
日経平均株価7万円はバブルではない?1989年との決定的な違いを徹底解説
2026年6月16日、東京株式市場で日経平均株価(日経225)が取引時間中として史上初めて7万円台に乗せました。
1989年のバブル期最高値から36年余を経て刻まれたこの節目を、本稿では背景と位置づけを客観的に整理します。
1. 日経平均株価7万円突破——何が起きたか
2026年6月16日午後、日本銀行(日銀)の政策金利引き上げが公表されると市場に買いが広がり、日経平均株価は一時7万20円を付けました。
これは取引時間中の値としては史上初の7万円台です。
この節目を理解するには、バブル期との対比が欠かせません。1989年12月29日、日経平均株価は終値3万8,915円という史上最高値を記録しました。その後バブルが崩壊し、1992年には一時2万円台を割り込みました。以来、日本株市場は「失われた30年」と呼ばれる長期低迷を続けました。
転換点となったのは2024年です。同年2月22日、日経平均株価は実に35年ぶりに1989年の終値最高値を更新し、3万9,000円台に乗せました。同年3月4日には4万円の大台を初めて突破し、7月11日には4万2,426円の年間高値を付けました。
一方、同年8月5日には過去最大となる4753円安を記録し、一時3万1,156円まで下落しました。それでも同年末の終値は前年末比19.21%高となり、2年連続の上昇で年末終値の最高を更新しています。
その後も上昇基調は続き、確認できる範囲では2026年4月の6万円到達からおよそ2カ月足らずという急速な値上がりを経て、2026年6月には、取引時間中ではあるが7万円の大台に到達しました。
【表1】日経平均株価 主な節目の推移
| 年月日 | 出来事 | 日経平均株価(円) |
|---|---|---|
| 1989年12月29日 | バブル期終値最高値 | 38,915円 |
| 1992年(年中) | バブル崩壊後の底値圏 | 一時20,000円台割れ |
| 2024年2月22日 | 35年ぶりに最高値更新 | 39,000円台突破 |
| 2024年3月4日 | 4万円大台突破 | 40,000円台 |
| 2024年7月11日 | 年間高値 | 42,426円 |
| 2024年8月5日 | 過去最大の下落幅(4,753円安) | 一時31,156円 |
| 2024年末 | 年末終値最高値更新 | 前年比+19.21% |
| 2026年6月16日 | 取引時間中として史上初の7万円台 | 高値70,020円 |
日本経済新聞、日本取引所グループ統計月報を基にファーストパートナーズ作成
出典:NHK「日経平均株価 一時7万円を初めて突破 日銀利上げ想定内との見方も後押しに」、日本経済新聞「日経平均株価が連日最高値、6万9404円 一時7万円乗せも伸び悩む」
2. なぜここまで上がったのか——4つの背景
日経平均株価を押し上げた要因は大きく4つに整理できます。
2-1. AI・半導体関連需要の拡大
2024年以降の上昇を最も直接的に牽引したのは、人工知能(AI)・半導体関連銘柄です。
代表格はアドバンテスト(半導体テスト装置)と東京エレクトロン(半導体製造装置)で、両社は日経平均株価の構成銘柄の中でも影響度が高い大型株です。
会社予想は将来の業績を保証するものではなく市場予想を下回れば株価が変動することもありますが、アドバンテストの2027年3月期連結純利益は、前期比24%増の4,655億円と3年連続最高益が見込まれています。その背景にはAI向け半導体の検査需要の高まりがあると考えられます。
この動きは日本国内にとどまりません。米国・韓国の人工知能(AI)・半導体関連銘柄が大きく上昇すると、その流れが東京市場に波及し、AI・半導体関連株が買われる展開が繰り返されました。
AI関連投資は世界的なテーマとなっており、日本企業も半導体製造装置や検査装置などの分野で高い競争力を持つことから、その恩恵を受けています。
2-2. 日本企業の収益力向上と東証改革
上昇の第2の柱は、日本企業の稼ぐ力の向上です。
2023年3月31日、東京証券取引所(東証)はプライム・スタンダード市場の全上場企業に「資本コストや株価を意識した経営」の実現に向けた対応を求めました。いわゆるPBR(株価純資産倍率=株価を1株当たりの純資産で割った数値)1倍割れ問題への対応要請です。
この要請を受け、企業は自社株買いや増配など株主還元を積極化しました。2026年2月28日時点では、プライム市場上場企業の93%(1472社)、スタンダード市場企業の51%(807社)が対応に関する開示を行っています。またPBR1倍割れ企業の比率はプライム市場で50%から27%へと約23ポイント低下しました。
企業の収益力自体も改善しています。東証株価指数(TOPIX)を構成する企業全体で見ると、営業利益率は過去20年間で改善傾向が続いています。
こうした企業改革は、一時的な株価対策ではなく、中長期的な企業価値向上につながる取り組みとして海外投資家からも評価されています。
2-3. 円安による企業業績の押し上げ
日銀が緩和的な金融政策を続ける一方、米国では高金利政策が続いたことで円安基調が定着しました。輸出企業では海外売上を円換算した際の利益が押し上げられ、自動車や機械、電子部品など幅広い企業で業績改善につながりました。
円安は輸入企業や家計には負担となる一方、日経平均株価を構成する輸出企業には追い風となり、株価上昇を支える要因となりました。
2-4. 海外投資家の買い越し
第4の要因は海外投資家の動きです。
企業の資本効率改善への期待や、コーポレートガバナンス(企業統治)改革の進展が、外国人投資家の日本株への評価を高めました。2025年は海外投資家が大幅な買い越しとなり、日経平均株価上昇を後押ししました。
海外投資家は東京市場売買代金の約7割※を占めると言われており、その資金流入は日本株全体の上昇に大きな影響を与えています。
※JPXの「投資部門別売買状況(株式)」より当社算出
出典:日本取引所グループ「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応(プライム・スタンダード市場)」、日本経済新聞「アドバンテスト3年連続最高益 27年3月期、AI半導体向け好調」
3. 世界の株式市場と比べると
日本株の上昇は世界的な流れの中でどう位置づけられるでしょうか。
指数の算出方法により数値の出方が異なる点にはご留意いただきたいのですが、2025年通年の上昇率を見ると、TOPIXが約22%高と主要国のなかで高水準でした。S&P500(スタンダード・アンド・プアーズ500種株価指数)は17%高、上海総合指数は18%高にとどまりました。
2026年に入ってからも日本株は強い上昇基調にあります。日本株の特異点は、長期低迷を経て2024年以降に、人工知能(AI)・半導体関連銘柄の上昇とコーポレートガバナンス改革の進展が重なり、株価上昇が急加速したという歴史的な文脈にあります。
日本株は世界的なAI相場の恩恵を受けていますが、それだけではありません。企業の資本効率改善やガバナンス改革が重なったことで、海外投資家から「改革が進む市場」として評価された点が、今回の上昇の特徴といえます。
【表2】主要株価指数の上昇率比較(2025年通年)
| 指数 | 2025年通年上昇率 |
|---|---|
| 日経平均株価 | +26% |
| 上海総合指数 | +18% |
| S&P500 | +17% |
日本取引所グループ統計月報(2025年12月)を基にファーストパートナーズ作成
出典:日本取引所グループ「統計月報 株価指数・株価平均(2025年12月)」
4. この局面で投資家が考えるべき3つの視点
ここまで見てきた事実を踏まえると、この局面をどう捉えるかについていくつかの視点が浮かびます。
4-1. 「7万円」という数字だけで相場を判断しない
第1に、今回の上昇は単なるセンチメント(市場心理)の改善だけではありません。
第2章で確認した通り、企業の収益力向上・資本効率改善という実力が伴っており、1989年のバブル期とは構造的に異なります。当時は実態を超えた期待が株価を押し上げましたが、現在は多くの上場企業がROE(自己資本利益率)やPBRを意識した経営改革を進めています。
4-2. 資産配分(リバランス)を見直すタイミング
第2に、株価上昇が続くとポートフォリオ(保有資産の組み合わせ)内の株式の比率が自動的に高まります。
当初は株式・不動産・キャッシュを均等に保有していた場合でも、株式部分だけが大きく増えれば、気づかないうちに株式への集中度が増します。この状態を「リバランス(資産配分の見直し)」によって元の比率に戻すかどうかは、各自の資産設計の目的や運用期間によって異なります。
株価が上昇すると、意図せず株式の比率が高まることがあります。定期的に資産配分を確認することが、リスク管理につながります。
4-3. 高値圏では値動きが大きくなることも前提にする
第3に、2024年8月5日に一日で4,753円下落したという事実が示すように、高値圏での値動きは大きくなりやすい傾向があります。日経平均株価は高値を付けながら、同時期に数千円規模の調整が起きた事例があることは、過去の値動きが示しています。
高値更新局面では上昇期待が高まる一方、利益確定売りや外部環境の変化によって短期間で大きく調整することもあります。価格変動を前提とした資産管理が重要です。
これらはいずれも特定の行動を促すものではなく、事実として知っておくべき論点の整理です。資産設計の具体的な判断は、各自の状況や目標に応じて行われるものであり、専門家への相談も選択肢の一つです。
5. まとめ
本記事では、日経平均株価7万円台到達の背景と、その意味について整理しました。
1989年のバブル期最高値(3万8,915円)との最大の違いは、株価上昇の「中身」にあります。当時は期待先行で資産価値が膨らんだ一方、現在はAI・半導体需要や企業収益の拡大、資本効率の改善といった構造的な変化が伴っています。実態のある成長が株価を支えている点も重要な特徴です。
一方で、日経平均は一部の値がさ株の影響を受けやすい指数であり、高値圏では価格変動も大きくなりやすい点には留意が必要です。「7万円」という数字だけに注目するのではなく、その背景にある企業の業績や市場構造を理解することが重要です。
今回の歴史的な節目は、ご自身の保有資産のバランスを見直すなど、改めて投資方針を確認してみることも有効でしょう。
本記事は特定の行動を促すものではなく、資産に関わる具体的な判断は、各自の状況や目標に照らして行われるものです。
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