
NISAで利益が出たら売るべき?持ち続けるべき?|判断基準と4つの売却タイミング
NISAで利益が出たが、売って確定すべきか持ち続けるべきか迷っている
「非課税のうちに売ったほうが得」なのか判断できない
どのようなタイミングで売却を検討すればよいのか、基準が知りたい
このようなお悩みをお持ちの方に向けて、本記事ではNISA(少額投資非課税制度)で利益が出たときの売却判断の考え方を整理します。
結論からお伝えすると、NISAであっても売却判断の基準は「税制」ではなく、ご自身の投資目的とライフプランに基づいて行うことが大切です。
1. NISAで利益が出た時、多くの人が悩む理由
1-1. 「非課税のうちに利益確定すべき?」という心理的な罠
NISA(少額投資非課税制度)では運用益に税金がかからないため、「せっかくの非課税メリットを、利益が出ているうちに使い切っておきたい」という心理が働きやすくなります。
しかし「非課税」はあくまで利益に税金がかからないという制度の特典であり、「いつ売るべきか」という投資判断とは本来切り離して考えるべきものです。税制を売買タイミングの主な根拠にすると、かえって合理的でない判断につながることがあります。
加えて、非課税のメリットは運用を続けて利益が積み上がるほど大きくなる側面もありますが、これは保有継続を推奨する趣旨ではなく、「今すぐ利益を確定することが常に最善とは限らない」という一つの視点として押さえておきたいポイントです。
1-2. 株高局面で増える売却検討と「売却後にさらに上がる恐怖」
利益確定を考える人が増えるのは相場が大きく上昇した局面です。相場は変動するものであり本記事執筆後も水準が変化する可能性がありますが、2026年6月16日に日経平均株価は取引時間中として史上初めて7万円台に到達し、同月18日には終値でも初めて7万円台に乗せました。
こうした株高局面では、とくにNISAでインデックスファンド(日経平均や全世界株式などに連動する投資信託)を積み立ててきた人は含み益が目に見えて増えるため、売却を検討するきっかけになりやすいでしょう。
一方で、利益確定後に相場がさらに上昇すれば機会損失の後悔が生まれ、持ち続けて下落すれば「あのとき売ればよかった」という後悔が生まれます。この板挟みから、感情ではなくあらかじめ決めた基準で判断する軸を持つことの重要性が生まれます。
※日経平均株価の到達時期は日本経済新聞の報道(2026年6月18日付「日経平均7万円、史上最速の大台替わり」等)を基にファーストパートナーズ作成。
2. 売却判断の基準と長期保有の考え方
第1章で見たように、NISAの非課税という特典は判断を惑わせがちです。本章では、売却の判断基準の考え方と、NISAが長期保有と相性が良い理由を整理します。
2-1. 売却判断の軸は税制ではなく投資目的とライフプラン
NISA口座と特定口座(課税口座)の違いは売却して得た利益に加え、配当金や分配金にも税金がかかるかどうかです。「いつ売るか」という判断そのものはNISAでも特定口座でも、本質的には同じ考え方で判断するのが基本です。
投資にあたっては自分が許容できるリスクの範囲を確認し、目的に応じた無理のない投資を検討することが大切です。売却の判断も同じで、「その資金をいつ・何に使うのか」「当初の目的は達成されたのか」というライフプランとの照らし合わせが出発点になります。
税金の有無は判断の最後に「手取りがどうなるか」を確認する材料ですが、売買のタイミングを決める主役ではありません。
2-2. 「非課税だから売る」「非課税だから売らない」という判断はどちらも危険
非課税を意識するあまり生じるパターンが2つあります。まず「非課税で利益を確定したい」という理由だけで売却すると、本来は投資を続ける合理的な理由があるにもかかわらず、その後の値上がり機会を逃してしまう可能性があります。
逆に「せっかくの非課税枠だから売りたくない」という考えで、ライフイベントで資金が必要になったときや投資の前提が崩れたときに売却をためらってしまうと、必要な資金が用意できなかったり不要なリスクを抱え続けたりする可能性があります。
税制はあくまで結果に影響する要素であり、売買の意思決定の主役にすべきではありません。
※金融庁「NISAを知る」(https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/know/)、政府広報オンライン「『NISA』って何?わかりやすく解説」(https://www.gov-online.go.jp/article/202401/entry-5555.html)を基にファーストパートナーズ作成。
2-3. 非課税メリットと長期保有・ドルコスト平均法の関係
NISAは家計の安定的な資産形成を支援するための制度であり、金融庁の資料によれば、投資時期の分散(積立投資)により高値掴み等のリスクを軽減し、長期で保有することで投資リターンの安定化を図るという考え方に基づいて設計されています。
長期投資では運用して得られた利益がさらに運用されて増えていく「複利」の効果が大きくなる傾向があり、NISAでは、売却益や分配金に税金がかからないため、その分、より効率的に資産を増やしていくことが期待できます。
また、定期・定額の積立(ドル・コスト平均法)を継続することで、価格が高い時期には少なく、低い時期には多く買い付け、平均購入単価をならす効果が期待できます。なお、長期・積立・分散はリスクを軽減する工夫であり、損失をなくす方法ではありません。
※NISA制度を利用して投資信託へ投資する場合を前提に解説しています。なお、NISAでは投資信託のほか個別株式等にも投資できます。
【表3:NISAが長期・積立投資と相性が良いとされる理由】
| 観点 | 内容 | 根拠とされる考え方 |
| 複利の効果 | 運用益が非課税となるため、利益を再投資しながら資産を増やしやすい | 長期投資による複利効果(政府広報オンライン) |
| 非課税メリットの最大化 | 保有期間が長いほど、運用益に対する非課税の恩恵を受けやすい | NISA制度の非課税設計 |
| 制度の趣旨 | NISAは長期・積立・分散投資による安定的な資産形成を支援する制度 | 金融庁の制度設計 |
| 積立投資 | 定期・定額で投資を続けることで、購入価格を平準化し、高値掴みのリスクを抑えやすい | ドルコスト平均法 (金融庁・政府広報オンライン) |
※金融庁「NISAを利用する皆さまへ」(https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/nisa2024/slide_202406.pdf)、政府広報オンライン「『NISA』って何?わかりやすく解説」(https://www.gov-online.go.jp/article/202401/entry-5555.html)を基にファーストパートナーズ作成。
3. 売却を検討すべきタイミングとNISA特有のルール
NISAは長期保有と相性が良いとされていますが、売却を検討すべき場面はあります。本章の前半では代表的な4つのタイミング、後半では売却時に知っておきたいNISA特有のルールを整理します。
いずれのタイミングも「必ず売るべき」という意味ではなく、「売却を検討する合理的なきっかけになりうる」という観点での整理となります。最終的な判断は、ご自身の投資目的とライフプランに沿って行いましょう。
3-1. ライフイベントで資金が必要になった時
最も分かりやすい売却のタイミングは、実際に資金が必要になったときです。住宅購入の頭金、子どもの教育費、老後の生活費など、当初想定していたライフイベントの時期が来れば、必要な金額を売却して活用するのは、本来の目的にかなった使い方といえます。
2-2で触れたとおり「非課税だから売りたくない」という理由で資金の引き出しをためらう必要はなく、使う時期が近づいてきたら、相場変動の影響を抑えるため 、値動きの大きい資産からより安定した資産へ段階的に移しておくことも、選択肢の一つとして考えられます。
3-2. 資産配分をリバランスするタイミング
当初決めた資産配分(ポートフォリオ=資産の組み合わせ全体)のバランスが崩れたときも、売却を検討する場面です。
たとえば「株式60%・債券型の投資信託40%」で始めた運用が、株高で「株式75%・債券型の投資信託25%」になった場合、比率を元に戻す「リバランス」を検討します。
これは「相場が上がったから売る」のではなく、「リスクを当初想定した範囲にコントロールするために売る」という、目的の明確な売却です。
分散投資によりポートフォリオ全体が特定のリスクから受ける影響を軽減できます。なお、NISA内のリバランスは非課税枠の制約が関わるため、NISA口座と課税口座を合わせた資産全体で配分を考える視点が重要です。
3-3. 投資仮説が崩れた時(個別株の業績悪化など)
その投資を始めたときの前提(投資仮説)が崩れたときも、保有を続ける理由を見直す局面です。投資対象の成長性や将来性に対する 仮説が崩れたなら、含み益・含み損にかかわらず見直しを検討します。
「買ったときより下がっているから戻るまで待とう」という心理は陥りやすいものですが、前提が崩れているのであれば合理的な根拠がないこともあります。判断の軸は「今の前提で、この資産を新たに買う理由があるか」です。
【表4:例外的に売却を検討すべき4つのタイミング】
| タイミング | 売却を検討する理由 | 売却の性格 |
| ①ライフイベントで資金が必要 | 当初の目的の時期が来た | 本来の目的にかなった資金化 |
| ②リバランス | 資産配分が崩れ、リスクが想定より高まった | リスクを当初想定内に戻すための売却 |
| ③投資仮説の崩れ | 投資を始めた前提(成長性など)が変わった | 保有理由の見直しによる売却(主に個別株) |
| ④特定銘柄への集中 | 一つの銘柄・テーマに資産が偏りすぎた | 集中リスクを抑えるための売却 |
※金融庁「NISAを利用する皆さまへ」(https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/nisa2024/slide_202406.pdf)
3-4. 損益通算・繰越控除が使えない/非課税枠は翌年以降に復活
実際に売却する際には、NISA特有のルールを知っておく必要があります。まず国税庁の説明(国税庁No.1535)によれば、NISA口座で生じた損失は税務上「なかったもの」とみなされます。
したがって、その損失を特定口座や一般口座の配当や譲渡益と「損益通算」(複数の取引の損益を合算すること)したり、「繰越控除」(損失を翌年以降に持ち越し、翌年以降の利益と相殺する仕組み)したりすることはできません。
NISAは利益が出る局面では有利ですが、損失が出る局面では課税口座のような救済が受けられません。
次に、非課税枠の復活のしくみです。金融庁の説明によれば、非課税で保有できる限度額は生涯1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円)で、限度額は購入時の価格(簿価=取得価額)で管理されます。
保有商品を売却すると、購入時に使った非課税枠(簿価ベース)は翌年以降に再利用できます(同一年内に再利用することはできません)。また年間投資枠(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円の年360万円)の未使用分は翌年に繰り越せません。
3-5. 一括売却と部分売却の使い分け/高値買い戻しリスク
売却方法として「一括売却」と「部分売却」を選べます。一括売却は目的の資金をまとめて確保したいときに、部分売却は必要な分だけ売り残りを運用し続けたいときに適しています。
第2章で触れたドルコスト平均法の考え方は売却にも応用でき、複数回に分けて売却することでタイミングを分散する効果が期待できます。「いつ・いくら必要か」が明確なら、その分だけ部分売却することが可能です。
また、利益確定後に相場がさらに上昇すると「持っておけばよかった」と感じ、より高い価格で買い戻してしまう「高値買い戻し」のリスクがあります。
売却した非課税枠の復活は翌年以降であるため、同年内に買い戻そうとすると課税口座での購入になる可能性もあります。こうした事態を避けるためにも、売却は感情ではなく事前に決めた基準に沿って行うことが重要です。
【表5:売却時に知っておきたいNISA特有のルール】
| ルール | 内容 | 実務上の意味 |
| 損益通算・繰越控除が使えない | NISAの損失は税務上「なかったもの」とみなされる(国税庁No.1535) | 損失局面では課税口座のような救済が受けられない |
| 非課税枠は翌年以降に復活 | 売却分の枠(簿価)は翌年以降に再利用可能。同一年内は不可 | 枠は失われないが、同一年内買い直しはできない |
※国税庁「No.1535 NISA制度」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1535.htm)
4. 利益確定の判断軸となる売却ルールの作り方
「感情ではなく、あらかじめ決めた基準で判断することが大切」とここまで繰り返してきました。本章では代表的な売却ルールの考え方を整理します。
いずれも特定のルールや手法を推奨するものではなく、投資目的やリスク許容度によって自分に合ったものを選ぶことが前提です。
4-1. 目標金額で決めるルール
最もシンプルなのが、あらかじめ目標金額を決めておき、それに到達したら売却を検討するというルールです。NISAの資金は「何のために」「いつ使うか」という目的とセットで考えるべきものです。
「教育費として500万円」「老後資金として2,000万円」といった具体的な金額を設定しておけば、その金額到達が売却を検討する目安になります。
相場の上下に一喜一憂せず人生設計に基づいて判断ができ、目標達成後にさらに値上がりしても「目的を達成したのだから良い」と割り切りやすいことが利点です。
4-2. 移動平均線など価格・テクニカル指標を使う方法
価格やテクニカル指標(価格や出来高などのデータから相場の方向性を読む指標)を判断の目安にする方法もあります。「移動平均線(一定期間の価格の平均値を結んだ線)を価格が下回ったら売却を検討する」といったルールをあらかじめ決めておく考え方です。
感情を排しやすい反面、テクニカル指標は将来の値動きを予測するものではなく、「だまし」と呼ばれる逆方向の動きも頻繁に起こります。そのため補助的な判断材料として位置づけるのが現実的です。
4-3. 4%ルールなど取り崩しの考え方
売却を「一度の利益確定」ではなく「継続的な取り崩し」として考える方法もあります。代表例として「4%ルール」があります。
これは1994年のウィリアム・ベンゲン氏の研究および1998年の米トリニティ大学の研究者らによるいわゆるトリニティ・スタディに由来するとされる考え方で、株式と債券型の投資信託で構成したポートフォリオ(資産の組み合わせ全体)から年間に資産の4%程度を取り崩していく場合、過去のデータに基づくシミュレーションでは長期間にわたって資産が枯渇しにくいという結果が示されたとされています。
ただし、米国の過去データに基づく研究であり、対象期間・資産配分・税制・為替などの条件が異なれば結果は変わります。日本の投資家にそのまま当てはまるわけではなく、あくまで取り崩しの考え方の一例として理解する必要があります。
4-4. 感情ではなく”仕組み”で判断する重要性
第1章で見たように、利益確定の判断は「売らずに下がる恐怖」と「売って上がる恐怖」の板挟みになりやすく、感情に流されると判断を誤りがちです。「高値での買い戻し」も感情的な判断から生じる典型的な失敗です。
これを避けるために有効なのが、本章で見たような売却ルールを相場が動く前に決めておくことです。目標金額、価格の指標、取り崩しの考え方において、共通しているのは「あらかじめ基準を決めておき、その基準に沿って判断する」という点です。
どんなルールも万能ではなく、自分の投資目的・リスク許容度・ライフプランに合った無理のないルールを作り継続すること、そしてライフプランや市場環境が大きく変わったときにはルール自体を見直す柔軟さも必要です。
【表6:売却ルールの代表的な考え方】
| ルールの種類 | 内容 | 主な注意点 |
| 目標金額で決める | 目標額に到達したら売却を検討 | 達成前の資金需要や達成後の運用を別途検討 |
| 価格・テクニカル指標 | 移動平均線などを目安にする | 将来予測ではなく「だまし」もある。補助的に使う |
| 取り崩しの考え方(4%ルール等) | 一定割合を継続的に取り崩す | 米国の過去データに基づく研究で前提・限界がある |
| 仕組みで判断する | 事前に決めた基準に沿って判断 | ルールは万能ではなく、定期的な見直しも必要 |
※4%ルールは、ウィリアム・ベンゲン氏の研究(1994年)および米トリニティ大学の研究者らによる研究(1998年、いわゆるトリニティ・スタディ)に由来するとされる考え方です。本表はファーストパートナーズ作成。
まとめ
NISAで利益が出たとき、「売るべきか、持ち続けるべきか」という悩みは多くの投資家が直面するものです。
売却の判断は感情に流されやすいため、目標金額・価格の指標・取り崩しの考え方など、あらかじめ決めたルールに沿って判断することが有効です。ただし、どのルールも万能ではなく、自分の状況に合ったものを選び定期的に見直すことが大切です。
NISAの売却は「得か損か」「上がるか下がるか」という目先の損得ではなく、自分の人生設計のなかでその資金をどう活かすか、という視点で考えることが何よりも重要です。
<NISAのご注意事項>
配当金等は口座開設をした金融機関等経由で交付されないものは非課税となりません。NISA口座で国内上場株式等の配当金を非課税で受け取るためには、配当金の受領方法を「株式数比例配分方式」に事前にご登録いただく必要があります。
同一年において1人1口座(1金融機関)しか開設できません。
NISAで購入できる商品は金融商品取引業者等が指定する商品に限られます。
年間投資枠と非課税保有限度額が設定されます。
損失は税務上ないものとされます。
出国により非居住者に該当する場合、原則としてNISA口座で上場株式等の管理を行うことはできません。
つみたて投資枠では積立による定期・継続的な買付しかできません。
※ その他、NISA に関するご注意事項、並びに2023年までの一般NISA ・つみたてNISA等に関するご注意事項の詳細は金融商品取引業者等のWEBサイトにてご確認ください。
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