
「72の法則」は、資産が2倍になるまでの年数を暗算で出せる計算ルールです。72を利回りで割るだけで年数を導き出せますが、この法則は一括投資のみを前提にしているため、積立投資には当てはまりません。
積立投資には「126の法則」という別のルールがあります。本記事では2つの法則の違いを比較し、目的に応じた使い分けと、計算結果と現実の運用成果がずれる要因を整理します。
当コラムで紹介する運用年数は、法則を説明する都合上、常に設定の利回りで相場が動いた場合を仮定して計算したものであり、実際の投資結果とは大きく異なる可能性があります。
1. なぜ「72の法則」は積立投資に使えないのか?
1-1. そもそも「72の法則」とは?
72の法則は、複利(運用で得た利益を元本に組み入れ、その合計に対してさらに利益がつく計算方法)で運用したときに、元本が2倍になるまでの年数を求める簡易式です。
72 ÷ 利回り(%)= 2倍になるまでの年数
利回り3%なら24年、6%なら12年、8%なら9年となり、割り算ひとつで目標年数を出せます。正確な計算は対数を使いますが、この式はその近似です。
実際にどれくらい合っているかを比べると、利回り8%のとき厳密解は9.0年で、法則の答えも9.0年となり、ほぼ一致します。なぜ72なのかというと、この数字が8%前後で最も精度が高くなるように選ばれているためです。約数が多く暗算しやすいという実用上の理由もあります。
1-2. 72の法則が使えるのは「一括投資」だけ
ここで押さえておきたいのが、この式が何を前提にしているかです。72の法則は、最初にまとまった金額を投じ、それをそのまま置いておく場合の計算です。
100万円を投じて200万円になるまでの年数を出しています。途中で資金を追加しない、という前提が入っています。一括投資であれば、投じた資金は初日から運用期間の全体にわたって働きます。10年運用するなら、元本は10年分の複利がかかります。
1-3.「積立投資」では計算結果がズレる理由
積立投資では、この前提が成り立ちません。毎月一定額を積み立てる場合、最初の月に入れたお金は全期間運用されますが、最後の月に入れたお金はほとんど運用されていません。
20年の積立なら、投じた資金の運用期間は20年から0年までばらつきがあり、平均すればおよそ半分になります。したがって、同じ利回りでも積立元本が2倍になるまでの年数は、一括投資より長くなります。
72の法則をそのまま当てはめると、実際よりかなり短い年数が出ます。利回り5%で比べると、72の法則は14.4年ですが、積立で元本が2倍になるのは25.1年となり、10年以上の開きがあります。
ここで注意したいのが、何が2倍になるのかという点です。一括投資では最初に入れた元本が2倍になりますが、積立投資では、それまでに積み立てた元本の合計が2倍になります。
積み立て続けている限り元本の合計自体も増えていくため、比べているものが違います。そのため、積立投資には別の計算ルールが用意されています。それが次章で扱う「126の法則」です。
出典:枇々木規雄「126ルール:連続複利・連続積立投資版」(https://lab.ae.keio.ac.jp/~hibiki_lab/profile_2/Hibiki_126Rule_2.pdf)
2. 積立投資なら「126の法則」を使おう
2-1.「126の法則」とは?
積立投資で使える計算方法「126の法則」は、積立投資で積立元本の合計が2倍になるまでの年数を求める式です。慶應義塾大学理工学部の枇々木規雄教授が提案しました。
126 ÷ 利回り(%)= 積立元本が2倍になるまでの年数
使い方は72の法則と同じで、126を利回りで割るだけです。利回り3%なら42年、6%なら21年になります。
この法則は、積立投資を行う前提で「年数×利率=126」が成り立つことを数値的に発見して導かれたものです。枇々木教授はその後、連続複利のもとで連続的に積立投資を行うと仮定した場合に「年数×利率」が一定値になることを示し、理論的な裏づけを与えています。
実際の精度を確認すると、この法則はかなり正確です。毎月積み立てる前提で厳密に計算した年数と比べると、利回り1%でも10%でも誤差は0.3〜0.4%程度に収まります。72の法則の誤差が利回りによって数%動くのと比べると、こちらのほうが安定しています。
