
- 相続したお金をどう使えば良いか、どう運用すれば良いか分からない
- 相続したお金の運用方法や注意点について知りたい
このようなお悩みをお持ちではないでしょうか。
本記事では資産運用のプロが、相続資産の使い道や運用のポイントについて解説します。
1. 相続したお金を預金のまま放っておくとどうなる?
相続した資金を預金のまま保有していると、低金利の為資産の増加はほとんど期待できません。
また、インフレの影響で現金の価値が低下するリスクもあります。
例えば、普通預金の金利は2025年5月現在、0.2%程度で、1万円預けても1年で得られる利息はわずか20円程度です。さらに、金融機関によっては口座管理手数料やATM利用手数料で利息以上のコストが発生し、実質的なマイナスとなる可能性もあるでしょう。
このように、長期間預金のままにしておくと、実質的な価値が目減りする可能性があるため、適切な活用方法を検討する必要があります。
加えて、預金だけでは資産分散が図れず、市場変動や緊急時に柔軟な対応が難しくなる点にも注意が必要です。
2. 相続したお金の主な使い道とは?
相続した資金は、生活の安定や将来設計に役立てるためにさまざまな使い道があります。
- マイホームや車など、まとまった出費に充てる
- 住宅ローンや教育ローンを繰り上げ返済する
- 子どもの教育資金として活用する
- 寄付・社会貢献に使う
- 将来に備えて資産運用を行う
それぞれについて解説します。
2-1. マイホームや車など、まとまった出費に充てる
相続資金を活用することで、住宅の購入や自動車の買い替えなどの大きな支出に対応することができます。こうした用途は、一時的に大きな資金が必要な場合に適しており、相続資産を活かす選択肢の一つといえます。
しかし、こうした出費は資産を消費に回すことで、投資機会を失うリスクもある点に注意が必要です。計画せずに支出すると、手元資金が不足してしまう可能性がある点にも留意しましょう。
2-2. 住宅ローンや教育ローンの繰り上げ返済をする
住宅ローンや教育ローンを早めに返済すると、長期的な利息負担を軽減できます。ローン金利は2025年5月現在、住宅ローンの変動金利で0.3%程度、固定金利で1.5%程度であり、繰り上げ返済で支払う利息を大きく減らすことができます。
例えば、ローン金利が約1.5%の場合、1,000万円の繰り上げ返済をすれば、年間15万円程度の利息負担を減らすことが可能になります。一方で、生活の為の余裕資金をあらかじめ残しておく必要があります。
2-3. 子どもの教育資金として活用する
子どもの教育資金に相続資金を充てると、学費や塾代の負担を和らげることができます。
文部科学省の「令和5年度子供の学習費調査」によると、幼稚園から高校までの学習費総額の平均は、全て公立の場合約596万円、全て私立の場合約1,976万円でした。こうした支出に備えて相続資金の一部を教育目的で確保しておくことで、突発的な出費にも対応しやすくなります。
2-4. 寄付・社会貢献に使う
相続資金を寄付に充てることで、社会貢献をしつつ税制上の優遇を得られる可能性があります。
国や地方公共団体、認定NPO法人への寄付は相続税の課税対象から除外される特例があり、さらに所得税・住民税で寄付金控除を受けられます。
例えば、住民税の寄付金控除では「寄付金額−2,000円」の10%が控除される制度などがあり、実質的な負担を抑えられます。
一方、寄付には領収書や申告書記載など事務手続きが伴う点、相続税の申告期限(原則、相続の開始があったことを知ってから10か月以内)までに寄付が必要である点にも注意しましょう。
2-5. 将来に備えて資産運用を行う
将来の資産形成を見据えてために相続資金を運用に資産を振り分けることも一つの有効な選択肢です。
金融商品への分散投資を活用すれば、預金以上のリターンを期待できます。ただし、運用商品には価格変動等のリスクが伴うため、余裕資金の範囲内でポートフォリオを構築することが重要となります。
資産運用を始める前に、まず生活防衛資金を確保し、リスクを抑えやすい投資信託や債券などを活用して分散投資を行うことがポイントです。さらに、金融機関に相談したりロボアドバイザーを利用するなど、プロの運用サポートも活用することでより安心して資産運用に取り組めるでしょう。
3. 相続資産の主な運用方法
相続資産を運用する際は、目的やリスク許容度に応じた適切な手段を選ぶことが大切です。主な方法として以下の5つが挙げられます。
- 生命保険で家族の安心を確保
- 株式投資・投資信託で資産形成
- NISA・iDeCoを活用する
- 外貨建て資産で為替リスクを分散
- 不動産投資
それぞれについて解説します。
3-1. 生命保険で家族の安心を確保
生命保険を活用すると、万が一の際に家族へ死亡給付金が支払われ、生活資金として充てることができるため、精神的な安心感につながります。
定期保険や終身保険など商品ごとに保証額や保険期間をニーズに合わせて設定可能です。
3-2. 株式投資・投資信託で資産形成
株式や投資信託は、長期的な資産形成を目指す手段として有効です。
個別株は企業の成長に伴って値上がり益と配当収入が期待できる一方、投資信託は分散投資でリスクを抑えることが可能です。また、毎月一定額を積み立てることでドルコスト平均法が働き、購入価格を平準化するという効果があります。
ただし、市場変動のリスクがあるため、余裕資金で長期的視点を持って運用することがポイントです。
3-3. NISA・iDeCoを活用する
NISAやiDeCoを活用すると、運用益にかかる税金が非課税となり、資産運用を効率的に行えます。
NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」があり、それぞれ年間の投資枠内で購入した投資信託や株式などから得られた売却益等が非課税です。一方、iDeCoは掛金が全額所得控除対象となるほか、運用益も非課税で再投資できます。
こうした非課税制度を利用することで、長期的にみて複利効果を最大限に活用できます。ただし、iDeCoは原則として60歳まで資金を引き出せない点に留意しましょう。
3-4. 外貨建て資産で為替リスクを分散
外貨建て資産を組み入れることで、円安局面で為替差益を得ることが可能です。
米ドル建ての定期預金や外国債券では、日本円よりも高い金利を得られる場合があります。(2025年5月時点)。
例えば、米ドル建ての定期預金では、年利4%以上の商品(2025年5月時点)もあります。
一方、為替が円高に振れると元本が目減りするため、為替ヘッジや複数通貨の分散投資で為替リスクを軽減する方法もあります。
ただし、為替取引には為替手数料が発生するため、事前の確認が必要です。
3-5. 不動産投資
不動産投資は、賃料収入を得ることで、安定したキャッシュフローを期待できる運用方法です。
ただし、不動産投資は安定的な賃料収入を得られる一方で、空室リスクもあります。収益性を維持するには立地や賃貸需要、人口動態などを見極めることが不可欠です。特に、人口減少が続く地域では慎重な判断が求められます。
また、維持管理費や修繕費用を事前に見積もることで、予想外の出費を抑制できるでしょう。税務面においては、減価償却やローン利息を経費算入できる場合があり、税金の負担を抑えられるケースもあるため、事前の計画をしっかり行うことが重要です。
4. 相続資産を運用する際の注意点
相続資産を運用する際は、リスクや税制、ライフスタイルなど複数の観点に配慮することが不可欠です。主な注意点として以下の4つが挙げられます。
- 生活水準を急に変化させない
- 相続税や所得税などの課税に注意
- ハイリスクな短期投資は慎重に
- 家族構成やライフプランを考慮することが重要
それぞれについて解説します。
4-1. 生活水準を急に変化させない
相続が発生した際には、急に生活水準を上げないことが重要です。
一時的に支出を増やすと、予期せぬ出費や市場変動に対応する資金が不足する恐れがあります。例えば、高額な旅行や趣味に多額のお金を使ってしまうと、余剰資金が減り投資機会を逃したり、急な出費に対応できなくなってしまうリスクが生じます。
定期的に支出と資産運用のバランスを確認し、手元資金を一定の範囲で維持しましょう。
また、ライフプランが変更された際には、資金配分の見直しも検討する必要があります。
4-2. 相続税や所得税などの課税に注意
相続資産を運用するときは、税負担を把握しておく必要があります。相続税は基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を超えた分に課税されるため、申告前に課税遺産総額を正確に把握しましょう。
さらに、生命保険の解約返戻金や満期返戻金も所得税の対象となる場合があるため、商品選択時に税務上の扱いを確認することが大切です。税制優遇制度を活用しつつ、税務リスクを最小化するためには、専門家に相談するのも有効な手段です。
4-3. ハイリスクな短期投資は慎重に
短期間で大きな利益を狙う投資は、価格変動リスクが高いため、慎重に検討する必要があります。特に、ボラティリティ(価格変動性)が高い個別株やFXでは、急激な価格変動によって資産が大きく減少するリスクがあります。
例えば、FX(外国為替証拠金取引)はレバレッジをかけることで、少ない元手でも大きな取引が可能になりますが、その分損失リスクも増大します。このようなハイリスク投資は、生活に影響しない余裕資金の範囲内で行い、リスク許容度を超えない金額に限定するのが望ましいです。
また、あらかじめ損切りラインを設定するなど自身の運用ルールを明確にしておくこともリスク管理の一環として有効でしょう。
4-4. 家族構成やライフプランを考慮することが重要
資産運用を行う際は、家族構成や将来のライフプランを踏まえて適切な手段を選ぶことが重要となります。子育て世帯であれば教育費優先、引退間近の方は安定収入重視の運用が適しています。
例えば、老後資金を最低限確保し、余剰資金をリスク資産に振り分けることが考えられます。また、ライフステージの変化に応じてリスク許容度や必要資金を見直すことが重要です。
定期的に資産状況を見直し、家族の状況変化に応じてポートフォリオを柔軟に調整しましょう。
5. 自分にとっての“ベストな運用方法”をどう選ぶ?
最適な運用方法は、個々の状況に合わせて検討する必要があります。
- 年齢・資産額・目的に応じた運用スタイルを決める
- プロに相談する
以下でそれぞれについて解説します。
5-1. 年齢・資産額・目的に応じた運用スタイルを決める
運用スタイルは、年齢や保有資産、運用目的など個々の状況に応じて設計することが大切です。
一般的に、若年層はリスク許容度が高いため、株式や投資信託で長期成長を目指す運用が向いています。一方で退職が近い方は元本保全を重視し、債券や定期預金、生命保険など安全資産の比率を高めると安心感が得やすくなります。
また、インカムゲイン(配当や利息)重視かキャピタルゲイン(値上がり益)重視か、目的を明確化することで運用効率が高まります。自分の現在位置と将来目標を整理し、定期的なリバランス計画を行うと運用成果を安定させやすくなります。必要に応じて、安全資産とリスク資産の割合を見直すことも忘れないようにしましょう。
5-2. プロに相談する
資産運用に不安がある場合は、ファイナンシャルプランナー(FP)やIFA、銀行、証券会社などの専門家に相談すると安心です。
専門家は、最新の税制や金融商品情報に精通しており、個別ニーズに合わせた運用プランを提案してくれます。
例えば、NISAやiDeCoの活用方法、節税を考慮した保険商品の選び方など、実務的な助言が得られます。自分だけでは気づきにくいリスクや、手続き上の落とし穴を早期に把握できます。初回相談が無料の場合もあるので、気軽に専門家の意見を取り入れる価値があるでしょう。
また、相談前に自分の資産状況や希望を整理しておくことで、より具体的な助言を受けやすくなります。
6. まとめ
相続した財産は、単に預金に置いておくだけではインフレの影響などにより価値が目減りする可能性があるため、使い道や運用方法を検討することが重要です。
まとまった出費やローン返済、教育資金、寄付、資産運用など多様な使い道があり、それぞれにメリットとリスクが存在します。
資産運用の手段としては、生命保険、株式・投資信託、NISA・iDeCo、外貨建て資産、不動産投資など多岐にわたります。運用時には、生活水準を急に上げすぎないこと、税務面への対応、ライフプランの見直しなどへの考慮が欠かせません。
資産運用の最適な方法は、年齢・資産額・目的に基づいて慎重に検討し、必要に応じて専門家の助言を得ながら決定すると、安心して運用を進めることができるでしょう。
ファーストパートナーズでは、お客様のニーズに寄り添った資産運用サポートをしております。相続したお金の使用用途や運用方法について、お客様の状況を鑑みながら、的確にアドバイスいたします。
これを機に一度相談を検討してみてはいかがでしょうか。
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