相続・事業承継

社長の引退年齢はどれくらい?後継者選びから引退後まで完全ガイド

  • 社長の引退年齢は、どれくらいなのか。
  • 社長が引退を決意した時にやるべきことは何か。
  • 社長は引退した後に何をするのか。

このようなお悩みをお持ちではありませんか。

本記事では、社長引退の平均年齢や引退決意後に社長がすべきことについて解説します。

1. 社長引退の平均年齢と最近の傾向

社長が引退する平均年齢と最近の引退の傾向について、解説します。

1-1. 社長の平均引退年齢

多くの経営者にとって、引退のタイミングは人生設計と大きく関わってくるものと言えます。実際のところ、日本国内における社長の平均引退年齢は60歳前後というデータが複数の調査で示されています。

その背景には、定年制度を設けていない中小企業でも、健康面や経営体力を考慮して60歳前後で区切りをつけるケースが多いことが挙げられます。たとえば、帝国データバンクの調査では社長交代時の平均年齢が60歳前後で推移していて、幅広い業種で同様の傾向がみられるようです。

ただし実際には65歳を超えても社長を続ける経営者も少なくなく、地域の事情や会社の規模によって差がある点は考慮すべきでしょう。

それでも目安として、60歳前後で一度は引退を検討するタイミングになると言えます。

1-2. 引退年齢が引き上がっている理由

近年では、社長の引退年齢が全体的に引き上がっていると指摘されています。

背景には、健康寿命の延伸と医療技術の進歩で、60代後半や70代でも十分に活動できる社長が増えている現状があります。さらに、経験豊富な経営者ほどビジネスチャンスを的確につかむ傾向があり、後任に任せるよりも自分が舵を取り続けたほうが安定感があると考える方も少なくありません。中には、定年退職という概念が薄い社長の場合、社外からも退任のタイミングを問われにくく、結果的に引退が遅れるケースも見受けられます。とりわけ中小企業では、後継者不足の問題もあって社長が長期にわたって現場を指揮することが一般化しています。

このような要因が重なり合い、以前よりも経営トップの引退年齢は確実に引き上がっていると考えられます。

引用元:帝国データバンク 全国「社長年齢」分析調査(2023 年)

1-3. 政府が社長の引退を勧める理由

一方で国や自治体は、ある程度の年齢に達した社長に対して早期の引退や事業承継を促す動きを活発化させています。これは、高齢化が進む中で事業承継が円滑に行われず、廃業や倒産、業績悪化のリスクが増大することを防ぐためでもあるのです。

たとえば中小企業庁が積極的に事業承継の支援策を整備しており、後継者への株式譲渡やM&Aのサポート体制を強化している事例が挙げられます。こうした施策によって、会社と社員の雇用を守り地域経済を活性化する狙いがあります。

また、公的支援を活用すれば、引退時期を遅らせた結果として発生しがちなトラブルや費用を軽減することも可能とされています。そのため、今後はさらに官民一体となって社長のスムーズな引退を推進する傾向が高まる可能性があります。

2. 社長が引退の準備を早めに始めるべき理由

社長の高齢化が進んでいると述べましたが、社長引退の準備は早めに始めるべきです。

その理由は以下の通りです。

  • 後継者が不足している
  • 後継者の育成に時間がかかる
  • 社長の体力や気力がなくなる
  • 資金準備に時間がかかる可能性がある

以下でそれぞれ解説します。

2-1. 後継者が不足している

企業の規模を問わず、後継者が見つからないことは深刻な課題となっています。

特に地方の中小企業では、後継者候補となる若い世代の流出が続いており、家族承継はおろか社内承継すらままならないケースも多いです。実際に、大手調査機関のデータでも後継者不足が原因でやむを得ず廃業を選択する企業が増加傾向にあることが示されています。

たとえ黒字経営を続けていても、引き継ぎ手がいなければ事業を継続できない現実は、経営者にとって大きなリスクでしょう。だからこそ、社長自身が引退を考える前から、後継者候補の選定と育成に取り組むことが重要だと再認識されつつあります。

早めに行動を起こせば適切な人材に出会える確率も高まり、結果として社長の引退時期にも余裕が生まれるものと言えます。

引用元:https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1200854_1527.html

2-2. 後継者の育成に時間がかかる

後継者が見つかったとしても、経営ノウハウや人脈を一朝一夕で引き継ぐことができるわけではありません。実際に、社長業を理解するには財務知識や人事管理、業界特有の商慣習など、多岐にわたる領域を少しずつ身につける必要があります。

たとえば中小企業であれば、創業者の個人技術が強く反映された経営スタイルを継承するには、時間をかけた現場経験が欠かせません。これらの過程を踏まずに引退時期を迎えると、組織の混乱や顧客離れを引き起こす可能性があります。。

だからこそ、後継者の候補が決まった段階から、段階的に権限を移譲してスムーズに事業を引き継げる体制を築いておくことが望ましいです。

時間と手間を惜しまず育成に取り組むことで、引退後も安定した経営を維持できる確率が高まると考えられます。

2-3. 社長の体力や気力がなくなる

経営トップとして会社を率いるには、肉体的なスタミナだけでなく精神的な強靭さも求められます。しかし加齢に伴って体力や気力が衰えるのは自然なことで、若い頃と同じペースで働くことが難しくなるものです。

たとえば、激しい業界競争や不測の事態への迅速な対応が必要な場合、長時間労働や連日連夜の会議が続くことも少なくありません。このような状況が頻繁に起こると、いくら健康に気を使っていても息切れしてしまう恐れが高まるでしょう。だからこそ、まだ健康状態に余裕があるうちに次世代にバトンを渡すことで、引退後に無理なく自分の人生を楽しむ土台を築けるはずです。

準備を先延ばしにして限界まで社長職を続けるより、ある程度元気な状態で引退の準備に踏み切る方が得策だと言えるでしょう。

2-4. 資金準備に時間がかかる可能性がある

引退後の生活を考えると、年金だけでは心もとないと感じる経営者も少なくありません。

また、株式譲渡や事業承継の際には、相続税や贈与税などの負担が大きくなるケースもあり、資金計画は早めに立てる必要があるのです。

たとえば、個人資産と会社資産の区分が曖昧なまま引退時期を迎えると、多額の税金を支払う羽目になりかねません。このようなリスクを避けるには、税理士や弁護士といった専門家の助言を受けながら、数年単位で準備しておくことが得策でしょう。特にM&Aでの事業承継を検討する場合、大きな資金が動く取引になるため、条件交渉を含めて余裕を持ったスケジュールを組むことが大切とされています。

引退後にお金の悩みで苦労しないためにも、経営者として活動するうちから十分な備えを進めておくに越したことはないでしょう。

3. 社長が引退を決めるときの基準

社長が引退準備をするためには、社長が引退を決める必要があります。

その引退を決める具体的な基準は以下です。

  • 社長の健康寿命
  • 経営者仲間の引退年齢
  • 顧客の年齢層
  • 後継者育成の進捗状況

以下でそれぞれ解説していきます。

3-1. 社長の健康年齢

年齢だけでなく健康状態そのものが、実際に引退を決断するうえで大きな指標となります。

経営者が持病や慢性的な疲労感を抱えている場合、事業運営に支障をきたすリスクが高まるからです。特に、人前で話す機会が多い社長は、声帯や体力を酷使する機会が多いため、身体的な不調を抱えると業務に差し支えるケースも目立ちます。だからこそ、医師の診断や定期的な健康診断の結果を踏まえて、近い将来の健康見通しを考慮したうえで引退の判断を下す方が賢明です。

早めに決断しておけば、療養やリハビリに専念する時間を確保できるだけでなく、会社への影響を最小限に抑えることも期待できます。結局のところ、数字上の年齢だけを頼りにするより、自身の体と向き合ったうえで最適な引退時期を見極める意識が必要となります。

3-2. 経営者仲間の引退年齢

同業界や経営者仲間の引退年齢を参考にするのも、判断材料の一つです。

周囲の経営者が一斉に引退し始めると、自分もそろそろ退き時なのかと考えるきっかけになることがあります。特に、同規模の企業を経営している友人や知人が既にバトンを渡していると、自社の後継体制について改めて意識する場面が増えます。また、経営者同士で年齢にともなう悩みを共有する機会があると、実体験に基づくアドバイスが得られるため、引退の時期が明確になる可能性が高まるでしょう。ただし、各社の状況は異なるため、他人の例ばかりに左右されるのは危険でもあります。

仲間の動向はあくまで参考程度に留めつつ、自分の会社と自身の健康や気力を見極めて判断することが望ましいでしょう。

3-3. 顧客の年齢層

顧客の年齢層が高齢化し、自社の商品やサービスの需要が次第に変化していく状況は、社長の引退を考えるタイミングになることがあります。長年同じ顧客層に支えられてきた企業では、その層がリタイアするとともに売上が落ち込むリスクも高まるためです。

たとえば、高齢者向けサービスを主力とする業種では、次世代へのニーズが見込めない場合、会社の舵取りを次世代のリーダーに託して新たな市場開拓を図る戦略が必要になるかもしれません。このような時期に、経営トップの交代を通じて社内の意識改革を促すことで、新しいビジネスチャンスに対応しやすい組織を作り上げることができる可能性があります。

だからこそ、主要顧客の年齢層が変化していく兆しを早めに掴んで、自社の経営戦略と社長交代のタイミングをすり合わせることが重要になります。

市場の変化に合わせて引退時期を計画すれば、企業価値を落とさずにスムーズなバトンタッチを実現できます。

3-4. 後継者育成の進捗状況

従業員や親族に会社を承継する場合、後継者の育成状況が順調であれば、社長自身も安心して引退を検討できるようになります。

実際に、日々の業務を後継者が円滑にこなしているか、意思決定のプロセスを理解しているかなどをチェックするのは大切です。

たとえば、既存顧客との関係構築や新規案件の獲得など、経営の要所を任せられるレベルに達しているかどうかが大きな判断基準となります。その過程で後継者候補が失敗を経験することもあるかもしれませんが、社長がフォローしながら学ばせることで着実に経営力が向上していくでしょう。だからこそ、「経営を任せても大丈夫だ」と判断できたら、勇気をもってバトンタッチの計画を進める決断を下す方が得策です。

後継者が自信を持って舵取りできる段階まで育っていれば、社長の引退も自然な流れとなるに違いありません。

4. 社長が引退を決断した時にすること

引退の基準から判断して、社長が引退を決意した時には、やるべきことが出てきます。

  • 引退の時期について考える
  • 事業承継方法の検討
  • 後継者の育成
  • 引き継ぎスケジュールの作成

それぞれ以下で解説します。

4-1. 引退の時期について決める

最初に取り組むべきは、具体的な引退時期の目安を決めることです。

曖昧なままでは社員にも周囲にも準備を促せないため、半年先なのか数年先なのか、おおよそのスケジュールを確定させる必要があります。

たとえば、後継者のスキルが一定水準に達したら、あるいは大きなプロジェクトが完了するタイミングに合わせるといった形で計画を立てる方法が考えられます。また、健康状態や家族の事情など、経営以外の要素も考慮に入れることで、現実的な退任日程が見えてくるでしょう。周到に計画を立てることで、いざ引退を公表した際にも社内外から混乱が生じにくくなるはずです。

明確な引退の時期、ゴールを定めることは、自分自身の心構えを整える上でも欠かせないステップになります。

4-2. 事業承継方法の検討

次に検討すべきなのは、事業承継の方法をどうするかという点です。

家族への承継、社内の有能な人材への承継、あるいはM&Aを含めた外部への売却など、選択肢は多岐にわたります。近年は、後継者不足の影響もあって外部へのM&Aを選択する中小企業が増加傾向にあります。

一方で、長年一緒に働いてきた社員に引き継いでもらうことで、企業文化や顧客との信頼関係を維持しやすいというメリットも見逃せません。そのため、会社の規模や財務状況、後継者の存在などを総合的に見極めたうえで、どの方法がベストなのかを判断する必要があります。その点を踏まえて、一度M&Aの専門家であるM&A仲介会社や、M&Aアドバイザリー会社に相談してみることも一つの選択肢です。

専門家のサポートをもらいつつ、早めに方針を固めることで、具体的な準備や社内外の調整がスムーズに進みます。

4-3. 後継者の育成

後継者が決まったら、計画的な育成をスタートさせることが重要になります。

実際に、経営方針の策定プロセスや財務管理のノウハウ、トップとしてのリーダーシップを身につけるには、時間を要するでしょう。たとえば定期的な経営会議に同席させたり、取引先との商談に同行させたりして、リアルな経営判断の現場を体験させるのが効果的です。加えて、失敗してもフォローできる範囲の仕事を徐々に任せていくことで、実践的に経営者としての視点を育むことが可能になります。このようなステップを踏むことで、後継者は自信を持って次の時代の経営を担えるようになるはずです。そして、育成の進展具合を見ながら、社長が引退を本格的に検討する最適なタイミングを探ることが得策です。

4-4. 引き継ぎスケジュールの作成

育成と並行して、具体的な引き継ぎスケジュールを作成するのも欠かせない手順です。

部門ごとの責任者や取引先、金融機関への説明のタイミングを明確にしておくことで、周囲の混乱は最小限に抑えることができます。たとえば、顧客への正式な引き継ぎ挨拶はいつ行うのか、株式や資産の譲渡はどの段階で進めるのかといった具体的な工程をリスト化するのが有効です。このように計画を立てておけば、想定外のトラブルが発生した場合でも、どのタイミングで対処すべきかが把握しやすくなります。また、引退後に不測の事態が起こってもある程度フォローできるよう、社長がしばらく相談役として残る期間も考慮しておくと安心です。結果として、事前に綿密なスケジュールを策定しておくことで、スムーズかつ円満な引退を実現しやすくなるでしょう。

4-5. 会社法や税務などの基本的な手続き

会社法や税務関連の手続きを、事前に把握しておくことも重要です。。

社長交代に伴う役員変更の登記や、相続税・贈与税に関する届出は特に見落とせないポイントとなります。

たとえば自社株の評価額によっては、予想外に大きな税金が発生する可能性もあるため、税理士と連携して早めに対応策を練ることが推奨されます。さらに、貸借対照表や損益計算書のチェックなど、財務面での整理を行っておくことは、後継者が安心して経営に乗り出すためにも重要です。これらの基本的な手続きを踏み誤ると、せっかくの引退が複雑化してしまい、思わぬトラブルにつながるリスクが生じてしまいます。だからこそ、専門家の力を借りながら、抜け漏れのないように手続きを進めておくべきです。

4-6. 社内外への告知や広報のポイント

社長の引退は会社の方向性に大きく関わるため、社内外への告知タイミングや方法にも慎重を期すべきです。突然の発表は社員や取引先を驚かせるだけでなく、不安を煽る原因にもなります。

そこで、引退が正式に決まった時点でまずは主要メンバーに口頭で伝え、その後に文書やメールなどを通じて周知する段取りを組むとスムーズです。また、プレスリリースなど外部向けの広報を行う際は、後任のプロフィールや経営方針を簡潔にまとめて示すことで、利害関係者の安心につながります。社内イベントや社員総会でのメッセージ発信を合わせて行い、経営者交代への理解を深めてもらう工夫も効果的となります。このように、丁寧なコミュニケーションを心掛けることで、経営者の引退による混乱を最小限に抑えられるはずです。

5. 社長は引退後に何をする?

引退準備や決意後にすべきことについて述べましたが、社長は引退した後に何をするのでしょうか。ここでは社長の引退後について解説します。

5-1. 会長職につく

社長を引退したあとも、会長職として経営全体を見守るケースは珍しくありません。

新社長が舵取りに慣れない間に、経験豊富な前社長が重要なアドバイザーとして機能するメリットがあります。

たとえば、大きな投資案件や人事異動などの際、会長として助言や判断を補佐する立場に立つことで、スムーズな意思決定が期待できます。ただし、いつまでも会長が表舞台に出続けると、新社長のリーダーシップを阻害する懸念もあるため、口を出す範囲は明確に区切っておく必要があります。だからこそ、会長職につく際には、あくまで裏方的なサポートに徹し、新しい経営陣を立てる姿勢が望ましいです。そうすれば、次世代経営者が自信を持って会社を牽引し、必要なときには前社長の知恵を借りられる理想的な関係が築けます。

5-2. 家族との時間を多く持つ

引退後は、長年仕事中心だった生活から一転して、家族との時間を増やすチャンスでもあります。これまで休日でも仕事の連絡に追われていた社長が、ようやく家族サービスに時間を割けるようになるのは大きな変化でしょう。たとえば、これまで行けなかった家族旅行を計画したり、孫の行事に参加したりと、周囲を喜ばせる機会が増えるかもしれません。

経営の重責を離れたことで、家族とのコミュニケーションを見つめ直す時間が持てるようになるのは、大きなメリットと言えます。しかも、家族との温かい交流が、生きがいを見つける源になることも多いです。引退後は家族を中心とした新たな幸せを築き上げる道も一つの選択肢です。

5-3. 趣味に没頭する

引退のメリットの一つに、これまで忙しさで手が回らなかった趣味に没頭する時間を確保できることが挙げられます。ゴルフや釣り、音楽演奏など、経営とは異なる分野でリフレッシュを図るのは心身の健康にも良い影響を与えるでしょう。たとえば、趣味の活動を通じて新たな仲間を得ることで、ビジネスと関係なく気兼ねなく過ごせる人間関係が築けるのも魅力の一つです。さらに、趣味が高じてセカンドキャリアのような形で収入を得る事例もあるため、自分の好きなことを追求する価値は大いにあります。社長時代の緊張感をリセットし、新たな活力を得る手段としても、趣味を持つことは有意義です。こうしたプライベートの充実が、結果的に引退後の人生をより豊かなものに導いてくれるでしょう。

5-4. 新しいビジネスへ挑戦する

一方で、引退後もチャレンジ精神を失わず、新たなビジネスを立ち上げる経営者も増えています。長年培ってきたノウハウや人脈を生かして、これまでとは異なる業種や分野に進出する人も珍しくありません。

具体的には、コンサルタントとして若手起業家を支援したり、地域活性化のプロジェクトに参画したりと、多種多様な取り組みが見受けられます。このような活動は、社会貢献になるだけでなく、自らの経験を次世代に伝える機会としても有意義でしょう。また、新事業を興すことで、自身の第二のキャリアを確立し、引退後のやりがいと収入を両立させる人もいるようです。

結果として、引退はあくまで経営トップを退くことに過ぎず、新しい形で社会に関わる選択肢が豊富に存在すると言えます。

6. 社長が引退した後も充実した生活を送るために今からできること

6-1. 人脈づくり

経営者としての肩書きがあるうちから、幅広い人脈を築いておくことは、引退後の人生を豊かにする大きな鍵となるでしょう。特に、趣味や地域活動を通じて作った人間関係は、退任後も継続しやすいと考えられます。たとえば、経営セミナーや異業種交流会だけでなく、地域のボランティア活動やカルチャースクールに参加するなど、多方面にアンテナを張ることが大切です。こうした場で知り合った人々とは、利害関係を超えた繋がりを築きやすく、お互いに助け合うことができる可能性があります。引退後に孤立感を味わわず、充実した時間を過ごすためにも、現役時代から幅広いネットワークを意識しておくことが得策です。結果として、人との繋がりが新たなビジネスチャンスや生きがいに繋がることも十分にあり得るでしょう。

6-2. 生活資金や年金・保険の見直し

引退後のライフプランを安定させるには、年金や保険の制度を把握し、必要に応じて見直すことが欠かせないでしょう。経営者の場合、公的年金だけでは生活費が不足する可能性も考慮しなければなりません。たとえば、個人で積み立てる私的年金や医療保険に早めに加入しておくことで、引退後の負担を軽減できるケースは多いです。また、会社の業績が良いタイミングで役員退職金の受け取り方を検討し、税負担を最小限に抑える策を講じる人もいます。こうした準備を怠ると、いざ引退してから思わぬ金銭トラブルに巻き込まれることにもなりかねません。だからこそ、経営が順調なうちにファイナンシャルプランナーや税理士などの専門家へ相談し、自分に合った対策を立てておくことが大切と言えます。

6-3. 経営者が属人的になっている会社の部分を他の人や部署へ移す

長期に渡り社長を務めていると、どうしても経営の重要部分が社長個人に集中してしまいます。このような属人的経営は、社長が引退した途端に業務が回らなくなるリスクを高めることになります。たとえば、主要な取引先との交渉や重要な人事決定などを社長だけが担っている場合、後任者がスムーズに引き継ぎできない恐れがあります。そこで、役員や部門長に権限を委譲し、組織として機能する仕組みを整えることが不可欠です。担当業務を明確化し、引き継ぎマニュアルを作成するなど、見える化を進めると属人的な部分を減らすことができます。結果として、社長の退任後も会社が安定して動く体制を築くことが、従業員や取引先への安心感にも繋がると言えます。

6-4. 引退後を見据えた目標設定

経営者としてのゴールを迎えた後にどんな人生を歩みたいのか、ビジョンを明確にしておくことは大切です。明確な目標がないまま引退を迎えると、社会的な役割の喪失感からうつ状態になる人も少なくありません。たとえば、引退後に地域のNPO活動に参加したり、新しい趣味を極めたりと、プライベートでも達成感を得られる目標を立てるのは有効でしょう。また、これまでに培った経験とネットワークを活かして社会貢献をすることで、セカンドキャリアとしての充実感を得る人も多いようです。こうした目標や予定をあらかじめ設定しておくと、引退後の生活にスムーズに移行しやすくなると言えます。結果的に、自分自身の心身の健康だけでなく、周囲との関係性を保ちながら生き生きとした毎日を過ごす基盤づくりに発展すると考えられます。

7. 社長の引退時期、年齢に関する相談先

いざ引退を具体的に考え始めると、どこに相談すべきか悩むケースも多いです。

社長の引退や事業承継に関わる専門家としては、税理士、弁護士、社会保険労務士、そして中小企業診断士などが代表的です。また、各都道府県の商工会議所や中小企業支援センターでは、事業承継セミナーや個別相談会を開催していることも少なくありません。

ですが、M&Aを選択肢に入れるならM&A仲介会社やIFA(※)などのM&Aアドバイザリー会社に話を聞き、引退後のライフプランに強いファイナンシャルプランナーと連携するのも一案です。こうした専門家の力を借りることで、事前準備やトラブル対策、引退後の資金計画までトータルにサポートを受けることができます。結果として、早めに相談先を確保しておくことで、スムーズな引退と円滑な事業承継の実現に近づくことができます。

※Independent Financial Advisorの略であり、独立系ファイナンシャルアドバイザーや金融商品仲介業者を指しています。特定の金融機関(証券会社や銀行など)に属さず、顧客のM&Aや資産運用をサポートしています。

8. まとめ

社長の引退年齢は一般的に60歳前後が一つの目安とされていますが、近年は健康寿命の延びや後継者不足などの影響で更に高齢化する傾向があります。

それでも、早めの準備を行えば、自社や自分自身にとって最適なタイミングで引退し、円満に事業を承継できる可能性が高まるでしょう。

引退を決める際には、健康状態、後継者の育成状況、資金計画など、多角的な観点から判断することが重要です。

そして、いざ引退を決断したら、引き継ぎスケジュールの作成や社内外への告知方法まで綿密に計画することが欠かせません。社長職引退後は会長職に就く、家族との時間を満喫する、新たなビジネスに挑戦するなど多様な選択肢が待っていますが、それらを充実させるためにも現役時代からの準備が大切です。

社長職を退いたあとも自分らしく生きるため、各種専門家や仲間の力を上手に活用して、早めに行動に移すことが賢明と言えるでしょう。

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引退をお考えの経営者様、これを機に検討されてみてはいかがでしょうか。ご相談はこちらから。

長竹 祐樹

大学卒業後、新卒で銀行へ入行。支店業務(担当地域の個人・法人のお客様へ資産運用や融資の提案を主に実施)を経験後、本部へ異動し富裕層や相続・事業承継業務及び支店管理、提携先との連携や折衝を経験。頭取表彰や本部長表彰等受賞。銀行の求めるものとお客様の求めるものとのずれを感じ、株式会社ファーストパートナーズへ転職。現在は幅広いサービスや金融商品をお客様に案内できる環境にあり、お客様のニーズから真に求めるものを提案できるよう日々行動している。

保有資格:証券外務員一種、内部管理責任者、生命保険協会認定保険募集人、FP二級技能検定資格