする瞬間
3-2. 焦りを利用する買い手の典型的アプローチ
4. 適正価格で売るために知っておくべき3つの視点
4-1. 価格の“根拠”を説明させることは当然の権利
4-2. 複数の第三者評価を取り交渉材料にする
4-3. 「売る前に準備する」だけで差がつく
5. まとめ
1. なぜ“買い叩き”が起こるのか?中小企業M&Aの盲点
”買い叩き”が起こる理由について、以下に沿って解説します。
・後継者不在×焦り=買収側に主導権を握られる構造
・「価格の妥当性」を確認しないまま進む現実
1-1. 後継者不在×焦り=買収側に主導権を握られる構造
買い叩きが起きやすい最大要因は、売り手の時間的・情報的な弱さが重なる点にあります。
日本では2025年時点で引退年齢超の中小企業経営者が約245万人、そのうち約127万人が後継者未定と見込まれており、出口を急ぐ企業が多い状況です。買い手は案件選別の自由度が高く、交渉を長引かせるだけで売り手の不安や焦りが高まります。
結果として、価格・条件の主導権において自然と買い手が優位に立ちやすい状況となります。後継者難が“交渉力の差”に直結することを認識する必要があります。
この背景には、情報の非対称性という構造的な問題があります。買い手はM&Aの経験や専門家チームを持つ一方、売り手は初体験であるケースが多く、用語や手順の理解に差が生じます。こうした条件が重なると、提示価格の“安さ”に気づいても反論の根拠を出しにくくなります。
1-2. 「価格の妥当性」を確認しないまま進む現実
買収提案を受けると、多くの経営者が「相場はこのくらい」といった言い回しをそのまま受け止めてしまいます。
相場観は便利ですが、実際の価格は評価手法(資産・収益・市場の三アプローチ)や前提条件次第で大きく変わります。前提の確認や手法の違いを詰めないまま進行すると、不本意な低価格で合意しやすくなります。
まず、評価の土台を売り手側でも持つことが重要でしょう。
理由として、評価手法ごとに見える景色が異なる点が挙げられます。修正簿価純資産法は客観性が高い一方、成長期待を十分に反映しにくい側面があります。DCF法は将来キャッシュを織り込めますが、前提差でブレが出ます。
市場マルチプルは比較対象となる企業次第で水準が変動します。こうした前提を売り手も把握しておくと、価格根拠の説明を求めやすくなります。
2. 買い手が交渉を優位に進める“情報戦”の仕組み
買い手が交渉を優位に進める仕組みについて、以下に沿って解説します。