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二所ノ関親方インタビュー 前編 「変わろうと思わないと変われない」二所ノ関親方が語る、現役時代と親方業の哲学

「好きだからこそ、続けられた」
現役時代、圧倒的な気迫と実力で土俵を沸かせた元横綱・稀勢の里。

現在は二所ノ関親方として弟子を育てる日々を送っています。現役引退後には大学院に通い、「相撲部屋の新しい経営のあり方」を模索するなど、その歩みは今も挑戦に満ちています。

本インタビューでは、二所ノ関親方の現役時代のモチベーション維持の秘訣から、親方としての指導哲学、お金や経営への考え方まで、力士として人として、成長を続けるために大切な“学び”と“気づき”を、余すことなく語っていただきました。

現役時代のモチベーションの向上について

━━現役時代、モチベーションを維持できた秘訣は

目標がありましたからね。なんといっても「相撲が好き」でした。そして「早く強くなりたい」という気持ちが強くあったし、昨日の自分を超えていこうという向上心を持って取り組んでいました。

「継続は力なり」という言葉をずっと意識していて、常に続けることの大切さは実感していました。思いついてパッと始めることは誰でもできるけど、大事なのはそれを継続し続けることですね。

━━影響を受けたのはやはり先代の鳴戸親方(元横綱隆の里)でしたか

もちろん、鳴戸親方の影響もありましたが、いろいろな人と出会いがあって相撲以外のところから学ぶこともありました。体の研究や武道、呼吸法の指導を受けることもありました。

骨格や体格では外国人力士に勝てない面もあったので、日本人的な強さを最大限活かせるようにしました。ウエイトトレーニングが主体になってきた時代ではあったけど、自分はそうではなく、強くなろうと。

━━番付が上がると部屋全体のことも考えるようになりますか

はい。部屋にいる他の力士を引っ張り上げようということは考えました。それが自分の強さにつながるとも思っていました。周囲が強くなると自分も努力しなければという気になりますから。

当時は、高安(現幕内)を強くすることや、所属する他の力士を引き上げることも考えて行動していました。自分が若い頃は若の里関(現西岩親方)に引き上げてもらった経験があったので、それを実践していました。

━━現役時代で得た大きな教訓、人生訓などはありますか

変わろうと思わないと変われないし、なろうと思わないとなれない」ということでしょうか。

なんとなく生きるのではなく、明確にこうなる、行動する、ということを意識することです。今日何やったんだっけ?となるのはもったいない。

「横綱になりたい」と思う力士は多いですが、その目標を達成するためには、必要な要素を1つ1つ明確にし、不足していることを改善していくしかありません。その努力を続けなければ、横綱という存在は手が届かない憧れのままで終わってしまいます。

━━分かっていても、実際に行動に移すのは難しいですか

9割5分くらいの人はそうじゃないでしょうか。だから成功する人はごくわずかだと思います。

その足りない要素に気付くためには、今を一生懸命生きるしかないと思います。まだまだ親方としては新米ですし、1日たりとも無駄にしないよう心がけています。

━━失敗や挫折からの立ち直り方は

僕はなんでも挑戦するタイプでした。そのたびに「これはダメだった」と理解し、いきなり成功することなんてほとんどないと学びました。良かったもの1つ1つを磨き上げることが大切だと思っています。実際にやらないと、それが良いのか悪いのかも分からないですから。

ある意味、変にこだわり過ぎなかったことが良かったと思っています。

━━ストレス、プレッシャーは

寝たら次の日が来ますから。逃げられないし、向き合うしかない。それでも挑戦する上では居心地が良かったし、強くなるためにはストレスやプレッシャーも必要不可欠です。

それがないと勝負はできないです。だから刺激的な毎日ですよ。

━━本を読んで感銘をうけたことは

本は結構読みましたよ。相撲と関係ない本がほとんどでしたが。

神道に関する本を読んだ時に、無の境地だとか「空(くう)」という考え方について書いてあったんです。勝負にいく時に重い荷物を抱えたままでは勝負にならない。だから「無」になる。顔がツヤツヤでギラギラしていて、やる気満々では、逆に思いが強すぎて成功しないと。勝っても負けても「空」でいることで、負けても切り替えられる。よく勝った時に「積み重ね」と言いますが、精神面ではそれさえも重みだと気づきました。

あくまでも精神面の話ですよ。過去の成功事例をずっと持ち続け、「あの時はこうだった」「この時はこうだった」と考え続けることがかえって重荷になることがある。負けてもすぐに切り替え、勝っても切り替えということが勉強になりました。調子が悪い時に「あの頃に戻りたい」と考えることがストレスの原因になるのだと。

体の鍛練は積み重ねがないとできませんが、精神面ではあくまでも重みや強い気持ちを持ちすぎないということですよね。

━━入門から注目されて番付も上げていった。その際のファンやメディアとの付き合い方は

応援してくれる方が多かったのでうれしかったし、ありがたく感じていました。付き合い方をどうこうしようという意識は一切なかったです。

後編は2025年4月21日(月)に公開予定です。

FPメディア編集部

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