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データセンター投資拡大から恩恵を受ける『周辺』銘柄

データセンター投資拡大から恩恵を受ける『周辺』銘柄

(画像=SBI証券)

この記事は2025年2月19日にSBI証券で公開された「データセンター投資拡大から恩恵を受ける『周辺』銘柄」を転載したものです。
掲載記事:データセンター投資拡大から恩恵を受ける『周辺』銘柄

データセンター投資は、昨年に続いて2025年も大幅に増加する見通しです。データセンター投資で恩恵が大きい銘柄と思われるのはエヌビディアですが、今回は物色が広がる可能性を考慮して、これまで相対的に物色が活発でなかったとみられる周辺銘柄を中心にご紹介いたします。

図表1 注目銘柄

図表1 注目銘柄

(画像=SBI証券)

(1)データセンター投資が急増見通し

〇ハイパースケーラーの設備投資は25年も高水準

ハイパースケーラー(※)と呼ばれるIT大手、マイクロソフト、メタ、アルファベット、アマゾンの10-12月期決算が出揃い、2025年12月期の設備投資計画も高水準であることが判明しました。

4社合計の設備投資額は、2024年12月期に前年同期比59%増の2,227億ドルとなったのに続いて、2025年12月期は同46%増の3,252億ドルの計画です(図表2)。

この数字は設備投資全体であるため、このうちいくらがデータセンターに振り向けられるかははっきりしません。しかし、会社のコメントや業界状況から、過半がデータセンター向けで、増加分の多くがデータセンター投資によるとみられます。

※システムに対する需要の増加に応じてソフトウェア・アーキテクチャを拡張できるデータ処理方法である「ハイパースケール・コンピューティング」に由来し、このようなサービスを提供できる大規模なデータセンターを保有するIT大手を指します。

Bloombergアナリストのデータセンター投資見通し

Bloomberg IntelligenceのIT業界アナリストのレポート(2025年2月5日付)によると、世界のデータセンター投資額は、2024年の660億ドル程度から2025年には1,100億ドル程度へ大幅に増加する見通しで、2027年の1,350億ドルで当面のピークを付けると見込まれています。

この予想は、データセンターの建設計画の集計額が2024年9月末の5,739億ドルから2024年12月末に7,710億ドルに34%と急増したことを基に予想されており、ある程度信頼性が高いと考えられます。

この建設計画の増加をけん引したのが88%増となった米州と90%増となった欧州です。米州の建設計画額は全体の半分近くを占める3,630億ドルに増加して、この大部分が米国と考えられます。データセンターに対するIT業界の投資意欲は、昨年末にかけて非常に強くなったことがうかがえます。

〇巨額のデータセンター投資計画「スターゲイト」も

また、1/21(火)にはソフトバンクグループ、オープンAI、オラクルの3社が中心となってAIデータセンターを建設する「スターゲイト」計画が発表されました。

今後4年間で最大5,000億ドル(約76兆円)、直ちに1,000億ドル(約15兆円)の投資に着手するとして、その額の大きさに株式市場では驚きをもって迎えられました。

「スターゲイト」では、AIデータセンターを利用する企業を開拓していく必要があると考えられるため、発表された投資額はあくまで「営業目標」と考えられます。しかし、ハイパースケーラーだけでなく、一般の事業会社がAIを業務に本格的に取り入れる動きが始まろうとしていることが背景にあるとみられます。

図表2 ハイパースケーラーの設備投資額

図表2 ハイパースケーラーの設備投資額

(画像=SBI証券)

(2)データセンター投資から恩恵を受ける銘柄群

第1節ではデータセンターへの投資が2025年に急増、その後も増加が続く見通しであることをみてきました。データセンター投資に関わる企業は引き続き注目できそうです。

データセンター投資で恩恵と言えば、売上金額、売上構成比ともに圧倒的に大きいのは、AI半導体市場の9割近くを支配するエヌビディアです。

同社の売上はAI半導体の需要が急拡大したことで2023年1月期の270億ドルから、2026年1月期に1,295億ドルに拡大する見通しです。同社の株価は2022年の14.61ドルから2/14(金)の138.85ドルまで9.5倍の上昇となり、AI関連物色の中心となってきました。

最近では「ディープシーク」ショックで大きく調整する場面がありましたが、AI半導体の需要見通しおよび市場シェアに大きな変化をもたらすものではないとみられ、引き続き同社はAI関連物色の中心になると考えられます。

そのほかでは、AI半導体を製造する2社のほか、AIコンピュータに使われるDRAM(揮発性半導体メモリー)、AIコンピュータのデータ処理量が増えることで、データセンター内やデータセンター間の通信能力増強が必要となって需要が拡大してる通信機器向け半導体なども折に触れて物色されてきました。

また、エヌビディアが製造したAIコンピュータのモジュールをサーバーとして組み立て、システムとしてデータセンターに納入する企業も恩恵を受けて物色される場面がありました。

一方、後半にリストアップした【周辺機器】、【空調】は相対的にさほど注目されてこなかったかもしれません。しかし、第1節でみたようにAIデータセンターに対する投資が大きくなることで、これら銘柄にも注目が高まることが想定されます。第3節では、これら銘柄を中心にご紹介いたします。

【AI半導体】
エヌビディア(NVDA) AI半導体市場の9割近くを支配する、AIソフトウェアでもトップ級
ブロードコム(AVGO) 特定顧客向けに製造を請け負い、10年の歴史がある
AMD(AMD) 昨年から参入、2025年売上は77億ドルの市場予想

【その他半導体】
マイクロンテクノロジー(MU) 半導体メモリー大手、AIコンピュータに高性能DRAMが使われる
ブロードコム(AVGO) データセンター内ネットワーク機器向け半導体
マーベルテクノロジーグループ(MRVL) ネットワークおよびストレージ向け半導体

【AIサーバー】
デル テクノロジーズ C(DELL) PC、ストレージのほかAIサーバーのシステムを製造

スーパー マイクロ コンピューター(SMCI) サーバーやストレージ、AIサーバーが伸びる

【周辺機器】
シスコシステムズ(CSCO) スイッチ(デバイス間でデータを送受信するための通信機器)
アリスタ ネットワークス(ANET) データセンター向けのネットワーク機器&ソフトウェア
コーニング(GLW) 光ファイバー、コネクター
イートン(ETN) 配電設備など電力管理
バーティブ・ホールディングス(VRT) 無停電電源装置、冷却装置
エンベント・エレクトリック(NVT) 液体冷却装置
クレド テクノロジー グループ(CRDO)  接続ソリューション

【空調】
ジョンソンコントロールズ(JCI) 空調システム
コンフォート システムズUSA(FIX) 空調サービス

図表3 リストアップ銘柄の投資指標

図表3 リストアップ銘柄の投資指標

(画像=SBI証券)

(3)注目銘柄をご紹介

データセンター投資の拡大によって最も恩恵が大きいと思われるのはエヌビディア(NVDA)ですが、この点についてはここ2年近く市場で織り込みが進んできました。

例えば、2024年10月16日付「再び相場上昇をけん引するエヌビディアをより深く解説!!」をご参照ください。

今回はAI半導体以外の銘柄から、比較的にデータセンター関連として注目されてこなかったと見られる銘柄を中心にご紹介いたします。

マーベルテクノロジーグループ(MRVL)

【特定顧客向けAI半導体が伸びる】

ネットワーキングとストレージ向けの半導体が主力の会社です。データセンター部門の売上は2024年1月期に22.2億ドルで全体の40%を占めます。市場コンセンサスでは2025年1月期は41.5億ドル(前年比87%増)、2026年1月期は62.2億ドル(同50%増)と大きく伸びる予想です。

データセンター部門の売上は、特定顧客向けAI半導体、スイッチ(イーサネットスイッチ向け)、インターコネクト(データセンター内の通信機器向け)、ストレージなどからなります。2024年4月の会社説明資料では、2023暦年のデータセンター売上実績の210億ドルから2028暦年に750億ドルへ、5年間の年平均成長率が29%で伸びるポテンシャルがあるとしています。この大幅な増加をけん引するのが特定顧客向けAI半導体で、66億ドルから429億ドルに増える可能性があるとしています。

コーニング(GLW)

【光ファイバー関連が増える】

ガラス関連製品を様々な産業に提供している企業。1970年に低損失光ファイバーを初めて開発した会社で、光ファイバー、同ケーブル、光コネクトの分野で引き続きパイオニアとなっています。液晶ガラス基板で首位、スマホ向けガラス「ゴリラ」が高シェアです。生成AI関連の製品を含むオプティカル・コミュニケーション (2023年売上構成比30%)は、顧客は通信事業者と大企業があり、足もとでは前者の市場は低調なものの、後者の市場は生成AI向けに活況となっています。

10-12月期は、データセンター関連がけん引してオプティカル・コミュニケーションの売上は 前年同期比51%増でした。その他部門の売上は、ディスプレイテクノロジーが同12%増、スペシャルティマテリアルズが同9%増、環境技術が同7%減、ライフサイエンスが同3%増、ヘムロックおよび新興ビジネスが同5%増でした。1-3月期の売上は前年同期比10%増、コアEPSは同約30%増になる見通しを発表しています。

詳しくは、2024年9月4日付「株価大幅上昇のフジクラは北米DC向けが好調!!米国の類似銘柄を探る」をご参照ください。

バーティブ・ホールディングス(VRT)

【データセンターの電源、冷却装置】

ITインフラ関連機器メーカー。業界初のコンピュータルーム用空調設備を製造したリーバート社が源流で、2016年にエマソンエレクトリックからスピンオフしました。データセンターや通信事業者向けに無停電電源装置や冷却装置などを供給します。

10-12月期決算は、データセンターの旺盛な需要を反映してオーガニック売上成長が前年同期比27%増、調整後EPSは同77%増と好調でした。同期の受注は欧州・中東・アフリカ地域の落ち込みで前年同期比横ばいにとどまり、過去12ヵ月で約30%増となるトレンドから下振れましたが、顧客の発注タイミングによる一時的な減速とみられます。2025年12月期のガイダンスは、オーガニック売上成長は前年比15~17%増、調整後営業利益は前年比23~26%増です。

シスコ システムズ(CSCO)

【通信機器の需要が改善基調】

通信機器メーカーで世界最大手で、主力はネット接続用ルーターとスイッチ。M&Aによりセキュリティなどソフトウェア事業を強化、2024年3月にマシンデータのスプランクの買収を完了しています。主力の通信機器(2024年7月期に54%を占めます)では、顧客サイドの過剰在庫が解消しつつあるなか、AIデータセンターの投資拡大を受けて成長軌道に回復しつつあります。

11-1月期の売上は前年同期比9%増でスプランクの買収効果を除くと同1%減と低調でしたが、市場予想を上回りました。プロダクト受注は同29%増で、スプランクを除いて同11%増と事業モメンタムの改善が示されています。

ジョンソンコントロールズ (JCI)

【北米の需要が好調】

ビル・データセンター管理や空調システム、産業用冷却装置の大手です。2016年にセキュリティ関連のタイコと経営統合しました。業績の好調について会社は、家庭用空調事業を売却するなど事業ポートフォリオを整理して、ビル関連に特化した戦略が奏功しているとコメントしています。データセンター関連としても注目できそうです。

10-12月期決算は北米がけん引して売上が前年同期比4%増、売却事業の影響を除くオーガニックには同10%増で、市場予想を3%上回りました。受注はオーガニックベースで同16%増と好調です。EPSは前年同期比26%増で、市場予想を8%上回りました。2025年9月期の業績ガイダンスは、売上が前年比一桁台半ばの伸び、部門営業利益率が前年比0.8%ポイントの改善、調整後EPSは3.50~3.60ドルです。

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