資産運用

オルカンは円高でどうなる?暴落時の対処法と「円資産」を組み合わせる3つの判断軸

円高が進むと、全世界株式型(通称オルカン)の評価額はどのように変化するのでしょうか。

結論から言えば、外国株式を多く保有し、為替変動を抑える仕組みを使わないオルカンでは、円高は基準価額の明確な「値下がり要因」になります。ただし、実際の損益は為替だけでなく株価の値動きも合算して決まるため、単に円高だけでマイナスになるとは一概には言い切れません。

本記事では、日本株を含み原則として為替ヘッジを行わない全世界株式型の例として、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)(愛称:オルカン)を取り上げ、円資産にもインフレなどのリスクはありますが、円資産を組み合わせて価格変動の影響を和らげる考え方や、ご自身の生活・事業環境に応じた保有比率の判断軸を整理して解説します。

1. 円高になるとオルカンはどうなる?

「株価の変動」と「為替の変動」を分けて考えると、オルカンの評価額が変動する理由を理解しやすくなります。本章ではまず、円高が基準価額に与える基本的なメカニズムを解説します。

1-1. 為替ヘッジなしのため、円高は基準価額の下落要因になる

基準価額は、投資信託の一定口数当たりの値段です。

外国株式の価格が変わらなくても、その通貨に対して円高になると、円に換算した資産価値は小さくなります。為替ヘッジとは、この為替変動の影響を抑える取引のことです。

また、オルカンには日本株や米国以外の外国株式も複数組み込まれているため、ドル円だけでは値動きを説明することはできません。

1-2. 「円高」と「世界株安」が重なると、円換算の下落幅は大きくなることがある

株価下落と円高が同時に進むと、円換算の下落幅が相乗効果で広がることがあります。

仮に外国株が20%下落し、その通貨の円換算レートも10%下がれば、円換算額は0.8×0.9=0.72となり、28%の下落になります。

反対に、株価上昇が円高の影響を上回れば、基準価額が上がる場合もあります。

※単一通貨の外国株式を想定し、費用・税金を考慮しない仮定です。上記の前提に基づくファーストパートナーズによる試算。将来の運用成果を示すものではありません。

2. 【過去のデータで検証】円高局面でオルカンはどう動いた?

前章の理論的な仕組みを踏まえ、ここでは代表例として「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の実績を使って過去の動きを検証します。同じ全世界株式型でも、連動を目指す指数や為替ヘッジの有無によって値動きは異なります。

表は各日の基準価額と、東京市場の17時時点のドル円相場を並べたものです。基準価額は1万口当たり、運用管理費用である信託報酬を差し引いた値です。

ファンドが評価に使う株価・為替と観測時刻は一致しないため、この表だけで為替による影響額を算出することはできません。

2-1. 2024年7〜9月:日銀の利上げと円キャリー取引の巻き戻し

要因は複数あり特定は難しいとされますが、2024年7月31日の日銀による利上げ(短期金利の誘導目標を0.25%程度へ引上げ)や米国の景気後退懸念などが重なり、市場では急激な円高と世界的な株安が同時に発生しました。円キャリー取引の解消が進むと、投資資産の売却や円の買い戻しが生じ、株安・円高の一因となることがあります。

※円キャリー取引とは、低金利の円で資金を調達し、より高い収益を求めて外貨資産などに投資する取引です。

観測日ドル円相場(円/ドル)基準価額(円)
2024年6月28日160.9326,442
2024年7月11日161.6327,282
2024年8月6日145.3022,688
2024年9月30日142.3824,913

為替と株価の双方が影響するため円高だけの影響とは言えませんが、表の観測日で比較すると、7月11日から8月6日にかけて基準価額は高値から安値まで約16.8%下落しました。一方9月にかけては円高傾向が続きながらも株価の持ち直しによって基準価額が反発する場面も見られました。

過去の値動きは将来の成果を示すものではなく、下落が長引く可能性もありますが、過去の特定期間の事例では、大幅な円高が進むなかでも世界株価が復調した局面で、オルカンの基準価額が回復に向かいました。

こうした事例から、相場の変動に一喜一憂せず長期的な視点を保つという考え方もありますが、ご自身が許容できる損失額を確認しておくことが大切です。

※出典:日本銀行「金融市場調節方針の変更および長期国債買入れの減額計画の決定について」(https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2024/k240731a.htm)

※出典:国際決済銀行「The market turbulence and carry trade unwind of August 2024」(https://www.bis.org/publ/bisbull90.htm)

※上表は日本銀行「主要時系列統計データ表」と三菱UFJアセットマネジメント「設定来データ」を基にファーストパートナーズ作成。騰落率も上表の基準価額から計算。出典:
https://www.stat-search.boj.or.jp/ssi/mtshtml/fm08_d_1.html
https://www.am.mufg.jp/fund_file/setteirai/253425.csv

2-2. 2026年7〜9月:163円台から153円台への円高

前節の2024年の例に続き、より近年の事例として2026年夏の相場変動を振り返ります。次の表は、円高が進む前後と月末の動きを確認するための観測点です。

観測日ドル円相場(円/ドル)基準価額(円)
2026年6月30日162.2638,017
2026年7月28日163.7938,183
2026年8月3日156.7736,824
2026年8月31日159.5738,905
2026年9月9日153.1237,358
2026年9月30日156.9137,791

株価の動きや観測日の選び方によって結果は異なりますが、表の観測日では、ドル円が約6.5%の円高(7月28日の163.79円から9月9日の153.12円)となる間の基準価額の下落は約2.2%、6月末から9月末の四半期では、ドル円が約3.3%の円高となる間の基準価額の下落は約0.6%にとどまりました。一時的な下落を挟みつつも世界的な株価の上昇が円高の影響を一部打ち消したとみられます。

上表は保有口数を変えない比較であり、積立や途中売却をした人の損益とは異なります。また、過去の値動きから今後の回復時期を予測することはできません。

将来の株価や為替の動きは不確実ですが、2026年7〜9月の例では、株価の上昇が円高による下落分を一部打ち消した可能性があり、基準価額の変動は小幅にとどまりました。円高を直ちに大幅な下落と結びつけず、株価の動きとあわせて確認することが大切です。

では、このような相場環境において、投資家はオルカンを持ち続けるべきなのでしょうか。次章で具体的な判断基準を提示します。

※上表は日本銀行「主要時系列統計データ表」と三菱UFJアセットマネジメント「設定来データ」を基にファーストパートナーズ作成。四半期の騰落率は前四半期末と当四半期末の基準価額から計算。出典:
https://www.stat-search.boj.or.jp/ssi/mtshtml/fm08_d_1.html
https://www.am.mufg.jp/fund_file/setteirai/253425.csv

3. 円高局面でもオルカンは持ち続けるべき?

個々の状況によって異なりますが、保有を続けるか積立額を維持するかは、「使う目的と時期が決まっている資金か、当面使わない資金か」という資金の性質を一つの目安として考えることができます。

資金・家計の状態確認したい対応
当面使わず、下落に耐えられる当初の運用方針に沿って保有継続を検討
支払う時期・金額が決まっている必要額を円で確保する計画を立てる
外国資産への偏りが大きい新たな積立先や積立額から調整を検討

3-1. 基本的には「長期運用」なら持ち続けてよい

使う時期まで余裕があり、生活資金を別に確保できているなら、一時的な円高による値下がりがあってもオルカンの保有を続けることは選択肢の一つです。

とはいえ、一時的な円高かどうかは将来結果として確認されることでしかなく、また、将来の基準価額は不確実で値下がりが続く可能性もあります。長く保有すれば損失がなくなるわけではありません。

重要なのは、さらに値下がりしても生活や事業に支障が出ないか、収入が減っても売却を迫られないかです。「下がったら不安で眠れない」と感じるのであれば、長期目的でも投資額を見直す必要があります。

積立を続ける場合、基準価額が下がれば同額で買える口数は増えます。しかし、その後の利益は保証されていません。下落を取り戻そうとして借入れや生活費で買い増すのではなく、投資額が毎月の余裕資金の範囲内であるかを確認しましょう。

3-2. 「数年以内に使うお金」なら円へ戻すことも検討

教育費、住宅購入費、納税資金など、円で支払う予定があるお金は、支払日と必要額を先に書き出します。その日まで相場の回復を待てないようであれば、必要額を円の預貯金に移すことを検討します。

仮に売却で損失が確定する場合でも、資金不足を避けることが最優先される場面はあります。売るか持つかを全額で決める必要はなく、必要な分だけを現金化する方法もあります。

売却の申込みから入金までには時間がかかり、申込時点では売却価額が決まらない商品もあります。支払日の直前まで待たず、取引先の金融機関で申込期限と入金日を確認しましょう。

3-3. 「外貨比率が高すぎる人」なら積立比率の見直しを

オルカンだけでなく、外国株式、外貨預金、外貨建て保険も並べ、為替の影響を受ける資産がどこにあるかを確認します。商品の表示通貨が円でも、投資先が外国資産なら点検の対象です。

偏りを調整する方法として、今後の積立額を減らし、その分を円の預貯金に回すことが考えられます。既存資産を売らずに調整できますが、必要な円資金が大きいと時間がかかります。使う時期が近い場合は、積立変更だけで必要額を用意できるかを計算しましょう。

4. 円高局面でも「オルカンだけで十分」と言える人の特徴

「株式投資はオルカンにまとめる」ことと、「資産のすべてをオルカンにする」ことは異なります。投資信託の本数ではなく、預貯金や不動産を含めた資産全体のポートフォリオと、日々の収入で考えましょう。

4-1. 預金・不動産など「円資産」が厚い人

当面の支出を円の預貯金で賄え、下落時にも投資資産を売らずに済む人は、長期の株式運用部分を全世界株式型にまとめる考え方があります。投資先の国や企業を分散しながら、管理する商品の本数を抑えられるためです。

ただし、円資産の種類によって役割は変わります。

円資産の種類支出への備えとして確認すること
円の預貯金すぐに使える残高と、すでに用途が決まった金額
国内の賃貸不動産空室・修繕・借入返済を差し引いた手残り
自宅(持ち家)居住を続ける前提で、売却資金を生活費に数えていないか
国内株式・不動産投資信託価格下落や分配金減少で支払計画が崩れないか

不動産投資信託は、投資家から集めた資金で不動産に投資し、賃料収入などを分配する商品です。国内株式と同様、円建てで価格が付いていても元本は保証されておらず、価格は変動します。

不動産の評価額が大きくても、すぐに使える現金が多いとは限りません。売却まで時間がかかり、希望どおりの価格で売れるとも限りません。預貯金とは分けて管理しましょう。

4-2. 「金融資産の大半がオルカン」の人はリスク注意

手元の現預金が少なく、総資産の大半をオルカンに投じている「極端なオルカン集中型」の人は、円高・株安が重なった際のボラティリティ(価格変動)に耐えきれなくなるリスクが高いため注意が必要です。

オルカンは世界中の約2,400銘柄(三菱UFJアセットマネジメント2026年9月30日現在月次レポートより)に分散投資されているファンドですが、アセットクラスとしては「ほぼ100%株式」です。世界的な株安になれば、多くの投資先が同時に値下がりする可能性があります。商品の中での分散と、家計全体での分散を分けて確認することが大切です。

米国株式型などの投資信託を足しても、すでに保有する企業や通貨と重なる場合があります。商品を増やすこと自体を対策にせず、どのリスクを減らしたいのかを明確にします。

4-3. 輸出型ビジネスの経営者は「本業+投資」で二重の円高リスク

海外売上を円に換算して利益を得る事業を行う経営者の場合、円高によって円換算の売上が減ることがあります。同じ時期に外国株式の円換算額も減ると、事業の収入と個人の運用資産が同時に影響を受けることになります。

ただし、「輸出企業だから円高に弱い」と一律には判断できません。海外での仕入れや生産費も外貨なら、費用の円換算額が減る場合があります。為替予約など、将来の交換レートをあらかじめ決める契約の有無も影響します。

売上の通貨だけでなく、費用と利益への影響まで確認しましょう。自社の資金繰り表と、役員報酬・配当が減った場合の家計をあわせて点検します。事業用の預金は個人が自由に使える資金と混同せず、個人の生活費と会社の運転資金をそれぞれ確保することが出発点です。

5. 自分に合った「円資産とオルカン」の比率を考える3ステップ

すべての投資家に共通する「正解の保有比率」は存在しません。ご自身の年代、家族構成、収入の性質、リスク許容度に合わせてカスタマイズする必要があります。以下の3ステップを参考に、ご自身にとって最適な比率を整理していきましょう。

5-1. ①使う時期が近い資金ほど「円」で持つ

第3章で確認した資金の使用時期を、次のように用途別に整理します。海外留学のように外貨で支払う予定がある場合は、その通貨に合わせた準備も考えます。

資金の用途管理の考え方
生活防衛資金
(病気・失業・急な出費への備え)
引き出しやすい円の預貯金で確保する
中短期の予定資金
(教育費・住宅費・納税などの予定支出)
支払日から逆算し、値下がりに左右されない資金を用意する
長期運用資金
(10年目以降に使う老後資金など)
許容できる損失額を確認して株式投資を検討する

円で保有する商品の候補には、預貯金や個人向け国債があります。ただし、換金条件は同じではありません。個人向け国債は原則として発行から1年が経過すると中途換金できますが、調整額が差し引かれます。近く使う資金は、引き出せる時期を確認して置き場所を選びましょう。

次に、必要資金を除いた残額について、値下がりに耐えられる金額を考えます。例えば、金融資産が3,000万円あり、近い将来の支出と生活の備えに1,000万円が必要と仮定します。残る2,000万円をすべて投資する前に、株式部分が仮に40%下がった場面を考えてみます。

仮のオルカン保有額金融資産に占める割合40%下落したときの損失額
1,000万円約33%400万円
2,000万円約67%800万円

必要な円資金を残すことができても、残りを全額投資する必要はありません。計算した損失額で生活設計や心理面への負担が大きいなら、投資額を抑える余地があります。割合だけでなく、減っても受け止められる金額まで確認します。

※個人向け国債の換金条件の出典:財務省「個人向け国債の中途換金についてのよくある質問」(https://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/main/qa/answer_qd.html)

※上表の金額・比率はすべて説明用の仮定です。オルカン以外の資産価値は変わらず、入出金・費用・税金を考慮しません。下落率は予測や損失の上限ではありません。上記の前提に基づくファーストパートナーズによる試算。将来の運用成果を示すものではありません。

5-2. ②本業や不動産の収入が円建てかどうかで選ぶ

第4章の資産・収入の点検結果を使い、毎月の手取り収入から支出を差し引いて、積立に回せる金額を計算します。

円建ての収入でも、インバウンド需要などに左右される家賃収入や、変動金利の借入れがある不動産は、手残りが変わります。年間の収入総額だけでなく、月ごとの入出金も並べて確認しましょう。

会社の業績が悪化したときに個人から資金を出す可能性があるなら、その予定も円資金の必要額に含めます。

一方、円の預貯金に偏ると、物価上昇で同じ金額から買える量が減るリスクがあります。円高への備えだけで配分を決めず、将来の支出と資産形成の目的を両方確認しましょう。

5-3. ③年1回のリバランスで「理想の比率」を保つ

リバランスは、値動きで変化した資産配分を、決めた比率に調整することです。年1回など点検の時期を決める方法がありますが、この頻度なら成果が上がると決まっているわけではありません。収入や支出予定が変わったときは、定期点検を待たずに見直します。

点検では、次の順序で確認します。

・近く使う円資金の必要額に変更がないか
・現在の時価で計算した配分が、決めた比率から離れていないか
・新たな積立先や積立額を変えるだけで調整できるか
・売却する場合、税金・費用・入金までの日数を考慮しているか

点検日、目安の比率、見直す条件をメモに残しておくと、相場が大きく動いたときにも判断しやすくなります。

6. まとめ

円高への対処は、相場の予想よりも「家計全体の配分」から考えましょう。まずは保有資産と予定支出を一覧にし、本記事の3ステップでご自身が続けられる比率を決めてみてください。

投資信託は、主に国内外の株式や債券等を投資対象としています。投資信託の基準価額は、組み入れた株式や債券等の値動き、為替相場の変動等により上下しますので、これにより投資元本を割り込むおそれがあります。

投資信託は、個別の投資信託毎にご負担いただく手数料等の費用やリスクの内容や性質が異なります。ファンド・オブ・ファンズの場合は、他のファンドを投資対象としており、投資対象ファンドにおける所定の信託報酬を含めてお客さまが実質的に負担する信託報酬を算出しております(投資対象ファンドの変更等により、変動することがあります)。

ご投資にあたっては、商品概要や目論見書(目論見書補完書面)をよくお読みください。

ファーストパートナーズでは、富裕層・資産形成層の方々に対して、ニーズに寄り添ったさまざまなサービスのご提案を行っております。

※ご相談は無料で承っておりますが、その内容により、個別の商品・銘柄・売買の方法・時期等に言及する場合があります。

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杉江 勇馬

青山学院大学国際政治経済学部を卒業。専攻は証券市場分析。
新卒で、大和証券に入社。京都支店にて、個人富裕層や上場企業オーナー、事業法人、宗教法人等の資産コンサルタントとして多数のお客様を担当。
国際分散ポートフォリオの提案を得意としており、大和証券にて、外貨建債券部門1位、外国株式部門3位の表彰実績があり、海外研修生にも選抜。
ファーストパートナーズ入社後は、「より長期的な視点での資産運用」を意識して、お客様と一緒に海外視察をした上で、資産ポートフォリオを提案するなど、独立系金融アドバイザーならではの提案を行っています。

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