資産運用

注目の「オルタナティブ投資」とは?特徴とメリット・デメリットについて解説

資産運用の一種として「オルタナティブ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

投資の世界において、「オルタナティブ」資産とは、株式や債券など伝統的な資産に対し、「代替的(オルタナティブ)」な資産として金や不動産、ワインなどの投資資産の総称です。それら、オルタナティブへの投資を「オルタナティブ投資」と呼びます。

オルタナティブにはどのような特徴があるのでしょうか。

オルタナティブ投資には何が含まれるのか、所得税・法人税などの税制上の注意点も含めて解説します。

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1.オルタナティブの資産運用とは

オルタナティブ投資市場は、年々成長を続けています。英調査会社のプレキンによると(2024年9月)、世界のオルタナティブ投資業界の運用資産残高(AUM)は、2023年末の約16.8兆米ドルから、2029年までに約29.2兆米ドルに達すると予測しています。その市場規模は非常に大きく、注目されています。

1-1.「オルタナティブ」と「伝統的な資産」の違い

何がオルタナティブに含まれるのかを一義的に定義するのは難しいですが、分散投資効果が期待できる投資先としてオルタナティブは近年高い注目を集めています。

株式や債券投資など伝統的な投資資産との違いはどのようなことがあるのでしょうか。簡単ではありますが、代表的な違いを見ていきましょう。

1つ目に、値動きの違いです。一般的に、オルタナティブは株式や債券などの伝統的資産とは異なる値動きをするのが特徴です。また、価格の変動要因はそれぞれ異なるため、リスクとリターンの特徴が異なるといえます。

2つ目に、目的の違いです。株式や債券などの伝統的資産への投資は、その資産の値上がり益(キャピタルゲイン)や利子・配当収入(インカムゲイン)を目的とする一方で、オルタナティブ資産はそれぞれで収益の獲得方法は異なります。

3つ目に、流動性の違いです。オルタナティブ資産には公開された市場がないことが多く、参加できる投資家も限られているため、現金化をするのに時間を要する流動性の低い資産といえます。

これらの違いを理解し資産ポートフォリオに取り入れることが大切です。

1-2.株式相場が全体的に下落したときの代替投資先となる

オルタナティブ資産の特徴は、“伝統的資産の代替投資先となり得る”という点です。それでは、値動きの違いに注目してみましょう。

株や債券、投資信託などの伝統的な資産は、商品ごとのあらゆる要因によって、日々価格の変動があります。また、景気状況や突発的な世情によって、値動きがさらに大きくなったり、どちらか一方向に動いたりと、価格の変動幅が想定よりも大きくなる場合もあります。

日頃から堅実な資産運用に取り組んでいたとしても、急な下落局面で保有している銘柄が連れ立って下落し、一気に資産を無くしてしまったという話はよく耳にします。

価格変動に対して相関関係が低い投資商品を取り入れることで、リスクを分散することができます。

1-3.オルタナティブ投資を組み入れた理想のポートフォリオとは?

市場の拡大や投資手法の多様化とともに、オルタナティブと呼ばれる投資対象は年々増えています。

株式や債券など伝統的資産を保有しつつ、オルタナティブ資産も合わせて持つなど、全体資産から見たポートフォリオを検討していきましょう。

伝統的資産とオルタナティブ資産への投資は、どれくらいの配分がいいのか。もちろん時勢や投資するタイミングにもよりますし、投資家の資産状況や投資に対する考え方にもよりますので、ご自身の資産状況に合ったポートフォリオをご検討ください。

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2.オルタナティブ投資の種類

オルタナティブ資産とはどのような投資商品を指すのでしょうか。商品の特徴とともに簡単に気を付けたい点を挙げます。

2-1.ヘッジファンド

ヘッジファンドとは、さまざまな投資手法や戦略を駆使して市場が上がっても下がっても利益を確保し、高い収益を維持することを目的としたファンドのことです。裁量型運用が採用され、ファンド運営を指揮するファンドマネージャーの裁量が大きくなる特徴があります。

普通の投資信託は公募投信といって一般的に広く公募されますが、ヘッジファンドは私募投信といって限られた対象者から出資を募り運用するファンドがほとんどです。また、ヘッジファンドの投資対象は、株式や債券以外にも、デリバティブ(金融派生商品)、不動産など多岐にわたります。

プロに任せてリスクヘッジしながらも積極的に運用出来ることが利点ですが、運用コストが高く設定されている傾向にあること、流動性が低いためすぐに現金化出来なかったり、解約に制約がかかっている場合があることに注意が必要です。

2-2.インフラストラクチャー

人々が日々の生活をするのに欠かせない社会を支える基盤であるインフラストラクチャー(インフラ)投資もオルタナティブの資産運用のひとつです。道路、鉄道、空港などの交通インフラ、インターネットや電話など通信インフラ、発電施設などのエネルギーインフラなど様々です。

暗号資産やNFTもそうですが、次代の趨勢を受けてあらたに生まれてくる投資も、広義的なオルタナティブ投資と定義することができます。

2-3.コモディティ

コモディティ(商品)とは、金やプラチナなどの貴金属、小麦や大豆などの穀物、石油(原油)などのエネルギーなどが代表的です。それぞれの市場で供給と需要によって価格が決定されます。

コモディティは物理的な商品や基本的な金融資産そのものを指し、「先物取引」の対象となることが多いです。先物取引とは、将来のあらかじめ定められた期日に、特定の商品を現時点で決められた価格で売買することを約束する取引のことです。

コモディティの特徴は、地政学・天災などの状況に大きく左右される点です。

また生産国による内乱などで輸出体制が整わず、アメリカや中国など世界中の消費国にスムーズに輸出されないことも、価格下落の原因になります。

2-4.デリバティブ

デリバティブとは先物取引、オプション取引、スワップ取引などの総称で「金融派生商品」とも言われます。株式、債券、金利、為替などの原資産の金融商品から派生した取引で、デリバティブ:「〇〇から△△を導き出す」という意味を持つように、少ない資金で大きな取引ができることが特徴です。

株式
債券
金利
為替
などの原資産
デリバティブ取引
先物取引         →株価指数先物取引
         FX取引
         商品先物取引
オプション取引 →株価オプション
         通貨オプション
スワップ取引  →金利スワップ
         通貨スワップ など

上記表に記載されている取引は、それぞれどのようなものなのでしょうか。

・株価指数先物取引

日経平均株価などの指数を、将来のある決められた期日に、現時点で決められた価格で売買することを約束する取引です。

・FX取引

FXとは「Foreign Exchange」を略した言葉で、日本語だと「外国為替」「外国為替証拠金取引」という意味で使われています。FXは日本円や米ドル、ユーロ、ポンドなどの2つの通貨(通貨ペア)を選択し、一方を買って、一方を売る取引です。

通貨ペアのレートは刻一刻と変わるため、売買の差額によって利益を得ることを主な目的として、取引が行われています。1米ドル154円といった為替が毎日のように報じられていますが、これが今後円高になるのか、円安になるのかを予測し、注文をします。

・商品先物取引

指数先物取引と同様、金や小麦、原油といったコモディティに対しての先物取引です。

・オプション取引

将来のあらかじめ定められた期日(満期日)に、現時点で取り決めた価格で売買する「権利」を買い付ける、もしくは売り渡す投資方法です。

・スワップ取引

二者間で将来のキャッシュ・フローを一定期間にわたって交換する取引です。

2-5.不動産投資

不動産は賃料など安定した収益のほかにも、もし保有する不動産が地価上昇などの要因で不動産価格が上昇した場合には売却益を得ることができます。もちろん逆のケースもあります。

日本国民の公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)では、投資対象とするオルタナティブとしてインフラストラクチャ―、プライベート・エクイティに加え、不動産と定義しています。

3.オルタナティブ投資のメリットとデメリット

オルタナティブ投資で資産運用を進めることの、メリットとデメリットを確認します。

3-1.オルタナティブ投資のメリット

まずはメリットについてです。

3-1-1.分散投資の実現

自身の資産ポートフォリオにオルタナティブを組み込むことで、株式や債券だけに留まらない「分散投資」をすることができます。

繰り返しになりますが、「オルタナティブ」とは代替資産の総称でありオルタナティブ資産のいずれかに投資することになります。

投資信託の中には、NISA利用でも購入可能なリートやコモディティを組み入れたファンドがある他、2024年2月からは15%を上限に未上場株の組み入れが可能になるなど、比較的気軽にオルタナティブ資産に投資が出来る商品もあるため、まずは少額から自身のポートフォリオに取り入れることを検討しても良いでしょう。

3-1-2.専門家の慧眼(けいがん)に期待できる

オルタナティブ投資は分散投資に効果的である一方、値動きの幅が大きいものや予測が難しいものも多い為、プロが運用しているヘッジファンドや投資信託を選択するのも良いでしょう。

個人投資家とプロフェッショナルである機関投資家の最大の違いは、数ある投資商品のなかで個人投資家が知り得ない銘柄や投資方法を発掘し、預託された資産を投資できる点です。

証券会社が推奨している投資信託や個別銘柄を選んだとしても、相場環境の変化によってまとめて暴落することは起こり得ます。そのときに代替商品が、資産運用におけるリスク防衛手段として活きることもあるでしょう。

3-2.オルタナティブ投資のデメリット

一方、オルタナティブ投資で資産運用を行うことのデメリットに関しても確認します。

3-2-1.オルタナティブ投資の情報量不足

証券会社や金融機関では、各社のホームページや定期的なレポートなどが掲載されており投資を判断するうえでの多くの情報提供がされています。

一方で、オルタナティブ投資における世の中の情報は十分な量とは言えないでしょう。

ヘッジファンドやコモディティ(商品)などは近年注目する投資家が増えていることもあり、専門の仲介事業者も本格的な情報提供を行っています。

興味のある場合は、積極的に情報をリサーチするよう心がけましょう。ヘッジファンドの運用成績や現在の投資先構成などは、各社の目論見書などから得られる情報であることが多いです。

また詐欺の危険性も否定できません。新興市場のオルタナティブ投資においては、「早く買わなければ損をする(この金額では二度と買えない)」などと早期購入を急かすものが散見されます。

所定の登録を表明していない業者の場合は、一度立ち止まって、然るべき手続き(金融庁への届出)をしているのか金融庁ホームページで確認しましょう。

3-2-2.手数料

オルタナティブ投資は手数料が高く設定されているものが多い傾向にあります。それだけオルタナティブに関連する投資商品の情報が希少で、取得するのに専門性を要することがわかります。

投資実績や今後の期待値から、十分にその手数料を支払ってもリターンが期待できる場合は投資先として検討しましょう。

3-2-3.取引成立まで時間がかかる

一般的にオルタナティブ投資は、株式や債券に比べ取引が成立するまで時間がかかります。評価額や価格推移のチャートを見て「今だ!」と思い切って資金を投下しても、実際のポートフォリオに組み込む頃には想定の取得価格とは異なっているというケースも珍しくはありません。

オルタナティブに投資する場合は、その投資指示が完了するまでにどれくらいの時間がかかるのかを調査し、それを踏まえて投資実行をするようにしましょう。

またオルタナティブ投資のなかには、月次や四半期ごとの解約しかできないものもあります。解約の上限値(ゲート)が設定されていることもあり、解約が集中した際には換金自体が難しくなることがあります。

4.オルタナティブ投資の税金面について

続いて資産運用では避けては通れない、オルタナティブ資産の税制上の扱いを見ていきましょう。オルタナティブ資産の所得税は、雑所得が適用されます。

4-1.オルタナティブは雑所得

オルタナティブ投資の総収入金額 ー 必要経費 = 雑所得

実務上、オルタナティブ取引をする場合は、証券会社やサービスの仲介会社が源泉徴収を行い、投資家は自身で納税作業を必要としない場合が多いです。

雑所得のため、ほかの所得と損益通算はできません。源泉徴収をしない場合、副業など他の雑所得収入と合わせて「雑所得内の損益通算」をすることができます。

ただし雑所得なのは個人の場合で、資産管理会社を設置するなどの法人の場合は、法人税が適用となります。この場合はオルタナティブの資産運用だけではなく、ほかの配当所得や譲渡所得も同様に法人での取引になるため、税理士などに確認しながら進めるようにしましょう。

4-2.オルタナティブ資産と相続税

オルタナティブ資産の相続が発生した場合、相続税について考えなければなりません。

税務当局(国税庁や税務署)は確定申告によってオルタナティブ資産の所有状況を把握していますが、それだけでなく貴金属の売買業者への調査により、購入実態を把握することもあります。

取引記録の法定保存期間は7年間です。取引業者においては、自主的にそれ以上の期間保存をしています。当然ながら税務当局が嫌疑を持って専門業者に調査を行った場合は、売買の事実を報告する義務を有しています。

貴金属の場合、2012年1月から税務当局は、「金地金等の譲渡の対価の支払調書」を導入しています。この制度は金地金等の売買を業として行うものが、国内において200万円超の対価を支払う場合に、税務署に対して支払調書を提出することが義務付けられています。

ここには所有者のマイナンバーも記載されるため、貴金属の所有実態が把握されます。これは貴金属のほか、オルタナティブの仲介会社なども同様です。

相続時にも不足なく申告を行い、納税漏れのないよう気をつけましょう。

5.オルタナティブの資産運用を相談するならファーストパートナーズへ

IFAに相談するなら株式会社ファーストパートナーズをおすすめします。

(ただし上記すべての商品を取り扱っておりませんのでご留意ください。また、FX取引等の店頭デリバティブ取引は、法令により金融商品仲介業者は取り扱うことができませんので、お取引のある証券会社等へ直接お問い合わせください)

〈ファーストパートナーズの強み〉

①証券会社や銀行など金融機関出身者が多く在籍しており、豊富な知識と経験を活かしてお客様に的確なアドバイスをご提供します

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6.まとめ

今回の記事をまとめます。

まずオルタナティブとは「代替の資産」の総称です。ヘッジファンドやコモディティなどが代表的ですが、オルタナティブの定義と構成を定めるための機関はないため、投資家や証券会社によってオルタナティブの定義は異なる場合もあります。

伝統的な資産と違う値動きをするものが多く、分散投資を行うのに向いています。

例えば、戦争のリスクや政権交代などで変動要因の多かった2024年では、有事の金として、金の価格が大きく上がりました。それに伴いプラチナや銀などの金属にも注目する人が増えています。

オルタナティブを売買するときは、税金面にも留意していきましょう。基本は雑所得ですが、資産管理会社で取引をする場合は、法人税を適用します。相続税にも注意が必要です。

株式のボラティリティが高まるなか、オルタナティブは資産ポートフォリオの一部として有効な資産と考えられます。ぜひ上手に活用していきましょう。

FPメディア編集部

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