
2022年以降の急速な円安を経て、2026年は円相場が上下に触れる場面も増え、改めて為替への関心が高まっています。「為替が動いたとき、自分の資産はどう影響を受けるの?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。
円安・円高のどちらが「良い」かは一概には言えません。保有する資産の種類によって影響の方向はまったく異なります。本記事では、外貨建て資産・円建て資産・国内株式の3つの軸から、為替変動が資産運用に与える影響を整理します。
1. 円安が資産に与える影響
「円安」とは円の価値が外国通貨に対して下がる方向に動くことを指します。たとえば1ドル=100円だったレートが1ドル=150円になる動きがこれにあたります。
1-1. 外貨建て資産の場合(外国株式・外国債券・外国投信・外貨預金)
外貨建て資産とは、ドルやユーロなど円以外の通貨で価格が決まる資産の総称です。円安局面では、円換算で評価益(=保有資産の時価が取得価格を上回っている状態)が生じやすくなります。
仮に1万ドルの米国株式を1ドル=100円で購入した場合、評価額は100万円です。為替が1ドル=150円になると、株価が変わらなくても150万円に膨らみます。この差額が「為替差益」です。
外国債券型の投資信託・外国投信(多数の資産をまとめて運用するファンド)・外貨預金(外国通貨建ての預金)でも同様の仕組みが働きます。
ただし「為替ヘッジあり」(第4章参照)の商品では為替差益は生じず、評価益はあくまで含み益(=未売却の帳簿上の利益)である点に注意が必要です。
※外貨預金は、預金保険機構の保護対象外です
1-2. 円建て資産の場合(円預金・購買力)
円預金は名目上の金額が変わらないため、為替による評価変動は直接には起きません。しかし円安が進むと輸入コストが上昇し、消費者物価指数(CPI)が上昇すれば、同じ1,000万円でも買えるモノの量が減ります。これを「購買力の低下」と呼びます。
日本銀行の公表データによれば、2022年以降の円安局面では輸入物価指数の上昇が続き、足元でも為替動向は国内動向に影響を与える要因の一つとなっています(日本銀行「輸入物価指数」)。
2. 円高が資産に与える影響
「円高」は円の価値が上がり、1ドル=150円から1ドル=100円になる方向の変化です。第1章で見たメカニズムが逆向きに働きます。
2-1. 外貨建て資産の場合(外国株式・外国債券・外国投信・外貨預金)
円高局面では、外貨建て資産の円換算評価額が目減りしやすくなります。1ドル=150円で購入した1万ドルの米国株式は、1ドル=100円になると評価額が150万円から100万円へと減少します。
この差額が「為替差損(=保有資産の時価が取得価格を下回っている状態)」です。ただし、現地通貨建ての資産価格が上昇していれば損失が相殺されることもあります。
2-2. 円建て資産の場合(円預金・購買力)
円高局面では輸入物価が下がることで購買力が実質的に向上し、エネルギーや食料品の価格下落が家計負担を軽減します。海外旅行・留学・海外資産の購入を検討している場合も、外貨の入手コストが下がるメリットがあります。
一方で、円高が長期化すると輸出企業の業績が悪化しやすく、雇用・賃金への影響も懸念されます。
■ 円安・円高による資産への主な影響
| 資産クラス | 通貨建て | 円安局面 | 円高局面 |
| 外国株式 | 外貨建て | 評価益が生じやすい | 評価損が生じやすい |
| 外国債券型投資信託 | 外貨建て | 評価益が生じやすい | 評価損が生じやすい |
| 外貨預金 | 外貨建て | 評価益が生じやすい | 評価損が生じやすい |
| 円預金 | 円建て | 購買力が低下しやすい | 購買力が向上しやすい |
日本銀行「輸入物価指数」(https://www.stat-search.boj.or.jp/)を基にファーストパートナーズ作成
3. 円高・円安と国内株式の関係
国内株式(日本の取引所に上場している株式)は為替の影響が間接的に働きます。企業の業種・収益構造によってその方向が大きく異なるため、「日本株=円安で上がる」と一律に捉えることには注意が必要です。
3-1. 輸出型企業への影響
製造業・自動車・精密機器といった輸出型企業は、円安局面で業績が改善しやすいです。なぜなら、海外で稼いだ外貨を円に換算すると収益が膨らむためです。
逆に円高が進むと、円換算の売上・利益が目減りし、株価への下押し圧力となることがあります。大手輸出企業が決算発表時に「想定為替レート」を開示するのは、為替が業績に直結することを示しています。
3-2. 輸入型・内需型企業への影響
食品・エネルギー・小売・航空といった輸入型企業は、円安でコストが上昇しやすく、それにより収益を圧迫されます。円高局面ではこの構図が逆転し、輸入コストの低下が業績の改善要因となります。
総務省統計局の消費者物価指数によれば、2022年以降、円安や資源価格の変動を背景に、食料品や光熱費を中心とした物価上昇が続いています(総務省統計局「消費者物価指数」)。
■ 業種タイプ別・為替影響の方向性
| 企業タイプ | 代表業種 | 円安の影響 | 円高の影響 |
| 輸出型 | 製造業・自動車・精密機器 | プラス(収益増) | マイナス(収益減) |
| 輸入型 | 食品・エネルギー・航空 | マイナス(コスト増) | プラス(コスト減) |
| 内需型 | 小売・サービス・ITサービス | 影響は限定的 | 影響は限定的 |
総務省統計局「消費者物価指数」(https://www.stat.go.jp/data/cpi/)を基にファーストパートナーズ作成
3-3. 近年の構造変化
かつては「円安=日経平均上昇」という連動性が強く見られましたが、近年は製造業の海外生産移管の進展や、ITサービス・内需系企業の存在感の高まりにより、その関係が一様ではなくなっています。
日経平均株価やTOPIX(東証株価指数=おもにプライム市場銘柄を対象とした株価指数)全体の動きだけでなく、保有銘柄やファンドの業種構成を確認することが重要です。
また、近年は企業ごとの海外売上比率や調達構造の違いによって為替の影響度にも差があり、個別企業の収益構造を確認する重要性が高まっています。
4. 為替変動リスクへの向き合い方
4-1. 分散投資という考え方
分散投資とは、資産を複数の種類・地域・通貨に分けて保有することで、特定のリスクへの集中を避ける考え方です。
将来の運用成果や元本を保証するものではありませんが、円安局面で有利に働く外貨建て資産と、円高局面で相対的に安定しやすい円建て資産を組み合わせることで、どちらの為替局面でも極端な影響を受けにくいポートフォリオ(保有資産の組み合わせ)を目指すという、ひとつの投資手法です。
また、外貨資産は米ドルだけでなく、ユーロなど複数の通貨へ分散することも、為替リスクを抑える一つの考え方です。
4-2. 為替ヘッジという選択肢
為替ヘッジとは、将来の為替変動による影響をあらかじめ抑える仕組みのことです。投資信託や外国債券型ファンドには「為替ヘッジあり」「為替ヘッジなし」の2種類が存在することが多いです。
【為替ヘッジあり】
・円高が進んでも評価額が大きく下落しにくい
・円安局面での為替差益は得られない
・ヘッジコストが発生(日米の短期金利差に連動)
【為替ヘッジなし】
・為替変動をそのまま受ける
・円安局面では評価益が生じやすい
・円高局面では評価損のリスクを伴う
どちらが適しているかは、投資の目的・期間・リスク許容度によって異なります。ヘッジコストと為替リスクの軽減効果を天秤にかけたうえで判断することが重要です。
5. まとめ
円高・円安を正確に予測し続けることはプロでも容易ではありません。大切なのは、どちらの相場になっても資産全体への影響を抑えられるよう、あらかじめ備えておくことです。
円高・円安は、保有する資産の種類によって影響の方向がまったく異なります。外貨建て資産は円安で評価益が生じやすく、円高では目減りしやすいです。円建て資産は直接の評価変動はないものの、円安時の物価上昇が購買力を低下させるリスクがあります。
国内株式は業種によって影響の方向が異なります。近年は産業構造の変化により「円安=日本株全体に追い風」という図式は成り立ちにくくなっています。
為替変動リスクへの対応としては、円建て・外貨建て資産を組み合わせた分散投資が基本的な考え方です。為替ヘッジの選択肢もありますが、ヘッジコストの負担も考慮したうえで判断することが大切です。
円高・円安のどちらが「良い」かは一概に言えません。為替は短期間では予測が難しい一方、長期では資産運用の成果に大きく影響する要素です。そのため、「円高になるか、円安になるか」を当てにいくのではなく、どちらの局面でも対応できる資産配分を考えることが、長期の資産形成では重要になります。
ファーストパートナーズでは、富裕層・資産形成層の方々に対して、ニーズに寄り添ったさまざまなサービスのご提案を行っております。
※ご相談は無料で承っておりますが、その内容により、個別の商品・銘柄・売買の方法・時期等に言及する場合があります。
記事のお問い合わせはこちら
