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日本企業M&A動向2025|件数・金額ともに大幅増、IT分野が牽引する成長戦略

日本企業M&A動向2025|件数・金額ともに大幅増、IT分野が牽引する成長戦略

・なぜ日本企業のM&Aが活発化しているのか
・どの業界が今後のM&A市場をリードするのか
・自社の成長戦略としてM&Aをどう活用すべきか

このような疑問や課題を抱える経営者は少なくありません。
M&Aのプロが、2025年の日本企業M&A市場の動向と背景をわかりやすく解説します。

最新のM&Aトレンドや注目分野を理解することで、自社の経営戦略や投資判断に有用な視点が得られるでしょう。

1. 日本企業M&A市場の概況(2025年上半期)

日本企業M&A市場の概況について、解説します。

1-1. 件数の増加と過去最高水準

2025年上半期の日本企業によるM&Aは、件数面で過去最高を更新し、市場の裾野拡大が明確になりました。
背景にはガバナンス改革の浸透や、上場子会社の完全子会社化、ノンコア事業の売却など国内再編テーマの継続により、安定的に案件形成を支えています。

レコフデータ集計によると、2025年1–6月の件数は2,509件、前年同期比7.1%増でした。

さらに、最新の1–9月累計でも3,694件と最多ペースが維持されており、四半期をまたいでも勢いが鈍化していないことが確認できます(ただし1–9月の数値は上半期後の動きで、件数トレンドの継続性を示す補足情報です)。


これらは月次でも安定して高水準が続いた結果で、単発の大型案件に依存しない「量の底上げ」を裏づけることができす。

日本のM&Aは、案件数の面で拡張局面にあり、実務側の意思決定スピードとパイプラインの厚みが高まっていると言えるでしょう。

1-2. 総額20兆円超の記録更新

2025年上半期は金額面でも記録的な水準となり、上半期として初めて20兆円を超えました。
要因として、株式の非公開化や親子上場解消など、サイズの大きいテーマが復活・加速し、少数の大型取引が総額を押し上げた点が挙げられます。

レコフデータによると、1–6月の金額は20兆7,173億円で、統計開始以来の上半期最高を更新しました。

国際メディアでも日本のM&A活況が報じられており、ロイターも「2025年上半期の日本関連M&Aが過去最高の2,320億米ドルに達した」と伝えています(対象範囲は国内外含む“日本関連”であり、円建て上半期データと並べる際は網羅率に留意が必要です)。


このように、国内統計とグローバル統計の双方で“サイズの拡大”が観測されています。
結論として、2025年の前半は「量の増加」に加えて「金額の大型化」が同時に進行し、総額面の新記録をもたらしました。

1-3. IN-IN取引が中心の市場構造

2025年も、日本のM&Aは依然として国内企業同士の取引(IN-IN)が主流であり、構造的に国内再編が市場を牽引しています。

上場子会社の完全子会社化やグループ再編、国内の事業承継案件の積み上げなど、「国内の構造要因」で案件が継続的に発生しているためです。

具体例として、2025年1–9月の内訳はIN-IN 2,947件、IN-OUT 479件、OUT-IN 268件で、IN-IN比率は約8割となりました。
前年までの傾向も同様で、IN-INがボリュームの核になっている構図が続いています(ここでも、上半期の“構造”を理解するために1–9月の最新内訳を補足として用いています)。


この比率はここ数年動いていないことから、日本M&A市場は国内再編主導が定着していることを示します。

結果として、日本のM&Aは「国内での選択と集中」を進める局面が続いていると捉えられます。

2. 金額・件数拡大の背景

2025年の日本M&A市場では、金額・件数ともに進みました。

本章では、拡大の背景について、3つの観点で解説します。

2-1. メガディールによる金額押し上げ

前述の通り、2025年は少数の大型案件(メガディール)が総額を大きく引き上げたことが特徴です。企業統治改革の進展や資本効率の改善圧力により、非公開化やノンコア資産の切り離しなど「サイズの出やすいテーマ」が増えたことが背景です。

ロイターは、上半期の日本関連M&Aが2,320億米ドルで過去最高に達したと報じ、「株式の非公開化や大手グループ再編の動きが金額面の跳ね上がりをもたらした」と解説しています。

加えて、S&P Globalの四半期レビューも、国内・インバウンドの金額拡大が顕著で、特にインダストリアルズの伸び率が際立ったと示しています(YTDベースの成長寄与)。

2-2. 事業承継型・中小案件の積み上げ

一方、件数の底上げを支えたのは中小規模の承継案件です。

後継者不在や人材不足の構造問題に直面する中堅・中小企業にとって、M&Aは実務的な解決策になりやすいためです。

レコフデータの上半期統計ではIN-INが約8割を占め、全国的に中小規模の案件が数を押し上げています。また1–9月の最新データでもIN-IN主導の件数拡大が続き、月次でも高水準が継続しました。


これにより、メガディール偏重では説明できない“量の持続性”が裏づけられます。

したがって、2025年の件数記録は、地域の承継ニーズや中小の選択と集中といった「日常のM&A」が基盤であり、量の拡大は一過性ではなく今後も続く傾向にあります。

2-3. PEファンド・投資マネーの積極姿勢

2025年はPEファンド(未公開株ファンド)を中心とした投資マネーが、選別的ながら積極姿勢を維持し、市場の案件化とクロージングを後押ししました。ガバナンス改革の定着で、企業のポートフォリオ再編が進み、非中核の売却や株式の非公開化でPEファンドが買い手として入りやすくなったためです。

ロイターは上半期の日本関連M&Aで、PEファンドの存在感や企業再編の活性化を繰り返し報じています。

また、セブン&アイのケースから見ても「統治改革×投資マネー」の組み合わせが、案件形成の原動力になっていることが読み取れます(個別案件の成否は様々ですが、投資家側の関与は確実に高まっています)。

結論として、PEファンドマネーは2025年の日本M&Aにおける、”第三の買い手”であり、案件パイプラインの厚みを支える重要な存在となっています。

3. IT分野が牽引するM&A活性化

2025年の日本M&A市場では、IT(テクノロジー)分野が取引の中心的役割を果たしています。

本章では、M&A活性化について、3つの観点から解説します。

3-1. DX・AI・クラウドを背景にしたM&Aが急増

2025年はIT/TMT(Technology, Media & Telecommunications)分野が日本のM&Aを牽引しました。背景にあるのは、生成AIの商用展開やデータセンター投資の加速で、テクノロジー領域の資本需要が一段と強まっているためです。

PwCのTMTレポートでは、2025年上半期において「ボリューム減・バリュー増」の構図が整理され、テクノロジーが取引ボリューム・バリュー双方の最大シェアを占めたことが示されています。

また、グローバルの文脈でも生成AIやクラウドが投資テーマの中心にあり、国内でも同様の潮流が観測されます。

さらに、国内のIT動向解説でもIT産業におけるM&A活性化が言及され、企業の機能補完やスケール獲得ニーズが強いことが整理されています。

総じて、ITは「件数の底上げ」に加え「金額の押し上げ」にも寄与し、2025年の日本関連M&A活況を下支えしていることがわかります。

3-2. 技術・人材獲得を目的とした買収

日本のIT関連M&Aでは、プロダクトや知的財産に加えて人材の獲得を狙う買収が増えています。内製化だけでは時間がかかる領域で、M&Aにより「技術と人材を一括で取り込む」効果が期待できるためです。

日本では、AI・クラウド・サイバーセキュリティ・データ分析などの高度人材が慢性的に不足しており、内製化では時間・コスト・育成リスクが大きいため、M&Aによる即戦力獲得が合理的な選択肢となっています。


結果的に、人材市場のひっ迫が強い中、技術・人材の同時獲得を意図した買収は、2025年のIT分野で合理的な選択肢になっていると言えます。

3-3. 業界全体への波及効果

IT分野の投資は、ソフトウェアやクラウドだけにとどまらず、製造・物流・医療などの実体産業に波及します。デジタル基盤の整備が生産性の向上や新規事業の創出を促し、結果として関連市場でも再編と投資が連鎖するためです。

PwCのグローバルM&A/ TMT展望でも、AI・クラウド関連の投資がエコシステム全体を押し上げる構図を示しています。加えて、日本ではAI基盤整備やロボティクス連携の取り組みが広がりつつあり、国内の産業競争力を高める文脈での提携・出資も増えています。
結論として、ITは単体産業ではなく、他産業の再編と競争力強化を促す触媒になっていると言えます。

4. 他分野の動向と業界再編

本章では、分野別の再編トレンドと、企業が取り得るM&Aの戦略的選択肢を整理します。

4-1. 製造業・産業機械での再編事例

製造・産業機械では、AI・半導体・データセンター投資の追い風を受け、事業の選択と集中を伴う再編が進んでいます。

IT需要の拡大は、装置投資や周辺サービスの需要を押し上げ、関連企業間での統合・再編が発生しやすい構造にあります。

S&P Globalの「Japan M&A By the Numbers: Q2 2025」では、国内・インバウンドにおけるインダストリアルズの取引価値伸長を明示し、YTDで顕著な増加を示しています。アジア太平洋全体を見ても、日本は地域トップのディール規模を確保しており、製造関連の存在感が増しています。


結論として、製造業・産業機械業はIT波及効果を直接受ける再編の受け皿として、2025年はその存在感が一段と強まりました。

4-2. サービス・医療・不動産分野の動き

サービス・医療・不動産でも、労働需給の制約や研究開発力の補完、アセット最適化といった課題解決を目的にM&Aが進んでいます。人手不足やコスト上昇が続く中、オペレーション高度化やデジタル化を外部獲得する動機が強いためです。

マール(レコフデータ)による2025年上半期の市場概況では、件数増とともにIN-IN中心の構造が確認され、月次ベースでサービスや医療等の分野でも着実な積み上げが示されています。補足として、地域横断の中小案件が件数を底上げし、非製造でもM&Aが有効な打ち手として活用されていることが読み取れます。


したがって、非製造分野でも「デジタル×人材×アセット最適化」を軸に、現場課題の解決を図る動きが浸透していることがわかります。

4-3. 多様化するM&Aの目的と戦略

2025年の日本関連M&Aは、成長投資・事業承継・非中核の切り離し・テイクプライベートなど、目的が多様化しています。

ガバナンス改革やアクティビズムの浸透で資本効率のプレッシャーが高まり、経営判断はこれまで以上に前倒しで行われる状況が整っています。

結論として、企業は「攻め」と「守り」を両立させる観点で、M&Aを戦略的に使い分ける時代になっています。

5. 今後の展望と戦略的示唆

本章では、企業がM&Aを戦略的に活用するうえで押さえるべきポイントを整理します

5-1. 金利・規制などリスク要因の注視

中期的な見通しは前向きですが、金利・為替・独禁等の政策や規制は引き続き注視が必要です。グローバルの政策変更や審査環境の変化は、バリュエーションやタイムラインに影響し、案件進捗の不確実性を高めるためです。

PwCのグローバルM&A動向では、上半期において「ボリューム減・バリュー増」という選別相場の中で不確実性が残る点を整理し、ディールは進むが前提条件の見極めが重要であることを示します。TMTの観点でも、マクロ環境の変動が評価やストラクチャーに影響し得ると指摘されています。
結論として、規制・金利・為替に対する複数のシナリオ設計と、当局対応・デューデリジェンスの前倒しが、案件の確度を左右します。

5-2. IN-IN競争激化に備えた差別化の必要性

IN-IN(国内企業同士の取引)が約8割という日本のM&A市場構造では、買い手間の競争が起こりやすく、同質化リスクが高まります。価格だけでなく、PMIの実行力や人材リテンション、システム統合計画など非価格要素で差別化する必要があります。

2025年上半期のマール記事では、IN-INの件数優位を示し、国内再編主導の構造が継続していることを示しています。構造が変わりにくい環境では、データ統合・ITアーキテクチャ設計・人材維持策などの“統合力”を提示することが、入札競争での優位につながります。


結果として、IN-IN競争の激化に備えるには、ディール前からPMIまで一貫した価値実現ストーリーを可視化することが不可欠です。
 

5-3. ITを起点とした成長分野の取り込み戦略

今後は、半導体・データセンター・SaaS・サイバーなどIT起点の成長分野を、M&Aで素早く取り込む戦略が重要になります。AIインフラ需要の継続が見込まれ、周辺産業にも長期の波及が期待できるためです。

PwCのTMT・グローバル動向では、テクノロジー領域の主導を明確に示し、S&Pの地域・業種別統計は日本の存在感とインダストリアルズの伸びを示しています。これらは「IT×産業」の組み合わせで、事業とアセットの両面を強化する戦略が有効であることを裏づけます。


結論として、ソーシング段階からITケイパビリティの獲得とPMIの迅速化を意識し、成長領域を面的に取り込むことが肝要です。

6. まとめ

2025年の日本関連M&Aは、IT/TMTの成長モメンタムに支えられつつ、製造・サービス・医療・不動産へと波及しました。ITは件数と金額の双方で寄与し、IN-INを中心とした国内再編の中で、メガディールと中小承継の“二層構造”が市場を押し上げています。

・上半期の金額は過去最高を更新(ロイター:日本関連M&A2320億米ドル)
・件数2,509件・IN-IN比率が高い(レコフデータ)
・インダストリアルズの価値伸長(S&P Global)

今後は金利・規制の不確実性を管理しつつ、ITを起点とした成長分野の取り込みとPMIの実行力で差別化を図るのが有効となります。

ファーストパートナーズでは、お客様のニーズに寄り添ったM&A戦略のご提案をしております。
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大西 伸彦

法政大学卒業後、大和証券入社。郡山(福島県)支店、本店営業部へ在籍し、株式会社ファーストパートナーズへ入社。
大和証券では社長賞受賞。その他各コンテストでも表彰される。
お客様の意向に寄り添い、お金に関する生涯のパートナーとなり、アドバイス・提案をしていきたいと考え、株式会社ファーストパートナーズへ入社。
取り扱う商品が多岐に渡り、幅広いお客様のニーズにお応えすべく精進していきたいと思っております。

保有資格:証券外務員一種、生命保険協会認定保険募集人、FP二級技能検定資格

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