
海外で不動産を購入し、賃貸運用をしたとしても、必ず「出口」があります。つまり、「売却」をして初めて投資が完結したことになります。
今回は、そんな出口戦略についてお伝えしたいと思います。
さて、日本人投資家であれば、日本人に日本円で売却したいと思うかもしれませんが、不動産自体は海外にありますので、現地の法律に基づいて処理をしなければいけません。ただ、そこさえ理解しておけば、当然ですが日本人に売却することは可能です。
そこで現地の売却事情を少し見てみましょう。
1.タイの住宅用不動産価格インデックス推移(昨年同月比)

出典:タイ中央銀行
上記のグラフは2015年第2四半期から2025年第1四半期までのグラフで、昨年同月比を表したものになります。
グラフを見ていただければわかりますが、タイの住宅価格は、2025年3月に前年同月比3.49%上昇しました。タイの住宅価格は1992年から2025年まで平均3.60%で推移し、上下幅はあるにせよ、安定して2-3%前後で成長をしています。
また現地での売却を考える上で、非常に重要なのが「現地向けの住宅ローン」の存在です。タイでも住宅ローンは一般的になってきており、多くの方が住宅ローンを使って物件を購入しています。
ただし、日本と違いタイの住宅ローン金利は平均して3%〜5%であり、ほぼ変動金利となっています。また頭金として20%-30%を要求されることが多いです。
それでも80%以上の方が住宅ローンを使うということで、裾野が一気に広がった状態です。そのため、安定して不動産価格が維持されていると言っても過言ではないでしょう。
そして、バンコクのコンドミニアム供給戸数も見てみましょう。図2をご覧ください。2014年から2024年までのコンドミニアム供給戸数をグラフにしてみました。
2.バンコクのコンドミニアム供給戸数推移

出典:Bangkok Postよりエイリック作成
2018年が66,201戸と過去最大の供給が行われました。この2017年〜2019年の3年間は中国人投資家が最も活発に投資していた時でもあります。
そして、2020年にコロナが訪れ、一気に供給数が減り、2022年に少し復活。ただ2024年でコロナ禍の時と同じくらいの供給数になってしまいました。
これらは新築の物件数になっています。いよいよ持って、新築供給数が減ってきて中古市場がメインになってきたような、そんな印象があります。
2025年現在においても新築物件の供給戸数はおそらく3万戸前後だと思います。しかも価格が高騰しています。そう考えると、現地の方達は新築コンドミニアムよりも中古コンドミニアムに目が向きます。
また昨今の円安により、もし日本円での取引となると、割安での売却になる可能性があります。以下、図3をご覧になってもらえればわかりますが、タイバーツと日本円の推移です。明らかに円安・バーツ高傾向が見られます。
2021年からなんと40%近くバーツ高となっています。
3.タイバーツと日本円の推移

出典:Google Financeより抜粋(2025年9月26日時点)
これらを踏まえた上で、まず考えるべきなのは、「現地で現地の人に現地の通貨で売る」というのが基本路線になります。ここを日本円で取引をするメリットがほとんどありません。
具体的に言うと、2021年に1,000万円で購入した不動産を2025年に1,500万円で売却すると仮定したなら、買い手が日本人だと「値段を上げてきたなぁ」という印象がありますが、これがタイバーツであれば、2021年に300万バーツ(日本円で約1,000万円、1タイバーツ=3.4円計算)だったものが、2025年でも320万バーツ(日本円で約1,500万円、1タイバーツ=4.6円計算)となります。
日本円で考えると1.5倍ですが、タイバーツで考えると1.1倍弱です。それくらい為替が変わっています。どちらの方が売りやすいと思いますか?当然ですが、タイで売却した方が現段階では為替益が得やすいです。
また、もしうまく売れなくて同額の300万バーツで売却をしたとしても為替で儲かるわけですから、売却する側としてもかなり安心できると思います。
実際、今タイの不動産を売却されている方が非常に多いです。これらは2017年〜2019年頃に購入された方が多いのですが、ほとんどの方が為替だけで儲かっています。今、絶好の売り市場ということが言えるでしょう。
4.出口戦略の重要事項
最後に、不動産投資の出口戦略でとても重要なことをお伝えします。
4-1.売却を依頼する仲介会社の選定は非常に重要
4-2.売却金額(特に手取り額)を決めて、決断を早くする
この2点です。これは日本で不動産を売却する時にも通用するので、ぜひ覚えておいてください。
4-1.売却を依頼する仲介会社の選定は非常に重要
不動産の売却は必ず売却実績のある会社に依頼をしてください。不動産の販売(特に新築)はタイでは正直誰でもできます。理由はタイのデベロッパーが全て書類や登記などをやってくれるからです。
またデベロッパーが直接買主と連絡を取ることができるので、不動産会社と言っても、実際にはデベロッパーに紹介だけを紹介料をもらっているというケースもゼロではありません。
ただ、売却に関しては当然ながらデベロッパーは関与しません。あくまで個人の売主が個人の買主に売却をするわけですから、純粋な不動産仲介業としての仕事となります。
まず、買い手を探すために、現地のポータルサイトに掲載したり、買い手を探してくれる現地の不動産会社に依頼をしたり、その他集客をしなければいけません。
そして、内見対応もしつつ、いざ買い手が見つかったら、双方が合意した契約書を用意し、土地局と呼ばれる不動産登記をする場所に行き、所有権移転をし、個人の売主・買主に対してお金の送金対応や税金の支払いなどをやります。これは経験がないとできません。
逆を言えば、売却経験をしている不動産会社はタイの不動産実務を理解しているわけで、どこでトラブルになるか、どこがキーポイントになるか、その辺りを把握しています。ここは必ずチェックをして依頼をするようにしてください。
4-2.売却金額(特に手取り額)を決めて、決断を早くする
ここは特に海外不動産だからこそ、の理由です。日本ですと、マーケットに任せて、相場がこれくらいだから、この相場になるまで待つ、もしくは相場より高く売れそうだから早く売る、みたいなマーケットに合わせた価格設定をしがちですが、海外ではそうはいきません。
例えば、1,000万円で購入したタイのコンドミニアムを上述したようなデータや現地のポータルサイトを見て、1,200万円くらいだろうと思い、なんとなく依頼をして、1,100万円で指値が入ったとしても、「それなら売らない」という気持ちは非常によくわかります。
しかし、これが続くようであれば、不動産会社も売主も疲れてきます。ここで価格を下げるのか、それともまだまだ粘る、他の会社に依頼する、そういった方法もあると思います。
しかし、今まで見てきた結果を申し上げると、粘るのであれば、一度売却活動は停止して賃貸で運用を続ける方が結果的には良いです。もしくは売ると決めたら、決断は早めにしておかないと買い手はタイ人です。
ちょっと待って、というのは断られたという意味にとって、逃げることがほとんどです。当然ですが、不動産会社も「この人は売りたいと言っているけど、少しでも希望価格より下だと売らない」という判断をされて、「優先順位が下がる」リスクがあります。
これを防ぐために、「最低でも手取りでこれくらい欲しい」というラインを決めてあげたほうが結果的に良かったりします。
例えば1,000万円で購入した物件で、為替もあって利益が取れそう、ということであれば、「為替も込みで手取り1,100万円あれば、その瞬間売ってもらって構わない」と言っておくべきです。
ここで「手取り」と書いていますが、これはどういうことかというと、1,100万円で売れようが、1,200万円で売れようが、どうしたって税金や不動産仲介手数料がかかります。
しかも現地の税金に関しては不動産会社に代理で支払ってもらう必要があります。さらに現地の税金や仲介手数料は売却金額が決まらないと正式な金額がわからないケースがほとんどです。
なので、上記の通り、「手取りでこれだけ」と言ってくれた方が不動産会社は動きやすいです。特に買い手はすぐに逃げるので、不動産会社で価格が決められるというのはスピード勝負の中古マーケットではとても強い武器になるのです。
もちろん、「もしかしたらもっと高値で売れるかもしれない」、という欲はあると思いますが、最低限のラインを決めて、不動産会社とタッグを組んだほうが、時間的にも精神衛生的にも結果的に良いです。
またそうやって自分を信頼してくれた売主であれば、不動産会社からしても「次に良い案件が来たら紹介しよう」というモチベーションが生まれます。成功している投資家はこういった考え方をする人が多いです。これはぜひ覚えておいて欲しいです。
いかがでしたでしょうか?
全10回に渡ってタイの不動産マーケットや不動産投資に関する基礎知識やノウハウなどをお届けしましたが、具体的にタイの不動産をお持ちの方やこれから購入を検討しようという方は、ぜひタイにある日系不動産会社とチームを組んで、タイを満喫しつつ不動産投資も成功していただければと心の底から思います。
皆様のタイ不動産投資ライフが素敵なものになるよう、心よりお祈り申し上げます。