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鳴戸親方インタビュー 後編 「嫌だったら強くなれ」成功以外の選択肢を捨てた覚悟

鳴戸親方インタビュー 前編 「嫌だったら強くなれ」成功以外の選択肢を捨てた覚悟の後編です


【「自分が強くなる」から「人を強くする」へ――親方としての指導論】

現役時代は、自分のことで精一杯でした。自分がどうやって強くなるか、自分がどうやって勝つか。そればかり考えていましたから。でも、今は自分のことは二の次です。自分が強くなるのではなく、力士たちをどうやって強くするかを考える立場になりました。

だからといって、古いものがすべて悪いわけでもないし、新しいものがすべていいわけでもありません。大切なのは、より良い指導をするために何が必要なのかを考えることだと思っています。そのために、指導者としての勉強もしましたし、今も続けています。日本体育大学には3年次に編入させてもらいました。今も、他の競技の指導者や経営者の方と話す機会があれば、相撲に活かせることは積極的に取り入れるようにしています。自分が現役時代にやってきたことだけを、そのまま今の力士たちに当てはめればいいというものではありませんからね。ちなみに、今の部屋(鳴戸部屋)は、稽古場にも冷暖房を完備していますよ(笑)。

難しさはありますよね。厳しいだけではだめです。結局は本人と話して、まず目標を明確に持たせる。その目標を達成するためにはどうすればいいかを、一緒に考えていく。そうやって本人に寄り添うことが大切だと思っています。私も毎日勉強ですよ。力士によって性格も違いますし、同じ言葉をかけても受け取り方はそれぞれ違いますから。

それもありますね。親方になる前、他の親方から「最近はカロヤン(鳴戸親方)みたいなタイプはいないよ」と言われたことがあったんです。その時は、どういうところを指しているのか分からなかったのですが、親方になってみて、「こういうことだったのか」と言っていた意味が分かりました。

中卒、高卒、大卒、それぞれ違った環境から入門してくる子がいます。当然、育ってきた環境も違えば、考え方も違います。だからこそ、一人ひとりに合わせて話をする必要がありますし、ただ「こうしろ」と言うだけでは、人を育てることはできないんだと思います。


【相撲だけでは、人は強くならない――鳴戸親方が大切にする「学び」と「対話」】

当初は、グループLINEでその日に感じたことを書いてもらおうとしたんです。でも、なかなか書き込めないものですよね。近くの図書館に行って本を読んでもらって、感想を聞かせてもらうという取り組みもしました。でも、なかなか続きませんでした。その後は、新聞を読んで感想を書いてもらうことにしましたが、それもなかなかやらない(笑)。なので、今は毎日ではないですが、交換日記をしています。

相撲ばかりやっていても、強くはなれません。一見、自分には関係なさそうなことでも、学ぶことで人間として成長できるものがあります。それが結果的に、力士として強くなることにもつながると思っています。だから、一人ひとりの考え方を深めて、視野を広げてあげることが大事なんです。相撲の技術だけを教えるのではなく、いろいろなことを考えたり、自分の言葉で表現したりする経験をしてもらいたい。そういう積み重ねが、人としての成長につながり、最終的には力士としての強さにもつながっていくと思っています。


【ハイパーインフレで知った「お金の価値」――次世代に伝えたい資産形成】

もちろん変わりました。現役時代は、自分のことだけ考えていれば良かったですが、今は部屋が一番です。光熱費、水道代、食費など、部屋を運営していくにはさまざまなお金がかかります。自分のお金だけではなく、部屋全体のお金について考えるようになったので、そこは大きく変わりましたね。

結婚するまで日本国籍がなかったので、株などの運用をしたくても証券口座を持つことができず、やっていませんでした。今は少しだけ運用しています。

はい、自分でしていました。

お金の大切さですね。私はブルガリアで大学に通っていた頃、アルバイトをしていました。高校生の時にも、バイクを買うために働いていましたね。自分で働いてお金を得て、欲しいものを買うという経験は、早い時期からしていました。結果、ちゃんと貯めて自分でバイクを買いましたよ。

それに、子供の頃にハイパーインフレを経験しています。お金の価値が100分の1になってしまったんです。両親が貯めてくれていたお金も、本来なら車が買えるくらいの金額だったのに、インフレによってジャンパーと靴を買うだけでなくなってしまいました。そういう経験をしているので、「お金は貯めておけば大丈夫」という考え方だけではなく、お金そのものの価値が変わることもあるということを実感しています。だからこそ、貯金だけではなく、運用の大切さも理解しています。

そうなんですよ。最終的には自分自身で判断することが大切ですが、NISAを始めている子もいます。「何を買えばいいですか」と聞かれることもありますが、そこは自分で考えてほしいと思っています。例えば、普段からJRに乗っているなら、「鉄道の会社ってどんな会社なんだろう」と興味を持って、鉄道の株を見てみる。そういうところからでもいいんです。投資をすることそのものだけではなく、自分のお金について考えるきっかけを持つことが大事だと思っています。

鳴戸部屋に入門してくれた力士たちには、ちゃんとした社会人になってほしいです。自分で考えて、自分なりにいろいろな考えを持ってほしい。もちろん、力士として上の番付を目指すのは当然です。その上で、広い視野を持って、社会に出た時に自分で考えて、自分の人生を歩んでいける、そういった大人になってほしいですね。


〈プロフィール〉

鳴戸 勝紀(なると かつのり)


鳴戸 勝紀(元大関・琴欧洲)

1983年2月19日生まれ。第15代鳴戸親方(元大関・琴欧洲)。ブルガリア・ヴェリコ・タルノヴォ出身。

レスリング選手として活躍後、2002年に佐渡ヶ嶽部屋に入門し同年11月場所で初土俵を踏む。恵まれた体格と懐の深さを活かした四つ相撲で頭角を現し、初土俵から史上最速(当時)となる14場所で新三役、19場所で大関昇進を果たした。

2008年5月場所ではヨーロッパ出身力士として史上初となる幕内最高優勝を達成。大関在位47場所を記録し、幕内通算466勝を挙げるなど長年にわたり角界の上位を支え続けた。

2014年3月場所で現役を引退。2017年に独立し、ヨーロッパ出身者として初の部屋持ち師匠となり、現在も後進の指導と育成に尽力している。

FPメディア編集部

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