
投資信託をネットで買うとき、「分配金コース」について再投資型か受取型かを選ぶ画面が出てきます。なんとなく決めて、そのままにしている人も少なくないでしょう。
この2つは、分配金を再び同じ投資信託に投資するか、現金で受け取るかという違いですが、課税口座とNISA(少額投資非課税制度)口座では、選択の意味合いが変わります。特にNISA口座では、再投資が非課税枠を消費するという見落としやすい仕組みがあります。
本記事では、再投資型と受取型の基本的な違いから、課税口座とNISA口座での扱い、どちらを選ぶべきかを考える際のポイントまで整理します。
1. 分配金の「再投資」と「受取」は何が違う?
1-1.「再投資型」:分配金で同じ投資信託を自動的に買い増す仕組み
再投資型は、投資信託から支払われた分配金を現金で受け取らず、そのまま同じ投資信託の買い付けに回す設定です。原則として決算日ごとに自動で再投資されるため、特別な手続きは要りません。
保有口数が増えることで、その後の分配金も増えていく仕組みで、複利に似た効果が期待できます(ただし基準価額の変動により、増える方向にも減る方向にも働きます)。ただし、そもそも分配金を出さない投資信託もあります。
収益をファンドの中に留めて運用を続ける方針の投資信託では、再投資型を設定していても分配金の支払い自体が発生せず、この設定は事実上働きません。分配金を出すかどうかは目論見書で事前に確認しましょう。
1-2.「受取型」:分配金をそのまま現金で受け取る仕組み
受取型は、分配金を証券口座や指定口座に入金し、現金で受け取る設定です。ここで知っておきたいのが、投資信託の分配金には性質の異なる2種類があることです。
ひとつは「普通分配金」で、投資信託の元本の運用により生じた収益から支払われる利益です。もうひとつは「元本払戻金(特別分配金)」で、投資元本の払い戻し分に当たります。
元本払戻金は、受け取った金額相当分が、その投資信託の個別元本から減ります。分配金として現金が入ってきても、それが利益とは限りません。この違いが、次章以降の税金の話につながります。
1-3. どちらを選ぶべき?それぞれメリット・デメリット
どちらが優れているという答えはなく、何を優先するかが大切です。
| 再投資型 | 受取型 | |
|---|---|---|
| 資産の推移 | 保有口数が増えていく | 保有口数は変わらない |
| 現金の受け取り | ない | 決算ごとに受け取れる |
| 方法 | 自動で処理される | 使い道を自分で決める |
| 資産額の変動 | 分配金の分も値動きの対象になる | 受け取った分は値動きの影響を受けない |
再投資型は、受け取ったものを運用に回し続ける形です。ただし再投資した分も投資信託である以上、その後の値動きの影響を受けるため、増える方向にも減る方向にも働きます。
受取型は、定期的に現金を受け取るため、運用資産としては増えませんが、受け取った時点で現金としてその金額は確定します。
そして重要なのが、この比較が課税口座かNISA口座かで変わることです。そもそも、2024年から始まった新NISAでは、つみたて投資枠・成長投資枠ともに、毎月分配型の投資信託は対象商品から除外されています。この違いを含めて、次章で整理します。
2.NISA口座と課税口座の違い
2-1.【NISA口座】分配金も非課税!だから再投資が効く
NISA口座で得た利益は非課税です。課税口座なら20.315%が差し引かれるところ、NISA口座では差し引かれません。投資信託の普通分配金も同様で、NISA口座では非課税になります。
税金が引かれないまま全額が再投資に回るため、再投資型の仕組みはそのまま働きます。ただし、ここで見落とされやすい注意点として、NISA口座での再投資は、新たな買付として年間投資枠を消費する点が挙げられます。
日本証券業協会では、次の例が示されています。80万円で投資信託を購入し、その年のうちに5万円の分配金が発生して再投資された場合、その年につみたて投資枠で買い付けられるのは残り35万円(年間上限120万円−80万円−5万円)までとなります。
年間投資枠を使い切るペースで積み立てている人ほど、この影響を受けます。再投資分が枠を先に埋め、予定していた積立の一部が枠に収まらない可能性があります。
さらに、枠が足りない場合の扱いも一律ではなく、証券会社によって取扱いが異なります。知らないうちに課税口座で買い付けられていた、ということが起こらないよう、事前に証券会社の方針を確認しておきましょう。
2-2.【課税口座】再投資の前に税金が引かれている
一方で、課税口座では、普通分配金には20.315%の税金がかかります。つまり、再投資型を設定していても、税金が引かれたあとの金額が買い付けに回るため、分配金として1万円が出されても、実際に再投資されるのは約7,970円となります。
普通分配金が支払われるたびに課税されるため、決算回数が多いほど、税金を払うタイミングが増えます。同じ運用成果でも、分配金を出さずにファンド内部で運用を続ける商品と比べると、手元に残る金額は変わってきます。
ただし、すべての分配金に税金がかかるわけではありません。元本払戻金(特別分配金)は投資した元本の一部払戻しに当たるため、そもそも課税の対象外です。受け取った分配金のうち、どこまでが普通分配金でどこからが元本払戻金かは、取引報告書などで確認できます。
整理すると、次のようになります。
| NISA口座 | 課税口座 | |
|---|---|---|
| 普通分配金への課税 | 非課税 | 20.315% |
| 元本払戻金への課税 | そもそも課税対象外 | そもそも課税対象外 |
| 再投資と非課税枠 | 再投資分が年間投資枠を消費する | 枠の概念がない |
| 毎月分配型の購入 | できない | できる |
出典:日本証券業協会「2024年以降のNISAに関するQ&A」(https://www.jsda.or.jp/shijyo/seido/tax/files/202509_nisa_qa.pdf)、金融庁「NISAを知る」(https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/know/)を基にファーストパートナーズ作成
3.「再投資型」と「受取型」で運用成果はどれくらい変わる?
この章では具体的な数字を見ていきます。前提は次のとおりです。
課税口座で元本100万円、追加投資はなし。年1回決算で、分配前の運用利回りは年5%、分配率は3%。分配金はすべて普通分配金とし、税率20.315%が差し引かれるものとします。期間は20年、途中で売却はしません。
こちらはあくまでも一例で、実際の運用成果を示すものではなく、将来の成果を保証するものでもありません。
3-1. パターン①:受け取った分配金を「使い切った」場合
受取型を選び、受け取った分配金をその都度使った場合です。20年後の運用資産は1,442,848円になりました。この間に受け取った分配金は、税引後の手取りで合計600,856円です。
元本100万円が約144万円。受け取った分配金と合わせれば約204万円ですが、分配金はその都度使っているため手元に残っていません。
分配金は運用資産から支払われるため、支払われた分だけ基準価額(投資信託の1万口あたりの値段)は下がります。分配金を受け取ったからといって資産が増えるわけではなく、運用資産の一部が現金として払い出されていると理解しましょう。
3-2. パターン②:受け取った分配金を「別の商品で再運用」した場合
同じく受取型ですが、受け取った分配金を別の商品で運用に回した場合です。再運用先は分配金を出さない商品で、利回りは同じ年5%と仮定します。
元の商品が1,442,848円、再運用先が964,547円。合計で2,407,395円になりました。パターン①との差は約96万円ですが、これは使わずに運用に回したかどうかの差で、受取型か再投資型かという設定の違いではありません。
3-3. 同じ商品に再投資した場合との違い
再投資型を選び、同じ商品を買い増した場合、20年後は2,347,945円になります。パターン①の運用資産1,442,848円と比べると約90万円多い計算です。ただしこの差の中身を分けて見る必要があります。
パターン①では手取り約60万円を受け取って消費しているため、これを足し戻すと合計約204万円。再投資型との差は約30万円まで縮みます。この約30万円が、20年分の課税による差です。
分配金が支払われるたびに20.315%が差し引かれ、その分が運用に回らなくなる。積み重なるとこの規模になります。参考までに、同じ利回りで分配金を出さない商品を20年持った場合は2,653,298円です。再投資型との差は約30万円で、これも課税のタイミングの違いによるものです。
そしてパターン②は2,407,395円で、再投資型をわずか約6万円上回りました。ただしこれは再運用先を分配金を出さない商品と仮定したためで、課税の回数が減った結果であり、別の商品に移すこと自体に効果があるわけではありません。
| パターン | 20年後 |
|---|---|
| ①受取型・使い切り | 運用資産1,442,848円(別途、受取累計600,856円) |
| ②受取型・別商品で再運用 | 2,407,395円 |
| ③再投資型・同じ商品を買い増し | 2,347,945円 |
| (参考)分配金を出さない商品 | 2,653,298円 |
※課税口座、元本100万円、年1回決算、分配前利回り年5%、分配率3%、全額が普通分配金、税率20.315%、20年、期間中の売却なしという条件での試算。②の再運用先は分配金を出さない商品で利回りは同じと仮定。条件を単純化した一例であり、将来の成果を保証するものではありません。
出典:税率は日本証券業協会「2024年以降のNISAに関するQ&A」(https://www.jsda.or.jp/shijyo/seido/tax/files/202509_nisa_qa.pdf)。試算はファーストパートナーズ作成
4. 自分の分配金コースを確認する方法
分配金コースは、購入時に選んだまま見直していないことが多いため、まず現状を把握することが大切です。
4-1. マイページ・保有商品一覧で確認する
最も早いのは、金融機関のマイページで保有商品の一覧を確認することです。投資信託の明細に、分配金の取り扱いを示す項目が並んでいます。
表示名は金融機関によって異なりますが、「分配金コース」「分配金受取方法」「収益分配金コース」といった呼び方で、値は「再投資」「受取」などと表示されるのが一般的です。
変更手続きも通常はこの画面から行えますが、操作の流れや項目の位置は金融機関ごとに違いますので不明な場合は口座を開設している金融機関に確認してください。
4-2.「取引報告書」や「取引履歴」で確認する
設定画面が見当たらない場合は、過去の記録から確かめる方法があります。決算を経て分配金が支払われた商品であれば、その履歴を確認することでも設定を把握できます。
再投資型なら分配金の支払いと同時に買い付けた記録が並び、受取型なら証券口座への入金として記録されます。分配金の支払い後に再投資による買い付けが発生しているかを確認すれば、どちらの設定だったかが分かります。
また、この記録では分配金の税務上の扱いも確認できます。分配金は、分配落ち後の基準価額と個別元本の関係によって、課税対象の普通分配金と非課税の元本払戻金(特別分配金)に分かれます。
受け取った金額のうち、どこまでが利益でどこからが元本の払い戻しだったのか。ここを見ておくと、第2章の課税の話が自分の数字として理解できます。元本払戻金を受け取ると、その分だけ個別元本は下がります。
また、個別元本は買い増したときにも計算し直されるため、取引履歴を確認しないと現状の個別元本が分かりにくくなることがある点にも注意が必要です。
4-3. 銘柄ごとに設定が異なる点に注意
見落としやすいのが、この設定が口座単位ではなく銘柄単位だということです。同じ口座で複数の投資信託を持っている場合、それぞれ別の設定になっている可能性があります。
購入した時期や申込画面の初期値によって、意図せず違う設定になっていることも考えられます。NISA口座と課税口座の両方で同じ銘柄を持っている場合も、別々の設定として扱われるのが通常です。
第2章で見たとおり、この2つでは再投資の意味合いが変わります。片方だけ確認して安心するのは避けたいところです。
出典:資産運用業協会「元本払戻金(特別分配金)」(https://www.imaj.or.jp/glossary/detail/58.html)
5. 分配金コース変更方法と注意点
分配金コースは後から変更できます。ただし、変更したその日から反映されるわけではありません。仕組みを知らないと、次の決算に間に合わないことがあります。
5-1. 決算日直前の変更手続きは締め切り期限に注意
分配金が支払われるのは決算日です。その決算で誰にどう分配するかは、決算日時点の保有状況をもとに処理されます。コース変更が次回の分配金から適用されるためには、金融機関が定める締切日までに手続きが完了している必要があります。
決算日の直前に申し込んだ場合は、手続きが間に合わずその回の分配金は変更前の設定で処理される可能性があります。締め切りが決算日の何営業日前かは金融機関や商品によって異なります。
次の決算から新しい設定にしたい場合は、締め切りを確認して余裕をもって手続きするのが確実です。決算日は目論見書に記載されています。
5-2. 変更手続きから実際の反映まで数営業日かかる
申し込んでから設定が切り替わるまでにも時間がかかります。投資信託の売買には、注文した日と実際に受け渡しが行われる日にずれがあります。分配金コースの変更も、こうした事務処理の流れに沿って処理されます。
画面上で申し込みが完了しても、その時点で設定が切り替わっているとは限りません。手続き後に一覧画面を開き、表示が変わっているかを確認しておくと確実です。反映までの日数は金融機関ごとに異なります。
5-3.「コース変更ができない」パターンとは?
そもそも変更できない場合もあります。主なものは次の3つのパターンです。
第1に、商品側が一方のコースしか用意していない場合です。分配金を出さない方針の投資信託では、受取型という選択肢が存在しません。設定項目自体が表示されないこともあります。
第2に、積立設定と紐づいている場合です。NISAのつみたて投資枠に受け入れられる投資信託は、あらかじめ買付を行う銘柄を指定したうえで定期的に継続して買い付ける累積投資契約に基づくものに限られています。この契約の設定内容の一部として分配金コースが管理されている場合、コースだけを単独で変更できないことがあります。
第3に、口座の状態によるものです。金融機関の変更手続きの途中や、出国にともなう手続きを行っている期間などは、通常の変更操作が制限されることがあります。
画面上で変更できないからといって設定が固定されているとは限りません。手続きの方法が別に用意されていることもあるため、変更したい理由とあわせて金融機関に相談するのが早道です。
変更の前に確認しておきたいこともあります。第2章で見たとおり、NISA口座では再投資が年間投資枠を消費します。受取型から再投資型に変更するなら、その年の枠の残りに影響します。逆に再投資型から受取型にすれば枠の消費は起きませんが、受け取った分配金は運用から外れます。
出典:日本証券業協会「2024年以降のNISAに関するQ&A」(https://www.jsda.or.jp/shijyo/seido/tax/files/202509_nisa_qa.pdf)
6. まとめ
分配金の再投資型と受取型は、受け取った分配金を同じ投資信託の買い付けに回すか、現金で受け取るかの違いです。NISA口座では普通分配金は非課税なので全額が再投資に回りますが、その再投資は新たな買付として年間投資枠を消費します。
枠を使い切るペースで積み立てている人ほど、この影響を受けます。枠が足りない場合に課税口座で買い付けられるかどうかは、金融機関によって扱いが異なります。
分配金にも種類があります。元本払戻金(特別分配金)は投資した元本の一部が戻ってきているだけで、もともと課税対象外なのでNISAの非課税というメリットも働きません。現金が入ってきても、それが利益とは限らない。この区別は自分の取引記録で確認できます。
まずは保有商品の一覧を開き、銘柄ごとの設定を確かめるところからです。この設定は口座単位ではなく銘柄単位で、同じ口座内でも商品ごとに違っていることがあります。
そのうえで変更するかどうかは、現金を定期的に受け取りたいのか、運用に回し続けたいのかという目的次第です。どちらが正解かは、投資目的や資金の使い方によって変わります。
<NISAのご注意事項>
・配当金等は口座開設をした金融機関等経由で交付されないものは非課税となりません。
・NISA口座で国内上場株式等の配当金を非課税で受け取るためには、配当金の受領方法を「株式数比例配分方式」に事前にご登録いただく必要があります。
・同一年において1人1口座(1金融機関)しか開設できません。
・NISAで購入できる商品は各金融機関が指定する商品に限られます。
・年間投資枠と非課税保有限度額が設定されます。
・損失は税務上ないものとされます。
・出国により非居住者に該当する場合、原則としてNISA口座で上場株式等の管理を行うことはできません。
・つみたて投資枠では積立による定期・継続的な買付しかできません。
・その他、NISA に関するご注意事項に関するご注意事項の詳細は証券会社等のWEBサイトにてご確認ください。
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