相続・事業承継

事業承継税制とは?会社要件と注意点を徹底解説

事業承継税制は、中小企業の円滑な事業承継を支援するために設けられた税制優遇措置です。この制度を活用することで、後継者が株式や事業資産を承継する際の相続税や贈与税の負担を大幅に軽減することが可能になります。

ただし、事業承継税制を適用するためには、いくつかの厳しい会社要件を満たす必要があります。本記事では、事業承継税制の仕組みや会社要件、要件を満たさない場合の対応策、さらに違反した場合のリスクと対処法について詳しく解説します。

1. 事業承継税制とは?

事業承継税制は、後継者が事業を引き継ぐ際に発生する相続税や贈与税を猶予または免除する制度です。この制度は中小企業の事業承継をスムーズに進めることを目的としており、企業の存続と成長を支える重要な支援策です。

事業承継税制には「一般措置」と「特例措置」の2種類があり、特例措置はより広範な税制優遇が受けられる点が特徴です。ただし、いずれの場合も適用を受けるには、会社や後継者が厳しい条件を満たす必要があります。

2. 事業承継税制が適用されるための会社要件とは?

事業承継税制を適用するためには、対象企業が特定の会社要件を満たす必要があります。このセクションでは、事業承継税制における会社要件を解説します。

2.1 中小企業基本法に基づく中小企業であること

事業承継税制は、中小企業基本法に基づく中小企業が対象となります。具体的には、資本金や従業員数などの条件が中小企業の範囲内であることが求められます。

業種によって中小企業の基準が異なるため、自社がこれに該当しているかを確認する必要があります。

2.2 非上場会社であること

事業承継税制の対象となる企業は、非上場会社である必要があります。上場会社や大企業は対象外となるため注意が必要です。

これは、中小企業の事業承継を支援するという制度の趣旨に基づいています。

2.3 日本国内で事業を継続して営む会社であること

適用を受ける企業は、日本国内で事業を継続的に営んでいることが条件です。海外に拠点を持つ企業でも、日本国内での事業が主たるものであれば対象となります。

2.4 一定の資本金または従業員数の範囲内であること

企業の資本金や従業員数が一定の基準内であることも条件の一つです。たとえば、製造業では資本金が3億円以下または従業員数が300人以下であることが求められます。

この基準は業種ごとに異なるため、自社の業種に応じた基準を確認する必要があります。

3. 事業承継税制の会社要件で確認すべき具体的なポイント

事業承継税制を適用する際には、会社要件を満たしているかどうかを詳細に確認する必要があります。このセクションでは、確認すべき具体的なポイントについて解説します。

3.1 従業員数や資本金が中小企業の基準内に収まっているか

自社の従業員数や資本金が中小企業の基準内に収まっているかを確認することが重要です。これに該当しない場合、事業承継税制の適用対象外となります。

3.2 事業の種類が対象業種に該当しているか

事業承継税制では、対象となる業種が限定されています。たとえば、不動産賃貸業や投資業務など、一部の業種は対象外となる場合があります。

自社の主要事業が対象業種に該当するかを確認しましょう。

3.3 会社が主要事業を継続しているか

対象企業は、主要事業を継続して営んでいることが求められます。事業内容が大きく変わる場合や事業を停止している場合は、要件を満たさない可能性があります。

3.4 承継者が株式の過半数を保有する計画があるか

後継者が株式の過半数を保有し、経営権を実質的に握る計画があることも条件の一つです。株式の保有割合が低い場合は適用を受けられない可能性があります。

4. 事業承継税制の会社要件を満たせない場合の対応策

事業承継税制の会社要件を満たせない場合でも、いくつかの対応策を講じることで条件をクリアする可能性があります。このセクションでは、具体的な対応策を解説します。

4.1 事業規模を縮小して中小企業要件を満たす

従業員数や資本金を調整し、中小企業の基準内に収めることで要件を満たす方法があります。たとえば、事業を一部縮小することで適用対象となるケースがあります。

4.2 会社分割などの手法で条件に適合させる

会社分割などの組織再編を行うことで、事業承継税制の要件に適合させることが可能です。この方法は、専門家のアドバイスを受けながら慎重に進める必要があります。

4.3 別の節税制度(小規模宅地特例など)の活用を検討

事業承継税制が適用できない場合でも、小規模宅地特例などの別の節税制度を活用することで税負担を軽減することができます。

4.4 税理士や行政書士など専門家に相談して計画を再構築する

事業承継税制の適用に向けた計画を立て直すためには、税理士や行政書士などの専門家に相談することが重要です。専門的な視点から具体的な解決策を提示してもらうことが可能です。

5. 事業承継税制の会社要件に違反した場合のリスクと対処法

事業承継税制の要件を満たさなくなった場合、猶予されていた税金が一括課税されるなどのリスクがあります。このセクションでは、違反時のリスクと適切な対処法について説明します。

5.1 猶予された税金の一括課税リスク

事業承継税制の要件を満たさなくなった場合、猶予されていた相続税や贈与税が一括で課税されるリスクがあります。この負担は非常に大きいため、要件を守ることが重要です。

5.2 延滞税や加算税が発生する可能性

要件違反が判明した場合、延滞税や加算税が発生する可能性があります。このため、要件を継続的に満たしているかを定期的に確認することが必要です。

5.3 違反が判明した場合の適切な報告と是正措置

違反が判明した場合には、速やかに税務当局に報告し、是正措置を講じる必要があります。適切な対応を行うことで、ペナルティを最小限に抑えることが可能です。

5.4 専門家の指導を受けて早期に対応策を実行する

違反時のリスクを最小限に抑えるためには、税理士や弁護士などの専門家の指導を受け、早期に対応策を実行することが重要です。

6. まとめ:事業承継税制の会社要件を理解して適用を成功させよう

事業承継税制は、中小企業が円滑に事業承継を進めるための強力な支援策です。ただし、適用を受けるためには厳しい会社要件を満たす必要があり、これを怠ると大きなリスクを伴います。

本記事で紹介した要件や注意点を参考に、事業承継税制を正しく理解し、適用を成功させてください。専門家のアドバイスを活用しながら計画を進めることで、税負担を軽減し、事業の存続と発展を実現することが可能です。

FPメディア編集部

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