資産運用

株の損切りは何%?判断材料・損失の計算方法と注文時の注意点

株の損切りは何%が正解?待つ?切る?迷ったときの判断基準を徹底解説

株の損切りとは、保有株式を取得価格より低い価格で売却し、損失を確定させることです。「何%下がったら損切りするか」に、すべての人や銘柄に共通する正解はありません。

同じ10%の下落でも、投資額が10万円なら損失は1万円、100万円なら10万円です。資金を使う時期や、その銘柄が資産全体に占める割合によっても、損失の影響は変わります。

この記事では、現物で保有する株式を中心に、損切りを考える際の確認項目、損失の計算方法、指値・成行・逆指値の違いを整理します。

目次

1. 株の損切りとは?含み損と確定損の違い

1-1. 保有中の評価損と、売却による損失を分ける

取得価格より現在の株価が低いときに生じる評価上の損失が「含み損」です。その価格で売却し、損失が実現すると「確定損」になります。損切りは、あらかじめ決めた下落率で売却する場合だけを指す言葉ではありません。

例えば1株1,000円で100株を購入し、株価が900円になった場合、含み損は1万円です。100株すべてが900円で売却できれば、売買価格の差による確定損も1万円になります。この記事の数値例は、特に断りがない限り手数料・税金・配当を含みません。

1-2. 売却・保有のどちらにも、その後の値動きに関する不確実性がある

現物株を全株売却した後は、その保有分について以後の株価下落による損失は生じません。一方、後に株価が上昇しても、その保有分の値上がり益を受け取ることはできなくなります。

保有を続ければ、その後の上昇と下落の両方の影響を受けます。「売らなければ損失はない」と考えても、保有資産の時価が減っている事実は変わりません。逆に、損切りをすればその後の運用成績が良くなると決まっているわけでもありません。

2. 損切りは何%?「10%」だけでは判断できない理由

2-1. 下落率だけでなく、損失額と資産全体への影響を見る

購入価格から10%下落した水準を確認基準にする、という考え方はあります。しかし、10%という数字だけでは、生活や資産計画にどの程度の影響が出るかまでは分かりません。

取得時の投資額価格の下落率評価損の金額当初の運用資金500万円に対する割合
10万円10%1万円0.2%
50万円10%5万円1%
100万円10%10万円2%

表は、各投資額で購入した株式だけが10%下落し、ほかの資産に値動きがない場合の計算例です。500万円は生活費等を除いた当初の運用資金とし、推奨する資産配分や許容損失を示すものではありません。

「全体の1%」という表現も、総資産の1%なのか、運用資金の1%なのかで金額が異なります。割合を使うときは、何を分母にするかを揃える必要があります。

2-2. 投資期間や値動きの大きさによって、同じ割合の意味が変わる

近いうちに使う資金と、使う時期が決まっていない資金では、価格の回復を待てる期間が異なります。また、銘柄ごとの値動きの大きさによって、一定の下落率に達する頻度も変わります。

ただし、値動きが大きい銘柄だから下落を広く許容してよい、長期保有だから損失を気にしなくてよい、とは言えません。保有額が同じなら、想定する下落率を大きくするほど、想定損失額も大きくなります。

2-3. 価格の基準と、保有理由を見直す基準は別に整理する

株価の変化と、購入時に考えていた事業・業績の前提が変わったかどうかは、別の確認項目です。決算や会社の適時開示、資金を使う予定などを照らし合わせると、何を理由に判断しようとしているかが明確になります。

一つのニュースやチャートだけで将来の株価を判断することはできません。「価格が何%動いたか」と「判断の前提にどんな変化があったか」を分けて記録することで、根拠と期待を混同しにくくなります。

3. 損失率・損失額を計算するときのポイント

3-1. 取得価格と株数から、損失を金額で把握する

単純化した損失額は「(取得単価−現在の株価)×保有株数」、取得価格に対する損失率は「(取得単価−現在の株価)÷取得単価×100」で計算します。複数回購入した場合は、平均取得単価を使います。

例えば取得単価2,000円、保有株数500株、現在の株価1,900円なら、評価損は5万円、損失率は5%です。取得時の投資額は100万円なので、当初の運用資金500万円に対する評価損の割合は1%となります。

株式分割等がある場合は取得単価や株数の調整が必要です。また、証券会社の画面に表示される損益に手数料等が含まれているかによって、単純な価格差の計算と異なる場合があります。

3-2. 想定価格は、実際の売却価格や損失の上限ではない

ある価格まで下落した場合の損失額を計算しても、その価格で売却できるとは限りません。注文の種類、相手方の注文数量、相場の急変によって、実際の売却価格が想定から離れることがあります。

先ほどの例で、想定した1,900円ではなく1,850円で500株すべてが売却された場合、価格差による損失は7万5,000円です。事前の計算では5万円でも、実際の損失がその金額に収まる保証はありません。

3-3. 下落率と、元の価格に戻るための上昇率は異なる

取得価格からの下落率取得価格100に対する下落後の価格100に戻るための上昇率
10%90約11.1%
20%8025%
30%70約42.9%
50%50100%

20%下落した価格が20%上昇しても、元の価格には戻りません。100から80に下落した後、80が20%上がると96です。元の価格に戻るための上昇率は「下落率÷(1−下落率)」で求めます。

これは分母が変わることによる計算上の違いです。どの価格で売買するべきかや、回復までの期間・確率を示すものではありません。

4. 損切りを考える前に整理したい確認項目

4-1. 資金の用途・保有理由・資産配分を一緒に確認する

確認項目整理する内容
資金の用途生活費や予定している支出に必要な資金が含まれているか
保有理由購入時の前提と、その後に確認できた事実に違いがあるか
損失の影響含み損の金額と、運用資金全体に対する割合
資産配分一つの銘柄や同じ業種などに保有が偏っていないか
確認の時期資金の使用予定や情報の更新に合わせ、いつ状況を確認するか
注文条件注文の種類・数量・価格条件・有効期間を理解しているか

複数の銘柄を持っていても、同じ材料で同時に値下がりすることがあります。一銘柄の損失だけを計算した例と、資産全体が値下がりする場合を区別すると、影響の見落としを減らせます。

出典:金融庁「資産形成の基本」

4-2. 基準を変える場合は、変化した事実と理由を残す

購入価格まで戻ることへの期待だけで保有を続ける場合も、値下がりへの不安だけで判断を急ぐ場合も、判断材料が偏っている可能性があります。自分の見通しと、決算数値など確認できる事実を書き分けると、後から振り返りやすくなります。

資金を使う時期や企業の状況が変われば、当初の考えを見直す場面もあります。変更前の基準、変わった事実、変更理由、確認日を残すことで、どの情報に基づく判断だったかを確認できます。

4-3. 信用取引では、追証や返済条件を別に確認する

信用取引には、現物株の保有とは異なる保証金や返済の仕組みがあります。相場変動等によって保証金が不足すれば、追加の差入れを求められることがあります。

自分で想定した確認価格より先に、証券会社の定める対応が必要になる場合もあります。保証金の維持率、差入期限、期限までに対応できない場合の扱いは、利用先の規定を確認する項目です。

出典:日本取引所グループ「信用取引の目的・仕組み」

5. 指値・成行・逆指値で異なる注文時の注意点

5-1. 指値は価格条件を付け、成行は価格を指定しない

注文方法売り注文の仕組み主な注意点
指値売却する価格の下限を指定する価格条件を満たす買い注文がなければ成立しない
成行売却価格を指定しない想定より低い価格や、複数の価格で成立することがある
逆指値所定の価格条件に達すると、あらかじめ設定した注文を発注する条件を判定する価格と、実際に成立する価格は同じとは限らない

例えば現在の買い注文が1,000円で出ているときに、900円の通常の売り指値を出すと、条件を満たす買い注文とその時点で成立する場合があります。「900円まで下がるのを待って発注する」という意味ではありません。

成行でも、相手方の注文が不足している場合などには、直ちに全株数が成立するとは限りません。約定(売買の成立)の数量と価格は、注文の受付とは分けて確認します。

出典:日本取引所グループ「売買成立の方法」

5-2. 逆指値は、損失額を固定する仕組みではない

逆指値で設定するトリガー価格は、注文を発注するための条件です。条件が成立した後に出す実注文には、成行や指値があります。対応する注文方法や条件の判定方法は証券会社によって異なります。

例えば「900円以下になったら成行で売る」という設定でも、相場が急変して実際の売却価格が880円になることがあります。逆に、発注後の注文を900円の売り指値にしている場合、900円以上で買う注文がなければ、売却できずに残ることがあります。

条件の発動、注文の発注、約定はそれぞれ別の段階です。アラート通知だけを設定している場合には、その通知によって売り注文が出るとは限りません。

5-3. 発注後は、未約定・一部約定・有効期限を確認する

注文した株数の一部だけが成立した場合、残りの保有株数は引き続き値動きの影響を受けます。画面では、約定数量、約定価格、未約定数量、有効期限を分けて確認します。

注文が失効したり、取消しが完了したりすれば、その注文による売却は行われません。数量や条件を変更する場合にも、元の注文が残っていないかを含めて、現在の注文状態を確かめる必要があります。

関連記事:株の注文は指値と成行どちらがいい?初心者にもわかりやすい使い分け方

6. 損切りでよくある疑問

6-1. 長期保有なら、損切りを考えなくてもよい?

保有期間が長いことだけで、株価の回復が保証されるわけではありません。長期保有を想定していても、企業の状況、資金を使う予定、保有割合が変われば、確認する条件も変わります。保有期間の長さと、保有理由が維持されているかは別の論点です。

6-2. ナンピンで平均取得単価が下がれば、損失も減る?

取得単価より低い価格で買い増すと平均取得単価は下がりますが、それだけで含み損の金額が消えるわけではありません。保有株数が増えるため、その後の値下がりによる損失額は大きくなる場合があります。

場面保有株数平均取得単価株価含み損
1,000円で100株購入した後、800円に下落100株1,000円800円2万円
800円で100株買い増した直後200株900円800円2万円
買い増した後、700円に下落200株900円700円4万円
比較:買い増さずに700円まで下落100株1,000円700円3万円

これは価格と数量の関係を示す仮定の計算です。平均取得単価だけでなく、投資した金額の合計や、さらに下落した場合の損失額を見ると、買い増し前後の違いが分かります。

6-3. 想定利益が想定損失の2倍なら、有利な取引といえる?

想定する利益と損失の比率だけでは、取引の有利・不利は決まりません。それぞれが実現する確率や、手数料、想定と異なる価格での約定も結果に関わるためです。

例えば、利益10万円が30%の確率、損失5万円が70%の確率で生じる二つの結果だけを仮定すると、1回あたりの期待損益は「10万円×30%−5万円×70%=−5,000円」です。利益が損失の2倍でも、この仮定では期待値はマイナスになります。実際の取引では確率自体が不確かであり、この例は売買条件を示すものではありません。

7. まとめ:損失率だけでなく、金額と判断の前提を整理する

損切りを考える際は、下落率に加えて、損失額、資産全体への影響、資金を使う時期、保有理由を整理すると、確認すべき点が明確になります。「何%だから売る・保有する」と一律に結論付けられるものではありません。

また、想定する確認価格と実際の約定価格は別です。注文方法や有効期限、発注後の状態まで含めて把握することが、想定と実際の違いを理解するうえで欠かせません。

ファーストパートナーズでは、富裕層・資産形成層の方々に対して、ニーズに寄り添ったさまざまなサービスのご提案を行っております。

※ご相談は無料で承っておりますが、その内容により、個別の商品・銘柄・売買の方法・時期等に言及する場合があります。

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荻野 真志

新卒で野村證券に入社し、新宿野村ビル支店にて個人富裕層を対象としたリテール営業を担当。着実に実績を重ね、複数の社内表彰を獲得する。その後、ウェルスマネジメント部門へ異動し、上場企業オーナーやそれに準ずる超富裕層を中心に、新規顧客の開拓と資産運用支援に従事。
お客様一人ひとりの長期的なビジョンに寄り添い、資産にとどまらず人生全体に貢献できる存在でありたいとの想いから、より中立かつ柔軟な立場での支援を目指し、IFAとして独立を決意。
現在はファーストパートナーズに所属し、東京・名古屋・大阪を拠点に活動。有価証券の運用提案のみならず、資産全体のポートフォリオ構築、タックスプランニング、事業承継、資産保全など、総合的なコンサルティングを提供している。
金融の専門知識と、実務に裏打ちされた提案力で、お客様に長期的な信頼をいただけるパートナーであり続けたいと考えている。

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