小川航基インタビュー 前編「サッカー人生の挫折と覚悟:プロとして成長し続ける理由」の後編です。

©松岡健三郎
[重圧との向き合い方、そしてお金の話]
━━日本代表など、常にプレッシャーと隣り合わせの中での向き合い方はどのようにしていますか
楽しむことですね。プレッシャーって、きっと誰しも感じるものだと思うんです。
例えば、僕は格闘技を見るのが好きなのですが、格闘技って多くの観客の前で1対1、しかも負けたら終わりという状況で戦いますよね。あれだけの緊張感の中で戦う姿は、すごく刺激を受けますし、学ぶことも多いです。
サッカーは11人対11人のスポーツなので、それぞれに守備範囲やポジションの役割がもちろんありますが、格闘技と比べると、個人ひとりだけに全責任がのしかかる場面は、少ない気がします。
以前、「THE MATCH」を観に行ったのですが、那須川天心選手と武尊選手の試合が印象的でしたね。その一戦に向けて、何ヶ月も時間をかけて準備してきて、3分3ラウンドで勝敗が決まってしまう。
短時間で評価されてしまうので、儚いなと感じてしまいました。でもそんな中で勝った天心選手が試合をすごく楽しんでいたように見えたんです。改めて「やっぱりプレッシャーを楽しんだほうがいいんだな」と思いました。
━━キャリアを重ねる上で、相談する相手やアドバイスをもらう存在は誰ですか
もちろんサッカーのキャリアのことは代理人さんにも相談しますが、妻にも話しますね。
相談というより、「どう思う?」みたいな感じで会話をします。キャリアの話は自分だけの問題じゃなくて、家族や子供にも関わってくるので。一人で決めるという感覚はないです。
━━ここまでのキャリアで、自分にとって”ベストゲーム”だと思う試合はどれですか
ジュビロ磐田にいたときの東京ヴェルディとのプレーオフ(2018年12月8日J1参入プレーオフ)ですね。
勝てばJ1残留という試合で、僕はそのシーズンはあまり出場機会がなかったのですが、ケガ人が出たこともあり、先発で出場できました。監督からすると、思いきった起用だったと思うんです。
僕も「ここでやれなきゃ終わりだな」と思っていましたし、クラブの未来もかかっていた。そこでいいプレーができて、PKも決められて、チームも勝てた。この試合で「まだ自分はやれる」と強く感じられたんです。

©日刊スポーツ
[お金に対する考え方]
━━お金の使い方や考え方は、年齢とともに変わってきましたか
そうですね、やっぱり家族ができたタイミングで感覚は変わりましたね。
「貯金、貯金」という考えばかりでももったいないですし。かといって使いすぎたり考えなさすぎてもダメなので、バランスを意識していますね。
━━これまでで一番の大きな買い物は何ですか
車ですね。家を買う予定は今のところないです。兄はすでに家を買っているんですが、「家を買う」って、僕からするとすごい決断です。
僕は将来がどうなるか、どこに住むことになるかが分からないので、まだ買おうとは思っていないです。あと、実は、僕も妻も「同じところにずっと住み続けるのが苦手」なタイプなんです(笑)。タイミングで環境を変えるのが好きですね。
━━お金の管理はご自身でされていますか。それともご家族でしょうか
基本的には自分で管理しています。ただ、もっと若いときに運用や投資など、何かしらやっておけば良かったなと思うことはあります。
これは今でもずっと考えているんですけどね。オランダで車を運転している時間って長いので、そのときに考えたりもしますし、妻ともお金や将来の話をするのですが、なかなか一歩を踏み出せていないというのが正直なところです。
魚が好きなので、寿司屋をやりたいね、とか(笑)。
━━海外選手は資産運用に積極的な印象がありますが、チームメイトと話す機会はありますか
ありますね。オランダでは、20歳くらいでもプロ契約を結ぶとすぐに家を買う選手が多いです。
「もう家を買ったの?」って驚くくらい。オランダは平地で地震もないので、日本とは環境が違います。でも新しい家がどんどん建つわけじゃないんです。
だから不動産の需要があって、買っても損はしないという感じみたいです。ほとんどの選手が持ち家を持っている印象です。
[小川選手の子供の頃の夢、そして未来]
━━もしサッカー選手になってなかったら、何をしていたと思いますか
美容師ですかね(笑)。幼なじみの家が美容院をやっていて、身近な存在だったんです。
小さい頃からかっこいいなと思っていて、「将来は美容師になりたい」と思っていました。
━━現在の一番の目標は
W杯でゴールを決めることが夢です。そのためにはまず、所属クラブでしっかり結果を出して代表に呼ばれ、W杯のピッチに立って、得点を取ることが目標です。
〈プロフィール〉

©UDNSPORTS
小川 航基(おがわ こうき)
1997年8月8日生まれ。日本のサッカー選手で、ポジションはフォワード(FW)。
神奈川県横浜市出身で、桐光学園高等学校を卒業。ジュビロ磐田でプロのキャリアをスタートさせ、水戸ホーリーホックへの期限付き移籍も経験した。2022年には横浜FCへ移籍し、J2得点王を獲得。2023年からはオランダのNECナイメーヘンに期限付き移籍し、その後完全移籍となった。年代別代表でも活躍し、2019年にはEAFF E-1サッカー選手権で日本代表としてハットトリックを達成し、得点王に輝いた。