資産運用

資産管理会社を合同会社で設立するメリットとは?節税・相続に強い法人活用法

  • なぜ資産管理会社を合同会社で設立するのが注目されているのか分からない
  • 資産管理会社を合同会社で設立するメリット、デメリットが分からない
  • 資産管理会社を合同会社以外で設立する場合との違いについて知りたい

このようなお悩みで困ることはないでしょうか。

資産管理のプロが、資産管理会社を合同会社で設立することについて解説します。

この記事を読むと、資産管理会社の設立に関する不安を解消でき、最適な資産管理に役立ちます。

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1. なぜ資産管理会社を合同会社で設立するのが注目されているのか?

資産管理会社の設立において、合同会社が選ばれる大きな理由が2つあります。

まず1つ目は、合同会社は設立費用や維持コストが株式会社に比べ低く、個人資産の法人化に伴う負担を軽減できる点です。2つ目は、出資者と経営者が同じなので、意思決定のスピードが速く、業務の柔軟性が確保される点です。

たとえば、家族間での資産分散などプライバシー保護が求められる際には、公開性の高い株式会社に比べ合同会社の方が適している場合があるなど、個人資産管理の手段として注目されているのです。

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2. 資産管理会社を合同会社で設立する5つのメリット

資産管理会社を合同会社で設立する際には、以下5つのメリットがあります。

  • 設立費用・維持コストが株式会社よりも安い
  • 出資と経営の一致によるスムーズな意思決定
  • 非公開性が高く、プライバシーが守られる
  • 相続・贈与対策としての持株分散がしやすい
  • 退職金や経費計上などで税金対策ができる

以下でそれぞれについて解説します。

2-1. 設立費用・維持コストが株式会社よりも安い

合同会社は、株式会社に比べ設立費用や維持コストを抑えることができます。

設立費用について、初期の登録免許税や定款認証にかかる費用は株式会社よりも低く設定されているため、その費用を抑えることが可能です。(※その他費用の詳細については、こちらでは割愛いたします。)
また維持費用について、合同会社にはプライバシー保護の観点から決算公告義務がないため、毎年の官報掲載費もかかりません。

そのため、長期的に見ても維持・管理費用が抑えられる点が魅力とされています。

2-2. 出資と経営の一致によるスムーズな意思決定

合同会社は出資者と経営者が同一であるため、意思決定のプロセスが極めて迅速かつ柔軟に行うことができます

通常、株式会社では株主総会での議決が必要となり、意思決定に時間がかかることが多々あります。しかし、合同会社では全社員が直接経営に参加できるため、重要事項の決定が迅速に行われる仕組みです。

たとえば、急な市場環境の変化に対応するための運営方針の変更も、出資者全員が話し合いの上で決定することができるため、資産管理の現場においてスムーズなオペレーションを実現すると言えるでしょう。

2-3. 非公開性が高く、プライバシーが守られる

前述の通り、合同会社はプライバシー保護の観点から決算公告義務が課せられていません。そのため、株式会社と比べて財務情報が公になる頻度が少なくなっています。

個人資産を管理する際、詳細な収益や支出の情報が外部に漏れることは避けたいポイントになるでしょう。

つまり、個人情報が公になるリスクを最小限に抑えつつ、内部で効率的な資産運用が可能となります。このような非公開性が高いという特徴は、特に相続対策などのセンシティブな問題を抱える資産管理会社にとってメリットとされているのです。

2-4. 相続・贈与対策としての持株分散がしやすい

合同会社を利用することで、家族や親族への資産分散が比較的容易に行うことができ、相続や贈与対策として効果的です。

出資者全員が経営に参加する合同会社の場合は、自身の持分を柔軟に調整しやすく、それぞれの資産負担を分散させることができます。

たとえば、役員報酬や配当という形で財産を分散させることにより、個人の累進課税率を下げて、全体の税負担を軽減できる可能性があります。また、持株分散により、相続時の相続税評価額を下げる効果も期待できます。

合同会社の柔軟な持株分散は、相続対策を踏まえても大きなメリットと言えるでしょう。

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3. 資産管理会社を合同会社で設立する3つのデメリット

法人形態を選ぶ際には、合同会社ならではのデメリットにも目を向けておく必要があります。主に次の3点が挙げられます。

  • 社会的な信用度は株式会社に比べてやや劣る  
  • 出資者が複数いる場合、利益配分ルールの調整が必要  
  • 投資先・事業内容によっては適さないケースもある  

以下でそれぞれについて解説します。

3-1. 社会的な信用度は株式会社に比べてやや劣る

合同会社は、設立費用や手続きの簡素さが評価される一方で、株式会社と比較すると社会的な信用度がやや低い傾向があります。
金融機関からの融資や大手企業との取引において、株式会社のほうが信頼性を担保されやすい場合もあります。

たとえば、取引先や金融機関からの審査の際に、合同会社の形態が選考に影響を及ぼすことがあります。

最も重要なのは、事業の規模や投資先などの実態ではありますが、時には重要な判断要素となるため、慎重に検討する必要があります。

3-2. 出資者が複数いる場合、利益配分ルールの調整が必要

合同会社は、社員全員が平等に議決権を有する原則が採られているため、出資者が複数いる場合は利益分配ルールの策定や調整が必要となります。

各出資者の比率や意見の一致を図るためのルール作りが不十分だと、内部で意見が対立し経営の円滑な運営を妨げる恐れがあります。

たとえば、家族間と外部出資者との間で、どのように利益を分配するかという点で調整が求められるケースがあります。このようなルール策定には、時間と労力がかかります。そのため、合同会社を選択する際の大きな課題になるかもしれません。

利益配分に関する内部の調整がスムーズに行われなければ、結果として、その後の運営上のリスクが高まる可能性があります。

3-3. 投資先・事業内容によっては適さないケースもある

合同会社は個人資産の管理や相続対策の目的で設立される場合が多いですが、事業の規模や内容によっては必ずしも適した形態ではないこともあります。

大規模な資金調達が必要な事業や社会的信用を重視するビジネスモデルの場合、株式会社のほうが適している可能性があります。

たとえば、取引先からの信用や株式市場での評価を重視するのであれば、公開性やガバナンスが整備されている株式会社を選ぶ方が適しているでしょう。

つまり、事業内容や将来的な成長戦略に応じて、最適な法人形態を検討する必要があり、合同会社が全てのケースにおいて最適な選択肢とは言えない点に注意が必要です。

4. 資産管理会社を合同会社以外で設立する場合との違い

合同会社以外の法人形態を検討する際には、それぞれの特徴を押さえたうえで比較することが重要です。主に次の2点を押さえておきましょう。

  • 株式会社との違い:費用・信用・ガバナンスの比較
  • 合名会社・合資会社との違い:責任範囲と実務負担

以下でそれぞれについて解説します。

4-1. 株式会社との違い:費用・信用・ガバナンスの比較

合同会社株式会社
費用登録免許税:6万円~他省略登録免許税:15万円~他省略
信用低い高い
ガバナンス出資者と経営者が同じのため、比較的シンプルな組織構造株主総会、取締役会などで株主を保護しており、比較的複雑な組織構造

株式会社は、合同会社に比べ設立費用が高額である反面、社会的信用やガバナンス体制が整っている点が大きな特徴です。

具体的には、定款の認証や株主総会の開催が求められるため、運営に手間がかかるケースがあります。その一方で、金融機関等からの評価が高くなりやすいと考えられます。

たとえば、取引先からの信頼獲得や金融機関からの資金調達の際に、株式会社の形態が有利に働くことがあります。一方、合同会社は初期コストや維持費用が低い代わりに、内部管理の透明性や公的信用力の面でやや劣る傾向があります。

こうした特徴を踏まえ、事業規模や資金調達ニーズに応じた法人形態の選択が重要であるといえるでしょう。

4-2. 合名会社・合資会社との違い:責任範囲と実務負担

合名会社や合資会社は、出資者が無限責任を負う場合があり、個人資産の流用リスクや出資額以上に責任範囲が広がるため、資産管理会社としてはあまり適していないとされています。

たとえば、無限責任が適用される場合、万一の際には個人資産にまで影響が及ぶ恐れがあります。そのため、リスク管理の観点から株式会社や合同会社が選ばれる傾向にあります。

5. まとめ

資産管理会社を合同会社で設立することは、初期費用および維持コストの軽減、出資者と経営者が一致していることで迅速な意思決定が可能となる点、さらにプライバシー保護などいくつかの利点が挙げられます。

これらの理由から、個人資産を効率的に管理・運用する目的で合同会社の活用が注目されています。

一方で、社会的信用力や出資者間の利益分配ルール、事業の成長戦略との整合性といった注意点もあるため、法人形態の選択には十分な検討が必要です。

資産管理会社設立の目的やそれぞれの置かれている状況に合わせて、法人形態を選択しましょう。

千田 健太

早稲田大学卒業後、大和証券入社。横浜支店、渋谷支店、本店営業部に計12年在籍後、FPとして独立。
大和証券では個人・法人の資産コンサルタントとして多数のお客様を担当し、社長賞・MVPを多数受賞。
現在は「より多くのお客様によりで頼られる担当者」になるべく、ファーストパートナーズにて有価証券運用だけでなく、不動産、M&A、税制対応のアドバイスを行っております。
お客様と目標を共有し、お客様の人生に寄り添えるプライベートバンカーを志しております。

保有資格:証券外務員一種、内部管理責任者、生命保険協会認定保険募集人、FP二級技能検定資格