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アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~相互関税ショックと米国市場見通し~

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 アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~相互関税ショックと米国市場見通し~

(画像=SBI証券)

この記事は2025年4月7日にSBI証券で公開された「アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~相互関税ショックと米国市場見通し~」を転載したものです。
掲載記事:アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~相互関税ショックと米国市場見通し~

先週の米国株式市場は、トランプ政権が発表した「相互関税」が市場予想をはるかに上回る高関税かつ広範囲にわたったことから、景気減速とインフレが同時に起こる「スタグフレーション」が懸念されて週後半の2日間に急落しました。今週の株価材料として、相互関税の発動、3月雇用統計、パウエルFRB議長の講演、などが注目されます。

今回はトランプ政権の「相互関税」が発表された翌日4/3(木)に株価が上昇した銘柄から、フィリップ モリス インターナショナル(PM)コカ-コーラ(KO)マクドナルド(MCD)AT&T(T)ギリアド サイエンシズ(GILD)を選んでご紹介いたします。

図表1 S&P500指数のローソク足(週足、2年)

図表1 S&P500指数のローソク足(週足、2年)

(画像=SBI証券)

100週移動平均線を割り込んでおり、一旦株価下落の値幅は出し切った可能性が高いとみられます。当面は関税引き下げ交渉をにらみながら戻りを試す展開が期待できるでしょう。ただ、高値まで戻すには少なくとも数ヵ月はかかると考えられます。

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

(画像=SBI証券)

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で9.1%、ダウ平均は7.9%、ナスダック指数は10.0%の大幅続落となりました。

4/2(水)夕方に発表されたトランプ政権の「相互関税」が想定以上に攻撃的かつ広範囲にわたったことから、主要3指数とも大幅に下落しました。S&P500指数は4/3(木)、4/4(金)の2日間で10.5%下落しました。

米国が他国に課す関税が米国企業活動に混乱をもたらす上、今後各国から対抗措置も想定され、広範囲な貿易戦争に突入することが懸念されています。また、景気悪化と物価上昇が共存する「スタグフレーション」は、株式の投資環境として最悪の状態であることが嫌気されました。

経済指標も冴えませんでした。2月求人数、3月ISM製造業景気指数、3月ISM非製造業景気指数とも前月から悪化して市場予想を下回りました。

業種指数は全面安でした。ディフェンシブの生活必需品、公益事業などの下落が相対的に小幅となる一方、OPECプラスが予想以上の増産を決めて原油価格が下落したエネルギー、テクノロジー株下落の影響を受けた情報技術、景気敏感と捉えられた金融などの下落が大きくなっています。

個別銘柄で下落率が最も大きいボーイング(BA)は、1980年から45年間続いた航空機の関税適用除外が停止となる可能性が嫌気されたとみられる。また、米国の関税に対する報復措置として各国からの受注に影響が出る可能性が懸念された可能性がありそうです。

今週の米国株式市場

100週移動平均線を割り込んでおり、一旦株価下落の値幅は出し切った可能性が高いとみられます。当面は関税引き下げ交渉をにらみながら戻りを試す展開が期待できるでしょう。4/4(金)終値でS&P500指数の予想PERは18.8倍まで低下しています。

今週の株価材料として、相互関税に対する各国の反応、3月物価指標、FOMC議事要旨(3月18日、19日開催分)などが注目されます。

トランプ政権の「相互関税」に対して、各国がどのような関税引き下げ交渉、あるいは報復措置をとるのか注目されます。引き下げ交渉に成功する国が出てくれば市場に歓迎されるでしょうし、報復措置が広がるようなら、さらに市場心理を悪化させる可能性がありそうです。4/4(金)に中国が米国からの輸入品に34%の関税をかけると発表(4/10(木)に発動予定)、一方、ベトナムは週末に米国からの輸入品に対する関税撤廃を提案していることが判明しています。

4/10(木)に米国の3月消費者物価指数は、総合指数が前年比+2.6%の予想(前月は同+2.8%)、コア指数が前年比+3.0%の予想(前月は同+3.1%)、3月生産者物価指数は総合指数が前年比+3.3%の予想(前月は同+3.2%)、コア指数が前年比+3.6%の予想(前月は同+3.4%)です。生産者物価は前月から伸びが高まる予想で、関税の影響が出ている可能性がありそうです。

FOMC議事要旨では、トランプ関税の発動を控えてFOMCメンバーがどのような議論をしていたか注目されます。

経済指標では上記のほか、4/11(金)に米国の4月ミシガン大学消費者信頼感指数(前月の57.0から54.0に悪化の予想)、などの発表が予定されています。

「相互関税」ショックと今後の相場見通し

相互関税の発表が市場に大きなショックを与えた理由と、今後の相場見通しについて、筆者の見方をご説明いたします。まず、相互関税がショックとなった理由として、以下の3点があげられます。

【トランプ「相互関税」のショック】

(1)ホワイトハウスが計算した各国の対米関税率が想定外

ホワイトハウスは各国の関税率、為替操作、非関税障壁を考慮した独自計算の対米関税率を公表、これに対して相互関税率を決めたため、想定外の高関税がかかることとなりました。関税引き上げが100%輸入物価に反映される前提で、筆者の試算では米国の輸入物価は23%上昇する見込みです(なお、ホワイトハウスの関税リストに名前がなかった、メキシコ、カナダ、ロシアは10%として計算しました。)

(2)東南アジア諸国にも高関税

ライバル視する中国だけでなく、東南アジアにも高関税を課すことで、消費財の多くが高関税を迂回する経路がなくなり、米国の消費者物価指数を押し上げることが確実となりました。

(3)関税引き下げ交渉は時間がかかる

今回発表された関税率は交渉の出発点との位置づけですが、非常に広範かつ短期間のうちに(4/5(土)と4/9(水))に発動されるため、引き下げ交渉には時間がかかると見込まれます。これはトランプ政権の対応力が限られているとみられるためです。不安定な時間を過ごさなければならないということで、見切り売りが出た面もあるでしょう。

次に、今後の米国市場の見通しについてご説明いたします。

【米国株市場への影響】

(1)値幅調整は進んだ

S&P500指数は関税発表後2日間に10.5%下落、高値からの下落は17.5%に達しました。今後は関税引き下げ交渉が始まるため、一旦戻りも期待できるでしょう。ただ、(2)に述べる通り、この戻りが持続的なものになるかは疑問です。

(2)しかし、簡単には戻らない

昨年7、8月に相場急落から直ぐに戻したことが記憶に新しいと思いますが、今回はファンダメンタルズの悪化を伴う下落のため、そう簡単には全値戻しは期待できないと考えられます。関税による景気悪化の度合い、物価上昇の度合いを探るだけでも数ヵ月を要すると考えられるためです。

(3)中期的な米国経済の競争力は維持されよう

東南アジアで生産されている衣服や靴を人件費の高い米国で作ることが米国経済のためになるのか、甚だ疑問です。しかし、今回の関税が米国の競争力の肝である情報技術の強さに大きなインパクトを与えることはないとみられるため、中期的な米国株式の魅力は維持されるでしょう。

当面は不安定な相場が続きそうですが、米国経済のリセッションは「リスク」にとどまっており、これからその程度を見極める段階にあるため、持続的な下落相場に転じると考えなくても良いでしょう。

今週の5銘柄

今回はトランプ政権の「相互関税」が発表された翌日4/3(木)に株価が上昇した銘柄を図表4に抽出、通期EPSの修正動向や最近のニュースフローなども考慮して、フィリップ モリス インターナショナル(PM)、コカコーラ(KO)、マクドナルド(MCD)AT&T(T)、ギリアド サイエンシズ(GILD)を選んでご紹介いたします。

これら銘柄も米国市場がメルトダウンとなる中で4/4(金)には大幅下落となっているものも多いのですが、関税が相場のテーマになっている間は、相対的に堅調を保ちやすいと考えられるでしょう。

図表3 米国が高関税をかける主要国・地域

図表3 米国が高関税をかける主要国・地域

※ホワイトハウス資料をもとにSBI証券作成

(画像=SBI証券)

図表4 関税発表翌日4/3(木)に上昇したS&P100指数採用銘柄

図表4 関税発表翌日4/3(木)に上昇したS&P100指数採用銘柄

※BloombergデータをもとにSBI証券作成

(画像=SBI証券)

今週の注目銘柄

今週の注目銘柄

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、いずれも2025年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

(画像=SBI証券)

主要イベントの予定

主要イベントの予定

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

(画像=SBI証券)

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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