- 税理士事務所に後継者がいないので、どうしたら良いか分からない
- 税理士事務所をM&Aする際はどのような手続きの流れになるのか?
このようなお悩みで困ることはないでしょうか。
M&Aのプロが、税理士事務所の後継者問題について解説します。
この記事を読むことで、後継者問題を抱える税理士事務所がどのような行動を取るべきかを理解できます。
1. なぜ税理士事務所は後継者を募集するのか?
多くの税理士事務所では、経営者の高齢化が進行すると同時に、跡を継ぐ人材がいないことが深刻な問題(後継者問題)となっています。。背景として業界の平均年齢が上がりつつあることに加え、開業税理士の人数も近年伸び悩んでいることがあります。
帝国データバンクの「全国企業『休廃業・解散』動向調査(2023)」によると、2022年の税理士事務所の廃業数が30件ほどであったのに対し、2023年には81件にまで増えています。平均年齢が上がることに加え、後継者不在が廃業を後押ししているのです。
また、企業の休廃業数は業界全体として増加しており、2022年から2023年にかけて、約6000件増加しています。

2. 税理士事務所が抱える後継者問題の要因は?
なぜ税理士事務所が後継者問題を抱えているのか、その要因について解説します。

2-1. 大手税理士事務所がマーケットを独占
大手税理士事務所の存在は、廃業の要因の一つです。
知名度の高い事務所には新しい人材が集まりやすく、顧問先や顧客も多いです。そのため、後継者を育てられる体制も整っています。。
顧客が大手税理士事務所へ流出してしまうと、中小の税理士事務所の顧客が減り、所属税理士の待遇面にも影響が生じてしまいます。実際に大手事務所の採用ページを見ても、若手税理士や有資格者の募集が積極的に行われており、人材獲得競争では中小が不利になりがちだといわれています。
大手税理士事務所が持つ知名度と多額の資金で、市場を独占していることが要因の一つです。
2-2. 少子高齢化による社会的な問題
全国的な少子高齢化の影響も、税理士事務所の後継者不足を加速させている大きな要因の一つです。
若年層が減少し、税理士資格を取得しようとする人自体が総体的に少なくなっているからです。
たとえば、税理士試験の受験者数や合格者数を見ると、近年は増加傾向ではありますが、トレンドとして受験者数が減少しています。合格者数も減っており、後継者となる税理士が徐々に減少しているのです。
少子高齢化に伴う税理士の減少が、後継者不足の二つ目の要因となります。

2-3. 将来的に後継者となる人材確保の難しさ
後継者育成のための人材確保が難しいことも要因です。
新卒採用し、後継者として育成していたとしても、離職してしまったり、大手に流出してしまうことがあります。
実際に、税理士事務所に限定したデータはありませんが、厚生労働省のデータによると、2021年3月に卒業した新規大卒の3年以内の離職率は34.9%です。
また、事業所規模別に離職率を見た場合、特に100人未満の規模の事業所にて、離職率が高いことが分かります。このように中小規模の税理士事務所にて、優秀な後継者となる若手を確保することが難しくなっています。
■ 新規学卒就職者の事業所規模別就職後3年以内離職率 ()内は前年差増減
事業所規模 | 高校 | 大学 |
5人未満 | 62.5% (+1.8P) | 59.1% (+5.0P) |
5~29人 | 54.4% (+3.1P) | 52.7% (+3.1P) |
30~99人 | 45.3% (+1.7P) | 42.4% (+1.8P) |
100~499人 | 37.1% (+0.4P) | 35.2% (+2.3P) |
500~999人 | 31.5% (▲0.3P) | 32.9% (+2.2P) |
1,000人以上 | 27.3% (+0.7P) | 28.2% (+2.1P) |
3. 税理士事務所に後継者がいない時の対処方法4選
では、税理士事務所に後継者がいない場合どのように対処すれば良いのでしょうか。
その対処方法について、以下の4つをご紹介します。
No. | 対処方法 | 詳細 |
1 | 後継者を育てる | 税理士資格を保有している社員を経営者として育成。職員からの信頼がある状態で代表社員に就任させられる点がメリット |
2 | 後継者を募集する | 自社外部から後継者を採用 経営者候補として求人サイトやエージェントへ依頼 |
3 | 税理士事務所を売却(M&A)する | 税理士事務所を第三者に売却 従業員の雇用を守りつつ、顧問先と事務所の価値を守ることができるため、おすすめの対処方法 |
4 | 税理士事務所を廃業する | 税理士事務所を廃業 これは後継者が見つからない場合の最終手段。 |
以下でそれぞれの方法を説明します。
3-1. 後継者を育てる
今いるスタッフや若手の税理士資格保有者を、段階的に後継者へと育てる手段です。
身内や既存社員を後継者にすれば、事務所の業務内容や顧問先の特徴を熟知しているため、引き継ぎが比較的スムーズに進むのが利点です。
また、社歴がある程度長いため、社員からの信頼がある状態で代表社員に就任することができます。
具体的な育成方法として、定期的に一緒にクライアントを訪問するOJTを行うと、実践的に経営面を学ぶことができます。事務所のカルチャーや顧客ニーズを後継者候補に継承しやすくなるでしょう。
3-2. 後継者を募集する
外部から後継者候補を募る方法も一つの手段です。
税理士を目指す方や、すでに他事務所で実務経験を積んだ税理士資格者を採用し、将来的なパートナーや経営者候補として迎え入れることで、後継者候補を確保することができ後継者問題を解決できます。
たとえば、税理士専門の求人サイトやエージェントを活用すると、キャリアアップや独立開業を視野に入れた税理士が集まりやすいです。
また、人材の幅を広げることで、新しい知見を取り入れる機会にもなり、事務所自体の活性化につながります。
3-3. 税理士事務所を売却(M&A)する

自力での後継者育成や新規採用が難しい場合、税理士事務所を売却(M&A)するという選択肢もあります。
経営を承継したい企業や他事務所に引き継ぐことで、顧問先と事務所の価値を守りながら円満に事業を継続できる利点があります。また、従業員の雇用も守ることができます。
例えば、会計業界に特化したM&A仲介会社やIFA(Independent Financial Advisor)など、M&Aの専門家に相談してマッチングを行うことができます。
IFAのファーストパートナーズでは、税理士事務所のM&A後の資産運用まで含めたトータルサポートを行っています。
以下のリンクからご相談いただければ、M&Aによる事業承継の支援サポートを受けられます。
ご相談はこちらから。
3-4. 税理士事務所を廃業する
どうしても後継者が見つからない場合には、廃業を選ぶことになります。
経営者の健康上の理由や、リタイアを望む年齢に達したにもかかわらず後継者が確保できない場合には、やむを得ず廃業を選択します。
ただ、従業員の雇用や顧客に大きな影響を与えるため、可能な限り後継者へ承継したりM&Aによって、事務所を存続させることがおすすめです。
たとえば、顧問先に他事務所への引き継ぎを案内するなど、クライアントへの影響を最小限に抑える方法を取る事例もあります。
最終的に廃業を選択する際でも他事務所への案内等を準備することで、周囲への影響を減らしつつ事務所を円満に終わらせることが望ましいです。
4. 税理士事務所を売却(M&A)する際の流れ
一般的に企業がM&Aをする際の手続きの概要について解説します。
税理士事務所をM&Aする際も同じ流れとなります。
STEP | アクション |
1 | 買い手候補を探すため、専門家に依頼 M&A仲介会社やM&A仲介業も行っているIFAが主な依頼先となる |
2 | M&A仲介会社やM&A仲介業も行っているIFAなどと契約 その後、契約先との面談や実際のプロセスが開始 |
3 | 買い手候補が見つかり次第、売り手代表者と買い手代表者で面談を実施 譲渡価格や諸条件等の相談を行う |
4 | 基本合意書の締結 基本合意書には、売却価格や調査(デューディリジェンス)に対する売り手の協力義務が記載されている |
5 | 買い手による売り手に対する調査(デューディリジェンス)を実施 買い手は、専門家に依頼し、売り手の会社調査を実行 税務や法務などさまざまな角度から売り手企業の価値やリスクを調査する |
6 | 最終契約書の締結 売却後の売り手の責任、売却価格、売却条件などを規定する 法的な事項も多く含まれるため弁護士に相談し、検証が必要。IFAは弁護士と密に連携している所も多く、弁護士相談を含めたトータルサポートが可能 |
7 | クロージング 最終契約書に基づき、株式譲渡等の実施 |
8 | 取引終了 会社売却後も、売り手の責任を追及される事例があるため注意が必要。最終契約書フェーズでの弁護士への依頼や各ステップにおいて、専門家へ相談することが推奨される |
※デューディリジェンス:企業のM&Aにおいて、 買い手が売り手の事業や財務状況、リスクなどを詳細に調査する工程です。「Due=当然行われるべき」「 Diligence=義務・努力」は「DD」と略されます。買収監査とも呼ばれています。
5. IFAが行う税理士事務所の後継者サポート
後継者不足で悩む税理士事務所がIFAに相談するメリットとして、M&Aのアドバイス、M&Aの初期検討からM&Aの終了、その後の資産運用までをワンストップで支援してもらえる点があります。
IFAは金融やM&A、事業承継など幅広い領域に精通している専門家のため、後継者候補となる人材を紹介したり、M&Aに関するアドバイスを適切に行います。
こうした多角的なサポートを受けることで、後継者問題のスムーズな解決が可能です。

6. まとめ
- 税理士事務所の後継者問題は、大手税理事務所の存在、業界全体の高齢化や少子化の波を大きく受け、深刻化しています。
- 後継者問題の対処法として、後継者を育てる、外部から募集する、M&Aで第三者に引き継ぐ、あるいは廃業するという四つの方法が挙げられます。
- 従業員の雇用を守り、顧問先にも影響がないM&Aがおすすめです。
どの選択をするにしても早めの準備が重要です。特に、IFAなどの専門家を活用すれば、幅広い選択肢の中から最適な対処方法を見つけやすくなるでしょう。
後継者がおらず、廃業せざるを得なくなる前に、今のうちから手を打つことが大切ではないでしょうか。
ファーストパートナーズでは、経営者の引退後の資産運用を見越したワンストップのM&Aサポートを行っています。後継者問題を抱える税理士事務所の経営者の方は、この機会に是非相談を検討してみてはいかがでしょうか。
ご相談はこちらから。