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組織再編の基本構造と実務ポイント──5つの目的と手法の整理

組織再編の基本構造と実務ポイント──5つの目的と手法の整理

・組織再編を検討しているが、どの手法を選ぶべきか判断できない
・合併や会社分割、株式交換の違いが分からず、実務のイメージが湧かない
・経営戦略として組織再編を進めたいが、リスクや注意点を整理できていない

このような悩みを抱えている企業も少なくありません。

組織再編は、事業ポートフォリオの見直しや成長戦略の実現に有効な手段である一方、手法の選択を誤ると、想定外のコストやガバナンス上の課題を招くおそれもあります。

そのため、各再編手法の構造や特徴を正しく理解したうえで、自社の目的に合った選択を行うことが重要です。

本記事では、企業再編・コーポレートファイナンスの実務に精通したプロが、組織再編の基本構造と実務ポイントについて解説します。

この記事を読むことで、組織再編に対する漠然とした不安を解消し、自社の戦略に合った再編手法を選択するための判断材料として活用いただけるでしょう。

1. 組織再編とは何か?まず押さえるべき基本

組織再編とは、会社の枠組みやグループ構造を見直し、事業や資本関係を再設計するための手法です。経営戦略や事業環境の変化に対応するために、会社の「中身」や「支配関係」を法的に組み替える打ち手と位置づけることができます。

会社法では、「合併」「会社分割」「株式交換」「株式移転」などが制度として整理されており、一定の手続により会社の権利義務や株式関係を移動させることが可能になります。


特に合併・会社分割は、権利義務の承継(包括承継)や事業の切り出しといった“会社の中身の移動”に直結し、株式交換・株式移転は“完全親子関係の構築”に直結する点が特徴といえます。

例えば、事業部単位での整理が必要なケースでは会社分割が選択肢になり、グループの支配関係を明確にしたいケースでは株式交換・株式移転が有力になります。


一方で、どの手法でも「誰の何がどう動くか」を十分に説明し、株主・債権者・従業員への影響を先に見立てないと、手続遅延や関係者からの信頼低下につながりかねません。


まずは“目的→手法→手続→影響範囲”の順で整理するのが、堅実な進め方でしょう。

2. 企業が組織再編を行う“5つの目的”

組織再編の本質は、「資本コストや成長戦略を踏まえ、事業と組織の最適な形を再構築すること」にあります。
近年では、単なる組織の組み換えだけでなく、事業ポートフォリオやグループ・ガバナンスの在り方と一体で議論されるケースが増えています。


特に、事業ポートフォリオの議論を深めることや、グループ・ガバナンスを整えることが、再編の実行力を左右すると整理されています。

例えば、成長投資を進めたいのに不採算事業が足を引っ張るケースでは、事業の切り出し(カーブアウト)を含む再編が検討対象になります。

また、子会社が多く意思決定が遅いケースでは、持株会社化や完全子会社化で統制線を引き直す発想が出てきます。
目的を5つに分解して整理すると、社内合意形成や手法選定が進めやすくなるでしょう。

5つの目的について、以下に沿って解説します。
・2-1. 事業ポートフォリオの最適化
・2-2. グループ経営の効率化
・2-3. 不採算事業の切り離し
・2-4. 成長領域への集中投資
・2-5. ガバナンス強化・資本構造の再設計

2-1. 事業ポートフォリオの最適化

事業ポートフォリオの最適化とは、「伸ばす事業」と「手放す事業」を明確にするために組織再編を活用する方法です。
事業を抱え続けること自体が目的化すると、資本コストや戦略との整合が崩れやすくなるため、定期的な見直しが不可欠といえます。

例えば、投下資本に対して収益性が見合わない事業が残っているケースでは、会社分割で切り出して再配置する選択が考えられます。
このとき、残す側・切り出す側の収益責任やKPIを再定義しないと、再編しても“見え方”だけが変わって再編が無価値化する可能性があります。


ポートフォリオ最適化は、再編スキームより先に「判断基準」を固めるのが要点でしょう。

2-2. グループ経営の効率化

グループ経営の効率化は、「統制線と意思決定を整理して、動ける形にする」ことが目的です。
子会社・関連会社が増えるほど、権限の分散や情報の断絶が起こりやすくなり、グループ全体のとしての意思決定が遅くなる傾向があります。


そのため、事業運営だけでなくグループ・ガバナンスの設計そのものが重要な経営テーマになります。実務指針としては、ポートフォリオ管理や内部統制、意思決定権限の配分などが、グループ運営に必要不可欠な要素とされています。

例えば、事業会社が乱立して同種機能が重複しているケースでは、吸収合併で統合する判断を取ることが考えられます。

逆に、統合よりも“上に持株会社を置いて整理する”方が早い場合は、株式移転でホールディングス化する発想も現実的になります。
効率化は「統合するか、束ねるか」を先に決めると、手法選びがシンプルになるでしょう。

2-3. 不採算事業の切り離し

不採算事業の切り離しは、「問題を抱える事業を構造的に分離し、改善か撤退を実行しやすくする」ことが目的です。
赤字事業が他の事業の利益と混在している状態では、収益状況が見えにくくなり意思決定が遅れがちです。

また、資源配分についても合理的な説明が難しくなり、経営判断のスピードや透明性が損なわれやすくなります。
事業の切り出しに焦点を当てた実務指針では、切り出し促進のための考え方や実務上の論点が整理されています。

例えば、事業部門を新会社に移して再建を図るケースが考えられ、その際は会社分割で権利義務を移す設計が検討対象になります。
このとき、取引先契約・許認可・人員配置をどう扱うかを事前に検討しておかないとと、切り離した後に運営が止まるリスクがあります。


切り離しは“スキーム選定”と同じくらい、“移す対象の棚卸し”が重要です。

2-4. 成長領域への集中投資

成長領域への集中投資は、資源配分を変えるために、組織と資本の器を作り替えることを目的とした組織再編です。

新規事業や成長分野への投資は、人材・資金・時間といった投資余力がなければ進みません。既存事業の運営に追われる構造のままでは、成長領域の立ち上げが埋もれてしまいやすく、結果として戦略が実行に移らない状況が生じがちです。

ポートフォリオ変革を促す枠組みでは、経営戦略や資本コストとの関係で、事業の入れ替えを検討する視点が重視されています。

例えば、成長事業を別会社にまとめ、意思決定を速くするケースが考えられ、その手段として会社分割やグループ再編が選択肢になります。
その際、投資判断の基準や責任主体(誰がYES/NOを決めるか)を決めておかないと、器だけ変えても投資が進まない状況になります。


集中投資は、再編を“手段”として位置付けるほど、社内の納得感が高まりやすいでしょう。

2-5. ガバナンス強化・資本構造の再設計

ガバナンス強化・資本構造の再設計は、支配権と責任の所在を再確認し、意思決定と監督が機能する状態をつくることを目的としています。


グループ経営では親子会社間や少数株主との関係において、利益相反や統制不全が起き得るため、制度・体制の設計が企業価値に直結しやすい特徴があります。


ガバナンス関連の指針では、取締役会の監督やグループ運営の論点が整理され、実務上の勘所が提示されています。

例えば、上場子会社を含むグループで利益相反が意識されるケースでは、組織構造や支配関係の設計が論点になり得ます。
この局面では、完全子会社化(株式交換)や持株会社化(株式移転)など、資本関係を明確にする手段が検討対象になります。


ガバナンス目的の再編では、ステークホルダー説明(なぜ今この構造なのか)を先に用意するのが実務上の近道でしょう。

3. 組織再編で使われる手法とその特徴

組織再編の手法は大きく二つに分けて、「事業や権利義務を動かす手法」と「株式・支配関係を動かす手法」があります。


合併・会社分割は権利義務の承継設計に直結し、株式交換・株式移転は完全親子関係の創設に直結し、
さらに株式交付は、株式を対価にして子会社化できる制度として整理され、株式交換との違いが実務で論点になります。

例えば、同一グループ内の整理なら合併や株式交換が選ばれやすく、買収対価として現金を使いにくい局面では株式交付が検討される可能性があります。


ただし、どの手法でも契約書(計画書)・決議・公告など、会社法の型があるため、スキームありきで進めると手続きが詰まります。
まずは各手法の“効力(何がどう変わるか)”を押さえるのが重要でしょう。

手法について、以下に沿って解説します。
・3-1. 合併(吸収合併・新設合併)
・3-2. 会社分割(吸収分割・新設分割)
・3-3. 株式交換
・3-4. 株式移転
・3-5. 株式交付

3-1. 合併(吸収合併・新設合併)

合併は、複数の会社を法的に一つにまとめる手法です。
吸収合併では消滅会社の権利義務を存続会社が承継し、新設合併では新会社が権利義務を承継する、と定義されます。
そのため、契約・資産・負債・従業員対応などを“丸ごと”整理したい場面で選ばれやすいといえます。

例えば、同一グループで重複機能が多いケースでは、吸収合併で管理部門を統合し、意思決定の線を短くする設計が考えられます。
一方で、統合後の文化摩擦や統合コストが論点になりやすく、PMIの設計を後回しにすると想定の効果が出にくくなります。
合併は「法務手続き」と「統合運営」を同時に走らせる前提で組むのが現実的でしょう。

3-2. 会社分割(吸収分割・新設分割)

会社分割は、事業に関する権利義務の全部または一部を、他社または新設会社に承継させる手法です。
既存の承継会社へ移す「吸収分割」と、新設会社へ移す「新設分割」として整理されています。

このため、カーブアウト(事業の切り出し)や、事業単位の再配置に向きやすいといえます。

例えば、採算が読みにくい事業を新会社に移し、資金調達や提携の自由度を上げるケースが考えられます。
ただし、会社分割では債権者保護手続が論点になりやすく、官報公告や個別催告のスケジュールを見誤ると全体工程が崩れます。会社分割は「移す対象の棚卸し」と「法定手続の段取り」をセットで作るのが要点でしょう。

3-3. 株式交換

株式交換は、対象会社の発行済株式の全部を他社に承継させ、完全親子会社関係を作る手法です。                会社法上そのように定義され、結果として買い手が対象会社を100%子会社化する枠組みです。
そのため、グループ一体経営や少数株主整理を目的に使われることが多いといえます。

例えば、子会社化はしたいが現金支出を抑えたいケースでは、対価を株式として設計し、株式交換で完全子会社化する判断が考えられます。
一方で、株主間の利害調整が難所になりやすく、反対株主対応や説明設計を後回しにすると停滞の原因になります。
株式交換は「完全子会社化が目的であるか」を先に確定させるほど、手法選択が明快になるでしょう。

3-4. 株式移転

株式移転は、新設会社が既存会社の発行済株式の全部を取得し、新設持株会社(完全親会社)を作る手法です。          会社法上、既存会社の株式を新設会社に取得させる組織再編として定義されています。
このため、ホールディングス化でグループの枠組みを再設計したい場面に適します。

例えば、複数事業会社を束ね、投資判断と統制を持株会社に集約したいケースが考えられます。
ただし、手続きが複雑になりやすく、株主対応や設計次第では株価・説明の論点が出るため、工程管理が肝になります。
株式移転は「束ねて統治する」狙いが明確なときほど機能するでしょう。

3-5. 株式交付

株式交付は、株式を対価として他社を子会社化できる制度です。
買い手側が自社株式等を交付して相手会社株式を譲り受け、子会社化を実現する枠組みとして整理されています。
株式交換が100%子会社化を前提にするのに対し、株式交付は必ずしも完全子会社化を前提にしない点が特徴とされます。

例えば、現金を使わずに一定割合以上の支配を取りたいケースが考えられ、M&Aの打ち手として検討対象になります。
一方で、使える要件や実務上の設計論点があるため、株式交換の“代替”として安易に選ぶと後で設計が破綻する可能性があります。
株式交付は「完全子会社化が不要かどうか」を起点に比較すると判断しやすいでしょう。

4. 組織再編を選ぶ判断軸

組織再編を検討する際の最も重要な判断軸は、「何を動かしたいのか」を先に明確にすることです。


事業(権利義務)を移すのか、支配(株式)を組み替えるのかで、適合するスキームが大きく変わるからです。
さらに対価が現金か株式かで、資金繰り・株主構成・説明の難易度が変わり得ます。

例えば、事業単位での整理なら会社分割が主戦場になり、完全子会社化を狙うなら株式交換が中心になります。
一方で、グループ全体の統治設計を変えるなら株式移転(持株会社化)で“上の器”を作る発想が有力になります。
判断軸を明文化すると、社内の議論が「好き嫌い」ではなく「要件適合」に寄るでしょう。

判断軸について、以下に沿って解説します。
・4-1. “事業を移す”のか “資本を組み替える”のか
・4-2. 対価が現金か株式かで効果が変わる
・4-3. 目的に応じたガバナンス構造の最適化

4-1. “事業を移す”のか “資本を組み替える”のか

最初の分岐は、移したい対象が「事業」か「株式」かです。


会社分割は事業に関する権利義務を承継させるのに対し、株式交換・株式移転は株式関係を組み替えて完全親子関係を作る制度だからです。
この違いを外すと、狙いに対して手段が噛み合わず、説明が破綻しやすくなります。

例えば、取引契約・人員・資産をまとめて動かしたいケースが考えられ、その場合は会社分割の設計が中心になります。
逆に、対象会社の経営支配を強めたいだけなら、株式交換で100%化する方が目的に直結する場合があります。
“何を動かすか”を一行で言える状態が、判断の出発点でしょう。

4-2. 対価が現金か株式かで効果が変わる

対価設計は、実務でスキーム選定に直結します。

株式を対価にできる制度(株式交換・株式交付など)では現金負担を抑えられる一方、株主構成や希薄化の説明が論点になりやすいからです。


また、完全子会社化を狙うのか、一定の支配を狙うのかで制度適合が変わります。

例えば、買収資金を大きく出しにくいケースが考えられ、その場合は株式を対価にした設計が候補になります。
一方で、株式対価は“相手の株主が買い手株主になる”という構造なので、説明や納得形成を準備しないと合意形成が難しくなります。
対価は資金繰りだけでなく、ステークホルダー設計そのものだと捉えるのが安全でしょう。

4-3. 目的に応じたガバナンス構造の最適化

再編の成否は、ガバナンス設計の妥当性に左右されます。


グループ経営では統制・利益相反・責任分界が論点となり、構造自体が企業価値に影響し得るからです。
ガイドラインでは、グループ運営の論点や監督の在り方が整理され、実務に落とす観点が示されています。

例えば、子会社が多くて監督が届きにくいケースでは、持株会社化や統合で“監督の窓口”を明確にする判断が考えられます。
また、上場子会社を含む構造では利害関係が複雑化しやすく、設計と説明が一段と重要になります。
ガバナンス目的の再編は、法務手続きより先に「監督の絵」を描くのが近道でしょう。

5. 組織再編のメリットとデメリット

組織再編は、うまく使えば「集中と統合」を同時に進められます。


事業の切り出し・統合・支配関係の再設計により、資源配分や意思決定の速度を変えられるからです。
一方で、統合プロセスのコスト、従業員不安、文化摩擦などの“実装コスト”が出る点は避けられません。

例えば、シナジーを狙って統合しても、統合後の運用(PMI)が弱いと期待効果が出にくくなります。
また、再編は関係者が増えるほど説明の難易度が上がるため、初期に論点表を作るだけで事故率が下がります。
メリットとデメリットを最初からセットで示すと、社内稟議や合意形成が通りやすくなるでしょう。

メリット・デメリットについて、以下に沿って解説します。
・5-1. メリット:シナジー創出・事業集中・効率化
・5-2. メリット:財務改善・資本効率向上
・5-3. デメリット:統合コストや制度変更の負担
・5-4. デメリット:従業員の不安・文化摩擦

5-1. メリット:シナジー創出・事業集中・効率化

組織再編の最大のメリットは、重複を減らし、強みのある領域に経営資源を集中させられる点にあります。


合併や統合で重複する機能を削り、会社分割で事業単位の責任と資源配分を明確にできるからです。
その結果、意思決定が速くなり、現場の優先順位も揃いやすくなります。

例えば、グループ内で営業・管理が二重化しているケースでは、合併で一本化して運営コストを下げる発想が考えられます。
また、注力事業だけを別会社に集める設計を取ると、投資判断が見えやすくなる可能性があります。


シナジーは“統合した瞬間に出る”というより、設計と運用で作るものだと捉えるのが安全でしょう。

5-2. メリット:財務改善・資本効率向上

組織再編は、財務の見え方を整理し、資本効率の改善につながる可能性があります。


事業の切り出しによって、損益責任を分離したり、グループ構造を再設計することで資本配分の考え方そのものを見直すことができるからです。
特にポートフォリオ見直しを前提にすると、資本コストを踏まえた資源配分の説明がしやすくなります。

例えば、不採算事業を切り出して黒字事業の投資余力を確保するケースが考えられます。
また、持株会社化で投資判断と事業運営を分けると、事業ごとの評価軸を置きやすくなる可能性があります。

財務改善は「切る/統合する」より、「資源配分の意思決定を変える」発想が効きやすいでしょう。

5-3. デメリット:統合コストや制度変更の負担

組織再編における大きなデメリットのひとつは、統合や制度変更に伴うコストが想定以上になり得る点です。


理由は、システム統合、業務プロセス統一、契約・規程整備など、見えにくい作業が大量に発生するからです。
また、統合の深さを上げるほど、管理コストと調整工数が増えやすいと想定されています。

例えば、ITや会計の統合が後ろ倒しになったケースでは、二重運用が長期化し、コストが膨らむ可能性があります。
さらに評価制度や稟議ルールを統一する過程で、現場の停滞が起きることも想定されます。

統合コストは、法務手続きの前に「統合範囲」と「統合順序」を決めるほどコントロールしやすいでしょう。

5-4. デメリット:従業員の不安・文化摩擦

従業員の不安と文化摩擦は、組織再編における現場レベルのリスクとして軽視できない要素です。


組織再編に伴って、評価基準や働き方、意思決定スタイルが変わると、心理的安全性が下がり、生産性に影響し得るからです。
特に統合局面では、文化の違いが見えにくい形で摩擦を生みやすいと指摘されています。

例えば、成果主義と年功的文化が混ざるケースが考えられ、評価・昇格の説明が弱いと不満が溜まりやすくなります。
また、統合後のビジョンが曖昧なままだと、「自分はどうなるのか」という不安が増幅します。


文化摩擦は“気合い”では解けないため、対話設計と段階統合の方針が重要です。

6. 組織再編を進める際の注意点

組織再編を進めるうえでの重要な注意点は、「法定手続」と「実装(統合・移管)」を分けて管理することです。


理由は、公告・催告・決議などの期限がある一方で、統合や移管は社内リソースに依存し、想定より遅れやすい傾向があるためです。
特に会社分割では債権者保護手続の期間設計が工程のクリティカルになりがちです。

例えば、官報公告の手配が遅れたケースでは、効力発生日をずらさざるを得ず、全体の稟議・契約が連鎖的に遅れます。
また、制度やルールの統一は部門横断になるため、初期に体制と意思決定ルールを決めないと漂流します。

注意点を“論点表”にして握るだけで、実務の事故は大きく減るでしょう。

6-1. コスト増(専門家費用・統合コスト)の発生

組織再編は、専門家費用と統合コストが積み上がりやすい領域です。


その理由は、法務・税務・会計・登記などの外部支援に加え、IT・人事・規程整備などの内部工数が大きいからです。
特に統合の深さが増すほど、コストは上振れしやすくなります。

例えば、システム統合を一気に進めるケースが考えられ、その場合は初期投資が大きくなる可能性があります。
また、統合範囲が曖昧だと、二重運用が長期化してコストが削れません。

コストは「見積もり」ではなく、「統合範囲の決定」で決まる面が大きいでしょう。

6-2. 従業員のモチベーション低下への配慮

従業員への対応は、組織再編の成否を左右する重要テーマです。


再編によって不安が高まると離職・生産性低下につながり、統合効果を相殺し得るからです。
特に文化の違いがある統合では、初期に丁寧なコミュニケーションが必要になります。

例えば、「何が変わり、何が変わらないか」を明確にしないケースが考えられ、その場合は不安が増幅しやすくなります。
また、現場の声を拾わずに制度を押し付けると、形式統合に終わる可能性があります。

モチベーション対策は、PMIの一部として最初から工程に組み込むのが安全でしょう。

6-3. 評価制度・ルール統合に伴う混乱

評価制度や社内ルールの統合は、見落とされがちですが実務上の難所になりやすいポイントです。


評価・報酬・権限規程・稟議ルールなどが絡むため、利害と運用が衝突しやすいからです。
文化の違いがあると、評価基準の説明だけで大きな摩擦を生み得ます。

例えば、成果主義を重視する組織と年功的な組織が統合するケースが考えられ、評価指標の不一致が混乱につながります。
また、権限移譲の線引きが曖昧だと、意思決定が遅くなり、統合目的と逆行します。


制度統合は「何を統一し、何を残すか」を先に決めるほど、現場の混乱を抑えられるでしょう。

7. まとめ

組織再編は、目的を言語化し、手法の効力(何が動くか)で選ぶと迷いが減ります。


理由は、合併・会社分割は事業や権利義務の移動、株式交換・株式移転は支配関係の再設計、株式交付は株式対価での子会社化というように、制度ごとに“動く対象”が異なるからです。
さらに、再編は法務手続きだけでなく統合運用(コスト・人・制度)の設計がセットで、ここを外すと効果が出にくくなります。

例えば、ポートフォリオ最適化が目的なら会社分割を含む切り出し、ガバナンス再設計なら株式交換・株式移転など、目的から逆算した整理が有効です。


そして工程は、法定期限のある手続き(公告等)と、社内横断の統合タスクを分けて管理すると崩れにくくなります。
本記事の枠組みで整理すれば、再編の全体像と実務ポイントを短時間で説明できるでしょう。

ファーストパートナーズでは、お客様の経営戦略や事業フェーズに寄り添った組織再編・グループ再編のご提案を行っております。

合併・会社分割・株式交換など各種組織再編手法について、企業規模や中長期戦略、ガバナンス体制を踏まえながら、実務面・財務面の両面から的確にアドバイスいたします。

組織再編の検討段階から実行・その後の体制整備まで、一貫したサポートをご希望の方は、これを機に一度相談を検討してみてはいかがでしょうか。

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大西 伸彦

法政大学卒業後、大和証券入社。郡山(福島県)支店、本店営業部へ在籍し、株式会社ファーストパートナーズへ入社。
大和証券では社長賞受賞。その他各コンテストでも表彰される。
お客様の意向に寄り添い、お金に関する生涯のパートナーとなり、アドバイス・提案をしていきたいと考え、株式会社ファーストパートナーズへ入社。
取り扱う商品が多岐に渡り、幅広いお客様のニーズにお応えすべく精進していきたいと思っております。

保有資格:証券外務員一種、生命保険協会認定保険募集人、FP二級技能検定資格

資産・不動産・M&Aまで対応

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