後継者問題は、会社を経営している方にとって頭が痛くなる悩みの1つです。特に、後継者を探しているのに見つからないと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、後継者がいない会社の実態や抱えているリスク、そして具体的な対策、解決するためのポイントについて解説します。
ぜひ、この記事を参考に、会社の未来を考えてみてください。
1.後継者がいない会社の実態

画像引用:「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」中小企業庁
日本では、少子高齢化と人口減少を背景に、多くの中小企業が後継者不足に直面しています。中小企業庁のデータによれば、経営者の平均年齢は60歳を超え、2025年までに約245万社が事業承継の岐路に立つとされています。
後継者不足の主な原因は、親族が事業を継ぎたくないというケースや、親族がいないというケースです。
また、後継者候補の高齢化も後継者不足に拍車をかけている原因の1つです。事業を継ぐ意思のある人材がいても、年齢から後継者として適任ではないと判断される場合もあるでしょう。
2.後継者不在が会社にもたらすリスク
後継者の不在問題は、会社の経営に様々なリスクをもたらします。
例えば、後継者の不在による経営判断の遅れや事業展開の停滞、資金調達の難化などが挙げられます。
これらのリスクは、会社の業績悪化や倒産につながる可能性があるため注意しなければいけません。
また、後継者不在によって、長年培ってきた顧客との関係が途絶えたり、取引先との信頼関係が崩れたりするリスクもあります。
後継者の不在は、会社だけでなく、従業員や取引先にも大きな影響を与える可能性があるため、早急な対策が必要な問題です。
3.後継者が見つからないときの4つの対策
後継者が見つからない場合、経営者はいくつかの選択肢を検討する必要があります。ここでは、経営者がとれる4つの対策とそのメリット・デメリットを解説します。
3-1.事業承継
親族や従業員など、社内に後継者候補がいる場合は、事業承継が選択肢に入ります。
後継者候補には、経営に必要な知識やスキルを習得させるための研修や、経営経験を積ませるための機会を提供する必要があります。
事業承継のメリット・デメリットは以下の通りです。
事業承継のメリット
経営のノウハウや顧客基盤を継続的に引き継げる
社内外の信頼関係を維持しやすい
親族や従業員が継ぐ場合、スムーズな移行に期待できる
事業承継のデメリット
後継者の育成が不十分だと経営に支障が出るリスクがある
親族間で相続トラブルが発生する可能性がある
長期的な準備と計画が必要で、時間やコストがかかる
3-2.M&A
M&Aとは、企業の合併や買収のことです。後継者が見つからない場合、M&Aによって会社を売却するという選択肢があります。
M&Aは、会社の存続と従業員の雇用を維持できる可能性がある一方で、会社の経営権を失うことになります。M&Aを検討する際は、専門家であるM&Aアドバイザーに相談し、適切な相手先企業を見つけることが重要です。
M&Aのメリット・デメリットは以下の通りです。
M&Aのメリット
外部の経営資源を活用し、事業の継続ができる
売却益を得て、経営者がリタイアする選択もできる
経営のプロフェッショナルを招くことで、事業の成長に期待できる
M&Aのデメリット
従業員に不安感を与えたり、離職されたりするおそれがある
企業文化の融合が難しく、摩擦が生じる可能性がある
取引条件や買収価格で合意が難しい場合がある
3-3.IPO(新規株式公開)
IPOとは、株式を証券取引所に上場し、広く一般投資家に株式を公開することです。IPOをして株式を売却することで外部のステークホルダーとの接点が増えるため、後継者候補を探すことにもつながります。
ただし、IPOには厳しい審査基準があり準備に時間と費用がかかるため、十分な検討が必要です。そのため、IPOを選択できる企業はあまり多くないのが実情といえます。
IPOのメリット・デメリットは以下の通りです。
IPO(新規株式公開)のメリット
株式の売却益を得られる
後継者候補を外部から探せる
従業員への株式報酬制度などでモチベーション向上が見込める
IPO(新規株式公開)のデメリット
開示義務や株主対応など、管理コストが増加する
外部株主の意向により会社の方針が決まることがある
上場準備に多大な時間と費用が必要になる
3-4.廃業
事業の継続が困難な場合は、廃業という選択肢も検討する必要があります。廃業は、従業員や取引先に大きな影響を与えるため、慎重な判断が必要です。
また、廃業手続きには法律や税務の専門知識が必要となるため、専門家への相談が重要になるでしょう。
廃業のメリット・デメリットは以下の通りです。
廃業のメリット
経営者の負担がなくなる
売却が困難な事業でも選択できる
債務整理で経営リスクをリセットできる
廃業のデメリット
雇用喪失によって地域経済への影響がある
顧客や取引先との関係がなくなることがある
精算手続きに時間と費用がかかる
4.後継者がいない状況を解決するポイント
後継者問題をスムーズに解決するためには、早めに対策を始めることが重要です。ここでは、後継者問題を解決するためのポイントを5つ紹介します。
早めに後継者候補を探す
後継者候補を育成する
事業継続計画(BCP)を策定する
会社の価値を高める
専門家に相談する
4-1.早めに後継者候補を探す
後継者問題は、会社の将来を左右する重要な問題です。後継者問題を先延ばしすると、解決が難しくなる可能性があります。後継者問題に早めに取り組み、適切な対策を講じることが重要です。
経営者が60歳になるまでに後継者候補探しに着手することが理想です。
早めに対策を始めることで、様々な選択肢を検討する時間的な余裕が生まれるため、選択の幅を広げられるでしょう。
4-2.後継者候補を育成する
社内に後継者候補がいる場合は、後継者候補の育成に力を入れることもポイントの1つです。
後継者候補には、経営に必要な知識やスキルを習得させるための研修や、経営経験を積ませるための機会を提供しましょう。
後継者候補の育成には、時間と費用がかかりますが、会社の将来のためには必要な投資です。
社外から後継者候補を探す場合も、十分な時間をかけて候補者探しを行いましょう。
4-3.事業継続計画(BCP)を策定する
BCPとは、災害や事故などの緊急事態が発生した場合に、事業を継続または早期に復旧するための計画のことです。
後継者不在は、緊急事態ではありませんが、会社の存続を脅かす重大な問題といえます。
想定外の事態によって後継者が不在になった場合に備え、BCPを策定しておくことがポイントです。
BCPには、後継者が不在になっている間の対応手順や、後継者候補の選定基準などを記載しておきましょう。
BCPを策定することで、後継者不在時の混乱を最小限に抑えられます。
4-4.会社の価値を高める
会社の価値が高くなければ、承継したいと思う後継者も現れてくれません。また、M&Aを考えている場合でも、会社や事業の価値が評価されていなければ、安く買い叩かれたり、そもそも買い手が現れなかったりします。
そのため、会社の価値を高めて後継者や買い手に魅力的な会社だと思わせることも、後継者の不在問題を解決するためのポイントの1つです。
4-5.専門家へ相談する
後継者問題は、法律や税務、経営など、さまざまな分野の専門知識が求められる複雑な問題です。
後継者問題に悩んでいる場合は、一人で抱え込まず、専門家へ相談するとよいでしょう。弁護士や税理士、M&Aアドバイザーなどの専門家は、後継者問題に関する豊富な知識と経験を持っています。
専門家のアドバイスを受けることで、自社の状況に合う解決策を見つけられるでしょう。
5.まとめ
後継者問題は、多くの企業が抱える重要な課題です。
後継者がいない場合、事業承継、M&A、IPO、廃業などの選択肢があります。それぞれメリットとデメリットがあるため、会社の状況に合わせて適した選択をする必要があります。
後継者問題でお悩みの際は、早めに専門家へ相談し、適切な対策を講じることが重要です。