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トランプ大統領就任・日銀会合後の金利・為替は?

    トランプ大統領就任・日銀会合後の金利・為替は?

(画像=SBI証券)

この記事は2025年1月27日にSBI証券で公開された「トランプ大統領就任・日銀会合後の金利・為替は?」を転載したものです。
掲載記事:トランプ大統領就任・日銀会合後の金利・為替は?

トランプ大統領就任で金利・為替は?

米トランプ新大統領は米国時間1/20(月)に就任し、演説を行いました。「アメリカの黄金時代が始まる」とし、国境に軍隊を派遣して不法移民対策を強めるほか、環境政策をバイデン政権から転換し、化石燃料の採掘を重視すること等が唱えられました。新大統領による就任演説の概要は図表1の通りです。

焦点の関税政策については、中国、メキシコ、カナダ等を中心に貿易慣行や通貨政策等を調査するとし、関税賦課の具体策発表は見送られました。しかし、日本時間1/21午前10時過ぎに「トランプ氏、メキシコ・カナダに2月25%関税検討」との一部報道が紹介され、1/22には中国に10%の追加関税を課す可能性が報じられました。なお為替については今の所目立った発言は報じられていないようです。

関税強化は米国の物価上昇圧力を高め、同国の金利上昇観測を強め、外為市場ではドル高につながる要因と考えられます。トランプ大統領就任前は、大統領令で米国への海外からの輸入に広く関税が課されることが懸念されていました。さらに報道ベースでは中国、メキシコ、カナダ等へ2月から関税政策の強化が指摘されてきました。

しかし、トランプ氏の関税強化等による圧力は、貿易相手国より有利な取引条件を導き出すための手段の側面が強いことは知られています。また、トランプ氏自身は金融緩和を望んでいるとみられることから、実際に急速な関税強化策は取りにくいとみられます。市場の関税強化に対する懸念は後退したとみられます。
足元では物価指標も安定しています。

このため、図表2からもご理解頂けるように、若干ではありますが、追加利下げ期待は強まってきたと思われます。現在の米政策金利4.25~4.50%は2025年末に4.0~4.25%または3.75~4.00%に低下すると、市場は織り込んでいるとみられます。市場コンセンサス(Bloomberg)では、米10年国債利回りは現在の4.64%(1/23)から4.16%程度への低下が見込まれています。2024年半ば以降利下げ局面にある欧州とは、金融政策の方向性が同じであるため、ユーロ・円相場は横ばいが想定されます。

リスク要因は移民政策の強化により、労働市場がタイトとなり、物価上昇圧力が高まることです。また、関税が想定より早く強化された場合も米金利上昇やドル高への圧力が強まるとみられます。

図表1 トランプ大統領就任演説と今後

図表1 トランプ大統領就任演説と今後

(画像=SBI証券)

図表2 市場およびFOMCメンバーによる政策金利見通し

図表2 市場およびFOMCメンバーによる政策金利見通し

(画像=SBI証券)

日銀金融政策決定会合を経て金利・為替は?

日本の10年国債利回りはこの約15年間、前半は利回り低下局面、後半は同上昇局面となりました。2025年1月、同利回りは一時1.25%と約13年ぶりの高水準になりました。

日本の10年国債利回りはリーマンショック(08年9月)、東日本大震災(11年3月)、日銀による異次元の金融緩和(23年4月)を経て、2016年~2020年には世界的金融緩和局面下で低水準(マイナス金利の局面も)が続きました。さらに2022年までは基本的に低い水準で上下しました。

しかし、2022年12月に日銀が国債変動許容幅を広げた後流れが変わり始めました。2023年4月に植田総裁が就任。同年7月、10月にはYCC(イールドカーブコントロール)を修正、24年3月マイナス金利解除、24年7月政策金利再引き上げを経て、現在は金利を正常化するプロセスにあるとみられます。

本年1/20時点では、1/24(金)に結果発表の日銀金融政策決定会合で、政策金利が0.25%から0.5%に引き上げられるとの見方が優勢になっていました。

図表3 日本10年国債利回り長期推移(月足)

図表3 日本10年国債利回り長期推移(月足)

(画像=SBI証券)

そうした中、1/24(金)に日銀金融政策決定会合が行われ、政策金利を0.25%引き上げて0.50%にすることが発表されました。このこと自体は市場には織り込み済みで、サプライズはありませんでした。マイナス実質金利が続く中、年初の経済界との情報交換で、賃金上昇への確信を強めたことで利上げにつながった面があるようです。

ただ、展望レポートをみると、日銀による物価見通しが引き上げられています。また、海外経済を波乱要因とする記述が一部削除されています。トランプ氏の大統領就任後も市場は安定しており、特に米国経済・市場へのリスク認識を後退させた可能性があります。総じて「若干タカ派的な内容」であったと理解できそうです。

日本の政策金利は2025年内に0.25%利上げがあと1回、2026年半ばに同利上げがあと1回というのが平均的シナリオになりそうです。日本の中立金利は1%程度との見方が有力であり、政策金利が1%まで届き、そこで物価が安定していれば、利上げは終わるかもしれません。

以上から当面は金利の緩慢な上昇が予想され、日本の10年国債利回りも緩やかな上昇が見込まれます。1/24時点での2025年末市場予想相場水準(Bloombergコンセンサス)をご紹介すると以下のようになっています。

日本10年国債利回り 1.38%(1/23時点 1.205%)
ドル・円相場 1ドル148円(同156円50銭)
ユーロ・円相場 1ユーロ157円(同162円87銭)

著者プロフィール

鈴木
SBI証券 投資情報部長 鈴木 英之
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロ(牧野真莉愛推し)の応援と旅行(乗り鉄)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん
・よくいくところ 京都
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