
新興国投資は、高い成長力によって、世界中の投資家から注目を集めています。
経済発展の波に乗り、時には先進国を凌ぐ勢いで成長を続ける新興国市場は、大きなリターンをもたらす可能性を秘めている一方、新興国特有のリスクがあります。
本記事では、新興国がどのような国々を指すのか、投資対象としての魅力は何か、リスクとは何か、そして、新興国投資を始めるための具体的な方法まで、詳細に紐解いていきます。
1. 「新興国」とはどんな国か?投資対象としての魅力とは
「新興国」という言葉を聞いたことはあっても、具体的にどのような国々が該当するのか、そしてなぜ投資の対象として魅力的なのか、明確に理解している方はそう多くないかもしれません。
ここでは、新興国の定義から、新興国の魅力まで詳しく解説します。
1-1. 新興国市場の特徴と先進国との違い
新興国市場は、成熟した先進国市場とは異なる高い成長性を秘めています。
先進国の経済は一般的に安定成長期にあり、市場の変動も比較的緩やかです。これに対し、新興国は経済発展の初期段階あるいは成長期にあり、目覚ましい経済成長を遂げる可能性を秘めています。ただし、社会インフラや制度の整備が途上であるため、市場の変動が大きくなる傾向があることには注意が必要です。
先進国では、確立された法制度、透明性の高い市場、そして高度な技術力が経済の基盤を支えています。一方、新興国では、豊富な労働力、低い生産コスト、そして急速な都市化などが経済成長の原動力となることが多いです。また、天然資源に恵まれた新興国も多く、資源価格の変動が経済に大きな影響を与えることもあります。
世界各国の株式市場はグローバルな投資指標として広く用いられているMSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)によって分類されています。
MSCIは、各国の経済規模、市場の流動性、市場へのアクセス性などの要素を総合的に評価し、世界各国の市場を「先進国(Developed Markets)」「新興国(Emerging Markets)」「フロンティア市場(Frontier Markets)」「スタンドアローン市場(Standalone Markets)」の4つのカテゴリーに分類しています。この分類は、国際的な投資戦略を策定する上で不可欠な情報源であり、毎年6月に見直しが行われます。
「フロンティア市場」は、新興国市場よりもさらに発展の初期段階にある国々の市場を指します。
この市場は、経済成長へ繋がる高いポテンシャルを秘めているものの、「金融市場の規模が小さい」「流動性が低い」「政治的なリスクが高い」など、新興国以上に注意すべき点が多いのが特徴です。投資を行う際には、これらのリスクを十分に理解しておく必要があります。
1-2. 主要な新興国インデックス
新興国株式への投資を考える上で、関連する主要なインデックスを把握しておくことは非常に重要です。その中でも最も代表的なのが「MSCIエマージング・マーケット・インデックス」です。
このインデックスは、MSCIが新興国と定義する24カ国(2025年6月時点)の株式市場を対象としており、約1,200銘柄で構成されています。このインデックスに連動する投資信託やETFを購入することで、手軽に新興国株式市場全体に分散投資することが可能です。

「MSCIエマージング・マーケット・インデックス」の構成国を見ると、中国、インド、韓国、台湾といったアジアの国々が大きな比率を占めていることが分かります。これは、アジアの国々が近年目覚ましい経済成長を遂げ、世界経済における存在感を強めていることの現れといえます。
世界の経済規模を示すGDP(国内総生産)のシェアは、大きく変化しています。2000年時点では、上位5カ国は米国、日本、ドイツ、イギリス、フランスといった先進国が独占しており、中国やインドはそれぞれ6位以下に位置していました 。
しかしその後、新興国の経済成長は加速し、中国は2010年頃に日本を追い越し、現在は名目GDPで世界第2位を維持しています 。
また、国際通貨基金(IMF)や各種金融機関の予測では、インドは2027〜2028年に名目GDPで日本・ドイツを抜き、世界第3位に浮上する可能性が高いとされています 。これは、新興国、特にアジア諸国が今後の世界経済で存在感を増していくことを示す重要な指標と言えるでしょう。
このような背景から「MSCIエマージング・マーケット・インデックス」に連動する金融商品に投資することは、まさに今後の世界経済の成長を担う新興国の成長性を、取り込む手段となるでしょう。
また、かつて新興国の経済成長を語る上で欠かせないキーワードとして、BRICs(ブリックス)がありました。BRICsは、ブラジル(Brazil)、ロシア(Russia)、インド(India)、中国(China)の頭文字を組み合わせた造語で、2000年代初頭にゴールドマン・サックスのエコノミストによって提唱されました。これらの4カ国は、当時、高い経済成長率を示しており、将来的に世界経済における影響力が増すと予測されていました。
ブラジル:
南米最大の経済規模を誇り、広大な国土と豊かな天然資源を有します。特に、大豆やコーヒーなどの農産物、鉄鉱石などの鉱物資源の生産・輸出が盛んで、世界の食料とエネルギーの供給において重要な役割を担っています。
ロシア:
天然ガスや原油など、エネルギー資源に恵まれた国です。穀物や金属の生産も多く資源国としての影響力が大きい一方、地政学的リスクが高まっている点には注意が必要です。
インド:
世界第2位の人口を抱え、その多くが生産年齢人口(15~64歳の働き手)で構成されています。IT産業の成長が著しく、世界的にソフトウェア開発やITサービスのアウトソーシング拠点として注目されています。一方で、インフラ整備の遅れは依然として課題が残っており、今後の課題となっています。
中国:
世界最多の人口と広大な国土を背景に、1980年代の改革開放政策以降、製造業を中心に急成長しました。近年は、経済成長の質的な転換を目指し、「世界の消費地」としての地位を高めています。
BRICsという言葉は、これらの国々の経済成長の勢いを象徴するものとして、長らく投資家の間で注目されてきました。現在でも、これらの国々は重要なポジションであり、その経済動向は世界経済全体に大きな影響を与えています。
2. 新興国投資の魅力
新興国投資は、先進国投資にはない独自の魅力とメリットがあります。ここでは、主な理由を解説します。
2-1. 高い経済成長
新興国投資の最大の魅力は、その高い経済成長力にあります。
先進国の経済成長率が比較的緩やかなペースで推移するのに対し、新興国は、高い成長率を示すことが期待されています。国際通貨基金(IMF)の最新予測(2025年7月)によると、世界の実質GDP成長率は2025年で3.0%と見込まれています。
中でも新興国の成長率は2024年が4.3%、2025年が4.1%、2026年が4.0%と堅調に推移する一方、先進国は2024年が1.8%、2025年が1.5%、2026年が1.6%と緩やかな伸びにとどまる見通しです。
国別では中国が2025年に4.8%、インドが同年6.4%の成長率を記録すると予測されており、アジアの新興国が引き続き世界経済を牽引すると見られています。
この高い経済成長率が期待される背景には、いくつかの要因があります。そのうちの一つが、生産年齢人口の増加です。多くの新興国では、15歳から64歳までの生産年齢人口、いわゆる働き手が増加傾向にあり、これは、先進国で少子高齢化が進み、労働力人口が減少している状況とは対照的です。
生産年齢人口の増加は、経済活動の活発化を促し、生産性の向上、さらには経済全体の成長に大きく貢献します。
さらに、人口増加は、労働力の供給を増やすだけでなく、消費活動の拡大、つまり内需の拡大にも繋がります。新興国では、経済発展に伴い、所得水準が向上する人々が増えています。
これらの新たな中間層は、より多くのモノやサービスを消費するようになり、国内市場の活性化を促します。つまり、内需の拡大は新興国企業の収益増加に直結し、結果として株価の上昇要因となるため、投資家にとって魅力的な要素といえるでしょう。
2-2. ポートフォリオの分散効果
新興国投資は、分散投資の効果を高めるというメリットもあります。先進国市場と新興国市場は、それぞれ異なる経済サイクルや成長要因を持っています。
例えば、先進国の景気が減速した場合でも、新興国が高い成長を維持するといったケースは十分に考えられます。
このように、異なる動きをする可能性のある資産を組み合わせることで、ポートフォリオ全体のリスクを抑えることができます。新興国株式は、一般的にハイリスク・ハイリターンの特性を持つと考えられていますが、先進国株式と組み合わせることで、バランスの取れたポートフォリオを構築することができるかもしれません。
分散投資は、「卵を一つの籠に盛るな」という投資の格言にもあるように、リスクを管理するための基本的な戦略の一つです。
新興国株式をポートフォリオに組み入れることで、地理的な分散、経済成長の分散、そして市場の特性の分散といった、多角的な分散効果を期待することができます。ご自身のリスク許容度によっては、新興国への投資を検討してみてはいかがでしょうか。
2-3. 人口増加や中間層の台頭による内需拡大
新興国における人口増加とそれに伴う中間層の台頭は、内需拡大の強力な原動力となります。
経済成長によって所得水準が向上した人々は、食料品や衣料品といった生活必需品だけでなく、耐久消費財、教育、医療、旅行、レジャーなど、より多様なモノやサービスへの支出を増やします。
この内需の拡大は、新興国市場の成長を支える大きな柱です。国内市場が活性化することで、新興国に拠点を置く企業の収益が増加し、その結果、株価の上昇が期待されます。世界経済の動向に左右されにくい内需主導の成長は、新興国経済の安定性を高める要因ともなり、長期的な視点での投資において重要なポイントとなります。
特に、中国やインドのような膨大な人口を抱える国々では、中間層の規模も非常に大きく、その消費行動が世界経済に与える影響は無視できません。
これらの国々の内需拡大の恩恵を受ける企業は、今後さらなる成長を遂げる可能性を秘めており、投資家にとって魅力的な投資機会を提供すると言えるでしょう。
3. 新興国投資の主なリスクと注意点
新興国投資には、魅力的なメリットがある一方で、先進国投資には見られない特有のリスクも存在します。
これらのリスクをしっかりと理解することが、新興国投資を成功させるための重要な鍵となります。資産運用における「リスク」とは、「リターンの振れ幅」のことを指しますが、過去のデータを見ると、新興国市場は他の市場と比較して、価格変動が大きい傾向にあります。これは、新興国市場が持つ固有のリスクに起因するものです。
3-1. 政治・経済の不安定さ(カントリーリスク)
新興国投資において、最も警戒すべきリスクの一つが「カントリーリスク」です。カントリーリスクとは、投資対象となる国や地域の政治的・経済的な情勢の変化によって、投資した資金に損失が生じたり、期待した収益が得られなくなる可能性を指します。
具体的には、政情不安、クーデター、内戦、政府の政策の急激な変更、汚職、あるいは予期せぬ金融危機、経済制裁などが挙げられます。これらの要因は、個々の企業の業績だけでなく、株式市場全体、さらには為替レートにも大きな影響を与え、投資家の資産が大きく目減りする可能性があります。
先進国と比較して、新興国は政治体制が安定していなかったり、経済構造が脆弱であるケースが多く、社会情勢の変動によって株価や為替が大きく揺れ動くリスクが高いと言えます。
投資を行う際には、投資対象国の政治情勢、経済指標、政府の政策などを常に注視し、カントリーリスクの変化に敏感に対応することが必要です。
3-2. 為替変動リスクと流動性リスク
新興国投資においては、為替変動も気を付けなければならないリスク要因です。
一般的に新興国通貨は先進国通貨よりも変動が大きいです。また、新興国への投資の多くは、その国の現地通貨建てで行われます。そのため、投資した時点と売却する時点での為替レートの変動が、日本円に換算した際の投資成果に大きな影響を与えます。
例えば、投資先の国の株価が上昇し、現地通貨ベースで利益が出たとしても、その国の通貨が円に対して安くなる(円高になる)と、円換算した際の利益が減少したり、最悪の場合、損失となる可能性もあります。
為替レートは、その国の経済状況、金融政策、国際的な資金の流れなど、様々な要因によって変動するため、予測が難しいという側面があります。
さらに、流動性リスクにも注意が必要です。新興国の金融市場は、一般的に先進国の市場に比べて取引量が少ない傾向があります。そのため、大量の株式を売買しようとした際に、希望する価格での取引が成立しにくかったり、最悪の場合、取引そのものが困難になる可能性があります。
流動性リスクが高いと、緊急時に資金を回収しようとしても、すぐに現金化できない、あるいは大幅な価格下落を受け入れざるを得ない状況に陥る可能性があります。特に、市場が混乱しているような状況下では、このリスクが顕在化しやすいため、注意が必要です。
3-3. 情報の透明性や法制度の未整備
新興国市場は、情報の透明性の低さや法制度の未整備といった課題も抱えています。
先進国に比べて、企業情報の開示基準が緩く、会計基準が国際基準に準拠していない場合もあります。また、投資家保護のための法的な枠組みが十分に整備されていない国も存在します。
このような状況下では、個人投資家が企業の財務状況や経営状況を正確に分析し、適切な投資判断を行うことは非常に難しいでしょう。また、不正な会計処理やインサイダー取引といった問題が発生する可能性も否定できません。
さらに、法制度の未整備は、投資家が紛争に巻き込まれた際に、適切な救済措置を受けられないリスクも意味します。これらの要因から、新興国市場は、高度な知識や情報収集能力が必要とされる、難易度の高い市場と言えるでしょう。
4. 新興国投資の3つの方法と選び方
先述の通り、新興国投資はその特性上、個人が直接分析し、投資を行うにはハードルが高い市場です。
しかし、適切な投資方法を選択することができれば、その成長の果実を享受できる可能性はあります。ここでは、新興国に投資するための3つの主要な方法と、それぞれの選び方について解説します。
4-1. 投資信託を活用した分散投資
新興国投資において、最も一般的かつ有効な方法の一つが投資信託を活用した分散投資です。
投資信託は、多くの投資家から集めた資金を一つにまとめ、運用の専門家であるファンドマネージャーが、その資金を様々な資産(株式、債券など)に分散して投資・運用する金融商品です。
投資信託を利用する主なメリットは以下の通りです。
プロによる運用:
投資信託では、資産運用の専門知識を持つファンドマネージャーが、綿密な調査と分析に基づいて投資判断を行います。彼らは、市場の動向、各国の経済状況、企業の業績などを常に監視し、最適なポートフォリオ構築を目指します。
詳細な企業分析:
優秀なファンドマネージャーの中には、投資対象となる現地の企業を直接訪問し、経営陣との面談や、工場の稼働状況を視察するなど、徹底的な企業分析を行う者もいます。このような詳細な調査は、個人投資家には時間的にも能力的にも難しい場合が多く、投資信託の大きな強みと言えるでしょう。
アクセス困難な市場への投資:
一部の新興国市場は、外国人投資家に対して直接投資の制限を設けている場合があります。例えば、インド株式への直接投資は、インド政府の規制により、個人投資家には難しい場合があります。しかし、新興国株式を組み入れた投資信託を通じてであれば、個人でも間接的にこれらの市場に投資することが可能です。
分散投資の実現:
投資信託は、通常、複数の銘柄に分散して投資を行うため、個別の銘柄に集中投資するよりもリスクを抑える効果が期待できます。特に、値動きの大きい新興国株式への投資においては、分散投資によってリスクを管理しながら、リターンを追求することが重要です。
投資信託を選ぶ際には、投資信託説明書(交付目論見書)などをよく読み、その運用実績、運用方針、手数料などを比較検討することが大切です。特に、新興国株式に特化した投資信託や、新興国を含むグローバル株式型の投資信託など、様々な種類がありますので、ご自身の投資目標やリスク許容度に合わせて適切な商品を選ぶようにしましょう。
4-2. ETF(上場投資信託)で低コスト運用
ETF(上場投資信託)も、新興国に投資する有力な選択肢の一つです。ETFは、特定の指数(例えば、MSCIエマージング・マーケット・インデックスなど)に連動するように設計された投資信託で、株式と同様に証券取引所に上場しており、リアルタイムで売買が可能です。
主な新興国株式ETFには、
Vanguard FTSE Emerging Markets ETF (ティッカー:VWO)
iShares MSCI Emerging Markets ETF (ティッカー:EEM)
などがあります。
ETFの大きなメリットは、一般的に、通常の投資信託に比べて運用コスト(信託報酬)が低い傾向にあることです。これは、ETFが特定の指数に連動することを目的としているため、ファンドマネージャーによる積極的な銘柄選択や売買が少ないためです。コストを抑えながら新興国市場に分散投資したいと考える投資家にとって、ETFは有力な選択肢となるでしょう。
また、ETFは、株式のように取引所が開いている時間であればいつでも取引できるため、リアルタイムな売買が可能です。指数の構成銘柄や連動性、取引量などを確認し、ご自身の投資戦略に合ったETFを選ぶようにしましょう。
4-3. 個別株投資で成長企業を見極めるポイント
新興国企業の成長をより積極的に取り込みたい投資家には、個別株投資も一つの選択肢です。
この方法は、高い成長が期待できる特定の企業を選び出し、その株式に直接投資するものです。成功すれば大きなリターンを得られる可能性がありますが、その反面、リスクも非常に高いことを理解しておく必要があります。
個別株投資を行う際には、新興国市場特有のリスク(情報の透明性の低さ、法制度の未整備など)がより高くなります。そのため、投資対象となる企業の財務状況、経営戦略、市場での競争力などを詳細に分析する能力が不可欠です。
また、その国の政治・経済情勢や為替レートの変動など、外部環境の変化にも常に注意を払いましょう。
新興国株式は、一般的に値動きが大きいため、投資のタイミングも非常に重要になります。もし、投資を開始するタイミングに迷う場合は、積立投資も有効です。積立投資は、定期的に一定金額を投資することで、購入単価を平準化し、高値掴みのリスクを低減する効果が期待できます。
個別株投資は、高度な金融知識と情報収集能力、そして高いリスク許容度が求められる投資方法であることを十分に認識しておきましょう。初心者の方は、まずは投資信託やETFから始めることをおすすめします。
5. 新興国株式市場の過去・現在・未来
新興国株式市場は、世界経済の変動や地政学的リスクなど、様々な要因によって常に変化しています。
過去の市場の動きを振り返り、現在の状況を把握し、そして将来の展望を描くことは、長期的な視点での投資判断において非常に重要です。
5-1. 過去の市場トレンドと主要イベント
新興国株式市場の過去のトレンドを振り返ると、いくつかの大きな波があります。
2000年代初頭には、BRICs諸国の経済成長が世界経済を牽引し、新興国株式市場は大きく上昇しました。しかし、2008年のリーマンショックや、その後の欧州債務危機など、世界的な金融危機が発生した際には、リスク回避の動きから先進国以上に新興国市場は大きく下落しました。
また、特定の国の政治・経済情勢の変化が、その国の株式市場だけでなく、他の新興国市場にも影響を与えることもあります。例えば、通貨危機や政情不安などが起こると、投資家のリスクに対する警戒感が高まり、資金が先進国市場へと流れることがあります。
過去の主要なイベントとしては、中国のWTO加盟(2001年)、インドのIT産業の成長、ロシアの資源価格の高騰、ブラジルの資源輸出の拡大などが挙げられます。これらの出来事は、それぞれの国の経済成長を加速させ、株式市場に大きな影響を与えました。
5-2. 今後の経済成長を牽引する国・地域
今後、新興国市場の成長を牽引する国として、最も注目されているのはやはり中国とインドです。
両国は、その膨大な人口と経済規模を背景に、世界経済におけるGDPシェアをますます拡大していくと予想されています。国際通貨基金(IMF)の予測では、2028年にはインドが第3位の経済大国になるとされており、その成長の勢いは今後も続くと見られています。
両国は、高い人口増加率と若い労働力人口の多さ、そして急速に進む都市化と中間層の拡大を背景に、内需が力強く成長していくことが期待されています。また、技術革新やインフラ投資なども積極的に進められており、これらの取り組みがさらなる経済成長を後押しするでしょう。
もちろん、中国とインド以外にも、高い成長ポテンシャルを秘めた新興国は存在します。東南アジア諸国、アフリカ諸国、南米諸国など、それぞれの地域で独自の成長ストーリーを描いている国々があり、これらの国々の動向も注視していく必要があります。
5-3. 世界経済や地政学リスクが市場に与える影響
新興国経済は、グローバルなサプライチェーンや国際貿易の枠組みに深く組み込まれているため、世界経済の動向は新興国市場に大きな影響を与えます。
世界経済が減速したり、保護主義的な動きが強まったりすると、輸出依存度の高い新興国は大きな打撃を受ける可能性があるからです。
また、地政学的リスクも新興国市場にとって無視できない要素です。紛争や地域的な緊張の高まり、主要国の政治的な対立などは、投資家のリスク回避姿勢を強め、新興国市場からの資金流出や株価の急落を招くことがあります。特に、一部の新興国は政治情勢が不安定な場合もあり、国内の政治的な混乱が市場に大きな影響を与えることもあるでしょう。
これらの外部要因は、新興国投資を行う上で常に意識しておかなければならない重要な要素となります。世界経済の動向や地政学的リスクを注意深く監視し、市場の変動に適切に対応していくことが、新興国投資を成功させるためには不可欠です。
6. まとめ
新興国投資は、高い経済成長力や人口増加による内需拡大により、将来のリターンが期待できます。特に中国やインドなどのアジア新興国は、今後の世界経済の成長エンジンとして注目されています。
一方で、カントリーリスクや為替変動、流動性の低さ、情報の不透明さなど、新興国特有のリスクも存在します。
こうした理由から、まずは投資信託やETFを活用した分散投資から始めることをおすすめします。また、積立投資によりリスクを抑えた長期的な運用も併せて検討しましょう。新興国投資は、適切なリスク管理と堅実な投資戦略を取ることで、ポートフォリオにおける成長エンジンとして活躍することができるでしょう。
リスク許容度に応じて、先進国投資との組み合わせを検討してみてはいかがでしょうか。