特集

FTG Company 代表取締役社長 COO 森川 誠|20歳で背負った1000万の借金、13坪の焼肉店、そして126店舗へ。社長が語る「人」への投資哲学

FTG Company 代表取締役社長 COO 森川 誠|20歳で背負った1000万の借金、13坪の焼肉店、そして126店舗へ。社長が語る「人」への投資哲学

「大阪焼肉・ホルモン ふたご」。名物の「はみ出るカルビ」と、スタッフが客席で肉を焼く圧倒的なライブ感で、いまや国内外126店舗を展開する人気焼肉チェーンだ。

その急成長を経営の側面から支えてきたのが、2025年6月に代表取締役社長 COOに就任した森川誠氏。創業者である双子の李兄弟が「アクセル」なら、森川社長は「ハンドル」。数字・組織・物件戦略を一手に担い、13坪の1号店から全国展開へと導いた立役者だ。

しかし、その道のりは順風満帆ではなかった。飲食店経営での最初の失敗。20歳で1000万円の借金を背負い、必死に返済した日々。そこから這い上がり、運命の出会いを経て、いま「2030年・売上1000億円」という壮大なビジョンを掲げている。

看板も内装も料理も真似される飲食業界で、なぜFTG Companyだけが真似できない強さを持つのか。その答えは、徹底した「人」への投資にあった。森川社長の原体験と経営哲学に迫る。

1. 「負けず嫌い」が飲食に引き戻した

――学生時代に1000万円もの借金を背負うという壮絶なご経験をされています。当時の状況と、そこから完済できた原動力は何だったのでしょうか。

森川 誠(以下、森川): もともと僕がやりたくて始めたわけではないんです。

大学時代、バイト先で知り合った方に「一緒に飲食をやろう」と誘われて、わけもわからず手伝っていたら、気づいたら保証人になっていた。その方がいなくなって、僕のところに借金だけが残ったんです。大学生ですよ。

週に何回かバイトするくらいの気持ちだったのに、気づいたら大元が自分の名前になっていた。

大学をサボって、なんとか飲食の真似事でしのごうとしたものの自転車操業の限界が来て、結局お手上げです。残った借金は夜の仕事を始めた時の先輩に肩代わりしてもらって、そこからプレイヤーとして働いて返しました。

よく言うんですけど、「1000万の貯金はできないけど、1000万の借金は返せる」って。貯金しようと思ったら使っちゃうじゃないですか。

でも借金は毎月きっちり同じタイミングで返済が来る。逃げられない環境に身を置いたことで、気づけば完済できていた。追い込まれた環境に馴染んでしまっただけ、と言えばそれまでなんですけどね。

――借金を完済した後、なぜ再び飲食業界に戻ろうと思われたのでしょうか。

森川: 正直に言うと、飲食のビジネスモデルは効率が悪いと思っていました。不動産やM&Aのほうがよっぽど儲かるでしょう? 飲食は体を張って夜まで働いて、トマト1個を100円で仕入れて300円で売って、電気代や家賃、人件費を引いたら数十円の儲け。そんなレベルなんで、ビジネスとしてはあんまり面白くないなと。

でも、僕は結構負けず嫌いな性格なんです。飲食で一度失敗したからこそ、ちょっとやってみようかなと。この人生の失敗が肯定されるには、飲食で成功するしかないと思ったんです。

2. 双子との運命の出会い、13坪からの逆襲。「真似できないのは人」という確信

――開業支援の仕事を通じて李兄弟と出会い、FTG Companyに参画されました。数多くの経営者と接してきた中で、李兄弟のどこに惹かれたのでしょうか。

森川: 僕は0から1を生み出すのが正直得意じゃないんです。どちらかというと、フランチャイズに加盟して1を100にしていくほうが好きだし得意。だからこそ、ぶっ飛んだ0→1の発想力を持つ人を探していました。

李兄弟と初めて会ったのは、僕が27歳、彼らが30歳のときです。物件を紹介する立場で出会いました。双子だとは知らなくて、名刺交換して、しばらくしてまた名刺を出してくるから「この人どうかしてるのか?」と思ったら、後ろにもう一人いた。「双子でやって、株式会社ふたごっておもろくない?」と笑ってる。電話番号も「3791-2515(双子行こう)」が取れたって2人で抱き合ってるわけです。なんか、そういうところが面白いなと思いましたね。

それ以上に衝撃だったのは、「ふたご」のオープン前日に行ったら、テーブルも何もないんです。「お金がなくなってしもてん」って笑ってる。お兄さんが茨城から冷蔵庫を持ってきて、どこからかベニヤを運んできて、突貫工事でテーブルと椅子を作った。テーブルはもうぐらぐらです。

でも翌日のオープンに行ったら、想像とは全く違う別世界が広がっていた。雑然としているのに、お客さん全員が笑っている。1号店に入った瞬間のあのオーラ。空間、音楽、お客さん同士が作る雰囲気、料理のスピード感。それがバチッとハマっていた。たまげて李兄弟に頭を下げました。「フランチャイズでいい。俺にもふたごをやらせてくれ」と。

――「ふたご」が年間10店舗ペースで急成長を遂げる中、他社と明確に差別化できたポイントはどこにあると考えていますか。

森川: 飲食って、看板も内装も料理も全部真似されるんです。ヒット業態が出れば、すぐに似たような名前、似たようなコンセプトの店が現れる。でも唯一真似できないものがある。それが「人」です。

人には教育にお金がかかるし、人は辞めてしまうというのが大前提としてある。だから大手は人件費を下げようとする。1人で100万円売れる人が優秀だと。でも僕らは5人で100万円を売って、それが明日も明後日も続く店を作ったほうがいいという発想なんです。

僕らは社内で「ファスニング」という造語を使っています。ファスナーのように、お客さんとスタッフをぴったりくっつける密着サービスのことです。大手の居酒屋では2時間の滞在で、実際にスタッフと接触する時間はせいぜい3〜5分。「タブレットから注文してください」「QRコードで決済を」で終わりです。僕らは2時間のうち約20分の接客時間を取っている。

昔だったら、お客さんが入店した瞬間にポケットにタバコらしきものが見えたら、すぐに灰皿を出す。どれだけ吸っているかを見て、なくなりそうだったら先に同じ銘柄を買ってきて渡す。「なんで俺のタバコがなくなったの知ってるの?」と驚かれますよ。常にお客さんを見ながら、料理と接客を同時にやっているんです。

卓ごとにどんな設定で来ているかを読み取って、それに応じた接客をする。久しぶりに会った恋人同士ならあまり前に出ず、サッとお肉を焼いて引いてあげる。気心の知れた二人なら、会話に入りながら盛り上げて、「美味しいでしょ?じゃあ次いつ来ます?」とその場で予約を取ってしまう。マニュアルはありますが、それ以上に「空気を読む力」が問われるんです。

目配り、気配り、心配り。僕らはこれを「バリ3」と呼んでいます。この1〜2時間の中でどれだけサービスできるか。それが僕らのテーマであり、絶対に大手には真似できない強みです。

大阪焼肉・ホルモン ふたご

3. 「バランスを取らない」から強い、3人の経営スタイル

――李兄弟と森川社長の3名はそれぞれが個性が強いと感じました。その中でどのようにバランスを取り会社を前に進めているのでしょうか。

森川: 何も考えてないです。バランスを取ろうとするから苦しくなるんで、バランスは取らない。誰かがそれを補ってくれるという風土・文化を作っていることが、どちらかというと僕らの強みかもしれません。

それぞれの長所を伸ばして、弱みも個性だし、弱みも強みだという感覚です。無理しない。僕は経営の数字やガバナンスの設計を担う。彼らは新しいものを生み出したり、世の中にない面白いことを仕掛けたりすることに全力を注ぐ。できないことを無理にやっても仕方ないんです。

面白いのは、そういう役割分担が自然にできあがると、周りのメンバーも「自分がこの部分を支えなきゃ」と当事者意識を持つようになるんですよ。トップが全部完璧にやるよりも、むしろ足りない部分があるからこそ、それを埋めようとする優秀な人材が集まってきて、組織が強くなる。

――取締役の構成にも独自の考え方があると伺いました。

普通の会社だと、社外取締役は自分たちに好意的な人を入れがちですよね。でも僕らは逆で、大手会社の役員経験者など、僕ら創業メンバーのストッパーになってくれる人をあえて入れています。

「こういうことやりたい」と言ったときに、「それはちょっとどうなんだ」と色々な目線で見てもらう。気心の知れた人を入れるんじゃなくて、僕らにブレーキをかけてくれる人を入れたほうが、議論が深まるし、会社経営もうまくいく。3人ともそれをわかっているので、意識的にそういう組織にしています。

勤続10年の表彰

4. 「環境を先に作れば、人は育つ」。2030年・売上1000億円への逆算思考

――急速な店舗拡大の中で、人材育成や資金面で行き詰まる企業も少なくありません。FTG Companyはそこをどう乗り越えてきたのでしょうか。

森川: 8〜9割の飲食企業は、1号店・2号店を作って人を採用して、「こいつ店長できるな」と思ったら3号店を出すという順番ですよね。僕らは逆です。年間でこれだけ出すと決めて、銀行に営業をかけてお金を調達して、人がいようがいまいが店を出していく。

環境ができるから、人が育つ。鶏が先か卵が先かですが、僕らの発想は完全に「先に環境を作る」側です。10店舗出しても人がいない。じゃあどうするかといったら、お客さんからアルバイトにする、お客さんから社員にする、通行人すらキャッチするかっていう発想に変わらないと無理なんです。だからうちは、お客さんからスタッフになった人がものすごく多い。

物件の出し方も徹底しています。五反田の1号店がそうだったように、13坪から30坪程度の1階か2階の路面店。1.5等地で乗降客数やオフィスと住宅の比率を見て、1号店の成功パターンをトレースして出し続ける。50坪の大箱をやることも、地下に出すこともない。物件選びにブレがないからこそ、店舗を増やしてもクオリティが落ちにくいんです。

――飲食の枠を超えて、多角化を進めています。その背景にはどのような考えがあるのでしょうか。

大前提にあるのは「働く場所の提供」です。飲食以外のビジネスを広げることで、メンバーが活躍できるフィールドを増やしたい。

あとは、世の中で「なんか本質からズレてるな」と感じることを、自分たちで変えていきたいという気持ちですね。たとえば人材紹介業界。本質的には優秀な人間を育てていくほうが社会にとって価値が高いはずなのに、ビジネスモデル上は転職を繰り返してもらうほうが利益になる。それってなんか違うんじゃないかなと。世の中にないんだったら、じゃあ自分たちで作ろうかと。そうやってどんどん事業が増えていきました。

――最後に、2030年の「売上1000億円」というビジョンに向けて、FTG Companyがこれから届けていきたい価値についてお聞かせください。

森川: 僕らの事業の原点は、李兄弟の「親孝行」なんです。お母さんが大阪で小さな焼肉屋をやっていて、苦労しながらも笑顔で働く姿を見て育った。30歳になったら独立して親孝行しようと兄弟で約束して上京した。だから店舗の名前にも、「大阪焼肉・ホルモン ふたご」は兄弟そのもの、「大阪ぎょうざ専門店 よしこ」はお母さんの名前と、すべてに家族への想いが込められています。

大阪ぎょうざ専門店 よしこ

この「家族」という価値観は、従業員にも広がっています。社員、そしてその社員の家族も含めて全員がどうすれば幸せになれるかを常に考えている。「親孝行手当」という独自の福利厚生制度もありますし、失敗した社員にも何度でも挑戦と成長の機会を与える。「働きがいのある会社ランキング」で6年連続ランキング入りをいただいているのも、この文化の積み重ねだと思います。

2030年に向けて、ドバイや北米でのジャパンタウン構想も進めています。でも根っこにあるのは変わりません。「ワクワクする社会を作る」。そのために、飲食の枠をはみ出して、人が育ち、挑戦し続けられる場所を世界中に作っていきたい。それが僕たちのこれからの仕事です。

創業メンバー

〈プロフィール〉

森川 誠(もりかわ まこと)

株式会社FTG Company 代表取締役社長 COO。1983年8月6日生まれ、愛知県名古屋市出身。大学在学中に飲食店を起業するも失敗し、1000万円の借金を背負う。1年で完済後、「リベンジ」を誓い上京。飲食店特化の不動産・開業支援会社で物件開発の実績を積む中、「大阪焼肉・ホルモン ふたご」創業者の李兄弟と出会い、その経営ビジョンに感化され、2011年にFTG Companyへ入社。店長、人事総務、経営企画と幅広く担い、本部機能の構築を主導。2025年6月、代表取締役社長 COOに就任し、国内事業を統括。GPTW「働きがいのある会社ランキング」6年連続ランキング入り。現在、国内外126店舗・20事業を展開する総合サービス企業として、2030年・売上1000億円の達成を目指す。

FPメディア編集部

ファーストパートナーズメディアでは「あらゆる金融情報が集まる資産運用のパートナー」を目指し情報発信を行っています。価値ある情報をお届けするべく、弊社の現役証券外務員、チーフストラテジスト、チーフエコノミストをはじめ、ファンドマネージャー、公認会計士、税理士、保険募集人、宅建士など様々な分野のスペシャリストが執筆・監修した記事を日々配信中

資産・不動産・M&Aまで対応

無料個別相談

最新トレンド情報を会員限定で発信

無料メルマガ登録