相続・事業承継

事業買収とは?基本知識と進め方、リスク管理を徹底解説

事業買収は、企業の成長戦略や新規市場への参入手段として注目される取引手法です。特定の事業や資産を取得することで、迅速に市場シェアを拡大したり、経営資源を再配分することが可能です。一方で、事業買収にはリスクや注意点も伴います。

本記事では、事業買収の基本的な意味や他の取引手法との違い、メリットやデメリット、そして進める際のリスク管理について詳しく解説します。事業買収を成功に導くためのポイントを知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

1. 事業買収とは何か?

事業買収は、企業が特定の事業を取得する取引の一種であり、M&A(合併と買収)の一形態です。このセクションでは、事業買収の基本的な仕組みについて説明します。

1.1 企業が特定の事業を買い取る取引のこと

事業買収とは、ある企業が他企業の特定の事業を買い取ることを指します。この取引では、買い取られる事業の範囲が明確に定められ、売り手と買い手の間で契約が締結されます。売却対象は、物的資産(設備や建物など)、人的資産(従業員など)、契約関係(取引先や顧客との契約)などが含まれます。

1.2 事業全体ではなく一部の事業資産や契約を取得する仕組み

事業買収では、企業全体を買収するのではなく、一部の事業や資産、契約だけを対象とする場合があります。たとえば、A社の製造部門だけを買収する、B社の特定ブランドを取得する、といったケースがこれに該当します。この仕組みにより、必要な資産や事業だけをピンポイントで取得できるのが特徴です。

2. 事業買収と事業譲渡、株式譲渡の違いとは?

事業買収と似た取引手法には、事業譲渡や株式譲渡があります。それぞれの違いを理解することで、適切な手法を選ぶことが可能になります。

2.1 事業譲渡は会社資産と負債を個別に移転する

事業譲渡とは、会社の特定の資産や負債を個別に移転する手法です。事業買収と似ていますが、法的には売却対象が明確に定められ、売り手が残存するケースが多いのが特徴です。

事業譲渡では、契約書に売却する資産や負債を細かく記載する必要があり、複雑な調整が求められます。

2.2 株式譲渡は会社の所有権そのものを移転する

株式譲渡は、会社の株式を買い取ることで、その会社の所有権を移転する手法です。これにより、会社全体が買い手のものとなります。

株式譲渡は、会社全体を取得するため、売り手が持つすべての資産・負債・契約が引き継がれます。そのため、事業単位ではなく企業全体の買収を希望する場合に利用されます。

3. 事業買収が行われる理由と目的

事業買収は、企業の戦略的な目的を達成するために行われます。このセクションでは、事業買収が行われる主な理由とその目的について説明します。

3.1 成長市場への進出やシェア拡大を目的とする

事業買収は、成長市場への迅速な進出や、市場シェアの拡大を目的として行われます。たとえば、競争が激しい業界において、競合他社の事業を買収することで、シェアを獲得し競争優位を確立することができます。

3.2 不要な事業の整理や経営資源の再配分

売り手企業にとっては、不要な事業を整理し、経営資源を再配分するために事業買収が行われることがあります。これにより、売り手は自社の中核事業に注力し、経営効率を向上させることが可能になります。

3.3 新規事業への迅速な参入を可能にする

新規事業に参入する際、ゼロから立ち上げるのではなく、既存の事業を買収することで、迅速に市場に参入することが可能です。この手法により、ノウハウや顧客基盤を活用し、スムーズな事業開始が実現します。

4. 事業買収のメリットとデメリット

事業買収には多くのメリットがある一方で、デメリットやリスクも存在します。このセクションでは、事業買収のメリットとデメリットについて詳しく解説します。

4.1 【メリット】市場シェアの拡大が可能

事業買収を行うことで、既存市場でのシェアを拡大し、競争力を強化することが可能です。また、買収した事業を活用して、新しい市場セグメントに進出することもできます。

4.2 【メリット】既存リソースを活用できる

買収した事業には、既存の顧客基盤や従業員、ノウハウが含まれています。これらのリソースを活用することで、事業運営をスムーズに進められます。

4.3 【デメリット】事業引き継ぎに伴うリスク

事業買収には、引き継ぎに伴うリスクがつきものです。たとえば、従業員の離職や、顧客関係の維持が難しくなる場合があります。

4.4 【デメリット】買収後の統合が失敗すると損失を生む

買収後の統合が上手くいかない場合、コストの増加や、期待していたシナジー効果が得られない可能性があります。この結果、大きな損失を被るリスクがあります。

5. 事業買収を進める際の注意点とリスク管理

事業買収を成功させるためには、適切な注意点やリスク管理が不可欠です。このセクションでは、具体的な注意点と対策について解説します。

5.1 事業価値の正確な評価を行う

事業買収を進める際には、対象事業の価値を正確に評価することが重要です。財務状況や市場ポテンシャルを詳細に分析し、適正な買収価格を算出します。

5.2 従業員や顧客の引き継ぎ対策を講じる

買収後の成功には、従業員や顧客のスムーズな引き継ぎが欠かせません。従業員には適切な説明を行い、顧客には継続的な信頼関係を構築するための対策を講じましょう。

5.3 法的リスクや契約上のトラブルに備える

買収対象の事業には、未払いの債務や隠れた負債がある場合があります。法的リスクや契約上のトラブルを防ぐために、法務デューデリジェンスを徹底的に行うことが重要です。

5.4 専門家のアドバイスを受けて進める

事業買収は専門性が高いため、弁護士や会計士、M&Aアドバイザーのサポートを受けて進めることをお勧めします。これにより、リスクを最小限に抑えることが可能です。

6. まとめ:事業買収とは何かを理解して成功につなげよう

事業買収は、企業の成長や市場参入を効率的に実現するための有力な手段です。しかし、成功させるためには、リスク管理や適切な準備が不可欠です。

本記事で紹介した内容を参考に、事業買収の基本を理解し、注意点を押さえた上で計画を進めてください。専門家のアドバイスを活用することで、より安全かつ効果的な事業買収が実現します。

FPメディア編集部

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