
※本記事は2026年8月27日時点で確認できる公開情報および報道をもとに作成しています。
Amazon創業者のジェフ・ベゾス氏が、2021年にAmazonのCEOを退いて以来初めて、共同CEOとして企業経営の一線に戻りました。
その舞台が、2025年11月に設立されたAIスタートアップ「Prometheus(プロメテウス)」です。
同社は設立当初に62億ドルという史上最大級の初期調達を行い、2026年6月にはシリーズBで120億ドルを追加調達しました。企業価値は約410億ドルと評価されています。いずれも報道ベースの数字ですが、設立からわずか半年余りの企業としては、異例の規模です。
なお、Prometheusは非上場のスタートアップであり、事業内容や財務情報の開示は限定的です。調達額や企業価値、事業の進捗などには報道ベースの情報が含まれ、今後変更される可能性があります。
本記事では、確認できた事実と報道・推測を区別しながら、Prometheusが何を作ろうとしているのか、なぜこれほどの資金と評価が集まるのかを中立的な立場から整理します。特定の企業や金融商品への投資を推奨・勧誘するものではありません。
1. ベゾス氏がAmazon CEO退任後、初めて経営の一線に復帰した
ベゾス氏は2021年にAmazonのCEOを退任して以降、宇宙開発企業Blue Originの経営や投資活動に軸足を置いてきました。ただし、創業者という立場であり、正式な経営のトップを務めていたわけではありません。
Prometheusでの共同CEO就任は、Amazon CEO退任後初めての正式な経営職への復帰となります。
2026年6月11日のCNBCのインタビューでは、ベゾス氏自身が、Prometheusに「時間の大半」を使っていると説明しています。Blue OriginやAmazonのAI関連にも時間を割いているものの、現在の活動の中心の一つがPrometheusであることを明らかにしています。
もう一人の共同CEOは、科学者のヴィク・バジャジ氏です。
バジャジ氏はGoogleの研究開発部門「X」で自動運転(後のWaymo)やドローン配送(後のWing)の初期プロジェクトに携わったほか、Alphabet傘下のライフサイエンス企業Verilyを共同創業した経歴を持ちます。Prometheusではベゾス氏とともに、物理世界のエンジニアリングをAIで変革する構想を率いています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 設立 | 2025年11月 |
| 本社 | 米カリフォルニア州サンフランシスコ(ロンドン・チューリッヒに拠点) |
| 共同CEO | ジェフ・ベゾス、ヴィク・バジャジ |
| 直近評価額 | 約410億ドル(2026年6月シリーズB・報道ベース) |
| 累計調達額 | 約182億ドル(直近の調達額120億ドル/シリーズB、初期調達額62億ドル) |
| 主要投資家 | ベゾス氏本人、JPMorgan、Goldman Sachs、BlackRock、DST Globalほか |
人員面では、2025年11月に存在が報じられた当初から、OpenAI・DeepMind・Metaなどの主要AI企業・研究機関から研究者を採用していることでも注目されました。設立から1カ月あまりで100人超の体制になったと報じられ、2026年6月時点では約150人に拡大しています。
なお、PrometheusはAmazonやBlue Originとの資本関係を持たない独立企業として運営されているとされています。同社はこれまで詳細をほとんど明らかにせず事業を進めていましたが、2026年6月の大型資金調達を機に、ベゾス氏とバジャジ氏が事業内容を公に説明しています。
2. Prometheusは何を作ろうとしているのか
2-1. 「物理世界のAI」で製品の設計・製造を自動化しようとしている
Prometheusが開発しているのは、文章や画像を生成するAIではなく、物理的な製品やシステムの設計・製造を支援するAIです。
同社はこれを「artificial general engineer(汎用人工エンジニア)」と表現しています。
例えば、ジェットエンジンのような複雑な機械から医薬品の化合物まで、物理的な製品を設計するには、長い時間と多数のエンジニアが必要になります。Prometheusは、こうした工程にAIを組み込み、製造工程を組み立てる作業をソフトウェアで自動化し、時間を短縮することを目指しています。
エンジニアの作業を置き換えるのではなく、設計・試作・検証のサイクルを速めることで発明の総量を増やす、というのが経営陣の説明です。
