
10億円を「どこに預けるか」という問いは、資産を増やす以前に「いかに守るか」を考えるうえで最も重要なテーマの一つです。
一見、安全に思える預金や現金保有といった手段にも、インフレや金利低下といった「見えないリスク」が潜んでいます。
本記事では、普通預金・タンス預金の”メリット”と”限界”を整理しつつ、年3〜5%で運用した場合の資産寿命や、物価上昇による実質価値の変化をシミュレーションします。
さらに、預金保護制度や詐欺リスク、相続・贈与の税務対策といった資産防衛の基本を解説します。加えて、銀行・証券会社・IFAの特徴や、短期・中期・長期の目的別に適した資金配分の考え方まで、資産家が実践するリスク管理の要点をわかりやすくまとめます。
1.預け先を検討する前に知っておきたい「運用しない場合の暮らし方」
10億円という資産を手にしたとき、多くの人がまず考えるのは「安全に保管したい」という点でしょう。
確かに、投資にはリスクを伴うため、運用せずに現金のまま保有しておくという選択肢は一見安心に思えます。しかし、運用しない=リスクがないとは限りません。金利や物価、税制など、見えにくいリスクが確実に存在します。
ここでは、運用を行わずに10億円を保有した場合の代表的な方法と、それぞれの注意点を見ていきます。
1-1. 銀行の普通預金に置いておく
最も一般的な方法は、銀行口座の普通預金に資産を預けるケースでしょう。
安全性の面では非常に優れており、日本では「預金保険制度(ペイオフ)」によって、1金融機関あたり1,000万円とその利息が保護されます。(外貨建て預金は対象外)つまり、仮に銀行が経営破綻した場合でも、その範囲内は確実に戻ってくる仕組みです。
ただし、10億円以上という規模になると話は別です。全額を1つの銀行に預けると、保護の対象外となる資金が9億9,000万円以上に達します。そのため、複数の銀行に分散して預けるのが現実的な対応策です。
都市銀行、地方銀行、ネット銀行などを組み合わせることで、リスク分散が図れます。
また、銀行によっては多額預金者に対して専用の「プライベートバンキング」サービスを提供しています。資産管理や税務相談を受けられる一方で、投資商品を勧められる場合もあるため、提案内容を慎重に吟味することが大切です。
1-2. タンス預金として現金で持ち続ける場合
「銀行では、1,000万円しか保証されていないので、銀行預金は心配」と考えて、現金を手元で保管する「タンス預金」を選ぶ人もいます。
確かに現金は価格が一定で、金融機関に預ける手間もありませんが、これは最もリスクの高い保有方法でもあります。
まず、盗難や火災などの物理的リスクです。火災保険では現金の補償範囲が限定的で、盗難や紛失の場合は原則として自己責任となります。また、10億円をすべて現金で持つとなると、重量にしておよそ100kgを超える紙幣の山になります。
物理的にも管理は容易ではありません。
さらに、金融機関を通さずに巨額の現金を保管していると、税務署から「資産の出所」について確認を受ける可能性もあります。特に相続時や贈与時に現金が見つかると、申告漏れや課税対象とみなされることもあるため、記録管理を徹底する必要があります。
もうひとつの問題は、「インフレによる価値の目減り」です。物価が上昇しても現金の額面は変わらないため、長期的に見れば実質的な資産価値は低下していくでしょう。
2.預け先として知っておきたい「金融商品に投資して運用した場合の資産寿命」
10億円という金額は、一般的には「夫婦二人の老後の資金としては十分な金額」と思われがちです。
しかし、実際には運用の仕方や支出ペースによって、資産の寿命は大きく変動します。ここでは、運用を行った場合にどのくらい資産が長持ちするのか、年利3%・5%というリターンを想定したシミュレーションを見ていきましょう。
また、見落とされがちなインフレ(物価上昇)の影響についても確認しておくことが重要です。
2-1. 年3%で運用した場合のシミュレーション
まずは比較的実現可能な運用である「年3%」のケースです。
これは国内外の債券、安定的な配当株、バランス型投資信託などで運用するリターンとなります。
仮に10億円を年3%で複利運用した場合、20年後の資産は次の通りです。
10億円 × (1.03)²⁰ ≒ 18億円
運用益はおよそ8億円。
大きなリスクを取らずとも、長期的に複利を効かせることができれば資産が着実に増えていきます。
※シミュレーションは仮定のものであって将来の運用成果等を示唆または保証するものではありません。
仮に年間の生活費として5,000万円を引き出しながら運用を続けた場合でも、単純計算で30年以上の生活資金を維持することが可能です。つまり、慎重な運用でも資産は想像以上に長持ちするということです。
一方で、年3%運用であっても市場環境や金利動向の影響を受けやすく、元本割れのリスクもゼロではありません。特に短期的な相場変動で慌てて売却すると、リターンを大きく損なう可能性があります。あくまで「長期運用を前提とした戦略」として考えるのが現実的です。
2-2. 年5%で運用した場合のシミュレーション
次に、やや積極的な「年5%」運用を想定してみましょう。
これは世界分散型の株式投資、ETF、あるいは不動産運用などを組み合わせたポートフォリオで目指すリターンです。
複利で20年間運用した場合の結果は次の通りです。
10億円 × (1.05)²⁰ ≒ 26億5,000万円
運用益は実に16億5,000万円にも上ります。3%運用との差は8億円以上で、運用における複利の力の大きさがよく分かります。
※シミュレーションは仮定のものであって将来の運用成果等を示唆または保証するものではありません。
また、年5%で運用しながら毎年5,000万円を取り崩した場合でも、30年後に残る資産はおよそ7〜8億円。運用を継続することで、資産を減らさずに生活費をまかなうことも可能です。
ただし、年5%のリターンを継続して得るには、一定のリスク許容度が必要です。株式市場が下落局面を迎えた際に評価額が急激に下がったり、為替変動や不動産価格の下落など、外部要因の影響を受けることもあるでしょう。
そうした局面でも精神的な余裕を保つことが大切だと考えられます。
2-3. インフレ率を考慮した資産寿命の変化
運用を考えるうえで忘れてはならないのが「インフレ率(物価上昇)」の存在です。
仮に毎年2%のインフレが続くと、10年後には同じ10億円でも実質的な資産価値は約8億2,000万円に減少します。
つまり、現金をそのまま保有しているだけでは、資産価値が実質的に目減りしていくということです。この観点からも、「資産を守る=運用する」という考え方が欠かせません。
年3%で運用してもインフレ率2%を差し引けば実質リターンは1%にとどまり、年5%運用でも実質3%のリターンです。インフレ率を上回るリターンを得ることが、資産寿命を延ばすための条件といえるでしょう。
また、近年はエネルギー価格や人件費の上昇など構造的な物価上昇が続いており、将来的に年2%〜3%のインフレが常態化する可能性もあります。このような環境では、資産の一部をインフレ耐性のある資産(不動産・金・株式など)に振り向けることが重要です。
3.預け先に迷ったときの基本的な考え方
10億円という大きな資産をどう管理するかは、「どこに預けるか」以前に、「どのような目的で保有するのか」を明確にすることが重要です。
資産が多いほど、リスクを一点に集中させるのは危険です。ここでは、資産家が実践している3つの基本的な考え方
①生活費と余剰資金の分離、②リスク分散の徹底、③運用期間ごとの目的設定について解説します。
3-1. 生活費と余剰資金を分けて考える
まず最初に行うべきは、「生活に必要な資金」と「将来のための資金」を明確に分けることです。
10億円をすべて運用に回す必要はありません。むしろ、どれほどの資産家であっても、日々の生活に必要な支出や緊急時の備えは現金で確保しておくのが基本です。
一般的な目安として、2〜3年分の生活費+予備費を銀行預金など流動性の高い資産で保有するのが理想です。たとえば年間の生活費が5,000万円であれば、1億〜2億円を現金または普通預金で確保しておけば、相場変動に左右されずに安心して暮らすことができます。
残りの8〜9億円は「余剰資金」として運用を検討するとよいでしょう。この余剰資金は、増やすための資金であり、生活に直接影響しない範囲でリスクを取ることも大切です。
この区分を曖昧にしたまま投資を始めると、相場が下落したときに生活費まで切り崩す羽目になり、冷静な判断を失う原因になります。「運用で増やす資金」と「生活を守る資金」を切り離すことが、資産を長く維持するための第一歩です。
3-2. リスク分散の重要性を理解する
次に考えるべきは、リスクの分散です。10億円を1つの銀行や1つの資産クラス(たとえば不動産や株式など)に集中させるのは極めて危険です。
リスク分散には3つの軸があります。
・資産の種類による分散(アセット分散)
株式・債券・不動産・金・現金など、異なる値動きをする資産に分けて保有することで、相場変動の影響をある程度緩和します。
・地域による分散(グローバル分散)
国内だけでなく、米国や欧州、新興国などにも分散投資することで、為替や景気サイクルの偏りを防ぎます。
・運用機関・預け先の分散
銀行・証券会社など、複数の機関に預けることで、倒産リスクや不正リスクを最小化します。
たとえば、株式で3億円、不動産で2億円、外貨建て債券で1億円、金などのコモディティで5,000万円、現金で3.5億円――というように、「複数のカゴに卵を分ける」ことがリスク管理の基本です。
また、最近では「プライベートエクイティ」「インフラファンド」などのオルタナティブ資産も注目されています。伝統的な株式・債券と値動きが異なるため、全体のボラティリティを抑える効果が期待できます。
“リスクを恐れて資金を動かさないこと自体がリスクである”、という認識が重要です。「安全」「分散」「透明性」のバランスを取ることが、長期的に資産を守るカギとなります。
3-3. 運用期間を短期・中期・長期の目的に分けて預け先を決める
資産運用では、「いつ使うお金か」を明確にすることが非常に大切です。
10億円をどのくらいの期間で使うのかによって、預け先や運用方法はまったく異なります。
以下のように期間別に整理してみましょう。
| 運用期間 | 主な目的 | 代表的な預け先・商品例 | 特徴 |
| 短期(1〜3年) | 生活費・税金・緊急資金 | 普通預金・定期預金・MMF | 元本安全性を最優先 |
| 中期(3〜10年) | 教育費・住宅・事業資金など | 国内外債券・バランス型投信 | 安定運用+やや高い利回り |
| 長期(10年以上) | 老後・相続・次世代資産形成 | 株式・不動産・世界分散型投信 | 成長性を重視、複利効果を狙う |
短期資金は「すぐ引き出せる安全な場所」、長期資金は「時間を味方につけて増やす場所」に置くのが原則です。また、長期運用では複利の力が大きく働くため、10年・20年単位で資産を育てる視点が重要になります。
このように期間ごとに目的を分けておくと、相場変動があっても必要な資金を確保でき、慌てて売却するリスクを防げます。
4.預け先に迷ったときに頼れる相談先3選
10億円もの大きな資産を管理・運用していく上では、「誰に相談するか」が非常に重要です。投資や税務、相続といった分野は高度な専門知識が必要であり、自己判断だけで対応するのはリスクが大きいでしょう。
ここでは、資産家が実際に利用している3つの主要な相談先—銀行・証券会社・IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)、それぞれの特徴と、どのような人に向いているかを解説します。
4-1.銀行
銀行は、最も身近で利用しやすい相談先のひとつです。
定期預金や普通預金といった基本的なサービスに加え、近年では投資信託・外貨預金・保険商品など、資産運用に関する幅広いラインアップを取り扱っています。
特に10億円クラスの顧客になると、「プライベートバンキング(PB)」と呼ばれる専門のサポート体制を受けられるケースが一般的です。プライベートバンカーが資産状況や目的をヒアリングし、運用から税務、相続対策まで一括して提案してくれます。
複数の銀行口座を持っている場合でも、資産全体を俯瞰してバランスをとるアドバイスを受けられるのは大きなメリットです。
ただし、自社系列の投資信託や保険商品を中心に提案されることが多い傾向があり、個別の株式については国内外ともに取り扱いがありません。ポートフォリオ内に株式を含めるのならば、他の金融機関との組み合わせが必要になります。
【こんな方におすすめ】
- 銀行との長年の付き合いがあり、信頼関係を重視したい方
- 預金・ローン・保険などを一括管理したい方
- 投資よりも安定性や手続きの簡便さを重視する方
4-2.証券会社
証券会社は、資産運用における専門性の高さが最大の強みです。
株式・債券・投資信託・REITなど、金融市場に直結した商品を取り扱っており、マーケット分析に基づくタイムリーな提案が可能です。国内の大手証券会社はもちろん、外資系証券会社では国際的な視点からの運用戦略を提案してくれることもあります。
また、証券会社は日々マーケット動向を分析しているため、景気サイクルや金利変動への対応に強く、「資産を増やす」視点での提案力が期待できます。ただし、証券会社にも注意点があります。
企業ごとに「販売方針」や「主力商品」が異なるため、提案内容に偏りが出やすい点です。また、担当者の実力差が大きく、経験豊富なアドバイザーに出会えるかどうかが成果を左右します。
取引前には「どのような方針で提案してくれるのか」「どんな商品に強いのか」を確認しておきましょう。
【こんな方におすすめ】
- 市場動向を踏まえた本格的な運用を行いたい方
- 株式・債券・投資信託など、投資の選択肢を広げたい方
- 国際分散や外貨建て商品にも興味がある方
4-3. IFA
IFA(Independent Financial Advisor)は、銀行や証券会社と異なり、特定の金融機関に属さない独立系のアドバイザーです。
営業ノルマがないため、特定の金融商品の販売に偏らず、顧客の利益を最優先に考えた提案を行うことができます。
IFAは、複数の証券会社や運用会社と提携している場合が多く、株式や投資信託、債券などを幅広く比較しながら、最適な組み合わせを提案してくれます。また、IFAは「売って終わり」ではなく、長期的な伴走サポートが特徴です。
相場環境の変化に応じてポートフォリオを見直したり、ライフプランの変化に合わせて運用方針を調整したりと、継続的なフォローが期待できます。
さらに、税理士や弁護士などの専門家と連携して、相続や事業承継の相談にも対応しているIFAもあります。特に10億円規模の資産になると、金融商品の運用だけでなく「次世代への引き継ぎ方」も重要なテーマとなるため、IFAの中立的な立場が大きな力を発揮します。
ただし、IFAの質は個人によって差があり、金融知識や経験年数、契約している証券会社の種類なども確認が必要です。契約前には、過去の実績や顧客対応のスタンスをしっかり見極めましょう。
【こんな方におすすめ】
- 複数の証券会社の商品を比較しながら選びたい方
- 長期的に同じ担当者と信頼関係を築きたい方
- 中立的な立場から助言を受けたい方
5.預ける際に注意すべきリスクとポイント
10億円という大きな資産を安全に管理・運用していくためには、「リターンを追うこと」よりもまず「リスクを避ける仕組み」を整えることが欠かせません。
どれだけの資産を持っていても、リスク管理を怠ると、一瞬で大きな損失につながる可能性があるからです。ここでは、10億円を預ける際に特に注意すべき4つのポイントを、具体的な事例を交えながら解説します。
5-1. 預金保護は1,000万円までのため、分散預金が必要
まず理解しておくべきは、日本の預金保険制度(ペイオフ)のルールです。
この制度では、万が一銀行が破綻した場合でも、1つの金融機関ごとに預金者1人あたり「元本1,000万円とその利息」までが保護されます(海外銀行や外貨預金は対象外)。
つまり、1億円を1行に預けていた場合、保護されるのは1,000万円+利息のみ。残りの9,000万円以上は最悪の場合、戻ってこない可能性があるということです。
このため、10億円の資産を預金で保有する際は、複数の銀行に分散して預けることが必須です。預金保険機構に加盟している都市銀行・地方銀行・ネット銀行を組み合わせて選ぶと安心です。
5-2. 投資商品は元本保証がないため、余剰資金で運用行う
次に注意すべきは、「投資商品には元本保証がない」という基本原則です。
株式・債券・投資信託・不動産など、運用益が期待できる資産には必ずリスクが伴います。
投資金額が大きくなれば、その分相場変動による損失も大きくなりやすい点に注意が必要です。
そのため、投資を行う際は「生活資金」と「運用資金」を完全に分離することが前提です。日常生活に必要な資金や税金の支払いなどに使うお金は、銀行預金や短期債などの安全資産に置き、残りの「余剰資金」の範囲で運用を行うのが基本です。
また、投資の目的を明確にすることも大切です。「資産を増やすため」なのか、「インフレに備えるため」なのかによって、最適な投資手法は異なります。
たとえば、
- 安定運用を目指すなら:債券・バランス型投信・インフラファンド
- 成長を狙うなら:世界株式・REIT・プライベートエクイティ
- インフレヘッジを意識するなら:金・コモディティ・外貨資産
といったように、リスク許容度と運用目的に応じてポートフォリオを組むことが重要です。
特に10億円規模の資産では、「守りの投資」と「攻めの投資」を明確に分ける」ことがリスク管理の基本になります。
5-3. 相続税や贈与税による資産減少を防ぐため、早期の税務対策が必要
10億円規模の資産を保有する場合、金融リスクよりも税務リスクのほうが大きな課題になることがあります。特に相続税や贈与税による資産減少を防ぐには、早めの対策が欠かせません。
日本の相続税は累進課税であり、最高税率は55%に達します。つまり、対策を講じないまま相続が発生すると、5億円以上が税金として消える可能性もあります。
そこで有効なのが、次のような「資産移転の仕組みづくり」です。
- 生前贈与の活用:年間110万円までの基礎控除を活用して、少しずつ家族へ資産を移す
- 教育資金・結婚資金の特例:非課税枠を利用して子や孫への贈与を進める
- 信託や法人化の検討:資産を信託財産や法人名義にすることで、課税対象を分散させる
- 生命保険の非課税枠の活用:法定相続人1人あたり500万円まで非課税にできる
さらに、相続税だけでなく、海外資産・不動産の評価額の見直しも重要です。不動産の場合、路線価や時価の差を活用することで、課税評価額を抑えられるケースもあります。
このような対策を行う際は、税理士やファイナンシャルプランナーなど、専門家のサポートを受けることが不可欠です。税務対策は時間をかけて行うほど効果が大きくなるため、「まだ早い」と思わず、資産形成と同時に相続設計を始めることが肝心です。
5-4. 詐欺や怪しい投資話を避けるため、信頼性の高い相手を選定する
巨額の資産を持つ人ほど狙われやすいのが、詐欺や不正な投資勧誘です。
「絶対に儲かる」「元本保証で高利回り」などの甘い誘いは、典型的な詐欺の常套句です。
特に近年は、SNSやセミナー、オンライン広告を通じて「高収益ファンド」や「海外不動産案件」などを装った詐欺が増えています。金融庁に登録されていない業者や、所在地・代表者情報が曖昧な企業は要注意です。
信頼性を見極めるためには、次のポイントを確認しましょう。
- 金融庁・証券業協会への登録状況を確認する
- 契約内容を文書で提示してもらう(口頭説明だけは危険)
- 第三者の専門家(弁護士・IFAなど)にチェックしてもらう
- 高すぎる利回り(例:月利〇%といった表現など)は、必ず仕組みやリスクを確認する
また、親族や友人など「身近な関係者」からの投資勧誘にも注意が必要です。実際の被害事例では、信頼関係を利用した「紹介型詐欺」が多発しています。判断に迷ったときは、一人で決めずに必ず第三者の専門家に相談する習慣を持ちましょう。
6.まとめ
10億円は「安全」「流動性」「成長性」のバランス設計が要点です。生活費2〜3年分は現金で確保し、残りは目的と期間で短・中・長期に区分しましょう。資産クラス、地域、預け先を分散し、インフレを上回る実質リターンを目指します。
預金保護の上限、元本割れ、詐欺、相続・贈与の税務といったリスクは、記録管理と第三者の専門家の確認で抑制。銀行・証券会社・IFAを併用し、提案の背景やコスト構造を精査しながら、定期的な見直しを前提とした持続的な運用方針を構築していくことが理想的といえそうです。
本記事では理解を深めやすくするために「10億円」という例を用いましたが、ここで解説した考え方やリスク管理の原則は、1億円、さらには1,000万円規模の資産をお持ちの方にも十分に応用できる内容です。
資産規模の大小にかかわらず、「目的を明確にし、守る資金と増やす資金を分ける」「分散・流動性・インフレ耐性のバランスを取る」という姿勢が、長期的な資産形成の土台となります。
ぜひ今回の内容を参考に、ご自身の資産背景やライフプランに合わせて、最適な資産配分と運用方針を検討していきましょう。
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※ 本記事における税務に関する記述(税率、基礎控除額、特例制度等)は、2025年(令和7年)4月1日現在の税制・法令等に基づき作成しています。