オルタナティブ投資のデメリットとは?|見落としやすいリスクを解説

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オルタナティブ投資のデメリットとは?|見落としやすいリスクを解説

株式や債券とは異なる値動きが期待できる資産として、オルタナティブ投資への関心が高まっています。しかし、分散効果や収益機会といった魅力が語られる一方で、伝統的な資産にはない固有のリスクもあることは見落とされがちです。

こうしたリスクのなかには、商品の仕組みや取引条件そのものに由来しており、投資した後に気づいても対応が難しいものがあります。

本記事では、オルタナティブ投資において特に見落とされやすい「流動性」「コスト」「透明性」という3つの論点を整理し、投資を検討する際に確認しておきたい点をまとめます。

オルタナティブ投資を避けるためではなく、期待される効果とリスクを比較して理解することを目的としています。

1. オルタナティブ投資の主な種類と位置づけ

オルタナティブ投資(代替投資)とは、上場株式や債券といった伝統的資産以外への投資を広く指す言葉です。代表的な投資対象や運用手法は次のとおりです。

•ヘッジファンド:空売りやデリバティブなどさまざまな運用手法を用い、市場全体の値動きに左右されにくい収益の獲得を目指す運用手法の総称

•プライベートエクイティ(PE、未公開株投資):未上場企業に投資し、企業価値を高めて売却益を目指す手法

•私募不動産ファンド:不特定多数の投資家に募集をかけるのではなく、限られた投資家から資金を集めて不動産に投資する仕組み

•インフラ投資:発電所や有料道路など社会基盤への投資

•コモディティ:金や原油、穀物などの商品への投資

これらに共通するのは、上場株式や債券などの伝統資産とは値動きの要因も取引の仕組みも異なる点です。株式や債券と異なる動きをする資産を一部組み入れることで、ポートフォリオ全体の値動きをならす分散効果が期待される、というのが基本的な位置づけです。

ただし、この「仕組みの違い」そのものが、固有のリスクにつながる場合もあります。取引所を通さないことは、裏を返せば「すぐに売れない」「価格が分かりにくい」という性質と表裏一体です。

なお、金や原油のように取引所で日々価格がつくものは、流動性や価格の分かりやすさという点では伝統的資産に近く、以下の3つの論点が特に当てはまるのは、ヘッジファンドやプライベートエクイティ、私募不動産ファンドなど、私募の形で提供される非上場のファンドです。 

特に見落とされやすい3つの論点「流動性」「コスト」「透明性」を順に取り上げます。

この記事はオルタナティブ投資を否定するためではなく、期待される効果と固有のリスクを並べて理解し、導入の判断材料とすることを目的としています。

2. 流動性リスク――資金が長期間拘束される

オルタナティブ投資と伝統的資産との大きな違いの一つが、換金のしやすさ(流動性)です。上場株式なら市場が開いていればすぐ売却できますが、オルタナティブ投資では資金が長期間動かせないことがあります。

2-1. ロックアップ期間の実態

換金の制約は、ファンドの形態によって性質が異なります。

ヘッジファンドに代表されるオープンエンド型では、投資後の一定期間は解約できない「ロックアップ期間」が設けられ、その期間が過ぎても解約は四半期ごと、数十日前までの事前通知が必要といった条件が付くのが一般的です。

一方、プライベートエクイティや多くの私募不動産ファンドはクローズドエンド型で、投資家側から解約を請求する権利がそもそもありません。一般的には10年前後の存続期間を前提とし、投資先企業の売却が進むにつれて分配を受け取る形で、段階的に資金が戻ってくる設計です。

また、PEファンドでは契約時に出資額を一括で払い込むのではなく、投資先が決まるたびに順次払込みを求められる「キャピタルコール」方式が一般的です。

投資家は、未払い分についても請求があれば応じられるよう、資金を待機させておく必要があります。加えて、初期は費用が先行するため評価額が一時的に下回りやすい「Jカーブ効果」がみられることも知られています。

こうした換金制限や資金拠出の仕組みは、運用側が短期の解約に振り回されずに戦略を実行するために設けられています。

ただし投資家から見れば、その間は市場環境が変わったり、急な資金需要が生じても自由に資金を動かせないということです。契約前に、資金がどれだけの期間拘束されるのかを具体的に確認しておく必要があります。

2-2. 途中解約・換金時におけるリスク

ロックアップ期間が終了した後や、途中解約に応じる商品であっても、換金にはいくつかの負担や制約が生じる場合があります。

一つは換金に伴う費用です。解約時に一定割合の手数料が差し引かれる仕組みが設けられていたり、非流動的な資産を売却して換金に必要な資金を確保するためのコストを解約する投資家の負担とされる設計になっていたりする場合があります。

また、換金の基準となる評価額が申込時点では確定せず、事後的に決まることもあります。 

もう一つは、解約そのものが制限されるリスクです。市場環境が不安定となり、解約の申し込みが集中した場合に備え、一定期間に解約に応じる金額を純資産の一定割合までに制限する条項(ゲート条項)が設けられていることがあります。

さらに、資産の売却自体が困難になるような局面では、解約の受付が一時的に停止されることもあります。

このようにオルタナティブ投資では「必要なときに、想定した金額で、すぐに現金化できるとは限らない」という点が、途中解約における重要なリスクです。

特に、下落局面で急な資金需要が生じた場合保有しているオルタナティブ資産を換金できず、結果として他の資産を不利な価格で売却せざるを得なくなる可能性もあります。

3. 高コスト構造が実質リターンを削る可能性

オルタナティブ投資は、伝統的な投資信託と比べて費用が高くなる傾向があります。運用実績が高く見えても、各種費用を差し引いた後に手元に残る金額は大きく変わることがあります。

3-1. 管理費・成功報酬の水準

オルタナティブ投資、とりわけヘッジファンドやプライベートエクイティの費用体系は、公募の投資信託の信託報酬とは構造が異なります。

一般的なのは、預かり資産に対して毎年発生する管理報酬と、運用で得た利益の一部を運用会社が受け取る成功報酬を組み合わせた体系です。かつては「2%と20%」が代表的な水準として知られており、預かり資産に対する管理報酬に加え、運用益に対して一定割合の成功報酬が上乗せされる形が広く用いられています。

近年は競争の進展などを背景に、これを下回る報酬水準を採用するファンドも増えています。

なお、管理報酬の算定基礎はファンドによって異なります。

ヘッジファンドでは純資産額に対して課されるのが一般的ですが、プライベートエクイティでは投資期間中、実際に払い込まれた金額ではなく出資約束額の総額に対して課される例が多く、まだ投資に回っていない部分にも費用が発生します。

成功報酬には、過去の最高評価額を上回った部分にのみ課す仕組み(ハイウォーターマーク)や、一定の収益率を超えた部分にのみ課す仕組み(ハードルレート)が設けられていることが一般的です。

これらの有無や水準によって実質的な負担は変わるため、あわせて確認しておきたい点です 。

このほか、購入時の手数料や、ファンドが投資先を評価・管理するための諸費用が生じる場合もあります。これらは損益にかかわらず投資家の負担となるため、契約前に費用の種類や水準、発生条件を具体的に確認し、総コストを踏まえて投資判断を行うことが大切です。

3-2. コストが複利効果に与える影響

コストの影響は、単年度では小さく見えても長期間になるほど大きくなります。運用リターンが複利で積み上がるのと同様に、毎年差し引かれる費用も複利的に資産形成へ影響を及ぼすためです。

例えば、同じ運用成績でも、年間の費用が1%の商品と3%の商品とでは、手元に残る金額の差は年を追うごとに開いていきます。

高い成功報酬は「大きく増えたときに多く支払う」仕組みであり、増えた局面では納得しやすい一方、費用控除後のリターンが伝統的資産を上回るとは限りません。

重要なのは、提示されるリターンがどの基準で示されているかを確認することです。

運用実績は費用控除後で示されるのが一般的ですが、商品や指標によっては控除前の数値が用いられることもあり、何が費用として控除されているかもあわせて確認しておきたい点です。

オルタナティブ投資を検討する際は、期待されるリターンの高さだけでなく、そのリターンからどれだけの費用が差し引かれるのかをあわせて見る必要があります。

4. 透明性の低さと評価額の不確かさ

上場株式であれば、日々市場で価格がつき、誰でも同じ価格を確認できます。一方でオルタナティブ投資では、この「価格の分かりやすさ」が必ずしも前提にあるわけではなく、保有資産の価値がその時点でいくらなのかを客観的に把握しにくい場合があります。

4-1. 時価算出が困難な理由

オルタナティブ投資の多くは、市場で常時売買されているわけではないため、市場価格が存在しません。そのため評価額は、運用会社などが一定の前提や評価手法に基づいて算出することになります。

例えば、未上場企業への投資では、類似する上場企業との比較や、将来生み出すと見込まれるキャッシュフローの予測を基に企業価値が評価されます。

不動産では、鑑定評価や取引事例などを参考に算出されます。いずれも一定の前提や仮定に基づく推計であるため、その前提が変われば評価額も変わります。市場で成立した価格ではなく、評価モデルや専門家の判断を経て算出される点が、伝統的資産との違いです。

その結果、評価額の更新頻度も低くなる傾向があります。上場株式のように日々価格が更新されるわけではなく、四半期ごとなど限られた頻度でしか更新されない場合、投資家が把握している資産価値と実態との間に、時間差が生じることがあります。

また、評価額の更新頻度が低いことは、値動きの見え方にも影響します。価格が毎日更新されない資産では、結果として値動きが実際より穏やかに見えやすく、統計上のリスクや他資産との連動性が小さく算出される傾向があります。

1章で触れた分散効果を測る前提となる数値自体が、評価方法に左右されている点は留意が必要です。加えて、市場が大きく崩れる局面では資産間の連動性が高まりやすく、分散効果が最も期待される場面で働きにくいことも指摘されています。 

4-2. 情報非対称性が生まれやすい仕組みとリスク

もう一つの論点が、運用会社と投資家の間で生じやすい情報量の差です。

私募ファンドでは、上場企業のような情報開示義務が同程度には求められない場合があります。運用内容や保有資産の詳細が限られた範囲でしか共有されないと、投資家は運用者から提供される情報に頼って判断せざるを得ません。

運用者が多くの情報を持ち、投資家が持たないという情報の偏り(情報非対称性)が生まれやすい構造です。

こうした情報の偏りは、いくつかのリスクにつながる可能性があります。

例えば、評価額が実態より高く算定されていたとしても外部から把握しにくいこと、運用方針の変更や損失の発生を投資家が認識するまでに時間を要すること、そして万一不適切な運用が行われた場合にも発見が難しいことです。

過去には、こうした不透明さを背景に問題が表面化した事例も報じられてきました。

だからこそ、運用会社がどのような情報を、どの頻度で開示するのか、評価額はどのように算定されるのかを、投資する前に確認しておくことが欠かせません。透明性の低さは、それ自体がリスクであると同時に、他のリスクを見えにくくする要因でもあります。

5. デメリットを踏まえた導入判断の視点

ここまで見てきた流動性、コスト、透明性は、いずれもオルタナティブ投資の固有のリスクですが、これらは投資を避ける理由ではなく、投資判断するための材料です。最後に、投資にあたって整理しておきたい点をまとめます。

第一に、その資金が長期間拘束されても問題ないかです。投資する資金は、少なくとも数年間は使う予定のない余裕資金であることが望まれます。

また、急な資金需要が生じても他の資産で対応できることが前提になります。生活資金や近い将来に使う予定のある資金を充てるのは、流動性の観点から慎重に考える必要があります。

第二に、資産全体のなかでの位置づけです。オルタナティブ投資は、資産の大部分を委ねる対象ではなく、伝統的資産を中心とするポートフォリオに、分散の一部として一定割合を組み入れる位置づけで検討されることが一般的です。

仮にその部分が想定を下回っても、資産全体が大きく揺らがない範囲にとどめる、という考え方があります。

第三に、費用と情報開示を事前に確認できているかです。以下は契約前に確認しておきたい項目です。

•拘束期間:資金が動かせない期間と、途中解約の可否・条件(解約手数料、ゲート条項の有無)

•費用:管理報酬・成功報酬・購入時手数料などの名称と水準、費用控除後で示されたリターンか(成功報酬のハイウォーターマーク・ハードルレートの有無)

•情報開示:運用の中身や評価額が、どのような方法で、どの頻度で報告されるか

•税務:分配金や償還損益がどの所得区分で課税されるか、上場株式等との損益通算や繰越控除の対象となるか

•通貨:外貨建ての場合、為替の影響をどう見込むか

これらを確認しても判断に迷う場合は、一つの説明だけで結論を出さず、複数の視点から検討することが有効です。そのうえで、自分の運用目的やリスク許容度に照らし、資産全体のバランスのなかで納得できるかどうかを見極めることが、投資の出発点になります。

6.まとめ

オルタナティブ投資には、株式や債券とは異なる値動きによる分散効果や収益機会が期待されます。一方で、本記事で見てきたとおり、その「仕組みの違い」から生じる固有のリスクも伴います。

流動性:ロックアップ期間や解約制限により、資金が長期間拘束され、必要なときに換金できないことがある。

コスト:管理報酬と成功報酬を中心に費用が高くなりがちで、長期では複利で実質リターンを削る。提示されたリターンが費用控除前か後かの確認が欠かせない。

透明性:市場価格が存在せず評価額が推計に基づくうえ、運用会社との情報量の差(情報非対称性)が生まれやすい。

投資を検討する際は、その資金が長期間動かせなくても問題ないか、資産全体のなかで無理のない割合にとどまっているか、費用と情報開示を事前に確認できているかを整理することが出発点になります。

オルタナティブ投資を避けるためではなく、期待される効果と固有のリスクの両面を並べて理解したうえで、自分の資産にとって必要な役割を担えるかを見極めることが、後悔の少ない選択につながります。

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荻野 真志

新卒で野村證券に入社し、新宿野村ビル支店にて個人富裕層を対象としたリテール営業を担当。着実に実績を重ね、複数の社内表彰を獲得する。その後、ウェルスマネジメント部門へ異動し、上場企業オーナーやそれに準ずる超富裕層を中心に、新規顧客の開拓と資産運用支援に従事。
お客様一人ひとりの長期的なビジョンに寄り添い、資産にとどまらず人生全体に貢献できる存在でありたいとの想いから、より中立かつ柔軟な立場での支援を目指し、IFAとして独立を決意。
現在はファーストパートナーズに所属し、東京・名古屋・大阪を拠点に活動。有価証券の運用提案のみならず、資産全体のポートフォリオ構築、タックスプランニング、事業承継、資産保全など、総合的なコンサルティングを提供している。
金融の専門知識と、実務に裏打ちされた提案力で、お客様に長期的な信頼をいただけるパートナーであり続けたいと考えている。

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