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49点差からの再出発―早稲田大学ビッグベアーズが示した「熱狂」と組織の進化

「春の49点差。そこからの再出発だった。」

その屈辱から、早稲田大学ビッグベアーズの「あがき」と「成長」の1年は始まった。

春の立命館大学戦、49点差での敗北。大きな点差で敗れたショックから1年が始まった。そこから、彼らの本当の戦いが幕を開けた。

「このままでは終われない」。夏の間、フィジカルとファンダメンタルを一から見直して鍛え上げた。秋のリーグ戦は全勝。しかし、全日本大学選手権・準決勝で再び立ちはだかった立命館の壁を越えることはできなかった。

それでも、主将は言い切る。「自分たちはここまで通用する。ここまで勝負できると分かった」と。

苦しみ、もがき、それでも「目の前の1プレー」に夢中になり続けた1年間。そこには、単なる勝敗を超えた、組織としての「進化」があった。

スローガンは「熱狂」。

自分たちが熱く取り組むことで、応援してくれる人々をも巻き込み、一体となって心を震わせる空間を作る。

本インタビューでは、主将やメンバーそしてチームを裏から支えた主務を含め3名に、激動のシーズンと、そこで培われたリーダーシップ、そして次なるステージへ向ける想いに迫る。


【主将】49点差からの再出発。組織を束ねた「言葉」と「スタンダード」

常に冷静に、チームが進むべき方向を言葉にし続けた主将・功能。彼が徹底したのは、敗北から目を背けず、組織の基準(スタンダード)を根本から変えることだった。

━━今シーズンを総括して。春の大敗から、どのような思いで駆け抜けましたか

(主将:功能)

春、立命館に49点差で負けたところから、僕たちの1年は始まりました。もともとそこからスタートしているようなものです。

夏の間、フィジカルやファンダメンタル(基礎)を本気で鍛え直して、「秋どれくらい勝負できるか」という挑戦のシーズンでした。リーグ戦は本当に「しんどい試合」しかなく、初戦から慶應戦まで、正直“負けるかもしれない”と感じる場面が何度もありました。

勝ってはいるけれど、課題が明確に見える試合ばかり。 その苦しさの中で、全員が自分の弱さを認め、課題を毎練習潰していく。その姿勢こそが、1年間の成長につながったと思います。

━━200人という大所帯。チーム作りで最もこだわったポイントは?

(主将:功能)

「スタンダードを上げる」ことです。

厳しいことも言いましたが、結局チームのレベルを決めるのは「一番下の人間」です。誰かが怪我をしたら勝てない、選手層が薄い、そんな組織では意味がない。だからこそ、生活態度、体づくり、技術、アメフト理解度まで、全ての“底”を上げることにこだわりました。

200人もいると「上の人間だけ頑張ればいい」となりがちですが、そうではなく全員で成長する。そこを徹底しました。

━━毎試合課題が出たとのことですが、具体的にどう乗り越えたのでしょうか

(主将:功能)

一番大きな課題だったのは「Same Page(セイムページ)」、つまり認識の統一でした。

シーズン序盤は、プレーする全員が「どう止めるか」「どう次のプレーを出すか」という全体像を把握できていませんでした。それを解決するため、週4〜5回、ほぼ毎日対面で話し込み、全員が同じ絵を描くまで徹底的に擦り合わせました。

もう一つは「どんな状況でも、常に平常心(ニュートラル)で目の前の1プレーに集中する」こと。

去年から続いていた “浮き沈みの激しさ” を断ち切るため、良い時も悪い時も一喜一憂せず、目の前の1プレーに集中し続けました。その成果が、48点差で勝利した6戦目の立教戦でようやく「こうやれば勝てる」という確信に変わりました。


【DF】躍動の裏にあった「苦悩」。後輩に支えられたコンバート

今年からDE(ディフェンスエンド)に転向し、10kgの増量を果たしながら持ち前のスピードで躍動した鈴木(衆)。彼が語ったのは、リーダーとしての虚勢ではなく、仲間への感謝だった。

━━今シーズンを一言で表すと?

(鈴木(衆))

みんなは「躍動」とか言うかもしれませんが、僕個人としては……「苦しい」1年でした(笑)。楽な試合は一つもなく、毎日もがき続けていた感覚です。

活躍した部分もありますが、それ以上にたくさんミスもしました。今年からDEに転向しましたが、アサイメント(役割)が難しい場面では、本当に後輩たちに支えられました。

━━「支えられた」とは?

(鈴木(衆))

1stダウン、2ndダウンでディフェンス陣が粘ってくれるからこそ、自分は3rdダウンでスピードを活かした勝負に集中することができた。

「自分にないものをメンバーが補い合って作られたチーム」だったなと。自分が頑張れたのも、後輩たちが頑張ってくれたおかげです。

━━立命館戦への手応えは?

(鈴木(衆))

最後の立命館戦、負けはしましたが前半のランをわずか12ヤードに抑え込みました。ディフェンスとしては「勝った」と思っています。個性を補い合い、ここまで通用することを証明できたのは誇りですし、単純に嬉しかったですね。


【主務】猛獣たちを支える。「動物園」の飼育員としての献身

個性豊かな選手たち(猛獣)を、社会に向けてつなぐ「架け橋」。主務・東は、フィールドの外側から組織の成熟を見つめてきた。

━━チームを支える立場として、どのようなことを意識していましたか

(主務:東)

対外的な窓口として、大学や連盟、企業の方々とのコミュニケーションを何より大切にしました。主将たちがチームの中を引っ張るなら、僕は外との信頼関係を作る役割。そうやって内と外をつなぐ“見えないところの調整”こそが、自分の仕事だと思っていました。

チーム内には個性的なメンバーが多いですが(笑)、そうした中で丁寧なコミュニケーションを積み重ね、少しでも組織としての信頼を作れたのなら嬉しいです。

━━チームの変化をどう感じていましたか?

(主務:東)

今年は、下級生の意識が劇的に変わりました。

これまでは「誰かがやってくれるだろう」という人任せな空気があったのですが、功能やヘッドコーチが「自分が何をすべきか」を問い続けたことで、1、2年生が自発的に発言し、行動するようになりました。

選手だけでなく、スタッフも含めて「チームのために何ができるか」を考え抜いた1年。それが今年の強さだったと思います。


【未来へ】大学スポーツの真価。社会で活きる「組織」と「今」への向き合い方

「熱狂」をスローガンに駆け抜けた1年。彼らが大学スポーツを通じて得たものは、勝利だけではない。社会へと続く確かな財産だ。

━━大学スポーツの経験は、これからのキャリアにどう活きると思いますか

(鈴木(衆))

マイナースポーツかもしれませんが、この小さなコミュニティの中にしかない「面白さ」を発見できました。一見何気ないことでも、深掘りすれば豊かな世界がある。社会に出てもただ見過ごすのではなく、自分なりの“面白いもの”を見つけ、自分の良さを信じて生きていきたいですね。

(主務:東)

「置かれた場所で何をすべきか」を考える力です。

スタッフとしてフィールドでは戦えませんが、日本一のために何ができるかを常に問い続けました。社会に出ても同じだと思います。どんな立場であっても、組織のために自分ができる最大限を考え、行動に移す姿勢を忘れずにいたいです。

(主将:功能)

「組織は生き物である」という学びですね。

人は入れ替わり、やり方も変わる。その変化は悪いことではない。大切なのは、ブレない「フィロソフィー(哲学)」を持ち、「今ある状況をどう良くするか」を常に考え続ける姿勢です。

そして何より、「今を全力で取り組む」こと。試合に出られる人間もいれば、怪我や立場の違いで出られない人間もいる。デプス(序列)は自分ではどうしようもない時もある。けれど、コントロールできるのは自分の行動だけです。

どんな状況でも“今”に向き合い、やり切る力。それが、僕たちが4年間で得た最大の武器だと確信しています。

FPメディア編集部

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