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「笑って死にたい」から逆算した1兆円。pluszero小代義行会長が語る、AIの本質と次世代リーダーの育て方

「笑って死にたい」から逆算した1兆円。pluszero小代義行会長が語る、AIの本質と次世代リーダーの育て方

AI業界で異彩を放つ企業がある。株式会社pluszero――「信頼性」と「自己成長」を両立した独自のAI技術を軸に、コールセンターや金融営業など、これまでAIが踏み込めなかった中核業務の自動化に挑む。

しかし、代表取締役会長兼CEOの小代義行氏が描く目標は、一企業の成功にとどまらない。24〜25歳のとき、小代氏はある決断をした。「60歳で日本の一人当たりGDPを世界No.1にする」――そう定めた壮大なビジョンから逆算し、マイクロソフトへの転職、起業と、中間目標を着実に達成してきた。

「最後に笑って死にたい。そのためにみんなをハッピーにしたい」――その思いを原点に1兆円企業の創業を目指す小代会長は、AI時代に経営者が問われる力をどう見ているのか。その戦略と哲学に迫った。

1. 「笑って死にたい」から逆算した1兆円へ。20代で描いた”地図”と、その現在地

――小代会長は20代に「60歳で日本の一人当たりGDPを世界No.1にする」という目標を掲げ、中間目標を着実に達成されてきました。その原点は何だったのでしょうか。

小代義行(以下、小代): 原点は「最後に笑って死にたい」という思いです。そこから「どんなことをすれば自分の人生を肯定的に捉えられるか」を考えた時に、自分自身が何かを達成したいということはもちろんですが、「みんなをハッピーにしたい、周りの人をハッピーにしたい」という答えにたどり着きました。

経済的な側面だけを追うことへの疑問もありました。ただ、歴史的に見るとルネサンスが盛り上がったのは経済的に潤っていたからですし、「衣食足りて礼節を知る」という言葉もある。

経済の効率を上げることで、みんなが文化的にもマインド的にも幸せになる連鎖は起こるはずだと。24〜25歳の頃、まだ世間知らずな状態の中で、自分はそう満足できると思ったんです。

――その思いを、具体的な目標にどう落とし込んでいったのでしょうか。

小代: 60歳でGDP世界No.1という目標から逆算しました。

50歳で時価総額1兆円企業を作る、40歳で他社から経営依頼が来て軍資金10億円を貯める、35歳で起業する、27歳までに世界一の会社で専門性を磨く――そう中間目標を設定したんです。

実際に27歳で当時時価総額世界No.1だったマイクロソフトへ転職し、31歳で起業。

起業後2〜3年で軍資金1億円を達成し、37歳には他社から経営依頼があって兼務も経験しました。43歳に10億円が実現し、50歳で東証グロース市場への上場を果たしました。

――とはいえ、時価総額1兆円はまだ道半ばです。この差を埋めていく戦略はどのようなものですか。

小代: 今私たちがまさに戦っているのが「高信頼性AIエージェント」の領域です。

10年以上前から開発を続け、5〜6年前には特許も取得しています。コールセンターでの個人情報の聞き取りや金融機関の営業支援など、通常の生成AIでは対応できない中核業務で、すでに成果を出してきました。

次のステップとして、私たちがAEIと呼ぶ自己成長するAIを確立した上で、フィジカルAIと連動させていく。私たちのAEIが搭載されたロボットがあらゆる産業のサービス現場で稼働する状態を目指しています。

――成功の転換点はどこになるとお考えですか。

小代: ちょうど今がその山場です。

マイクロソフトはWindows 95をトヨタに導入した前と後で、全然違う会社になりました。「吹けば飛ぶベンチャー」だったのが、「トヨタが採用するほどの製品を持つ会社」に変わった歴史的転換点があったわけです。

私たちのAIも、金融の大手企業の中核業務の営業においてPoCを進めていただいていて、今年3月でその区切りがつき、本格導入の選考に進んでいます。

この情報がオープンになれば、「金融でOKなら他の業界も大丈夫だろう」というお墨付きになる。そこが大きな転換点になると思っています。

2. 「ディープでポン」が組織を壊す。AI時代に経営者が知るべき、本当の使い方

――生成AIが急速に普及し、自社への導入を模索する経営者が増えています。AIのプロの目線から、経営者がこの1年でやるべきこととやってはいけないことを教えてください。

小代: やってはいけないことが明確にあります。社内用語で「ディープでポン」「LLMでポン」と呼んでいるんですが、電子レンジでチンするように、とりあえずディープラーニングやLLMに何かを放り込んで自動化しようという、思考停止に陥ったAI適用のことです。これは絶対やめるべきだと思っています。

逆に今すぐやるべきことは、まず中核業務(コア)と非中核業務(ノンコア)に分けることです。ノンコアはどんどんAIを活用して構いません。

一方でコアの業務は、まず自分で考えてアウトプットしてからAIに聞いてみる。自分との差分が分かったり、新たな視点が手に入ったりする。そういう使い方が大事です。

何でも自分が考える前にAIから与えられてしまうと、思考停止してしまうんです。

――御社が開発するAEIは、ChatGPTのような生成AIと何が違うのでしょうか。

小代: 人間で言う右脳と左脳の話をよくするんですが、今皆さんがAIと呼んでいるLLM(大規模言語モデル)や深層学習は、右脳的なんですよ。大量のデータを経験すると、言語化はできないけど勘が働くようになる。

一方で私たちが重視しているのは、いろんな原理原則をちゃんと言語化して、ルールベースで組み上げていくアプローチです。

これが左脳的なAIです。この左脳的なAIと右脳的なAIを、業務の目的に合わせて適切に組み合わせることで、柔軟性もあるし信頼性もあるAIが実現できています。

コールセンターで個人情報をちゃんと聞き取れるAIをサービス提供できているのは私たちだけなんです、日本初で。

LLMだとハルシネーション(誤った情報の生成)があって、個人情報の聞き取りはとてもやらせられないとなるはずです。でも、リスク許容度の低い金融の会社様がすでにサービスインを意思決定できている程度に、信頼性を実現できています。

――コア業務へのAI導入において、設計思想を教えてください。

小代: 私たちの会社ではAI適用三原則を明確にしています。一つ目は生産性を上げること。多くの会社はここには取り組んでいますが、

二つ目と三つ目として、中核人材を成長させること、そして活性化させること。この三つを三位一体で実現するようなAI導入をご提案しています。

そうしないと、3年後・5年後に「中核人材が全員いなくて、AIに全部任せるようになってしまいました」ということに絶対なってしまう。それは本末転倒です。

――AI普及後の社会で、人間に残る仕事とは何だとお考えですか。

小代: 直近2〜3年は、インプットとアウトプットの質を上げられる人が重宝されると思います。

正しい問いを立てられる人、お客さんと話して要件をきれいにまとめられる人、AIのアウトプットに対して評価軸を決めて品質保証できる人。そういう力が一時的には強く求められます。

ただ、それ自体もAIができるようになっていく可能性が僕の中にはあって。クリエイティブは人間の最後の聖域と言われたのに絵も文章も生成AIが出せるようになったし、コンサルも、プログラミングも代替が進んでいます。

そう考えると、今後本当に必要なのは三つだと思っていて。一つ目は学習力です。何が来ても「じゃあこれをクイックに勉強しよう」と動ける力。

二つ目はゲーマーの能力。変化が読めない不確実な状況の中で、リスクとリターンを考えながら適切に動いていける力。

三つ目は人間力。度胸や愛嬌、誠実さ――人と向き合った時に信頼されたり好まれたりする力です。

これが今の時点での私の仮説です。ただ、新しい技術が出てきたら変わるかもしれません。

3. 「高い理解度と改善力」。50人超の経営者を育てた塾長が語る、伸びる人の条件

――次世代リーダー養成塾「志塾」から、現在までに何人の経営者を輩出されましたか。

小代: 50人以上というところまでは数えてリストも作っていたんですが、もう追い切れなくなってしまって。最近は数えられていないのが正直なところです。

ただ、新たに一般社団法人を立ち上げてNPO法人にしていく動きを始めていたり、会社でも新規事業を立ち上げて持株会社制にして経営者を増やしていく動きを強化しようとしています。

もともと個人的に100人以上育てるという目標を立てているので、ペースはまた加速すると思います。

――特に印象に残っている方はいますか。

小代: 大学1〜2年生の時に面接して採用した一期生がいるんですが、今もう40オーバーなんですよ。一番最初に雇った学生は、上場企業の社長をやった後に、今はVCを経営しています。その彼から始まって、という感じですね。

それより印象に残っているのが、10年以上同じ面接の質問セットを使い続けてきたことで、その時のデータとその人たちがどのくらい成長・成功したかのデータを突き合わせることができたんです。そこで見えてきた共通点が二つあって。

一つは高い理解度です。物事を人に説明できるレベルでちゃんと理解しているか。塾を15年経営していて実感したんですが、「今日何を勉強したの?説明して」と言うと、だいたい説明できないんですよ生徒さんって。

若い年齢でそれができていた人ほど大きく成長しています。

もう一つは改善力です。全国1位になったことがある人を6人雇ったことがあるんですが、彼らは写真記憶のように一度で完璧というわけではなくて、一回は間違えるんです。

でも次は二度と同じ間違いをしない。トヨタの改善力みたいなものですね。この二つを併せ持った人が、経営者として業界でも認められ、経済的にも豊かになっていると感じています。

――18歳の方に予算2,000万円のプロジェクト、19歳の方にM&Aを任せたこともあると伺いました。「任せられる」と判断する基準は何ですか。

小代: コミュニケーション能力と、問題を見つけて解決する力が浮き彫りになるような質問セットを、10年以上変えずに使い続けてきました。

求める人材像を明確にして、そのスキルが浮き彫りになる質問を設計し、自ら1時間かけて選抜をやってきたんです。今のpluszeroの役員は5人います。私以外の4人のうち3人はその面接でピカイチだった人が残っています。

残りの1人は学生時代にAI系インターンで入ってきた浅川です。公認会計士の筆記試験に学生時代に合格していて、監査法人に行くと言っていたんです。

それで「史上最年少のCFOになってみないか」と口説いた。25歳での上場時に監査法人と証券会社の両方に確認してもらったら、史上最年少だったらしくて。そういう形で抜擢したり口説いたりしながら、今も優秀な人に囲まれています。

――実力主義の文化で、成功した事例を教えてください。

小代: pluszero以前に経営していた会社の話になりますが、学生に対して売上の40%を給料として渡していた時には最優秀層が残ってくれました。250万円の案件を1ヶ月でやり切ったら、学生でも100万円になるわけです。100万円を超えた学生が複数人いました。会社としては原価率40%なので何の問題もない。

スポーツの世界では18歳でも世界チャンピオンになれますよね。でもビジネスの世界はそうなっていないことが多い。

それをそうなれるようにしてあげただけです。固定給は基本的によくないと思っていて、天才の方々が最も居心地のいい環境を作る仕組みが大事だと思っています。

4. 日本の最後の砦。AIで産業を変え、「笑って死ねる社会」をつくる

――ファーストパートナーズとの協業によるAIファンド開発に取り組んでいただいています。金融という領域にAIを実装する難しさはどこにありましたか。

小代: もちろん難しさはありました。ただ、一つひとつ丁寧に進めていきました。

松波俊哉さんの圧倒的な原理原則をそのまま鵜呑みにするのではなく、顧客に対する説得性であるとか、バックテストした時の有効性であるとか、統計的に有意かどうかとか、いくつかの観点で検証させていただいた。

大部分はそのまま適用できることになりましたが、一部については松波俊哉さん自体にもフィードバックとして返りまして、松波俊哉さんにとっても学びになったとおっしゃっていただいた。

そういう形で信頼性をさらに高めながら、進化させてきた感じです。

――M&A営業向けの「Brain Plus for Sales」についても教えてください。AIはどのように活きていますか。

小代: 評価基準のところに圧倒的なルールがしっかりある、という部分はAEIの強みが活きています。ただ、シミュレーション自体は柔軟に会話をさせなきゃいけないので、コールセンターと比べるとLLMを活用する割合が比較的大きくなっています。

ポイントは、シミュレーションを皆さんに使っていただければいただけるほど、良い対応パターンも悪い対応パターンもちゃんとコンテンツ化されていくということです。

そういった現場のデータを活用していくことで、将来的には圧倒的に信頼性の高いAIエージェントを作ることが可能になる。御社の貴重な社内ノウハウの言語化と再利用に、最終的には一役買えると思っています。

――最後に、経営者の読者へのメッセージをお願いします。

小代: 私は「60歳で日本の一人当たりGDPを世界No.1にしたい」という目標を掲げていますが、これは自分一人では絶対に実現できるものではありません。

日本が今AIの文脈の中で一番頑張るべきことは、良質な産業適用事例を作ることだと思っています。

重箱の隅をつつくような突っ込みをすることではなく、率先して他国よりも早くAIを産業に適用していく。

そのためには「ディープでポン」ではなく、各社が持っている良質な原理原則ノウハウをしっかり言語化した上で、それを中心に据えたAI適用をやっていく必要があります。

さらに言うと、日本には少子高齢化という課題があります。人が減るほど不足人数は右肩上がりになる。その不足分をAIとロボットで補うことを率先してやれれば、産業革命の時のラッダイト運動のような「機械を壊せ」という動きもない状態で、スムーズに人手不足を解消できる可能性がある。

フィジカルAIはもう日本の最後の砦とも言われているわけですから。

経営者の方々が良質なAIの産業適用事例を勇気を持って作っていき、人間一人あたりの生産性をとことんまで高めていくことに邁進すること。それが結果的に日本の圧倒的な国際競争力につながると思っています。

〈プロフィール〉

小代 義行(おじろ よしゆき)

株式会社pluszero 代表取締役 会長 兼 CEO

24〜25歳の時に「60歳で日本の一人当たりGDPを世界No.1にする」という目標を掲げ、中間目標を逆算して設定。27歳で当時時価総額世界No.1だったマイクロソフトに転職し、31歳で起業。2022年10月、東証グロース市場に株式会社pluszeroを上場させる。「信頼性」と「自己成長」を両立した独自のAI技術(AEI)を軸に、コールセンターや金融機関向けの中核業務AI化に取り組む。次世代リーダー養成塾「志塾」を運営し、50人以上の経営者を輩出。人間一人あたりの生産性を高めることで、日本の国際競争力向上を目指す。

FPメディア編集部

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