資産運用

高いリターンを得られる可能性なぜ今、金鉱株で資産形成が注目されるのか?メリット・リスクを解説

高いリターンを得られる可能性なぜ今、金鉱株で資産形成が注目されるのか?メリット・リスクを解説

世界経済が不安定さを増す中で、インフレや地政学リスク、金利の変動が資産運用に大きな影響を及ぼしています。こうした環境下で再び注目を集めているのが「金鉱株」です。

金価格の上昇によって収益が拡大しやすく、インフレヘッジや分散投資の一環として関心が高まっています。本記事では、金鉱株の基礎からメリット・リスク、そして今後の展望までをわかりやすく解説し、資産形成の新たな選択肢としての可能性を探ります。

1.金鉱株ってどんな投資?初心者でもわかる基礎知識

金鉱株とは、金の採掘・精錬・販売を行う企業の株式を指し、「金価格」と「株式市場」の両方の影響を受ける点が特徴です。

金価格の上昇局面では企業収益が伸びやすく、株価も上昇する傾向があるため、インフレや地政学リスクが高まる局面では、資産防衛や分散目的として注目度が高まります。

一方で、金価格下落や為替変動、経営リスクの影響も受けやすく、投資判断には慎重さが求められます。この記事では、金鉱株の特徴・メリット・注意点をわかりやすく解説します。

1-1. 金の値動きと連動しやすい株

金鉱株とは、金の採掘や精錬を手がける企業の株式を指します。金鉱山を所有し、金の生産・販売で利益を得るため、金の価格動向と密接に関わっています。

金の価格が上昇すれば企業の売上や利益が増えやすく、株価も上がる傾向にあります。反対に、金価格が下落すると収益が悪化しやすく、株価が下がる可能性があります。

このように金鉱株は、「金価格と株式市場の性質を併せ持つ」資産です。

たとえば、2025年現在、金の国際価格は1トロイオンスあたり4,000ドル前後と過去最高値圏にあります。インフレ懸念や地政学リスクが続くなか、金関連株や金鉱株ETF(GDXなど)にも世界的な資金流入が見られます。

なぜなら背景に、金価格が上昇する局面では、金鉱企業の収益が大幅に改善しやすいという特徴があるためです。

また、金鉱株は「金そのもの」よりも価格変動が大きくなる傾向があります。金価格が10%上がると、企業利益が2倍、3倍に膨らむ場合もあり、営業レバレッジが働くのです。

そのため、金鉱株は「金価格上昇をより積極的に取り込みたい投資家」に注目されています。

日本国内では、住友金属鉱山(5713)や三菱マテリアル(5711)が代表的です。海外では、ニューモント(NEM)、バリック・ゴールド(GOLD)、アグニコ・イーグル(AEM)といった世界的な企業が知られています。

 1-2. 金鉱株ならではのメリット

金鉱株の大きな特徴は、金価格の上昇による収益拡大の恩恵を受けやすい点です。金価格が上がっても、採掘コスト(燃料費・人件費など)は急激には上がらないため、金鉱企業の利益率が高まります。

つまり、金価格が一定水準を超えると、「売上増加+コスト据え置き」により利益が大きく拡大する構造になっています。

主なメリットは3つあります。

・金価格上昇時に高いリターンが期待できる場合がある

金そのものへの投資では金自体の価格上昇分しか利益を享受できませんが、金鉱株は企業収益が連動して増えるため、金価格上昇時により大きな利益を期待できる場合があります。

・配当や企業成長の恩恵を受けられる

金現物や投資信託、ETFには配当がありませんが、金鉱株は株式であるため、企業の利益に応じて配当を受け取るチャンスがあります。

・株式としての企業成長の恩恵を享受できる

金鉱株は金価格に左右されるだけでなく、探鉱技術や生産効率の改善、新規鉱山開発など企業努力による成長要素も考慮します。つまり、金価格が横ばいでも、企業価値の向上で株価上昇が見込めるケースもあるのです。

このように金鉱株は、「金価格上昇を活かして高いリターンを狙える」「配当でインカムゲインも得られる」という二面性を持った資産といえます。ただし、次に述べるように、これらの魅力には相応のリスクも伴います。

 1-3. 投資前に知っておくべきデメリット

金鉱株は魅力的な一方で、それ相応のリスクもあります。投資を始める前に、以下のようなリスク要因を理解しておくことが大切です。

・値動きが大きく、短期変動に弱い

金鉱株は金価格に加え、株式市場全体の動向や企業業績、為替レートにも影響を受けます。そのため、金価格が上がっても株価が下落する場合があり、ボラティリティ(変動幅)は金投信やETFより高い傾向があります。

・金価格との乖離リスク

企業内で操業トラブル、政治的混乱、労働争議などの問題が起こると、金価格と株価の連動性が崩れることがあります。たとえば採掘コストの上昇や環境規制の強化により、金価格が高くても利益が伸び悩むことがあります。

・分散投資の効果が限定される

金鉱株は株式市場の一部であるため、リスクオフ局面(株価全体の下落)では他の株と同様に売られやすい特徴があります。したがって、金そのものと比べると「市場全体の保険」としての役割は限定的といえます。

・環境・ESGリスク

金採掘は環境負荷の大きい産業であり、鉱山開発をめぐる環境規制が厳しくなっています。ESG(環境・社会・ガバナンス)投資を重視する機関投資家から敬遠される可能性もあり、資金流入が制限される懸念もあります。

2.金鉱株以外にもある!金関連の投資商品

世界経済が不安定なときは、相対的に「安全資産」とされる金に注目が集まります。

ただし、金への投資方法は金鉱株だけではありません。現物の金を購入する方法から、ETFや先物、純金積立といった金融商品まで、さまざまな選択肢があり、目的やリスク許容度に応じて選ぶことができます。

ここでは、代表的な4つの金投資の特徴とポイントをわかりやすく解説します。

2-1. 現物の金(地金・コイン)を持つという選択

最も伝統的な方法が、金地金(インゴット)や金貨などの現物を保有する投資です。金そのものを直接所有するため、発行体の信用リスクがなく、世界のどこでも価値が認められるという強みがあります。

日本では田中貴金属や三菱マテリアルなど、信頼性の高い販売業者を通じて購入できます。

重さは1g単位から1kgバーまであり、資金に応じて選べる点も魅力です。

一方で、保管コストと盗難リスクには注意が必要です。自宅で保管する場合は火災や盗難への備えが必要であり、販売店や銀行の貸金庫を利用する場合は保管料が発生します。

また、現物の売却時には「売却益に対する課税(譲渡所得)」も発生します。そのため、現物の金は短期売買よりも、長期の資産保全やインフレ対策向けといえるでしょう。

2-2. 人気の金ETF(SPDRゴールド・シェアなど)

次に、比較的手軽に始めやすく人気なのが、金ETF(上場投資信託)による投資です。

ETFは、金価格に連動して値動きする金融商品で、株式と同様に証券取引所で売買できます。

代表的な銘柄には、

・SPDRゴールド・シェア(1326)
・NEXT FUNDS 金価格連動型上場投信(1328)
・純金上場信託(1540)
・WisdomTree 金上場投信(1672)

などがあります。

ETFの魅力は、少額から手軽に金価格に連動した投資ができる点です。現物のような保管コストが不要で、日中の市場でいつでも売買できる流動性の高さも特徴です。

一方で、ETFはあくまで「金価格に連動する金融商品」であり、現物のように手元に金を所有できるわけではありません。また、手数料として信託報酬が差し引かれる点も確認しておく必要があります。

短期の値動きを活用したい投資家や、ポートフォリオの一部に金を組み入れたい人にとって、金ETFは効率的かつ管理の手間が少ないといったメリットがあり、検討する際のポイントとなるでしょう。

2-3. 金先物取引

より積極的に金価格による運用益を狙う投資家に利用されているのが、金先物取引です。

これは「将来、決められた期日に一定量の金を決められた価格で売買する契約」を取引するもので、東京商品取引所(TOCOM)やニューヨーク商品取引所(COMEX)などで行われています。

金先物の大きな特徴は、レバレッジをかけて取引できる点です。少ない証拠金で大きな金額の取引が可能なため、値動きが思惑通りになれば大きな利益を得られます。しかしその反面、予想と逆方向に動くと損失が大きくなるリスクも合わせもっています。

また、先物は満期(決済期日)があるため、長期保有には不向きです。価格変動の要因も複雑で、ドル相場・金利・原油価格・地政学要因など多岐にわたります。

そのため、金先物取引は上級者や短期トレーダー向けの手法といえるでしょう。リスク管理のためには、損切りラインを明確に決めておくことが欠かせません。

2-4. 純金積立サービス

最後に紹介するのは、純金積立サービスです。これは、毎月一定の金額で金を購入し続ける仕組みで、「ドルコスト平均法」によって購入単価を平準化できるメリットがあります。

例えば月1万円ずつ積み立てる場合、金価格が高い月は購入量が少なく、安い月は購入量が多くなり、結果的に平均取得単価が安定します。

少額(1,000円〜)から始められる手軽さがあり、長期的なインフレ対策や子どもの教育資金づくりなど、着実に資産形成をしたい人に向いた手法です。

一方で、購入時と売却時にそれぞれ手数料がかかるため、短期間での売買にはあまり向いていません。また、実際に金地金として引き出す場合には別途手数料が発生します。

積立は「金を資産の一部として長期で保有したい人」に適した方法といえるでしょう。

3.なぜ今、金鉱株に注目が集まるのか

世界的に不安定要因が増すなか、投資家の関心を再び集めているのが「金鉱株」です。

金そのものの価格動向に連動しやすい特性を持ちながら、インフレや地政学リスク、為替動向など多くの経済要因に影響を受けるため、今後の市場動向を読み解くうえで重要な投資対象といえます。

ここでは、なぜいま金鉱株への注目が高まっているのか、その背景を4つの視点から整理します。

3-1. インフレに強い「資産の避難先」になる

金鉱株の人気が高まる最大の理由は、インフレへの「ヘッジ(防御)」効果が期待される点にあります。物価上昇局面では通貨の価値が下がる一方、金は「価値の保存手段」として古くから信頼を集めてきました。

特に2020年代に入ってからは、米国の金融緩和やエネルギー価格の高騰、物流コストの上昇などを背景に、各国でインフレが長期化する傾向が見られます。

現金や預金の実質的な価値が目減りする局面では、代替資産として金の需要が高まり、結果的に金鉱株の価格も上昇する可能性があります。

金鉱株は、金価格が上昇すれば採掘企業の利益率も拡大しやすく、株価も連動して上昇しやすいという特性があります。たとえば、金価格が10%上昇すると、採掘コストが一定であれば利益はそれ以上の割合で増加する可能性があります。

こうしたレバレッジ効果が、インフレ局面における金鉱株の魅力を高めているのです。

3-2. 金利動向との関係を知る

金や金鉱株の価格は、金利動向とも密接に関係しています。

一般的に「金利が上昇する局面では金価格は下がりやすい」と言われます。その理由は、金は利息を生まない資産であるため、利回りの高い債券などが魅力的になると相対的に資金が流出しやすくなるからです。

一方で、金利が低下または利下げ局面に入ると、金の魅力が再び高まりやすくなります。実際、FRB(米連邦準備制度理事会)が政策金利の引き下げを検討するタイミングでは、金価格が上昇し、金鉱株にも資金が流れ込む傾向が見られます。

2025年時点では、世界的にインフレ率がやや落ち着きつつあるものの、景気減速懸念から主要国の中央銀行が再び利下げ姿勢に転じる動きもあります。

こうした「金利低下→金価格上昇→金鉱株への買い」という連鎖が意識されている点も、昨今、注目が集まっている理由といえるでしょう。

3-3. 地政学リスクが高まると金需要はどう変わる?

地政学的な不安が高まる局面では、投資家は「リスク資産」から「安全資産」へと資金を移す傾向があります。

その代表的な資産が金です。たとえば、過去には中東情勢の緊迫化、米中対立、ロシアによるウクライナ侵攻などが起きた際、金価格が急上昇したことがあります。

近年も、米中関係や欧州のエネルギー問題、各国の選挙情勢などが不透明感を強めるなかで、金は「政治や通貨に依存しない安全資産」として再評価されています。こうした流れは、金鉱企業の収益期待にもつながります。

また、金鉱株のなかには新興国や資源国に採掘拠点を持つ企業も多く、供給リスクが高まることで金価格が上昇する局面もあります。つまり、地政学的な緊張が金需要を押し上げると同時に、金鉱株の投資妙味を強める要因にもなるのです。

3-4. ドル安局面で狙える金価格の上昇

金価格と米ドルの関係も見逃せません。金は世界共通で「ドル建て」で取引されているため、ドルの価値が下がる(=ドル安)と、相対的に金が割安に見え、他通貨を使う投資家の買いが増える傾向があります。

たとえば、FRBが利下げを行うとドル金利が低下し、ドル安が進行しやすくなります。これにより、金価格が上昇し、結果として金鉱株にも上昇圧力がかかります。逆にドル高局面では金が割高に見えるため、調整が入る場合もあります。

2025年現在、米国の経済指標や選挙動向を背景に、ドル指数がやや軟調に推移する場面も増えています。こうした「ドル安・金高」のトレンドが続けば、金鉱株は再び注目を浴びる可能性があります。

また、ドル安の恩恵を受けるのは海外投資家だけではありません。

日本円建てでも金価格が上昇すれば、日本の投資家にとっても金鉱株や金の投資信託、ETFへの投資妙味が高まります。為替の動きが金価格に与える影響を理解することで、より戦略的な判断ができるようになるでしょう。

4.金鉱株に投資する際に押さえておきたい4つの投資ポイント

金鉱株は、金価格の上昇を背景に長期的なリターンを狙える魅力的な投資対象のひとつです。

一方で、金価格の変動や為替、政治情勢の影響を受けやすい側面もあります。そこで重要になるのが、「リスクをコントロールしながら長期的に資産を育てる」という視点です。

ここでは、金鉱株に投資する際に押さえておきたい4つのポイントを紹介します。

 4-1. 世界の大手金鉱株に分散投資する

金鉱株投資の基本は「分散」です。金価格に連動するとはいえ、金鉱企業ごとに採掘コスト、鉱山の場所、経営方針などが異なるため、株価の動きにも差が出ます。

そのため、1社に集中投資するよりも、複数の企業に分散して投資することで、リスク分散の効果が期待できます。

代表的な大手金鉱株としては、以下のような企業が知られています。

ニューモント(Newmont Corporation/米国)

 世界最大級の金鉱企業。北米・南米・アフリカ・オーストラリアなど、世界各地に鉱山を保有。安定的な生産量と配当政策で評価が高い。

バリック・ゴールド(Barrick Gold Corporation/カナダ)

 世界有数の規模を誇り、銅など他の資源にも展開。経営の効率化と低コスト生産で利益率を維持。

アグニコ・イーグル・マインズ(Agnico Eagle Mines/カナダ)

 北米中心に高品位鉱山を保有し、安全性や環境対策でも高評価。

こうした企業をバランスよく組み合わせることで、地域リスク(たとえば政情不安や採掘制限)を分散することができ、金価格の上昇恩恵を享受しやすくなります。個別銘柄の分析が難しい場合は、次に紹介するETFの活用も有効です。

4-2. ETFを活用して少額から投資

個別の金鉱株を複数買うのは資金面でも労力面でもハードルが高い、と感じる方には「ETF(上場投資信託)」の活用が便利です。ETFは証券取引所で株式と同じように売買でき、少額から分散投資ができるのが特徴です。

金鉱株に連動する代表的なETFとしては、以下のようなものがあります。

・VanEck Gold Miners ETF(GDX)

 世界の大手金鉱株で構成される代表的なETF。ニューモントやバリックなど主要企業を幅広くカバー。

・iShares MSCI Global Gold Miners ETF(RING)

 グローバルに分散された金鉱株インデックスに連動。コストが低く、長期保有向き。

これらのETFを活用することで、初心者でも手軽に「世界の金鉱株ポートフォリオ」を作ることができます。また、NISA口座を使えば、配当や売却益が非課税になる点も長期投資には魅力です。

4-3. 金価格と為替の動きを日ごろからチェック

金鉱株の値動きを大きく左右するのは「金価格」と「為替レート」です。特に日本から海外ETFや外国株を購入する場合、ドル円相場の変動がリターンに大きく影響します。

金価格は通常、ドル建てで取引されており、米ドルが下落すると金価格が上がる傾向があります。これは、ドル安によって他通貨を持つ投資家にとって金が割安になるためです。反対にドル高局面では金価格が押し下げられる傾向があり、金鉱株の株価にも影響します。

また、円安・円高も日本の投資家には重要です。たとえば、ドル建ての金鉱株が横ばいでも、円安が進めば円換算での評価額は上がります。

したがって、金価格チャートやドル円の為替動向を日常的にチェックし、金相場に影響を与えるニュース(FRBの金利政策、インフレ指標、地政学的リスクなど)を意識することが大切です。

金価格やドル円の動向は、米国労働統計局(BLS)のCPI発表やFRBのFOMC(連邦公開市場委員会)後の声明で大きく動くことが多いため、主要な経済イベントのスケジュールも把握しておくとよいでしょう。

4-4. 長期でコツコツ積み立てを行う

金鉱株は短期的な価格変動が大きい反面、長期的には「インフレヘッジ」「通貨価値の維持」という観点から安定したリターンを狙える資産クラスです。

そのため、タイミングを狙って売買するよりも、時間分散を意識した積立投資(ドルコスト平均法)が効果的と考えられます。

たとえば、毎月一定額を金鉱株ETFに積み立てる方法であれば、金価格が下落した月には多くの口数を購入でき、上昇局面では購入量が減るため、平均取得単価を抑える効果が期待できます。

長期的に見ると、金価格や金鉱株のボラティリティを平準化しながら、安定的に資産を積み上げていくことができます。

また、配当を出す金鉱株も多いため、再投資を続けることで複利効果が期待できます。短期の値動きに一喜一憂せず、年単位で資産形成を考える姿勢が重要です。

5.金鉱株の未来はどう動く?今後の価格予測と影響

2025年10月、米連邦準備制度理事会(FRB)は2会合連続となる0.25%の利下げを実施しました。政策金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利は3.75%〜4.0%となりました。3%台は2022年12月以来です。

これにより、世界の金融市場は「利下げサイクル入り」を意識し始め、資金の流れにも変化が見られます。

とりわけ注目されているのが、金価格と金鉱株の動向です。インフレの長期化、地政学的リスク、ドル安傾向など、複数の要因が金市場を下支えし、金鉱株にも好材料が揃いつつあります。

ここでは、今後の金鉱株の方向性を左右する4つの要因を整理してみましょう。

5-1. FRBの利下げ観測が追い風に  

金鉱株にとって最も大きな追い風となるのが、「FRBの利下げ局面入り」です。

金は利息を生まない資産であるため、一般的に金利が下がると相対的に魅力が高まります。

実際、FRBは「インフレ率が2%目標に向けて緩やかに低下している」としながらも、労働市場の軟化や景気減速の兆しに対応するため、今後も慎重に利下げを進める方針を示しています。

こうした金利環境の変化は、金鉱株にとってプラス要因となります。金価格が上昇すれば採掘コストに対する利益率が改善し、企業収益が増加しやすくなるためです。

特に、低コスト構造を確立している大手鉱山会社にとっては、金利低下による資金調達コストの軽減も加わり、ダブルの追い風となるでしょう。

5-2. 中国やインドの旺盛な金需要

金市場の需要面で大きな存在感を放っているのが、中国とインドです。両国は世界の金消費量の半分以上を占めており、宝飾需要だけでなく、資産保全や投資目的の金購入も増加しています。

特に中国では、不動産市場の低迷や株式市場の不透明感を背景に、「安全資産」として金の購入が拡大しています。2025年上半期の中国人民銀行(中央銀行)による金準備の積み増しも話題となり、世界の金需要を押し上げる一因となっています。

一方、インドでは結婚・祭礼シーズンを中心に金の需要が根強く、インフレ高止まりによる購買力低下の中でも、文化的な需要が下支えしています。

こうしたアジア新興国の実需は、金価格を中長期的に下支えする要因となります。金鉱株にとっては、安定的な需要が続くことで収益見通しが改善しやすくなる点が魅力です。

また、中国やインドは環境負荷の少ない採掘技術やリサイクル金の利用拡大にも取り組んでおり、持続可能な金市場の形成が進むことで、長期投資先としての注目は今後も高まることが見込まれます。

5-3. 地政学リスクが高まれば金鉱株に追い風

2025年の国際情勢を見渡すと、依然として地政学的な緊張が世界各地で続いています。中東では原油供給を巡る不安が残り、東欧ではウクライナ情勢が長期化。さらにアジアでは米中対立が続くなか、台湾海峡や南シナ海の安全保障リスクが意識されています。

こうした不安定な環境下では、投資家がリスク資産(株式・新興国債券など)から安全資産(米国債・金など)に資金を移す「リスクオフ」の動きが強まりやすくなります。

金は国家の信用に依存しない実物資産であるため、政治的・軍事的なリスクが高まる局面では需要が増える傾向にあります。

金鉱株は、金価格が上昇することで業績改善が見込まれるため、地政学的な不安が強まるほど投資妙味が増します。

5-4. 供給制約がもたらす収益改善の可能性

金価格を押し上げるもう一つの要因として、供給面の制約も無視できません。世界の主要金鉱山では、資源の枯渇や採掘コストの上昇、環境規制の強化などにより、新規の大型鉱山開発が減少傾向にあります。

2020年代以降、金の年間生産量は概ね横ばいで推移しており、需要の増加に対して供給の伸びが追いついていない状況です。

この「供給の頭打ち」は、価格の下支え要因となります。特に、既存鉱山を効率化して生産コストを抑える企業ほど、金価格上昇の恩恵を享受しやすくなります。また、電力コストの低下や採掘技術のデジタル化などによって、収益率を改善させる動きも広がっています。

一方で、環境・社会・ガバナンス(ESG)への対応は今後ますます重視される見込みです。

環境保護や地域社会への配慮を怠れば、事業停止や資金調達コストの上昇につながる恐れもあるため、ESGに積極的な企業ほど長期的に安定した投資先として評価される傾向にあります。

供給制約のなかで効率的な運営を続ける企業が増えれば、業界全体の利益率が改善し、投資家にとっても中期的な成長機会となる可能性があります。

6.まとめ

金鉱株は、金価格の動きに連動しやすく、インフレやドル安局面ではリターンを狙いやすい資産クラスです。

特に、世界的な利下げ局面入りや地政学リスクの高まり、アジア新興国の金需要拡大などが追い風となり、市況環境によっては今後も注目度が高まる可能性があります。

一方で、為替や株式市場の影響を受けやすく、価格変動リスクやESG課題にも注意が必要です。ETFや積立などを活用して分散・長期投資を行うことで、金鉱株をポートフォリオに組み入れつつ、安定的な資産形成を目指す戦略が有効といえるでしょう。

ファーストパートナーズでは、お客様一人ひとりの状況に寄り添ったさまざまなサービスのご提案を行っております。

富裕層・資産形成層の方々に向け、金利環境や市場動向を踏まえ、お客様の状況に応じたアドバイスを心がけています。

これを機にぜひ一度、ご相談をご検討ください。

ご相談はこちらから。

本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなさるようお願いします。本資料は、信頼できると判断した情報源からの情報に基づいて作成したものですが、正確性、完全性を保証するものではありません。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報提供者は一切その責任を負うものではありません。

宗野 元

新卒で大手証券会社に入社し、15年間個人富裕層、未上場企業等の資産運用コンサルタント業務に従事。
その後IFAとして独立。
お客様と目標を共有し、より長期的な視点での資産運用のご提案を心がけております。

資産・不動産・M&Aまで対応

無料個別相談

最新トレンド情報を会員限定で発信

無料メルマガ登録