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二所ノ関親方インタビュー 後編 「変わろうと思わないと変われない」二所ノ関親方が語る、現役時代と親方業の哲学

『二所ノ関親方インタビュー 前編 「変わろうと思わないと変われない」二所ノ関親方が語る、現役時代と親方業の哲学』の後編です。

指導する親方という立場

━━親方になって変えた面、変わった面はありますか

これまでさまざまなことに挑戦して、だめだったことや良かったことは分かっているつもりです。その中で自分にとって良かったことをこれからは教えていきたいですね。横綱になるまでには時間がかかりましたが、その中ですごく良い経験ができたし成長することができました。

ただ、相撲においては、まずは体を作らないと技術面やメンタル面に到達しない。日々の稽古を重ねて、とにかく実力をつけることが前提にあって、その上で番付がある程度上がった段階で自分の経験を話してあげたいと思っています。

(日刊スポーツ提供)

━━教え方で意識している面はありますか

技術面とか以前に、まずは「なにくそ」という強い気持ちがなければ、技は出てこないものです。そして、とにかく厳しい稽古を重ねることが大事だと思っています。何が自分に合っているのか合っていないのかに気付くことができます。

延々と同じことを繰り返す力士もいますが、それでは成長がない。稽古場で体で感じて覚えていかないと、何が良いのか悪いのか気付かないと思うんです。

その上で、親方として大事だと感じているのは、個々の力士の特徴をしっかり把握し、変化を見逃さないことだと思っています。例えば、体調はどうなのか、体重はどうなのか、何が必要なのかを見極め、それを力士に伝えることが重要です。前の話と重複してしまいますが、まだまだ僕も新米親方ですから。私にとっても、これからの学びが多いと感じています。

現役時代は病院から直接本場所に行くこともあった

直接本場所に行ったのは、出場しなければならないという理由だけですよ。その前に体調管理をしっかりしろよ、という話なのですが。

そもそもメンタルが強い・弱いというのはどういう状態なのでしょうか。力士を指導する側がうまくメンタルをコントロールして、対応させるのが大事な気がします。

━━弟子への接し方で気をつけていることは

稽古だったらあまり教えすぎないことでしょうか。何よりも、まずは体をしっかりと作ることです。力士に話をする上では、分かりやすく、はっきりと伝えるようにしています。

お金に対する考え方

━━現役時代と親方とでは変わった

やっぱり全然違いますよ。現役時代は自分がやりたいことを思うままにやっていました。

でも今は部屋に力士が20人いて、運営しなければいけません。出費もものすごく多いです。資金の使い方は、現役時代よりも今のほうが意識しています。そうした面を考えると、経営という意味では親方(という職業)は非常に面白いです。

現役時代には後援会の方々と交流する機会はあまりなかったのですが、今では後援会の方々をはじめ、支援してくれる方々、部屋がある茨城県の行政の方々など、多岐にわたります。そういった支えてくれる方々との会話を通じて学ぶことも多いと感じています。

━━現役時代に資産運用などはしていましたか

資産運用をしていた時期もありましたが、そこまで大きくはしていませんでした。相撲をとることが最優先だったし、大事なのは分かっていたのですが。

NFLの選手にもいろいろ資産運用をやっている人は多いと聞きますが、たとえ本業で高い報酬をもらっていても、運用で良くない結果になるケースもある。そういったことを考慮すると、力士として謙虚に生きることが大切だと現役時代は強く感じていました。

━━引退後には大学院にも通った

そうですね。もともとこれまでにない新しい相撲部屋を運営したい、という強い思いがありました。

明確な目標があったので、通うごとに徐々に正解が見えてくるような感覚がありました。ただし、一緒に学んだ人々の中には、相撲部屋の経営について良い意味で突拍子もない考えを持つ人もいて、その視点はすごく参考になりました。

━━修士論文も書いた

テーマは「新たな相撲部屋の経営のあり方に関する研究」です。中学を卒業してから相撲界に入ったので、全く知らないことだらけ。大学院での勉強や課題は本当にきつくて、何度もやめようかと思いました。

それでも学んだこと全てを相撲部屋に活かしたかったから、大変でも続けられたと思っています。食事、稽古、部屋の運営などについて、同時期に大学院で勉強した社会人の方々から突拍子もない意見を聞くことができ、本当にためになりました。

━━振り返ってみて現役時代に学んでおくべきことはあるか

お金の勉強はしておいたほうが良かったと、今になって改めて感じています。部屋を持ってみて、その重要性が分かりました。

部屋を持ってから勉強すると現役を引退してからになるので、どうしてもスタート地点が遅くなってしまいます。資産運用について若いうちから学んでおくことは、非常に良いことだと思います。

(日刊スポーツ提供)

━━今後の目標は

所属する大の里が春場所で優勝しました。今後の目標は、横綱を育てたいですね。

以前、二子山部屋には幕内力士が10人もいた時期がありました。それと同じくらいの規模で関取衆を増やしたいですね。「あの部屋に入ったら最低でも十両にはなれる」と言われるような部屋にするのを目指しています。

力士として過ごす時間は、楽しいことや良いことばかりではありません。我慢しなければならないケースもあります。そういった経験を教えるためには、私自分も成長しなければならないと感じています。そして、強い力士を育てることを目指して、これからも努力していきたいと思っています。

〈プロフィール〉

二所ノ関親

二所ノ関親方(第72代横綱・稀勢の里寛)

1986年7月3日生まれ、茨城県出身。幼少期から相撲に親しみ、2002年に鳴門部屋に入門。翌年には初土俵を踏み、持ち前の粘り強い取り口と鍛え抜かれた体で着実に番付を上げていった。2017年1月、大相撲初場所で悲願の初優勝を果たし、横綱昇進。その後も多くの激戦を繰り広げ、相撲ファンの心をつかんできた。特に、負傷しながらも優勝を決めた2017年の春場所は、彼の不屈の精神を象徴するものとして語り継がれている。2019年1月に現役を引退し、年寄・二所ノ関を襲名。現在は二所ノ関部屋を運営し、若手力士の育成に尽力している。強さと誠実さを兼ね備えた親方の指導のもと、未来の横綱を目指す力士たちが日々稽古に励んでいる。

#大の里 #横綱

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FPメディア編集部

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