野中瑠衣インタビュー 前編 「プレッシャーを楽しむプロの覚悟と、進化を支えるセルフマネジメント」の後編です。

【コンディションを整えることも、実力の一つ】
━━移籍する際、意識していたことはありますか
私は人見知りをしない性格なので、新しい環境になじむことについては、あまり心配はしていませんでした。ただ、第一印象は強く残るものだと思っていたので、その点は意識していましたね。また、自分がネガティブな気持ちになったときでも、感情をうまくコントロールして、周りに良い影響を与えられるような人でありたいと思っています。

━━モチベーションを維持するために、日々意識していることはありますか
心配性な性格なので、「あれもしなきゃ、これもしなきゃ」と考えてしまうタイプなんです。ハードな練習が続くと疲労も蓄積していくので、自分の体の声をしっかり聞くことを大事にしています。その日のコンディションを見ながら、セーブした方がいいのか、それとも負担をかけるべきなのかを判断しています。ケアの方法も毎日同じではなく、その時々の状態に合わせて、周囲にも相談しながら取り組んでいます。
━━食事面など、日々の生活で気をつけていることはありますか
朝起きて、「ちょっと体が重いな」「今日は練習がしんどそうだな」と思う日もあります。でも、そういう日こそ、どう過ごせるかが勝負だと思っています。調子が上がらない日ほど太陽の光を浴びて、「今日も頑張るぞ」「勝負だぞ」と自分に言い聞かせています。食事は毎日自炊しているので、栄養バランスには気をつけています。
自分では比較的太りやすい体質だと思っているので、体重管理も欠かせません。体重はジャンプ力にも大きく関わりますし、自分でコンディションをコントロールすることがケガの予防にもつながると思っています。防げるケガは、できる限り防ぎたいですね。
━━体の変化は、ご自身の感覚で分かるものですか
はい、分かります。お腹の張り具合とか、体の重さで分かりますし、朝起きたときには「昨日より何十グラムくらい違うな」という感覚まで分かります。
━━オフの過ごし方で意識していることはありますか
10代の頃や少し前までは、オフの日でもなかなか気持ちを切り替えられなくて、それが当たり前だと思っていました。でも、それでは頭も体も疲れてしてしまうので、最近はオンとオフをしっかり切り替えるようにしています。その日のコンディションや気分に合わせて、過ごし方を決めていますね。
【映像と向き合い、自分をアップデートし続ける】
━━ご自身の試合の映像は見ますか
はい、よく見ます。最近のバレーボールはデータ分析が進んでいるので、試合中でもハーフタイムにすぐ映像を確認することがあります。特に、自分の感覚と実際のプレーにずれがあるときや、調子があまり良くない時ほど、繰り返し見ますね。試合中は感情が先走ってしまうこともありますが、映像を見返すことで冷静になれることもあります。
━━プロ選手としてプレーする上で、最も大切だと思うことは何ですか
コンディショニングやセルフマネジメント、技術など、心技体のすべてが大切だと思っています。でも、その中でもやっぱり一番大切なのは「熱量」ですかね。向上心や情熱を持ち続けることが、何より重要なんじゃないかと思っています。
【応援してくれる人へ、自分から感謝を届けたい】
━━チームの公式ファンクラブとは別に、個人のサポーターズクラブを設立されたきっかけを教えてください
移籍した際に、お話をいただいたことがきっかけです。日立Astemoリヴァーレに所属していた頃から、多くのファンの方に応援していただいていましたが、自分から感謝の気持ちを伝えられる場がないなと感じていました。私という人間をもっと知っていただくことで、応援してくださる皆さんにとっても、私にとってもプラスになるような場所にしたいと思って設立しました。
【プレッシャーも、楽しめる選手でありたい】
━━チームの中心としてプレーする中で、プレッシャーとはどのように向き合っていますか
プレッシャーや緊張に打ち勝つためには、日々の練習を積み重ねることが一番大事だと思っています。好きで始めたバレーボールですし、今も好きだから続けられています。もちろん、結果を求められる世界なので、甘いことを言うつもりはありません。でも、プレッシャーのかかる場面を楽しめる選手でありたいと思っています。
━━キャリアを重ねる中で、チームで求められる役割にも変化があったと思います。振り返っていかがですか
私はこれまで、キャプテンやエースを務めたこともあれば、後輩として支える立場も経験してきました。いろいろな立場を経験してきたからこそ、それぞれの選手の気持ちは理解できるかなと思っています。今のチームでは、年齢的にも中堅の立場なので、先輩や後輩との関わり方も意識しています。誰かのためにプレーすることにも、やりがいを感じるタイプですね。

【家族の言葉が、決断を支えてくれた】
━━バレーボールに限らず、悩んだときに相談したり、助言をもらう存在はいますか
特定の相談相手がいるというわけではないですね。ただ、高校卒業後は大学進学も最後まで選択肢にあり、実際の大学の練習にも参加させてもらっていました。その時に相談したのは、2歳年上の兄です。兄から「先生になりたいという目標がないのであれば、自分の目標により近い道に挑戦してもいいんじゃないか」と言われ、その言葉がプロ入りを決断する大きな後押しになりました。普段、相談することが多いのは、やはり母ですかね。
【「ベストゲームは、まだない」】
━━これまでのキャリアで、ベストゲームを挙げるとしたらどの試合ですか
まだないですね。これから作っていかないと。
【ケガを防ぐことも、プロの実力】
━━ケガとどのように向き合っていますか。また、大きなケガをしないために意識していることはありますか
やっぱり日々の準備やリカバリー、そして食事が大切だと思っています。何かあったとしても、「ここまでやったのだから仕方ない」と思えるくらい、できる限りのことはやっておきたいんです。実際にケガをしたときに後悔したくないですから。小さな捻挫一つでもそこから学び、日々のケアや予防に生かすようにしています。そこは意識していますね。

【未来のために、少しずつ学び始めていること】
━━お金の使い方や考え方は年齢を重ねるごとに変わってきましたか
まだそこまで大きく変わった実感はないですが、アスリートなので、自分の体のケアへの自己投資は増えていますね。
━━お金の管理はご自身でされていましたか。ご家族でしょうか
はい、自分で管理しています。
━━現在、運用などはされていますか
まだやっていないんですよ。兄が少しやっているので、私も始めたいとは思っているのですが、情報も少なくて、何から始めればいいのか分からず、まだ行動には移せていません。始める際にはアドバイスお願いします(笑)。
【バレーボールの先にある未来】
━━苦手なスポーツはありますか
足を使うスポーツは苦手です。例えばサッカーですね。自分でもなぜか分からないくらい、足を使うことが苦手なんです(笑)。もちろん走るのは全然大丈夫なんですが。
━━今後の目標を教えてください
ヴィクトリーナ姫路は今シーズンで創設10周年を迎えます。リーグの中では比較的歴史の浅いチームですが、結成当初は下位に位置し、3年前には入替戦で敗れてV2リーグへ降格しました。それでも翌年にはすぐに復帰し、ここ2シーズンは6位、5位と着実に順位を上げています。
上位4位に入るとプレーオフをホームで開催できますし、今シーズンからはホームアリーナも「大和工業アリーナ姫路」として新しくなります。創設10周年と新アリーナという節目のシーズンでもあるので、しっかり責任を持って4位以上を目指したいです。そのためには自分自身のレベルアップも欠かせません。さらに成長して、チームの目標達成に貢献したいと思っています。
━━バレーボール選手になってなかったら、どんな仕事をしていたと思いますか
なんでしょうね。バレーボール以外に夢中になれる趣味があまりなくて(笑)。でも体を動かすことは好きですし、動物も好きなので、犬に関わる仕事に就いていたかもしれませんね。
〈プロフィール〉

野中 瑠衣(のなか るい)
2001年8月3日生まれ。日本の女子バレーボール選手。秋田県秋田市出身。
秋田北高校を経て、2019年に内定選手として日立リヴァーレ(現Astemoリヴァーレ茨城)へ加入。入団後はレギュラーとして定着し、177cmの長身と最高到達点296cmの高さを活かした力強いスパイクを武器に、チームを牽引する主力アタッカーへと成長した。 5シーズンにわたり同チームの中心選手として活躍し、2025年4月には念願の日本代表登録メンバーに初選出された。同年夏からはヴィクトリーナ姫路へ移籍し、新天地でも第一線で躍動している。中学時代にユース日本代表に選出された実績も持ち、今後の日本女子バレー界を担う次世代の要として、多くのファンから大きな期待を集め続けている。
