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事業承継の費用はいくら?税金・専門家報酬・株の買取資金を承継方法別に総額シミュレーション

事業承継の費用はいくら?税金・専門家報酬・株の買取資金を承継方法別に総額シミュレーション

事業承継を考え始めたとき、多くの経営者が最初に気になるのが「結局いくらかかるのか」です。しかし、費用は承継の方法によって大きく変わり、誰が負担するのかも一様ではありません。

事業承継の費用は、「税金」「専門家報酬」「株の買取資金」の3つに分けて考えると全体像がつかめます。

本記事では、承継方法別の費用の全体像、税金・専門家報酬・買取資金それぞれの内訳、費用を抑える方法を整理します。

なお、本記事は情報提供を目的としており、個別の税務・法務の判断は税理士などの専門家にご相談ください。

1. 事業承継の費用は「税金・専門家報酬・株の買取資金」

事業承継でかかる費用は、3つに分けて考えると整理しやすくなります。

表1:事業承継の費用の3分類

費用内容主な負担者
税金贈与税・相続税(親族内承継)、譲渡所得税(売買・M&A)、不動産の移転にかかる登録免許税など後継者(贈与・相続)、先代(売却)
専門家報酬税理士(株価算定・申告・承継計画)、弁護士・司法書士(契約・登記)、M&A仲介・FA(買い手探し・交渉)会社または先代
株の買取資金後継者が先代から株式を買い取るための資金後継者

どれが中心になるかは承継の方法で決まります。

・親族に贈与・相続で渡す場合:税金が中心。買取資金は不要
・従業員が買い取る場合:買取資金が中心。加えて先代に譲渡所得税
・第三者に売却する場合:仲介手数料と先代の譲渡所得税が中心。買取資金は買い手が負担

費用を見積もるときは、「総額」だけでなく「誰が、いつ、いくら払うか」を分けて考えることが必要です。負担者が違えば、資金の準備方法も変わります。

2. 【承継方法別】費用の全体像と目安

2-1. 親族内承継:贈与税・相続税が中心

親族に株式を渡す場合、後継者は対価を払わない代わりに、贈与税または相続税を負担します。どちらも累進税率で、金額が大きいほど税率が上がります。

表2:親族内承継の主な費用

費用負担者内容
贈与税後継者生前に株式を贈与した場合。暦年課税または相続時精算課税
相続税後継者相続で株式を取得した場合。他の遺産と合算して計算
税理士報酬会社・先代株価算定、承継計画、申告
弁護士・司法書士費用会社・先代遺言作成、株式の名義書換、役員変更登記

贈与税・相続税は、第3章で見る事業承継税制を使えば納税が猶予されます。

2-2. 従業員承継(MBO):株式買取資金+税金

役員や従業員が承継する場合、後継者が株式を買い取る資金が最大の費用です。

表3:従業員承継の主な費用

費用負担者内容
株式買取資金後継者自社株評価額をもとに決めた価格で買い取る
譲渡所得税先代売却益に課税
借入の利息後継者買取資金を借り入れた場合
税理士・弁護士報酬会社・先代株価算定、株式譲渡契約、登記

株価を下げてから売却すれば、買取資金と先代の譲渡所得税の両方が減ります。

2-3. 第三者承継(M&A):仲介手数料+譲渡所得税

第三者に売却する場合、買取資金は買い手が負担します。売り手側の費用は、仲介手数料と譲渡所得税が中心です。

表4:第三者承継の主な費用

費用負担者内容
M&A仲介・FA手数料先代(売り手)着手金・中間金・成功報酬。体系は会社によって異なる
譲渡所得税先代株式譲渡なら売却益に課税。事業譲渡なら会社に法人税
弁護士・税理士報酬先代・会社契約書の確認、税務の検討
デューデリジェンス費用買い手財務・法務などの調査費用

手取り額は、仲介手数料と税金を差し引いた後の金額で考えることが必要です。

2-4. 3パターンの費用比較表(自社株評価1億円のケース)

自社株の評価額を1億円と仮定し、3パターンの主な税金と費用を試算します。前提は次のとおりです。

・自社株の評価額・売却価格:1億円
・贈与:暦年課税、特例税率(18歳以上の子への贈与)、1回で全株を贈与
・相続:相続人は子1人のみ、遺産は自社株のみ
・売却:取得費1,000万円、譲渡所得税率20.315%
・M&Aの仲介手数料:売却価格の5%と仮定
・事業承継税制は使わない。専門家報酬(税理士・弁護士)は含めない

表5:自社株評価1億円の場合の主な費用(試算)

承継方法主な費用金額負担者
親族内承継(贈与)贈与税約4,800万円後継者
親族内承継(相続)相続税約1,220万円後継者
従業員承継株式買取資金1億円後継者
譲渡所得税約1,830万円先代
第三者承継(M&A)仲介手数料500万円先代
譲渡所得税約1,720万円先代

※出典:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4408.htm)、「No.4155 相続税の税率」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm)、「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1463.htm)を基にファーストパートナーズ試算。仲介手数料は仮定の数字です

・贈与を1回で行うと税負担が最も重い。分割贈与、相続時精算課税、事業承継税制で負担は変わる
・相続は税率が低めだが、時期を選べない
・売却は先代に税金がかかり、後継者には買取資金がいる。M&Aでは先代の手取りが約7,670万円になる

実際には、専門家報酬や他の財産の有無によって金額は変わります。自社の評価額で同じ試算を税理士に依頼することが、費用の見積もりの第一歩です。

3. 【費用①税金】誰にいくらかかるか

税金は、株式をどう移すかで種類が変わり、負担者も変わります。贈与・相続は後継者、売却は先代の負担です。

3-1. 贈与・相続・譲渡それぞれの税率と計算例

表6:株式の移転方法と税金

移転方法税金税率負担者
贈与(暦年課税)贈与税基礎控除110万円を引いた額に10〜55%の累進税率後継者
贈与(相続時精算課税)贈与税基礎控除年110万円と特別控除2,500万円を引いた額に一律20%。相続時に精算後継者
相続相続税基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を引いた額に10〜55%の累進税率後継者
売却譲渡所得税売却益(売却価格-取得費-譲渡費用)に20.315%先代

※出典:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4408.htm)、「相続時精算課税制度のあらまし」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4103_sankou.htm)、「No.4155 相続税の税率」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm)、「No.1463 株式等を譲渡したときの課税」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1463.htm)

表7:1億円の株式を相続時精算課税で贈与した場合(試算)

項目金額
贈与額1億円
基礎控除(年110万円)+特別控除(2,500万円)2,610万円
課税対象7,390万円
贈与税(一律20%)約1,478万円

※国税庁「相続時精算課税制度のあらまし」を基にファーストパートナーズ試算。相続時に贈与時の価額で相続財産に加算され、納めた贈与税は相続税から控除されます

相続時精算課税では贈与時の税額は抑えられますが、相続時に贈与時の価額で相続財産に加算されるため、最終的な税負担は相続税の計算で決まります。

株価が上がる見込みなら、低い価額で評価を固定できる点が特徴です。

3-2. 事業承継税制の「納税猶予」の仕組みと取り消しリスク

事業承継税制(特例措置)を使うと、後継者が非上場株式を贈与・相続で取得した際の贈与税・相続税は全額が納税猶予され、要件を満たし続ければ最終的に免除されます。

適用には特例承継計画の提出が必要で、贈与・相続は2027年12月31日までに実行する必要があります。

表8:納税猶予の流れと取り消しリスク

段階内容
適用時贈与税・相続税の納税が猶予される(繰り延べであり、税額がゼロになるわけではない)
承継後5年間後継者が代表者・株主であり続け、年次報告を行う
5年経過後株式を保有し続ける限り猶予が続く。後継者の死亡や次の後継者への承継で免除
取り消し代表者の退任、株式の譲渡、会社の解散などで猶予が打ち切られ、猶予税額と利子税を納付
長竹 祐樹

大学卒業後、新卒で銀行へ入行。支店業務(担当地域の個人・法人のお客様へ資産運用や融資の提案を主に実施)を経験後、本部へ異動し富裕層や相続・事業承継業務及び支店管理、提携先との連携や折衝を経験。頭取表彰や本部長表彰等受賞。銀行の求めるものとお客様の求めるものとのずれを感じ、株式会社ファーストパートナーズへ転職。現在は幅広いサービスや金融商品をお客様に案内できる環境にあり、お客様のニーズから真に求めるものを提案できるよう日々行動している。

保有資格:証券外務員一種、内部管理責任者、生命保険協会認定保険募集人、FP二級技能検定資格

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