
・MMTという言葉は聞いたことがあるけど、結局どんな理論なのかよくわからない
・政府がどんどんお金を使っても本当に大丈夫なのか不安
・日本がMMTを採用したらどんな影響が出るのか知りたい
このような疑問をお持ちではないでしょうか。
本記事では、資産運用のプロが、MMT(現代貨幣理論)の基本から日本との関係までをわかりやすく解説します。
この記事を読めば、MMTの仕組みやメリット・デメリット、日本で導入された場合のポイントを正しく理解でき、今後の経済政策やニュースを読み解く力が身につくでしょう。
1. MMT(現代貨幣理論)とは何か
MMTは「自国通貨を発行できる政府は、“税収で賄う”発想に縛られない」という視点で、財政と貨幣の関係を捉え直す理論です。
背景にあるのは、政府は通貨の最終的な発行主体であり、会計上は政府支出が民間の預金や銀行の準備金を増やすというメカニズムです。
加えて、MMTでは税の役割は、主に“財源確保”より“インフレ調整・需要管理”の役割を持つ、と整理されます。
具体的には、需要不足で失業や遊休設備が多い状況では、政府が先に支出を増やして経済を押し上げ、一方で経済が過熱して物価が上がりすぎたときは、課税や歳出抑制で需要を冷ますというイメージです。
つまり、「財源制約よりインフレ制約」という問題設定を提示するのがMMTの核です。
2. MMTが主張していること
MMTが強調するポイントは大きく二つです。以下に沿って解説します。
2-1. 自国通貨を発行できる国は財政破綻が起こりにくい
2-2. 政府支出とインフレの関係
2-1. 自国通貨を発行できる国は財政破綻が起こりにくい
MMTでは、自国通貨建てで負債を持つ政府が名目上、”支払い不能”になる可能性は極めて低いという立場となります。理由は、政府は通貨の最終的な発行主体であり、必要になれば決済手段を自ら供給できるからです。
具体例として、米国・英国・日本のように、自国通貨で国債を発行している国の場合、理論上は“支払不能”ではなく、その政策運営がインフレや経済などの副作用を引き起こすかどうかが政策上の焦点になりやすいとされます。
実際、FRBリッチモンドのエコノミック・ブリーフは、MMTが想定する「財政主導で景気を調整し、税でインフレを抑える」という役割分担を整理したうえで、長期的な債務持続性への留意を促しています。
結論として、「名目のデフォルトが起こるかどうか」より「マクロ経済の副作用をどう抑えるか」が論点となります。
2-2. 政府支出とインフレの関係
MMTは、政府支出の実質的制約は「借金の大きさ」ではなく「インフレが許容できる範囲かどうか」だと位置づけます。
理由は、政府が支出を増やせば需要が膨らみ、それが国全体の供給能力を超えると、物価上昇(インフレ)や通貨安が起こりやすくなるためです。
具体例として、モノや人手が足りない局面で大規模な公共投資や給付金を一気に拡大すると、賃金や資材価格、企業コストの上昇が連鎖するケースが考えられます。
この点については、欧州の政策レビューでも「MMTは決定の羅針盤として不適切」との批判が示されており、インフレ管理の難しさが論点になります。
結論として、政府支出を拡大する場合は、インフレの監視と抑制の仕組みをセットで考える必要があるというのがMMTの考え方です。
3. MMTのメリット
MMTは、特に需要不足時の機動的な財政運営に強みがあります。
以下の3つの観点から、そのメリットについて解説します。
3-1. 景気刺激策や雇用対策としての財政支出
3-2. 社会保障や公共投資を拡大する発想
3-3. デフレ脱却・経済安定化への寄与
3-1. 景気刺激策や雇用対策としての財政支出
景気が弱く、失業者や遊休設備が多いとき、政府が積極的に需要を生み出すことは、有効に働く可能性があります。
理由は、政府支出が直接的に所得と雇用を押し上げ、乗数効果を通じて民間活動を後押しするためです。
例えば、失業が高止まりする局面では、インフラ投資や雇用プログラムなどを実施するというケースが考えられます。
FRBリッチモンドの分析でも、こうした「財政で景気調整を行い、インフレは税で制御する」という発想を概説しつつ、長期の債務持続性には注意が必要と指摘されています。
結論として、景気後退期の即効性ある政策手段として、財政を前面に出せる点がMMTの大きな強みです。(財政政策が有効に働くことや、その即効性が保証されるわけではありません)
3-2. 社会保障や公共投資を拡大する発想
MMTは、税収の先行を前提とせず必要な投資を先に実行し、後からインフレや需給で調整するという考え方をとります。そのため、長期課題への着手を早めやすくなります。
その理由は、名目の資金制約より、実物資源とインフレ管理こそが本質という考え方があるからです。
具体例として、高齢化対応の医療・介護、防災・脱炭素インフラ、教育投資を先送りせず着手するケースが考えられます。
ただし、財政裁量が広がるほど、規律の設計が不可欠になります。
結論として、「必要投資の前倒し検討」という視点を持てることで、政策の選択肢が大きく広がる点がメリットです。
3-3. デフレ脱却・経済安定化への寄与
長期的な低インフレや需要不足の状況では、政府による財政中心の下支えが景気の底割れを防ぐ可能性があります。
理由は、民間の投資意欲が弱い局面では、政府が初動の需要を創出しやすいからです。
例えば、日本が長期の超金融緩和から政策正常化へ移行する過程では、財政・金融の組み合わせを慎重に再設計するケースが考えられます。
日銀による政策転換(マイナス金利解除・YCC撤廃)の報道は、物価や市場機能に配慮した調整の難しさを示しました。
結論として、デフレ圧力が強い局面では、“積極財政+緻密な出口設計”が景気安定に寄与しやすく、MMTの考え方が有効に働く可能性があります。
4. MMTのデメリットと批判
MMTにはメリットがある一方で、運用上のリスクや制度設計の難しさが挙げられます。
ここでは3つの論点に沿って解説します。
4-1. インフレや通貨安のリスク
4-2. 政治的な乱用・財政規律の欠如
4-3. 実務面・運用の難しさ(理論と現実の乖離)
4-1. インフレや通貨安のリスク
支出拡大が供給能力を超えると、物価上昇や通貨価値の低下を招く可能性があります。
理由は、需要超過が価格上昇を誘発し、国債需要にも影響を及ぼすためです。
具体例として、サプライ制約下での大規模な財政拡大を行うと、賃金・資材価格の上昇を通じて広範な物価に波及するケースが考えられます。
欧州の政策論考は、MMTを政策判断の主軸として用いることには懐疑的で、インフレ管理の困難さを指摘します。
結論として、支出拡大を行う場合は、同時にインフレ抑制手段(課税・歳出調整)を発動できる制度とセットでなければ危ういと言えます。
4-2. 政治的な乱用・財政規律の欠如
「財源制約が薄い」という誤った理解が広がると、選挙期などで短期的に受ける支出が膨張しやすいという懸念があります。
理由は、インフレ抑制に必要な増税や歳出削減は政治的に不人気で、迅速な発動が難しいからです。
具体例として、物価が過熱する局面でタイムリーに増税で需要を冷ます、というケースは実務上ハードルが高いと考えられます。国際機関や中央銀行の要人発言でも、MMTに慎重な見解が繰り返し示されています。
結論として、裁量を広げるほどルールと説明責任、監視体制の強化が不可欠になります。
4-3. 実務面・運用の難しさ(理論と現実の乖離)
MMTは会計面の説明力が高い一方、金融政策枠組みや中央銀行の独立性、国債市場機能との整合が不可欠です。
理由は、長期の大規模緩和は、債券市場の価格発見機能に歪みを生み、債券需給や超長期金利に副作用が出るためです。
具体例として、日本の政策正常化過程では、超長期国債の需給・利回り動向や市場機能への配慮が重要課題となっています。日銀の政策レビューや報道は、「非常時の手段が通常の金利政策を代替できない」点を示しました。
結論として、理論と運用の橋渡しには、明確なルールと市場機能の維持が鍵です。
5. 日本はMMTを採用できる?
日本は自国通貨建てで国債を発行し、長期にわたって低インフレを経験してきた国です。そのため、MMT議論と一定の接点があります。
以下の観点で日本での採用可能性を解説します。
5-1. 日本の財政構造との相性
5-2. 導入の可能性と限界
5-1. 日本の財政構造との相性
日本は国内投資家基盤と中央銀行を持ち、円建ての国債市場が整備されています。これは、MMTが強調する「自国通貨建て債務は名目支払不能に陥りにくい」という前提と整合します。
具体例として、財務省の「Debt Management Report」は、年間の発行計画、投資家基盤、超長期国債の役割、市場機能の維持など、国債管理の運用面が詳細に示されています。
発行規模が大きいがゆえに、平均残存期間や入札需給の管理など、実務の巧拙がそのまま債務の持続性に直結します。
結論として、日本には制度面の強みがある一方、債務残高が大きいが故に市場安定を維持する難度は増していると言えます。
5-2. 導入の可能性と限界
日本の政策当局の公式見解は、少なくとも現時点ではMMT採用に否定的です。
理由は、財政規律の確保、中央銀行の独立性、物価と市場(金利、為替)、国債市場機能の維持等、総合的に勘案すべき点が多いためです。
実際、日銀総裁は過去にMMTへの不同意を表明し、日本の政策はMMTとは異なると明確に述べています。加えて、超緩和政策から市場機能の回復を進める現在の路線は、無制限の財政ファイナンス観とは距離があると言えるでしょう。
結論として、日本が全面的にMMTを採用する可能性は限定的で、取り入れるとしても部分的な知見を運用へ生かすという形が現実的でしょう。
6. まとめ
MMTは、政府の支出・税・債務を「通貨発行」という視点で捉え直し、景気が弱い時には機動的な財政運営を後押しする理論です。ただし、実際の政策運営では、インフレ・金利・為替・国債市場・制度信認など様々な制約が働きます。
日本は通貨主権などの条件を満たすものの、債務規模や市場機能の維持を踏まえると、MMTの全面採用には課題が残るでしょう。
現実策としては、デフレ圧力が強い局面では財政による需要下支えなど“状況限定の活用”が考えられますが、財政規律・明確なルール・説明責任を強化することが求められるでしょう。
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