
NISAの残り枠を前に、何を買えばよいか迷っていませんか。
結論から言えば、NISA(少額投資非課税制度)は無理に使い切る必要はありません。運用益に対する税負担を軽減する制度ですが、枠を埋めることが資産形成の目的ではないからです。
銘柄選びでは、保有資産との重複、使う時期、負担できる損失を先に整理すると、候補を絞りやすくなります。本記事では、対象商品の基礎から資産状況別の考え方までを解説し、ご自身で比較するための確認ポイントを示します。
本記事は特定の金融商品の売買や特定の投資行動を推奨・勧誘するものではありません。ご自身で判断するための材料を、中立的に整理することが目的です。
1. NISA枠で買える銘柄の基礎知識
NISAで選べる商品は、利用する枠によって異なります。年間に買える金額と、保有できる総枠を区別して確認しましょう。現行制度では非課税で保有できる期間に期限はありません。
| 項目 | つみたて投資枠 | 成長投資枠 |
|---|---|---|
| 年間投資枠 | 120万円 | 240万円 |
| 非課税保有限度額 | 両枠合計で1,800万円 | 成長投資枠の上限は1,200万円 |
| 買付方法 | 積立 | 一括・積立 |
※出典:金融庁「NISAを知る」を基にファーストパートナーズ作成(https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/know/index.html)
※上記は18歳以上の場合です。18歳未満のNISA口座(こどもNISA)は、年間投資枠・非課税保有限度額が異なります。
1-1. つみたて投資枠対象商品(投信積立・長期投資向け)
長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託が対象です。
投資信託は、投資家から集めた資金をまとめて運用する商品です。株式型や、株式と債券を組み合わせるバランス型に加え、一部のETF(上場投資信託)も含まれます。ETFは取引所で売買できる投資信託です。
対象商品でも元本は保証されません。「対象に選ばれていること」と「自分の資金用途に合うこと」を分けて考えましょう。
1-2. 成長投資枠対象商品(個別株・ETF・投資信託など)
上場株式、ETF、一定の投資信託などが対象です。預金や個人向け国債は購入できず、毎月分配型の投資信託なども対象外です。
成長投資枠で個別株を買う必要はありません。対象となる投資信託を積み立てる使い方もあります。購入前に、対象区分と利用する金融機関の取扱いを確認しましょう。
2. 銘柄選びの前に整理すべき「3つの前提条件」
同じ投資信託でも、保有資産や使う時期が違えば、家計への影響は変わります。商品名を見る前に、NISAに任せる役割を決めましょう。
2-1. 【資産全体の比率】NISAで1,800万円投資した場合の総資産に占める割合
NISAの上限額は、全員が使い切るべき投資額ではありません。総枠の1,800万円を使ったとき、値動きのある金融商品が資産全体のどの程度を占めるのかを確認しましょう。
例えば、値動きや入出金を考慮せず、手元の資産から総枠まで投資すると仮定します。総資産が3,000万円なら投資額の割合は60%、1億円なら18%です。同じ投資額でも、資産全体への影響は異なります。
※上記の前提に基づくファーストパートナーズによる試算。将来の運用成果を示すものではありません。
ただし、総資産には売却しにくい自社株や不動産が含まれることがあります。比率が小さくても、現金が乏しければ追加投資の余力があるとは限りません。次の項目を分けて書き出すと判断しやすくなります。
・預金、投資信託、上場株式、自社株、不動産の保有額
・生活費、納税、住宅購入、事業支援に備えて残す資金
・借入残高と返済予定
投資後は、NISA商品の時価を含めた現在の資産配分も確認します。制度上の枠は取得額で管理されるため、枠の使用率だけでは値下がりの影響を把握できません。
2-2. 【非課税の活用】値下がりの可能性を踏まえ、長期的な成長を見込む資産を組み入れる
リターンとは、投資によって得られる利益や損失のことです。非課税の効果は、実際に利益が生じて初めて得られます。利益への期待と、値下がりに耐えられる金額をセットで検討しましょう。
長期的な成長を期待する株式型の投資信託は候補になりえますが、保有期間を長くすれば利益が出ると決まっているわけではありません。
非課税を生かすために、負担できる範囲を超えて値下がりのリスクを増やす必要はありません。相場の下落で生活費や事業資金が足りなくなれば、回復を待てずに売却する可能性があるためです。
また、分配金の多さと運用成果は別です。投資信託の分配金には、利益ではなく投資元本の一部を払い戻すものもあります。元本払戻金はNISA口座でなくても非課税であり、NISAのメリットではありません。
また、分配金を再投資する商品では、再投資額も年間投資枠を使います。受け取る金額だけでなく、保有資産の値動きと合わせて比較しましょう。
2-3. 【出口戦略】「いつ取り崩すか」「誰に残すか」という保有期間の見通し
まず、資金を「近く使う」「当面使わない」「家族に残したい」に分けます。使う時期が近い資金まで投資すると、必要な日に相場が下がっていても売らざるを得なくなります。
| 資金の用途 | 銘柄選びの前に確認すること |
|---|---|
| 近く使う生活費・納税資金 | NISAの外で現金を確保できているか |
| 当面使わない資金 | 値下がり時にも保有を続けられるか |
| 家族に残したい資金 | 相続後の管理方法や納税資金を共有できているか |
NISAで保有している商品は、相続人のNISA口座で引き継ぐことはできません。相続時には相続人の課税口座(特定口座・一般口座)で受け入れることになり、また、NISAの商品だからといって相続税が非課税になるわけではありません。
相続を想定する場合は、口座情報を家族と共有し、税務上の取扱いを税理士に確認しましょう。
3. 銘柄を比べるときの「3つの判断軸」
投資額と保有期間の目安が決まったら、投資対象、運用手法、コストの順に比べます。商品名や直近の成績だけでは、値動きの理由や保有中の負担を把握できません。
3-1. 投資対象(国・地域・資産クラス)
まず、何に投資する商品なのかを確認します。
資産クラスとは、株式や債券など、似た性質を持つ資産の分類です。投資信託なら、商品の内容やリスクを説明する交付目論見書と、運用状況を伝える月次レポートが手掛かりになります。
| 比較する項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 国・地域 | 国内、特定の海外市場、世界全体のどこに投資するか |
| 資産クラス | 株式、債券、不動産、現金・預金、コモディティなど、どの種類の資産に投資するか |
| 投資先の集中度 | 特定の企業や業種への投資比率が偏っていないか |
| 通貨 | 為替変動の影響を受けるか、為替ヘッジなどの仕組みがあるか |
銘柄名が違っても、投資先が重なれば分散は進みません。
例えば、世界の株式に投資する商品と米国株式の商品を組み合わせると、米国企業への投資が重なる場合があります。保有する商品を並べ、国・業種・主要な投資先まで見比べましょう。
3-2. 運用手法(インデックス vs アクティブ)
運用手法は大きく分けて「インデックス運用」と「アクティブ運用」の2種類が存在します。
インデックス運用:日経平均株価やS&P500など、市場のベンチマーク(指標)に連動する運用成果を目指す手法です。一般にアクティブ運用と比べて手数料が安く、値動きの理由も把握しやすいとされています。
アクティブ運用:運用のプロ(ファンドマネージャー)が銘柄を厳選し、市場平均(インデックス)を上回るリターンを目指す手法です。
どちらの運用方法でも損失は生じえます。アクティブ型というだけで高い成果が得られるわけでもありません。
運用成績を比べるときは、投資対象と比較期間をそろえ、費用を差し引いた成績かを確認します。値上がりした期間だけでなく、下落した局面でどの程度値動きがあったかも見ておくと、保有を続けられそうか判断しやすくなります。
3-3. コスト(信託報酬・各種手数料)
NISA口座内であっても、投資信託や株の保有・取引にかかる各種コストは投資家自身の負担となります。
投資信託の信託報酬は、保有中に信託財産から差し引かれる運用・管理の費用です。購入時や換金時の費用、運用中のその他の費用も合わせて確認しましょう。
ETFや個別株では、売買手数料に加え、同じ時点の売り気配値と買い気配値の差であるスプレッドにも注意が必要です。外国資産の商品では、為替手数料などがかかる場合もあります。
同じ投資対象・運用方針の商品同士で、継続的な費用を比べることがポイントです。信託報酬だけで全費用を把握できるとは限らないため、交付目論見書に加え、実際の運用結果や費用を記載した運用報告書も確認します。
4. 【資産状況別】銘柄タイプを検討する際の考え方
ここでは資産状況ごとの検討例を示します。肩書や投資経験だけで商品を決めず、ご自身の保有資産と資金用途に照らして読み進めてください。
4-1. 自社株・事業に資産が偏っている「経営者・役員」
自社株と収入が同じ事業に依存しているなら、NISAでは投資先を広く分ける株式型や、株式と債券を組み合わせるバランス型が検討候補になります。
自社の業績が悪化したときに、収入と保有資産が同じ要因で影響を受ける度合いを抑えるためです。
例えば、勤務先と同じ業種の株式を追加すると、会社名が違っても似た景気変動の影響を受ける可能性があります。海外資産を含む商品でも、投資先の業種が自社事業と重なっていないか確認しましょう。
事業に必要な資金を残したうえで、自社株とは異なる投資先を検討することが出発点です。広く分散する商品でも、市場全体の下落による損失は避けられません。
4-2. 課税口座で株式を多く持っている「経験者」
課税口座も含めて、国・業種・個別企業への偏りを確認します。
為替変動などのリスクも伴いますが、国内株式に集中している場合は、海外株式を含む商品も検討候補となります。ただし、すでに株式全体の比率が高ければ、株式をさらに増やす判断が家計に合うとは限りません。
株式への偏りを抑えたいときは、対象商品の中から債券を含むバランス型などを比較する方法があります。NISAの外で預金や債券を保有し、資産全体の配分を調整する考え方もあります。
課税口座の商品をそのままNISAへ移すことはできません。売却して買い直す場合は、売却益への課税、売買費用、価格変動も考慮します。保有商品を残し、新たな投資資金で偏りを調整する方法とも比べましょう。
4-3. 定年・取り崩しが近く「リスクを抑えたい人」
年齢だけで判断せず、年金などの収入で賄えない支出と、その支払時期を確認します。
値動きの大きさは商品により異なり元本も保証されませんが、当面使わない資金については、株式への配分を抑えたバランス型などが検討候補になります。
「バランス型」という名称だけで値動きの小ささは判断できません。株式の比率、外国資産への投資、債券の価格変動も確認が必要です。債券を含んでも元本保証にはなりません。
取り崩しが近い資金は、商品選びに先立って現金の確保を考えましょう。第2章で整理した資金用途に沿って、使う予定が近づいた分を段階的に現金化する方法もあります。
4-4. リスクを取って「個別株でリターンを狙いたい人」
企業の事業内容や財務状況を継続的に確認できるなら、成長投資枠で個別株を検討する方法もあります。
ただし、特定企業の業績悪化や倒産で、大きな損失が生じる可能性があります。
購入前に、許容できる損失額、同じ企業・業種に投じる金額、保有理由を見直す条件を決めます。高い配当利回りも、今後の配当額や株価を保証するものではありません。
国内上場株式の配当を非課税で受け取るには、証券口座で配当を受け取る「株式数比例配分方式」の選択が必要です。外国株式の配当には外国での課税が残る場合もあるため、受取方法と税務上の取扱いを確認しましょう。
5. NISAの銘柄選びでやってはいけない「3つの落とし穴」
購入後も保有方針を守れるよう、枠の使い方と見直しの基準を確認しておきましょう。
5-1. 「枠を埋めること」が目的になり、銘柄を増やしすぎる
残り枠があることだけを理由に買い足すと、管理しきれない商品や、似た投資先の商品が増えることがあります。追加前に「今の資産にどんな役割を加えるのか」を言葉にしてみましょう。
投資額は、残り枠と、生活資金を除いて投資に回せる金額の両方から判断します。使わなかった年間投資枠は翌年へ上乗せできませんが、未使用分だけ総枠が減るわけではありません。無理に年内で使い切る必要はありません。
余裕資金で年内の利用を考えるなら、残り枠と今後の積立予定額を確認します。つみたて投資枠は金融機関が対応する積立額の変更や増額設定、成長投資枠は対象商品の一括購入や積立で調整できます。
年内の枠を使うには年内に受渡日が来る必要があるため、商品ごとの注文期限、決済方法、入金期限も確認しましょう。受渡日とは、売買代金と商品を決済する日です。設定できる方法や期限は金融機関・商品によって異なります。
5-2. 一時的な値下がりで慌てて売却する
慌てた売買を避けるには、枠の再利用と損失の取扱いを分けて理解することが大切です。売却しただけで、総枠が永久に失われるわけではありません。
NISA口座で株式等を売却すると、翌年以降、その商品の取得額に相当する総枠を再利用できます。ただし、その年に使った年間投資枠が売却によって戻るわけではなく、再投資は各年の年間投資枠の範囲内です。
仮に100万円で買った商品を70万円で売った場合、翌年以降に再利用できる総枠は100万円分です。なお、売却によって確定した30万円の損失そのものが補填されるわけではありません。
※上記の金額は制度を説明するための仮定です。上記の前提に基づくファーストパートナーズによる試算。将来の運用成果を示すものではありません。
NISAで生じた損失は、課税口座の利益と相殺する「損益通算」や、損失を翌年以降へ繰り越して控除する扱いの対象になりません。短期間に売買を繰り返すと、年間投資枠を消費し、費用も増える可能性があります。
ただし、生活資金が必要になったときや、企業の業績・運用方針が変わったときは売却の検討も必要です。「保有理由が変わったか」「資金を使う時期が近づいたか」を確認し、値下がりだけを理由に判断しないようにしましょう。
5-3. おすすめランキングや人気順だけに頼って選ぶ
ランキングは、販売額や保有者数、一定期間の成績など、集計基準によって順位が変わります。人気が高くても、ご自身の資産配分や保有期間に合うとは限りません。
候補を見つけた後は、第3章の比較軸に戻り、次の点を確認します。
・保有商品と投資先が重複していないか
・運用方針と値下がりする要因を説明できるか
・費用を理解し、予定する期間にわたって保有できるか
説明できない項目が残るときは、購入を急がず、交付目論見書や運用報告書で確認しましょう。
まとめ
NISAの銘柄選びは、資産全体の配分と、資金を使う時期の整理から始まります。そのうえで投資対象、運用手法、コストを比べると、保有する理由が明確になります。
まずは保有資産と今後の支出を書き出し、NISAに回せる金額を確認しましょう。枠を使い切る速さよりも、必要な資金を確保しながら続けられるかが判断の土台になります。
ファーストパートナーズでは、富裕層・資産形成層の方々に対して、ニーズに寄り添ったさまざまなサービスのご提案を行っております。
※ご相談は無料で承っておりますが、その内容により、個別の商品・銘柄・売買の方法・時期等に言及する場合があります。
記事のお問い合わせはこちら
